今回の記事は、「社労士の副業」がテーマです。
「社労士の資格を取ったけれど、いまの仕事には活かせていない」「会社員のまま、土日や空いた時間で社労士の副業ができないだろうか」――そう考えている方は多いですよね。ここでいう「社労士の副業」とは、すでに独立開業している先生の副業ではなく、社労士資格を持つ(あるいはこれから取る)一般のサラリーマンが、本業を続けながら資格を活かして副収入を得るという意味です。
そこで先に結論をお伝えします。会社員のまま社労士で副業をすることは、次の2つの条件を満たせば可能です。
- 条件①……あなたの勤め先の就業規則で副業が認められていること(公務員は法律で原則制限あり)。
- 条件②……社労士の独占業務(1号・2号業務)で報酬を得るには、試験合格だけでなく全国社会保険労務士会連合会への「登録」が必須だということ。
逆にこの2点をクリアできれば、行政協力(社労士会経由のアルバイト)、補助金・助成金の支援、3号業務(コンサル)、講座講師、記事執筆など、土日や在宅でできる現実的な道がいくつもあります。ただし「土日だけで開業して一気に稼ぐ」「小遣い稼ぎ感覚で片手間に」では、まず上手くいきません。この記事では、副業できる条件から、副業の種類と稼ぎの目安、開業・勤務・その他の登録区分の違い、そして「やってはいけない働き方」までを、一次情報をもとに整理していきます。
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結論|会社員が社労士で副業するには「就業規則の許可」と「登録」の2条件が必要
まず、いちばん大事なところからおさえましょう。会社員のまま社労士の副業をするには、次の2つの条件を切り分けて考える必要があります。ここを混同すると、「資格は取ったのに副業として成立しない」という事態になりかねません。
- 条件①:勤め先で副業が認められているか……副業の可否は、まずあなたの勤務先の就業規則と、その許可次第です。就業規則で禁止されている場合は、トラブルを避けるためにも勝手に始めず、まず勤務先に確認・相談するのが基本です(許可制ならきちんと申請する)。なお公務員は国家公務員法・地方公務員法で営利企業への従事等が原則制限されており、許可なしの副業はできません(この点は後で詳しく触れます)。
- 条件②:独占業務には「登録」が必須……社労士の独占業務(1号・2号業務)で報酬を得るには、試験に合格しただけでは足りず、全国社会保険労務士会連合会への登録が必要です。登録していない人が独占業務を業として行うことは、法律(社会保険労務士法第27条)で禁止されています。
つまり、「社労士に合格した=すぐ副業で稼げる」ではありません。大切なのは、社労士は持っているだけで自動的に稼げる資格ではないということ。逆に言えば、この2条件を正しく押さえ、コツコツ実績を積めば、勤務でも副業でも十分に活かせる資格です。「小遣い稼ぎ感覚」で雑に手を出すのではなく、まず現実を正しく知るところから始めましょう。
この記事を読み終えるころには、自分の立場で社労士の副業ができるのか、どんな種類があってどれくらい稼げるのか、そしてどんな働き方は避けるべきかまで、ひと通り判断できるようになっているはずです。社労士という資格の全体像から確認したい方は、社労士|資格全体ガイドとキャリア・副業もあわせてどうぞ。
サラリーマンしながら社労士の資格を活かして副業できるの?
サラリーマンの中には、日々の業務のためというより、副業を目的に社会保険労務士(社労士)の資格取得を目指す方もいます。行政書士や中小企業診断士、税理士など他の士業と同じで、社労士も副業に活かせる資格です。
そもそも、サラリーマンや会社員にとって、社会保険・就業規則・年金といったテーマは非常に身近なもの。実務経験がない方でも取っつきやすい分野ですから、社労士の資格を活かした副業は決して不可能ではありません。会社の就業規則で副業が禁じられていないのであれば、平日の空いた時間や土日の休日を利用して副業を始めるのは、十分に現実的な選択肢です。
会社員が社労士の資格を活かして副業するメリットを整理すると、次のようになります。
- 会社員の給料に副業の報酬が上乗せされ、全体の年収アップにつながる
- 副業で実務経験を積みながら、将来的に独立開業する道も開ける(適性も見極められる)
- 「働き方改革」の浸透で社労士の専門分野である人事・労務に注目が集まっており、将来性のある分野で経験を積める
- 専門知識を活かした執筆・社労士講座の添削など、子育てしながら在宅でリモートワークできる副業も増えている
まず確認|公務員は副業が原則制限される
注意したいのが公務員のケースです。国家公務員は国家公務員法第103条・第104条、地方公務員は地方公務員法第38条により、営利企業への従事や報酬を得ての事業従事が原則として制限されています。許可なく副業を行うことは原則できません(許可制)。
なお、国家公務員の兼業規制については近年見直しの動きがあり、緩和の方針が示されています。ただし制度の詳細・運用は時点によって変わるため、公務員の方は必ず最新の規程と所属先の許可手続きを確認してください。この記事では、以降は「会社員(民間)で就業規則上の副業が認められている場合」を前提に話を進めます。
副業をすることで、社労士として独立開業するための事前準備にもなる
社労士の資格を持っていても、すぐに独立開業して稼げるようになるわけではありません。新規顧客の獲得が思うようにいかず年収が下がるなど、独立開業にはリスクもあります。
しかし、まず副業として業務に取り組んでおけば、収入を増やしながら自分の適性を見極められます。「この仕事は自分に向いていそうだから独立しよう」「社労士一本で食べていくのは難しそうだから、当面は会社員+副業を続けよう」と、今後のキャリアを柔軟に選べるわけです。いきなり退路を断つより、ずっと低リスクですよね。
独立か継続かを考える前提として、社労士の年収やキャリアの全体像も押さえておくと判断しやすくなります。資格取得そのものをこれから目指す方は、まず社労士の勉強法で最短ルートを確認しておきましょう。
社労士の副業には、どんな種類があるの?
ひとくちに社労士の副業といっても、その種類はさまざまです。主なものを挙げると、次のとおりです。
- 社労士の独占業務(1号業務・2号業務)の手続き……登録社労士のみ可
- コンサルティング業務(3号業務)……無資格でも可だが社労士の信頼が活きる
- 補助金申請の支援業務(※雇用関係の助成金の申請代行は1号業務=登録社労士のみ)
- 社労士会の紹介によるパート・アルバイト(行政協力)
- 行政や公的機関(役所・ハローワーク等)の紹介によるパート・アルバイト
- 社労士講座の講師業務
- 専門記事の執筆・ブログ運営など
ここで決定的に大事なのが、「登録が必要な仕事」と「登録がなくてもできる仕事」を取り違えないことです。下の表で整理しておきましょう。
| 業務 | 内容 | 独占業務か | 登録が必要か |
|---|---|---|---|
| 1号業務 | 申請書等の作成・提出代行(労働社会保険の手続き、助成金の申請など) | ○ 独占業務 | 必要(登録社労士のみ) |
| 2号業務 | 帳簿書類の作成(就業規則・労働者名簿・賃金台帳など) | ○ 独占業務 | 必要(登録社労士のみ) |
| 3号業務 | 労務管理・社会保険に関する相談・指導(コンサル) | × 非独占 | 不要(無資格でも可) |
| 記事執筆・講師など | 知識・スキルを活かした執筆・添削・講義 | × 非独占 | 不要 |
このように、社労士法第2条が定める1号業務・2号業務は登録社労士だけに許された独占業務です。一方、3号業務(コンサル)や執筆・講師は資格がなくてもできる非独占の領域。だからこそ、3号業務は行政書士や中小企業診断士、無資格コンサルタントとも競争になりやすいのですが、難関の社労士資格があるぶん信頼を得やすく、営業面で有利に働きます。3号業務の詳しい中身は社労士のコンサルティング業務(3号業務)とはで確認できます。
なお、雇用関係の助成金(厚生労働省)の申請代行は1号業務に含まれる独占業務で、登録社労士でなければ報酬を得て代行することはできません。一方、経済産業省系などの一般的な補助金については、その支援は社労士の独占業務ではありません。ただし、誰がどこまで代行・作成できるかは、それぞれの士業法(行政書士法など)によって定められています。申請にあたっての情報整理やスケジュール管理の助言など、独占業務にあたらない範囲であれば、無登録でも知識を活かせる場面はあります。具体的な業務範囲は各士業法を確認し、グレーな代行には踏み込まないようにしましょう。講師業務や記事執筆は、講義以外(テキスト作成・過去問解説・添削など)はほとんど在宅・リモートで完結するため、子育て中の方でも取り組みやすい副業といえます。
副業の前に|社労士の登録区分(開業・勤務・その他)と必要な実務・費用
ここが、旧来の「副業の種類だけ並べる記事」では抜けがちな、いちばん大事な論点です。独占業務にかかわる副業をするなら、試験合格に加えて全国社会保険労務士会連合会への登録が必須で、あわせて都道府県の社会保険労務士会の会員になる必要があります。
登録には「2年以上の実務経験」または「事務指定講習」が必要
登録の条件は、次のいずれかです。
- 労働社会保険諸法令に関する2年以上の実務経験を持っている
- 実務経験のない方は事務指定講習を修了する(4か月間の通信指導課程+4日間の面接指導課程)
つまり、実務経験がないサラリーマンの場合は、事務指定講習を修了して登録した後に、はじめて社労士として独占業務の副業ができる形になります。資格を取ってすぐ、というわけにはいかない点に注意してください。事務指定講習の中身や受け方は社労士の事務指定講習は受けるべき?内容や費用まとめで詳しく解説しています。
登録区分は「開業・勤務・その他」で扱える業務が変わる
社労士の登録には区分(種別)があり、どの区分で登録するかによって、副業でできる仕事の範囲が変わります。ここを理解せずに登録すると、「登録したのに独占業務を受けられない」ということが起こり得ます。
| 登録区分 | どんな人向けか | 独占業務(1号・2号)を行えるか |
|---|---|---|
| 開業登録 | 自分の名前で事務所を構えて業務を受ける人 | ○ 行える |
| 勤務登録 | 社労士事務所や一般企業に勤務して業務を行う人 | △ あくまで勤務先の業務として行える(勤務先と無関係に外部から独占業務を個人受託することは想定されていない) |
| その他登録 | 当面は独占業務を行わず、研修・人脈づくり中心の人 | × 行えない |
注意したいのが「その他登録」です。会費は抑えられますが、その他登録のままでは社労士としての独占業務はできません。「土日に自分で独占業務の副業をしたい」なら開業登録、「社労士事務所でパート勤務しながら」なら勤務登録、というように、自分の副業スタイルに合った区分を選ぶ必要があります。最新の区分・要件は全国社会保険労務士会連合会の案内で必ず確認してください。
登録には費用がかかる
登録には一定の費用が必要です。地域によって変わりますが、目安は次のとおりです。
- 登録免許税:3万円
- 手数料:3万円
- 入会金:3万円〜8万円(入会する社労士会による)
- 年会費:別途、数万円
初年度は最低でも10万円ほど、2年目以降も毎年数万円の年会費がかかります。副業で得られる収入と、この維持費のバランスは事前に試算しておきたいところです(金額は目安であり、所属する社労士会・時点で変わります)。
なお、登録の要件・区分・費用や公務員の兼業規制といった制度は改正されることがあります。本記事の内容は2026年6月時点で全国社会保険労務士会連合会などの公式情報をもとに整理していますが、申し込み前には必ず最新の公式情報をご自身でも確認してください。
社労士の副業はいくら稼げる?|アルバイトの日当と現実的な目安
「難関資格なのだから、本業並みに稼げるのでは?」と期待する方もいるかもしれません。ここは現実的に見ておきましょう。
社労士のパート・アルバイト(行政協力など)の日当(日給)の目安は1万円〜2万円が相場です。仮に1か月に土日5日働けば、5万円〜10万円ほど。年間にすれば数十万円〜120万円ほどの上乗せになります。本業の収入を丸ごと置き換えるほどではありませんが、時給1,000円程度の一般的なアルバイトより割が良いのは間違いありません(報酬は仕事内容・地域・時点で変わります)。
仕事の探し方は、大きく分けて2種類です。
| 探し方 | 特徴 |
|---|---|
| 社労士会経由(行政協力など) | 所属する社労士会が募集するアルバイトに応募。無料相談会などの案件が定期的にあり、実務経験・人脈づくりに向く |
| 自分で探す | 社労士会を通さず、ハローワーク・協会けんぽの募集や、クラウドソーシング(クラウドワークス・ランサーズ等)を活用。気楽だが単価は下がりやすい |
実務経験を積みたい・人脈をつくりたいなら、社労士会経由の行政協力がおすすめです。これは、社労士会が窓口になって開業社労士を行政機関へ派遣する仕組みで、実務経験・人脈・報酬の三つを同時に得られます。一方、自分で探す在宅・クラウドソーシング案件は手軽ですが、時給1,000円〜1,500円程度と報酬は控えめになりがちです。社労士事務所のパート求人も、数は多くないものの選択肢になります。収入の全体像は社労士の年収・給料の実態もあわせて確認しておくとイメージしやすいですよ。
なお、ここで挙げた日当・時給・月収はあくまで一般に言われる相場感であり、公的に確定した統計値ではありません。実際の報酬は案件・地域・社労士会・時点で大きく変わるため、目安として受け止めてください。また、行政手続きの提出や顧客対応は平日日中に発生しやすく、繁忙期(年度更新・算定基礎届など)には負荷が偏ります。本業・家庭・勉強の時間を圧迫しない範囲で受注量をコントロールすることも、副業を長く続けるコツです。
土日の「週末起業」で社労士事務所を開業するのは難しい|やってはいけない働き方
アルバイトやパートを前提にすれば、社労士の資格を活かした副業はサラリーマンにとって良い選択肢です。しかし、サラリーマンが土日に「週末起業」として社労士事務所を開業し、自力で稼ぐとなると、話はまったく別になります。とりあえず事務所を開いたものの、稼げずに廃業するケースは少なくありません。
- 平日に本業をしながら自分で新規顧客を開拓するのは並大抵のことではない
- ツテのない人は、そもそも仕事の依頼を獲得すること自体が難しい
- 役所(労働基準監督署など)は土日が休みのため、窓口訪問や提出代行は平日に動く必要がある
本業の開業社労士ですら、独立後は朝から晩まで試行錯誤しています。副業の片手間でこなせるほど、開業は甘くありません。コンサル(3号業務)なら土日に相談を受けることもできますが、平日に動けない社労士事務所は、企業からのニーズが少ないのが現実です。「週末起業で開業」は不可能とは言いませんが、現実的にはスポット的なアルバイトで副業するか、思い切って会社を辞めて専業になるかを冷静に判断したほうがよいでしょう。
そして、これは社労士の副業に限りませんが、「小遣い稼ぎ感覚」でいい加減な仕事をしないこと。社労士業界は狭い世界で、評判はすぐに回ります。雑な対応をすれば、独立する前から悪い口コミが立ち、将来の独立を自ら難しくしてしまいかねません。どんなに小さな案件でも誠実に取り組む――この姿勢が、結果的にいちばんの近道です。
副業が会社にバレたくない・就業規則が心配な方へ
ここまでは「就業規則で副業が禁じられていない場合」を前提に説明してきました。とはいえ、「禁止されているけれど経験を積みたい」「上司が副業に良い顔をしないので、できれば知られたくない」という方もいるでしょう。
まず大前提として、就業規則を確認し、許可制なら正規に申請するのが基本です。禁止規定を破っての副業は、社労士業務以前に就業規則違反というリスクを抱えます。社労士を目指す人こそ、ルールを守る姿勢が信頼につながります。
そのうえで、副業収入の確定申告や住民税の扱い、勤務先の顧客・従業員情報を副業に使わないこと、マイナンバーや賃金情報など個人情報の管理を徹底することは、社労士として(あるいは社労士を目指す人として)当然に押さえておきたいコンプライアンスの基本です。無登録のまま独占業務を受けることは、繰り返しになりますが法律で禁止されているので、絶対に避けてください。
よくある質問とまとめ|社労士の副業は「条件」と「現実」を押さえてから
最後に、よくある疑問を整理しておきます。
- 会社員でも社労士の副業はできる?……就業規則で副業が認められていればできます。ただし独占業務(1号・2号)には連合会への登録が前提です。
- 公務員は社労士で副業できる?……国家公務員法・地方公務員法で原則制限されており、許可が必要です。最新の規程と所属先の手続きを必ず確認してください。
- 土日だけで開業して稼げる?……現実には難しいです。平日に動けない開業は依頼獲得・提出代行で不利。まずはアルバイト型(行政協力など)が無難です。
- 資格を取ればすぐ副業できる?……いいえ。独占業務には2年以上の実務経験または事務指定講習の修了+登録が必要です。
会社員のまま社労士の副業をすることは、就業規則の許可と登録という2つの条件を満たせば十分に可能です。アルバイト型なら年収を着実に上乗せでき、将来の独立への足がかりにもなります。一方で、土日の週末起業や小遣い稼ぎ感覚の働き方は、現実的にはおすすめできません。登録区分(開業・勤務・その他)と稼ぎの目安を理解したうえで、どんな小さな案件でも誠実に積み上げていく――それが社労士の副業で失敗しないいちばんの方法です。
まだ資格を取得していない方は、まずは合格を目指すところから。社労士の通信講座・予備校の比較や社労士の将来性、資格の全体像をまとめた社労士|資格全体ガイドとキャリア・副業もあわせて参考にしてください。
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