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行政書士の報酬 金額の相場はどのくらい?
行政書士を目指すに当たり、どのくらいの報酬をもらえるのか気になっている方は多いのではないでしょうか。
行政書士として独立する予定であれば、きちんと利益を確保して経営していくために報酬額の設定は大事です。
事務所の経営を左右するほど重要な部分ですが、行政書士の場合は「○○○の書類の作成は○○万円」と明確に決められているわけではありません。
行政書士が依頼された業務を実施した際に支払われる報酬額は、原則として各自が自由に決定できます。
業務内容などに合わせて報酬額を自由に設定して、事務所内のよく見える場所に掲示すれば大丈夫です。
しかし、あまりにも高額な料金を設定していると効率良く集客することができません。
業界内で報酬額の相場はありますので、その金額を参考にして決めるのは選択肢の一つですね。
ここでは、日本行政書士会連合会が実施した平成27年度報酬額統計調査の結果をまとめてみました。
建設業許可申請:平均118,204円
経営状況分析申請:平均32,485円
経営規模等評価申請及び総合評定値請求申請:平均56,983円
建設業変更届出:平均42,170円
建設工事紛争処理申請:平均59,960円
農地法第3条許可申請:平均50,236円
農地法第4条許可申請:平均80,114円
農地法第5条許可申請:平均103,623円
農用地除外申出:平均94,967円
開発行為許可申請:平均434,437円
河川関係許可申請:平均151,784円
宅地建物取引業者免許申請:平均107,195円
宅地建物取引士資格登録申請:平均22,709円
資力確保措置の状況についての届出:平均22,114円
建築士事務所登録申請:平均62,398円
測量業者登録申請:平均87,579円
道路位置指定申請:平均297,380円
マンション管理業者登録申請:平均73,185円
屋外広告物設置許可申請:平均56,050円
特殊車両通行許可申請:平均49,995円
特定旅客自動車運送事業認可申請:平均102,143円
自動車整備事業指定申請:平均14,500円
旅行業登録申請:平均150,435円
風俗営業許可申請:平均158,484円
古物商許可申請:平均49,713円参考:https://www.gyosei.or.jp/wp-content/uploads/2016/03/12ad4f65cba6f63c3518bf14b58fdd64.pdf
行政書士が取り扱える書類は10,000点以上に及びますので、全ての書類の報酬額をここで記載することはできません。
さらに、前述のとおり、個々の行政書士が自由に設定できるため、同じ建設業許可申請の業務でも最小値は30,000円、最大値は250,000円と差が開いているのが実情です。
行政書士の報酬 相場を業種別の考察
上記の報酬額統計調査の結果や、ネットなどで検索した実際の行政書士事務所の金額設定などを参考に、業種別に報酬額の相場を考察してみたいと思います。
建設業の許可
実際の行政書士事務所の料金を確認したところ、値段には開きがありますが、建設業許可の新規申請で10万円~、更新で8万円~、経営事項審査で8万円~が相場です。
単純に新規申請の値段だけではなく、トータルの費用で行政書士は比較される傾向にあるようです。
建設業の許可業者は40万件以上と市場規模が圧倒的に大きい点が魅力です。
さらに、新規申請だけではなく、入札や経営審査事項、5年ごとの更新など継続的な業務が発生しますので、顧問契約が取りやすい点も建設業関連のメリットといえるでしょう。
自動車関連の登録
自動車登録や車庫証明などは、行政書士の代表的な業務の1つ。特別なスキルが不要なため、新人でも手を付けやすい業務です。
ただし、報酬はかなり安め。たとえば、新規登録は3,000円~10,000円程度の料金を提示している事務所が多いようです。
そのため、専門にするなら数をこなせる仕組みづくりが必須です。
離婚の問題や相談
離婚協議書の作成の相場は5万円~10万円と開きがあります。
行政書士は弁護士と違って訴訟の手続や示談交渉はできないので、行政書士が離婚協議書を作成することができますのは、離婚に双方が合意の場合のみとなります。
また、離婚協議書は私文書のままではなく、公正証書化した方が、後々揉めずに済みます。そうしたアドバイスも行政書士として価値があるといえるでしょう。
株式会社等の設立
株式会社などの会社の設立も、行政書士の主要業務の一つ。
行政書士による会社設立手続きについては、報酬の相場は10万円程度です。
しかし、10万円という費用はあくまでも目安で、数万円の事務所があれば20万円と高いところもあります。
上記の金額の中で、以下のような業務を行うことになります。
- 「商号(会社名)」「本店(会社の住所)」「目的(事業内容)」「資本金」「決算日」などの基本事項を決定する
- 会社の基本原則となる定款を作成する(必ず記載すべき絶対的記載事項がある)
- 100万円~1,000万円を目安に資本金の払込みを行う(会社法上は1円でも大丈夫だが、対外的な信用を重視して一定の資本金を設定する)
- 最終段階の登記申請に向けて登記書類を作成する
- 資本金払込後2週間以内に法務局への会社設立登記を申請する(実際の登記は司法書士に依頼する)
- 会社設立後は印鑑証明書の交付や税務署への届出/申告を行う
開発許可
開発許可とは、建設物および特定工作物の建設を行う際に取得する必要がある許可のことです。
都市計画法が根拠法律であり、都道府県知事からの許可のない開発行為は違法になります。
行政書士の開発許可申請代行の報酬の相場は、30万円~50万円程度となっています。
開発許可申請は「開発行為許可申請書」や「設計説明書」を始め、数多くの書類が必要です。そのため、行政書士の他の業務を行う場合と比べ、開発許可申請の代行は、料金的に高めの設定となっています。
農地転用
宅建を受験したことのある方にはお馴染みの農地転用。農地を農地以外の目的で利用する際に必要な転用手続きです。
実際の事務所の提示金額を確認すると、40,000円~90,000円程度と大きな開きがあります。
内容証明の作成
内容証明は、自分の意思を伝えた事実を証明する場合と被害事実を主張して証拠として残したい場合に使うのが一般的ですね。
商品の購入の契約を解除できるクーリングオフ制度や、訴訟の際の証拠として内容証明が取り扱われます。
行政書士が行う内容証明郵便作成費用は、2万円~4万円が相場になっています。
行政書士事務所の中には、内容証明の作成で「着手金3万円」「成功報酬が慰謝料の15%」「談書作成費用が4万円」と高額な報酬を設定しているところがあります。
遺産の相続、遺産分割など
遺産相続では普段の生活では行わない手続きが必要です。
相続人や相続財産を調べて遺産分割協議をしたり、遺言の内容の執行を代行したり、税金の申告や支払いをしたりとやるべきことがたくさんあります。
ただし、行政書士ができることは限られており、弁護士や司法書士の独占業務に着手することがないよう、気を付けなければなりません。
遺産相続において、行政書士が代行(代理)できる業務と手数料の相場は、以下のとおりです。
- 遺産分割協議書作成:30,000円
- 遺産分割協議の立会:12,000円
- 預貯金の名義変更又は解約:30,000円
- 車の名義変更:25,000円
- その他有価証券及び各種債権請求:30,000円
- 相続手続基本料金:50,000円(相続人5名以上で1人につき5,000円)
福祉の関連
産廃(産業廃棄物の運搬等)の関連
産業廃棄物を運ぶに当たり、都道府県知事の許可を取らないといけません。
トラックで通過するだけなら許可は不要ですが、産廃を積む県と降ろす県は都道府県の許可が必要。
廃棄物を取り巻く状況は年々厳しくなっていますので、産廃の運搬業の方の多くは、許認可申請のプロの行政書士へ依頼することが増えています。
産廃に関する業務の報酬は、70,000円~200,000円程度と幅があるようです。
外国人関連(ビザ、入管、帰化)
行政書士の報酬 金額の決め方で押さえておきたいポイント
行政書士の報酬額には明確な決まりがありませんので、料金設定をどう決めるのかは難しい問題です。
上記では業務ごとの相場や平均を記載しましたが、正解不正解があるわけではありません。
そこで、以下では行政書士の報酬額の決め方で事前に押さえておきたいポイントについて説明していきます。
最初は安めの報酬額を設定する
行政書士によって、「最初は相場よりも高くすべし」「最初は安めの報酬額が良い」と意見が違います。
どちらが正解だと決めつけることはできないものの、次の理由で最初は安めの報酬額を設定すべきですね。
・もらえる報酬額が少なくても仕事を受けるのを優先した方が良い
・仕事の数をこなして経験を積み重ねるのが大事
・数多くの依頼を受けると自分の労働時間と報酬の兼ね合いが見えてくる
ただ闇雲に安くして依頼をバンバン受ければ良いわけではなく、行政書士としての勉強を兼ねて仕事をこなすのが第一だと考えておきましょう。
案件によって見積もりを出す
行政書士の報酬額は一律で定めるのではなく、案件によって見積もりを出して依頼人に提出すべきです。
業務の種類で一定にするのは報酬額の決め方の一つですが、仕事内容によって容易に終わるものと手間がかかるものがあります。
手間や時間がかかる仕事ばかりだと得られる利益が少なくなりますので、次のように行政書士の報酬額を決めましょう。
- 顧客から依頼内容をヒアリングしてヒアリングシートに記載する
- ヒアリング内容や業務ごとにフロー表を作成する
- どのくらいの手間や時間コストがかかる仕事なのか算出する
- その上で十分に利益が取れる適正な報酬額を決める
しかし、現在ではインターネットで調べてホームページを参照し、行政書士事務所に依頼する方が増えています。
ホームページに料金が記載されていないと怪しいとお客様は考えますので、「建設業許可申請・・・〇〇〇円~(案件により料金は異なります)」といった表記をすべきです。
案件別で最低額を記載し、料金の詳細は見積もりで算出する点をしっかりと伝えてください。
ある程度の段階を経て報酬額を上げる
行政書士の仕事に慣れてきて同種の許認可をルーティン化できるようになってきた後は、時間対効果や費用対効果を考えて報酬額を上げることも考えましょう。
いつまでも報酬額を安く設定しすぎていると、業務過多でいずれは回らなくなります。
安い料金のままで顧客の質もそれなりになるのは行政書士にも言えることですので、ある程度の段階になったら報酬額を上げてもOKです。
「報酬額を上げると依頼が減るのでは?」と考える行政書士はいますが、同じ料金設定で経営を続ける方法とは違って次のメリットがあります。
- 安い価格の時と高い価格の時で問い合わせ数を比べて、マーケティングの感覚を身につけられる
- 問い合わせ数が減ると、今度は一人ひとりの顧客に対して手厚いサポートやサービスを提供できるようになる
もちろん、突拍子もなく高い報酬額を設定すると仕事として成立しませんので、顧客に対してベネフィットを提供しつつも自分の労働時間を加味して納得できる金額を見つける努力をしましょう。
まとめ
行政書士の仕事の報酬額がどのくらいの相場なのか、どのように決めれば良いのかおわかり頂けましたか?
報酬額は行政書士事務所の経営で欠かせない部分ですので、軽視していると利益を出すことができません。
行政書士の受ける報酬額は依頼内容で違いますし、各々の事務所で自由に決められるからこそ、慎重に決める必要があります。
業務ごとの報酬額の平均は日本行政書士会連合会がアンケート形式で公表していますので、迷っている行政書士は参考にしてみてください。