行政書士の資格で行えるADR業務!行政書士会のADR(裁判外紛争解決手続)センターでの研修受講が必要!

行政書士の資格で行えるADR業務

「行政書士のADRって、いったい何ができるの?」「ADRセンターの研修を受ければ、紛争の代理人になれるの?」――行政書士の新しい業務として注目されるADR(裁判外紛争解決手続)に関心を持ったあなたは、こんな疑問を抱えているのではないでしょうか。

結論からお伝えします。行政書士のADRとは、法務大臣の認証を受けた行政書士会のADRセンターで、所定の研修を修了した行政書士が「手続実施者(調停人)」として、当事者の話し合いによる紛争解決をサポートする業務です。

ここで大切なのは、ADRでの行政書士は、どちらか一方の「代理人」ではなく、中立の立場で双方の合意づくりを助ける第三者だという点です。訴訟のように勝ち負けを決めるのではなく、当事者双方が納得できる着地点を一緒に探していくのが、ADRの一番の特徴です。

この記事では、ADR業務に関心のあるあなたが「行政書士はADRで何ができて、何ができないのか」を正確に理解できるよう、ADRの仕組み・行政書士の役割・取り扱える紛争分野・研修の受け方・依頼者側のメリットまでを、現行の行政書士法と一次情報をもとに、一つずつ整理していきます。

なお、行政書士のADRと、よく混同されがちな「特定行政書士の不服申立ての代理(行政書士法1条の4第1項第2号)」は、まったく別の制度です。この違いも、本文の中ではっきりさせておきますね。

ところで、ADRのような新しい業務まで視野に入れるには、その前提として行政書士試験の合格が出発点になります。これから受験を考えている方に向けて、難関資格の通信予備校であるクレアールが、行政書士受験のノウハウ本(市販の書籍)を無料【タダ】でプレゼント中です。学習の入口として、入手しておいて損はありませんよ。

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目次

結論|行政書士のADR(裁判外紛争解決手続)でできること・できないこと

「行政書士 ADR」と検索しているあなたが一番知りたいのは、おそらく「行政書士はADRでどこまでやってくれるのか」という点ではないでしょうか。細かい話に入る前に、まずは“できること”と“できないこと”を早見表のかたちで先に整理します。

<行政書士がADRでできること>

  • 認証ADRセンターで「手続実施者(調停人)」として、中立の立場から当事者の話し合いを進行する
  • 双方の言い分を整理し、合意に向けた論点を交通整理する
  • 調停手続きの枠組みのなかで、当事者双方に対して中立の立場から手続きの説明・進行を行う
  • 合意が成立した場合に、合意書の作成をサポートする

<行政書士がADRでできないこと(注意点)>

  • 訴訟の代理(裁判の代理人になること)はできません(これは弁護士の業務です)
  • どちらか一方の当事者の「代理人」として、相手方と交渉することは原則できません(調停人はあくまで中立)
  • 認証や研修で認められた範囲を超える法律事務は行えません

報酬を得て他人の法律事務を扱うことは、原則として弁護士の業務とされています(弁護士法72条)。行政書士のADRは、この原則のなかで「認証を受けたADRセンターで、中立の調停人として関与する」という枠組みのなかで成り立っている、と理解しておくと安全です。範囲を超えた代理交渉などは、いわゆる非弁行為のリスクがあるため、「どこまでが調停人の役割か」を意識することが、依頼する側にとっても、業務を行う行政書士にとっても大切になります。

もし相手がADRに応じない・合意できないときはどうなる?

ADRは、あくまで当事者の話し合いをベースにした任意の手続きです。そのため、相手方が手続きに応じることが前提になります。「ADRに応じないとどうなるの?」と気になる方も多いと思いますが、原則として相手方に応諾の義務があるわけではなく、相手が応じなければ手続きが進まないこともあります。

また、話し合っても合意に至らなかった場合(不成立)は、そこで強制的に結論が出るわけではありません。その先は、改めての交渉・弁護士への相談・裁判所の手続き(民事調停や訴訟)といった別の選択肢を検討することになります。ADRは「万能の解決手段」ではなく、身近なトラブルを柔軟に話し合いで解決するための一つの選択肢だと捉えておくとよいでしょう。

「ADR」と「特定行政書士の不服申立て代理」は別物

ここで、混同されやすいポイントを一つ整理しておきます。行政書士には、「特定行政書士」という制度があり、所定の研修を修了すると、行政庁の処分などに対する不服申立ての代理(行政書士法1条の4第1項第2号)ができるようになります(条文番号は、令和7年の行政書士法改正後の現行のものです。最新の条文はe-Gov法令検索の行政書士法で確認できます)。

しかし、この特定行政書士の不服申立て代理と、ADR(裁判外紛争解決手続)は、まったく別の制度です。前者は「行政庁に対する不服申立ての代理」、後者は「民事上の紛争についてADRセンターで中立の調停人として関与する業務」であり、根拠も役割も異なります。本記事では、この2つを区別したうえでADR業務を解説していきます(特定行政書士については、後ほど内部リンクでも詳しく触れます)。

そもそもADR(裁判外紛争解決手続)とは?仕組みをわかりやすく

ここからは、ADRそのものの仕組みを、できるだけわかりやすく整理していきます。「ADRって言葉は聞いたことはあるけれど、中身はよく分からない」という方は、ここで土台を押さえておきましょう。

ADRとは、①Alternative(代替的)、②Dispute(紛争)、③Resolution(解決)の3つの頭文字を取った言葉で、日本語では「裁判外紛争解決手続」と呼ばれます。その名のとおり、訴訟(裁判)の手続きを取らずに、紛争を解決するための手続きのことです。

調停・あっせん・仲裁の違い

ADRと一口に言っても、進め方にはいくつかの種類があります。代表的なものを整理すると、次のようになります。

  • 調停(和解の仲介):中立の第三者が間に入り、当事者の話し合いを助けて合意(和解)を目指す手続き
  • あっせん:第三者が当事者の間を取り持ち、解決案の提示などを通じて歩み寄りを促す手続き
  • 仲裁:当事者があらかじめ第三者(仲裁人)の判断に従うと合意したうえで、その判断で解決する手続き

このうち、行政書士会が運営するADRセンターで主に行われているのは「調停(和解の仲介)」です。中立で公正な調停人が当事者双方の言い分にじっくり耳を傾け、双方が受け入れられる解決策を一緒に考えて、問題解決に必要な合意を形づくっていきます。

「認証ADR」とは?法務大臣の認証を受けた手続き

ADRのなかでも、法務大臣の認証を受けた事業者が行うものを「認証ADR」と呼びます。これは、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(いわゆるADR法)に基づく制度で、一定の基準を満たした事業者だけが認証を受けられます。

各都道府県の行政書士会のうち、この認証を受けた行政書士会が「行政書士ADRセンター」を運営しています。「自分が利用しようとしているADRが、ちゃんと認証を受けたものか確認したい」という場合は、法務省の「認証紛争解決事業者一覧」などで、認証の有無を確認することができます。相談窓口にはさまざまなものがありますが、認証ADRかどうかで手続きの位置づけが変わるため、利用前に一度確認しておくと安心です。

行政書士がADRで行える業務と「代理できる範囲」の正確な理解

ADR業務を正しく理解するには、まず行政書士の本来業務を出発点に置くと分かりやすくなります。

行政書士は、行政書士法1条の3に定められた業務として、官公署に提出する書類等の作成、許認可申請の代理、契約書類の作成、これらに関する相談などを行います。こうした書類作成・手続代理は、行政書士の独占業務を含むもので、行政書士制度の中心となる仕事です(なお、行政書士法では1条の2が「職責」1条の3が「業務」1条の4が「代理業務(不服申立ての代理など)」と整理されています。これは令和7年改正後の現行の条文番号で、すでに施行されています。古い解説では条番号がずれていることがあるため、条文を引くときはe-Gov法令検索の行政書士法で現行のものを確認すると確実です)。

※行政書士の独占業務については、こちらのページで詳しくまとめています。 行政書士の独占業務とは?資格を持つ人だけができる仕事を解説

 

そして近年、こうした本来業務に加えて、行政書士の新しい活躍の舞台として注目を集めているのがADR(裁判外紛争解決手続)です。

ADRでの行政書士は「手続実施者(調停人)」

ここがこの記事で一番伝えたいポイントです。行政書士会のADRセンターにおいて、行政書士は原則として「手続実施者(調停人)」として関与します。つまり、どちらか一方の味方(代理人)ではなく、当事者双方の間に立つ中立・公正な第三者という立場です。

「行政書士はADR調停人になれるの?」という疑問への答えは、「所定の研修を修了するなど一定の要件を満たせば、調停人(手続実施者)として活動できる」です。裁判で当事者を代理する弁護士とは役割が違い、行政書士のADRは「中立の立場で合意づくりを助ける」ところに本質があります。

非弁にならないための線引き(やってはいけないこと)

一方で、「行政書士がADRでやってはいけないこと」もはっきりさせておく必要があります。前述のとおり、報酬を得て他人の法律事務を扱うことは原則として弁護士の業務(弁護士法72条)であり、行政書士は認証や研修で認められた範囲を超える法律事務はできません

具体的には、訴訟代理はもちろん、一方当事者の代理人として相手方と交渉するといった行為は、調停人の中立性とも相容れず、範囲を超えれば非弁行為のリスクがあります。実際の運用でも、法律的に難しい論点が出てきた場面では弁護士の助言体制を整えているセンターもあります。「どこまでが調停人の役割で、どこからが弁護士の領域か」という線引きを意識することが、トラブルを避けるうえで欠かせません。

特定行政書士(不服申立て代理)との違いをもう一度整理

リードでも触れましたが、改めて整理します。特定行政書士は、所定の研修を修了することで、行政庁の処分に対する不服申立ての代理(行政書士法1条の4第1項第2号)ができる行政書士です。これは「行政に対する不服申立て」を代理する制度であり、民事上のトラブルを調停するADRとはまったく別の制度です。

「ADRの研修を受けた=不服申立ての代理ができる」わけでも、その逆でもありません。両者は研修も根拠条文も役割も異なるので、混同しないように注意しましょう。

※特定行政書士の制度については、こちらのページで詳しく解説しています。 特定行政書士とは?不服申立ての代理ができる行政書士を解説

行政書士会が開設するADRセンターと取り扱い分野(一覧)

行政書士ADRセンターは、各都道府県の行政書士会のうち、法務大臣の認証を受けた行政書士会が運営しています。そのため、取り扱える紛争分野や対象地域は、行政書士会(センター)ごとに異なります。お住まいの地域によって、行政書士に依頼できるADRの内容が変わる、という点を押さえておきましょう。

代表的な取扱分野としては、次のような身近なトラブルが挙げられます。

  • 外国人の職場環境・教育環境等に関する紛争
  • 自転車事故に関する紛争
  • 愛護動物(ペット等)に関する紛争
  • 敷金返還・原状回復など賃貸住宅に関する紛争

参考:日本行政書士会連合会 ADR機関のご案内

こうした「裁判で争うほどではないけれど、当事者だけでは解決が難しい」身近な紛争が、行政書士のADRが得意とする領域です。

以下に、行政書士会が開設する代表的なADRセンターと取り扱い分野を一覧でまとめました。なお、取扱分野・電話番号・受付時間などは変更されることがあります。実際に利用・連絡する際は、必ず各行政書士会・各ADRセンターの公式サイト、または日本行政書士会連合会のADRページで最新情報をご確認ください(下表は記事更新時点で確認した参考情報です。各センターの最新の取扱分野・連絡先は公式サイトが正となります)。

 

センター名称 取り扱い分野(例) 電話番号
行政書士会北海道ADRセンター 外国人の職場環境等に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 011-221-1221
行政書士ADRセンター宮城 自転車事故に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 022-797-9701
行政書士ADRセンター東京 外国人の職場環境等に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 03-5489-7441
行政書士ADRセンター神奈川 外国人の職場環境等に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 045-577-6322
行政書士ADRセンター埼玉 夫婦関係等に関する紛争・相続に関する紛争・自転車事故又は自動車の物損事故等に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 048-833-1132
長野県行政書士紛争解決センター 外国人の学校教育環境、労働職場環境等に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 026-224-1300
行政書士ADRセンター静岡 外国人を一方の当事者とする「身分関係に関する紛争」「職場環境等に関する紛争」「騒音やゴミ処理その他の日常生活に関する紛争」 050-3784-8210
行政書士ADRセンター大阪 外国人の職場環境等に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 06-6943-7511
行政書士ADRセンター兵庫 外国人の職場環境等に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物に関する紛争・敷金返還等に関する紛争 078-371-8823
行政書士ADRセンター福岡 外国人の労働環境・職場環境等に関する紛争・外国人の教育環境に関する紛争・自転車事故に関する紛争・愛護動物(ペットその他の動物)に関する紛争 092-641-2501

参考:日本行政書士会連合会の公式サイト https://www.gyosei.or.jp/activity/adr/

どのセンターも、「ADRの手続きを非公開で進められる」「当事者の都合に合わせて柔軟に進められる」といった点で、当事者をしっかりサポートしてくれます。自分の地域のセンターがどの分野を扱っているか、受付時間や手続きの詳細はどうかは、各センターの公式サイトで確認するのがおすすめです。

依頼者側から見たADRのメリットと裁判のデメリット・費用の見方

ここまでは「行政書士の側」から見たADRを解説してきましたが、ここでは視点を変えて、紛争を抱えて相談する「依頼者側」から見たメリットを整理します。同じトラブルでも、ADRと裁判では進め方が大きく違います。

<ADR(裁判外紛争解決手続)のメリット>

  • 手続きの方法や解決の手段を、当事者の意向に応じて柔軟に進められる
  • 訴状のように作成が大変な書類は不要で、簡単な申込書からスタートできる
  • その分野に詳しい専門家(調停人)が、話し合いによる解決をサポートしてくれる
  • 手続きや結論は原則として非公開で、当事者のプライバシーが守られやすい

 

<裁判のデメリット>

  • 解決までに長い期間がかかることがある(毎回の期日ごとに準備も必要)
  • さまざまな費用・実費が発生し、経済的な負担が大きくなりやすい
  • 手続きの進め方が複雑で、専門知識がないと分かりにくい
  • 経過や結果が原則として公開される

もちろん、問題の大きさによっては裁判が適しているケースもあります。大切なのは、「裁判所に持ち込むほどではないけれど、当事者だけでは解決が難しい」ような紛争であれば、ADRも選択肢に加えてみるという発想です。

費用の見方(相談料・手数料の考え方)

「ADRって、いくらくらいかかるの?」というのも気になるポイントですよね。ADRの費用は、一般的に相談料・申込手数料・期日手数料・成立手数料などで構成されることが多いですが、金額や費用の項目はセンターや事案によって異なります。誰がどの費用を負担するか(申込人・相手方・折半など)も手続きによって変わるため、具体的な金額は、利用を検討しているセンターの公式サイトや事前相談で必ず確認してください(ここでの説明はあくまで一般的な目安です)。

一般論として、ADRは裁判に比べて時間や費用を抑えられる可能性があるとされますが、事案の内容によって変わるため、「必ず安く早く解決する」と断定はできません。費用と手間、解決までのスピード、相手方が応じる見込みなどを総合的に見て、ADR・弁護士への相談・裁判所の手続きのどれが自分のトラブルに向いているかを考えるとよいでしょう。

個人情報・オンライン調停(ODR)の注意点

ADRは原則非公開で、当事者のプライバシーに配慮した手続きですが、調停で話した内容や提出した資料の取り扱い・記録の保存については、利用前にセンターの説明を確認しておくと安心です。近年はオンラインで調停を行う「ODR」を導入するセンターも増えています。オンライン利用の場合は、本人確認の方法・通信環境・録音録画のルールなども、あわせて確認しておきましょう。

ADRの手続きの流れ(行政書士ADRセンターの例)

実際にADRを利用すると、どのような流れで進むのでしょうか。ここでは、行政書士ADRセンター埼玉を例に、手続きの大まかな流れを紹介します。地域・センターによって細部は異なりますが、全体像をつかむ参考にしてください。

  1. 事前に、ADRセンターへ電話などで手続きの予約・相談を行う
  2. 調停の申込人が「調停申込書」、相手方が「調停依頼書」をそれぞれ提出する(公式サイトからテンプレートをダウンロードできる場合があります)
  3. 申込人への受理通知・相手方への通知が行われ、事前に手続きの説明を受ける
  4. 相手方が依頼書を提出した後に、ADR(調停手続き)が開始する
  5. 案件ごとに、ふさわしい調停人(手続実施者)が選任される
  6. 調停が成立したときは合意書が作成され、当事者の申し出で取り下げられたときは終了する

このように、ADRは「申込み → 相手方への通知 → 調停人の選任 → 話し合い → 合意書の作成または終了」という流れで進みます。訴訟に比べて、入口のハードルが低く設計されているのが特徴です。

なお、具体的な電話番号・受付時間・申込手数料・提出書類は、各センターで異なり、変更されることもあります。利用する際は、対象のADRセンターの公式サイトで最新の手続き案内を確認してください。「ADRで解決したい」という方が周囲にいたら、まずは地域の行政書士ADRセンターに相談してみることをおすすめします。

行政書士がADR業務を行うには?研修と「調停人になるまで」

ここからは、「自分も行政書士として、ADR業務に関わってみたい」という方に向けた内容です。行政書士がADRの調停人(手続実施者)として活動するには、どのようなステップが必要なのでしょうか。

まず大前提として、行政書士であること(行政書士会の会員であること)が必要です。そのうえで、行政書士ADRセンターが実施する研修を受講していきます。研修の内容はセンターによって異なりますが、大まかには次の3つで構成されることが多いです。

  • ADR概論:ADR法の概要や制度の背景、認証団体になるための要件など
  • 法律編:紛争解決手続に必要な法律知識、手続実施記録の作成などの実務
  • 手続管理編:調停人として手続きを進めるうえでの概要や注意点

調停人になるための要件は各会・日行連の規程による

調停人(手続実施者)として選任されるには、所定の研修を修了したうえで、一定の基準を満たすことが必要です。ただし、具体的な要件は各行政書士会・日本行政書士会連合会の規程によって異なります。「研修を受ければ誰でもすぐに調停人になれる」という単純なものではなく、守秘義務・利益相反への配慮・継続的な研鑽なども求められます。詳しい要件は、所属する(予定の)行政書士会やADRセンターの案内で確認してください。

「ADR資格」という独立した国家資格はない

ときどき「ADR資格とは何ですか?」という質問を見かけますが、「ADR資格」という独立した国家資格があるわけではありません。行政書士のADRの場合は、行政書士という資格を持ったうえで、ADRセンターの研修を修了し、調停人として活動するという位置づけです。なお、ここでの研修は、前述の特定行政書士(不服申立て代理)の付記のための研修とは別のものです。混同しないようにしましょう。

行政書士のキャリアの中でADR業務をどう位置づけるか

ADR業務は、行政書士のキャリアのなかでも「専門性を広げていくステップ」として位置づけられます。いきなりADRから始まるわけではなく、まずは基礎を固めてから、という順序を押さえておくとイメージしやすくなります。

一般的な流れとしては、①行政書士試験に合格 → ②登録して行政書士になる → ③本来業務(書類作成・許認可申請の代理など)で実務経験を積む → ④ADR研修や特定行政書士の付記などで業務の幅を広げる、という順序になります。

ADRが扱う分野のなかには、外国人に関する紛争のように、行政書士の他の業務とつながりやすいものもあります。たとえば、在留資格(ビザ)に関する業務に取り組んでいる方であれば、外国人の職場環境などに関するADRと接点が生まれることもあるでしょう。

※在留資格(ビザ)関連の業務については、こちらのページで詳しく解説しています。 行政書士のビザ・在留資格業務とは?仕事内容をわかりやすく解説

 

ADRは「行政書士の新しい仕事の舞台」として注目されていますが、収入や将来性は、取り組む分野・地域・本人の営業力などによって変わります。「ADRをやれば必ず稼げる」といった断定はできないため、あくまで業務の幅を広げる選択肢の一つとして、自分のキャリアプランのなかに位置づけていくのがよいでしょう。

ここで、あなた自身に一度立ち返ってほしいのです。大切なのは「ADRという制度があるから手を出す」ことではなく、「自分はどんな依頼者の、どんな困りごとを解決したいのか」という軸を先に決めることです。たとえば「外国人支援に関わりたい」なら在留資格(ビザ)業務とADRの外国人紛争分野がつながりますし、「賃貸トラブルに強くなりたい」なら敷金返還の分野が活きてきます。制度に自分を合わせるのではなく、自分のやりたい方向に制度を“使う”。この順番で考えると、研修の受け方も、内部リンク先の関連業務の学び方も、ぐっと選びやすくなります。

そして、その全ての出発点が行政書士試験の合格です。「ADRの調停人として、目の前の当事者の合意づくりを助ける自分」を具体的にイメージできたなら、それは学習を続ける強い動機になります。まずは、最初の一歩を確実に踏み出していきましょう。

前提知識|行政書士試験の制度の要点(配点・合格基準)

ADR業務は、行政書士になってからの話です。その出発点となる行政書士試験の制度の要点も、簡単に押さえておきましょう(詳しくは、後ほど紹介するロードマップ記事もあわせてご覧ください)。

  • 配点:試験は300点満点(法令等244点/46問・基礎知識56点/14問)
  • 出題形式:5肢択一が1問4点、多肢選択が1問8点、記述式が1問20点(3問で計60点)
  • 合格基準(3要件すべてを満たす):①法令等122点以上 ②基礎知識24点以上 ③総得点180点以上(1つでも基準未満だと足切りで不合格)

なお、2024年度の改正で、旧「一般知識等」は「基礎知識」へと名称が変わりました(問題数14問・56点は変わりません)。古い情報では「一般知識」と書かれていることがありますが、現在は「基礎知識」です。また、合格率は年度によって変動します。最新の数値は、行政書士試験研究センターなどの公式情報で確認するようにしてください。

行政書士試験の全体像や学習の進め方については、こちらの記事で詳しくまとめています。

行政書士になるには?試験から登録・実務までの全体ロードマップ

行政書士のADR業務とは?<まとめ>

最後に、この記事の要点を整理します。

行政書士のADR(裁判外紛争解決手続)とは、法務大臣の認証を受けた行政書士会のADRセンターで、所定の研修を修了した行政書士が「手続実施者(調停人)」として、当事者の話し合いによる紛争解決をサポートする業務でした。ポイントは、行政書士は一方の代理人ではなく、中立の調停人として関わるという点です。

また、ADRと「特定行政書士の不服申立ての代理(行政書士法1条の4第1項第2号)」は別の制度であること、範囲を超えた代理交渉などは非弁行為(弁護士法72条)のリスクがあることも、あわせて押さえておきましょう。ADRは「裁判に持ち込むほどではない身近なトラブル」を柔軟に解決する、行政書士の新しい仕事のステージです。

そして、こうした業務に関わるための出発点は、やはり行政書士試験の合格です。これから受験する方は、まず全体像をつかむところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. ADRとは行政書士にとって何ですか? A. 訴訟によらず、中立の第三者が関与して話し合いで紛争を解決する手続きです。行政書士は認証ADRセンターで、研修を修了したうえで調停人(手続実施者)として関わります。

Q. 行政書士がADRでできることは? A. 中立の調停人(手続実施者)として、当事者双方の話し合いの進行・論点整理・合意づくりのサポートができます。あくまで双方の間に立つ中立の立場であり、一方当事者の代理人として相手方と交渉したり、一方に有利な法律助言を行ったりすることはできません(その場合は非弁行為のリスクがあります)。

Q. 行政書士がやってはいけないことは何ですか? A. 訴訟代理や、一方当事者の代理人としての交渉など、認められた範囲を超える法律事務はできません(非弁行為=弁護士法72条のリスクがあります)。

Q. 行政書士はADR調停人になれるのか? A. 行政書士であることを前提に、行政書士ADRセンターの所定の研修を修了し、一定の基準を満たせば、調停人(手続実施者)として活動できます。

Q. ADRに応じないとどうなる? A. ADRは任意の話し合い手続きで、相手方が応じることが前提です。相手が応じなければ手続きは進まず、合意できない場合は再交渉・弁護士相談・裁判所の手続きなど別の選択肢を検討することになります。

Q. ADR資格とは何ですか? A. 「ADR資格」という独立した国家資格はありません。行政書士のADRは、行政書士資格を持ったうえで研修を修了し、調停人として活動するものです。

Q. 行政書士はどこまでやってくれるの? A. 認証ADRセンターで中立の調停人として、合意形成のサポートまで行います。ただし一方の代理交渉や訴訟代理は範囲外です。

Q. 紛争の解決にはどのような方法がありますか? A. 当事者同士の話し合い、ADR(調停・あっせん・仲裁など)、民事調停、訴訟などがあります。ADRは、裁判に持ち込むほどではない紛争を柔軟に解決する選択肢です。

行政書士試験の勉強を始めるなら、まずは“最短勉強法”のノウハウから。クレアールが受験ノウハウ本(市販の書籍)を無料【タダ】でプレゼント中ですので、入手しておくと学習の入口がスムーズになりますよ。

行政書士試験における「最短勉強法」について、難関資格の通信予備校のクレアールが、受験ノウハウ本(市販の書籍)を無料【タダ】でプレゼント中です。

無料【タダ】ですので、入手しないと損ですよ。

<クレアールに応募すると、行政書士受験生向けの市販の書籍「非常識合格法」がもらえる【0円】無料

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験など、情報処理技術者試験の学習法・過去問解説を中心に発信しています。著書に『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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