税理士事務所でAIを使うなら、どこから始めるか
税理士事務所でAIを使うなら、最初の一手は資料回収と不足確認です。次が証憑・会計データの例外抽出、その次が面談・顧客対応の準備になります。
この順番になるのには理由があります。
税理士事務所の仕事は、月次・決算・申告という暦で回ります。毎月ほぼ同じ処理が繰り返され、繁忙期がはっきりしている。だからこそ、毎月繰り返し発生し、税務判断を伴わない範囲の作業から始めるのが、無理がなく効果も見えやすい入口になります。ただし「税務判断を伴わない」かどうかは、作業の名前ではなく行為の単位で決まります(節「法令・規制・情報管理」)。
一方、税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士法第2条が税理士の業務として定めているものです。ここは「AIに任せられるか」を議論する前に、誰が責任を持つのかが法令で決まっている領域として残ります。
この記事では、事務所の仕事を流れに沿って分解し、どこにAIを入れ、どこに人の判断を残すかを整理します。「AIで税理士の仕事がなくなるか」ではなく、あなたの事務所で明日から何をするかを書きます。
税理士事務所の仕事は、どう流れているか
顧問先が決まってから申告までの流れを、大きく7つに分けて見てみます。
1. 契約・初期設定 問い合わせ、面談、業務範囲と料金の取り決め、顧客台帳と会計・税務情報の登録。
2. 毎月の資料回収 請求書、領収書、通帳などを顧客から受け取ります。何が届いていて、何がまだかを把握する工程です。
3. 会計データ化と仕訳 証憑を分類してデータにし、銀行やカードのデータを取り込み、仕訳の候補を作ります。
4. 照合と例外確認 帳簿と証憑を突き合わせ、いつもと違う取引を拾い、不明な取引は顧客に照会します。
5. 月次締めと報告・面談 試算表を締め、前年・予算と比べ、経営報告の資料を作り、顧客と面談します。
6. 決算・申告 決算前の検討、決算整理、税務論点の抽出、申告書の作成とレビュー、電子申告。
7. 通年で動くもの 税制改正の情報収集と顧問先への影響分析、所内の進捗・レビュー・期限管理。
この流れを眺めると、前半(2〜4)は情報を集めて整える作業、後半(5〜6)は判断と説明の作業という性格の違いが見えます。
AIを入れる順番も、この違いに沿って決まります。
もうひとつ、この業種に特有の事情があります。仕事の量が暦で決まることです。月次は毎月、決算は顧問先の決算月に、確定申告は年に一度、同じ時期に集中します。
繁忙期に人を増やして閑散期に減らす、という調整は現実には難しい。だとすれば、繁忙期に発生する作業そのものを減らすか、前倒しできる部分を平準化するしかありません。
AIを入れる価値を考えるとき、「1件あたり何分減るか」だけでなく、「その削減が、いちばん忙しい時期のどこに効くか」を見ておくと、優先順位が付けやすくなります。
AI導入の優先Top3
Top 1:資料回収と不足確認
何をするか。 顧客ごとに「今月必要な資料」を判定し、届いたものを「受領済み」「未受領」「内容が読み取れない」「再提出が必要」に分類します。そのうえで、まだ揃っていない顧客だけを担当者に示し、催促の文案まで用意します。
なぜ最初か。 3つの理由があります。
第一に、税務判断に一切触れません。資料が来たか、何が足りないか、誰に確認するか——ここに税務判断は入りません。誤りに気づいた時点でやり直せる範囲の作業です。ただし、顧客資料の誤送信や情報の持ち出しは、やり直しがききません。扱う情報そのものは、最初から機密です。
第二に、毎月必ず発生します。頻度が高い作業ほど、小さな改善の累積が大きくなります。
第三に、効果が時間で測れます。「なんとなく楽になった」ではなく、数字で確認できます。
どう始めるか。 特別な準備は要りません。まず、顧客ごとの必要資料リストを書き出すことから始めます。多くの場合、それは担当者の頭の中にあります。頭の中にあるものを外に出すのが最初の一歩です。
何を測るか。
- 資料回収にかけた時間
- 催促の回数
- 資料が揃ってから月次を締めるまでの日数
- 担当者1人あたりの処理社数
注意すること。 顧客から預かった資料そのものをAIに読ませる場合は、その前に使うAIサービスの契約と設定を確認してください。この点は後半の「法令・情報管理」で詳しく書きます。
Top 2:照合と例外抽出
何をするか。 全取引をAIに判断させるのではありません。人が確認すべきものをAIに探させます。
具体的には、こうした取引を拾い上げます。
- 金額が大きい
- 初めて出てきた取引先
- 過去と違う勘定科目が使われている
- 摘要が足りない
- 重複している可能性がある
- 証憑が見当たらない
- 消費税の区分に確認が要る
- 前月・前年から急に変わっている
なぜ2番目か。 Top 1で情報の入口が整ってからのほうが効くからです。資料が揃っていない状態で例外を探しても、「そもそも資料が来ていない」という結果ばかりが並びます。
考え方の要点。 AIの価値は、仕訳を全部決めることより、1,000件から人が見るべき10件を探すことにあります。
これは発想の転換を伴います。正常なものを何度も人が確認するのではなく、異常・不足・判断が必要なものだけを人に上げる。同じ「確認」でも、意味がまったく変わります。
何を測るか。
- 人が確認した件数
- レビューにかけた時間
- 修正した仕訳の件数
注意すること。 抽出の条件は、最初から完璧にはなりません。「拾いすぎ」から始めて、徐々に絞るほうが安全です。見落としより手間のほうが、あとから取り戻せます。
そして、例外抽出を入れた後も、確認の水準は段階を踏みます。
- 初期は全件確認——抽出の条件が想定どおり効いているかを見る
- 安定したら抜取確認へ——抽出されなかったものからも一定数を抜き取って確認する
- 見逃し率を測る——抜取で見つかった「拾えていなかった誤り」の割合を記録する
この3段階を踏まないと、「抽出されなかった=正しい」という前提が、検証されないまま固定されます。
確認の水準は一律にしません。税目、申告の種別、顧客ごとのリスク(初年度の関与、修正申告の履歴、取引の複雑さなど)によって、全件確認を続ける範囲と、抜取でよい範囲を分けます。
Top 3:面談と顧客対応の準備
何をするか。 面談の前に、その顧客に関する過去のやり取り・面談記録・会計や税務の情報・未完了のタスクから、「この会社について今日確認すべきこと」を用意します。
面談の後は、記録を「議事録」「宿題」「顧客側のタスク」「事務所側のタスク」「次回の確認事項」に整理します。
なぜ3番目か。 この工程は顧客情報を最も広く扱うからです。安全に情報を扱える環境が整ってから着手するほうが、順序として自然です。
何を測るか。
- 面談準備にかけた時間
- 議事録作成にかけた時間
- 宿題の未完了率
注意すること。 面談で話す内容そのものを、AIが決めるわけではありません。AIが用意するのは材料であり、何を伝えるかは税理士が選びます。
AIに任せやすい仕事
その前に、「AI」をひとくくりにしないでください。この記事で「AI」と書いているものは、性質の違う3つを含みます。
| 種類 | 何をするか | 事務所での例 |
|---|---|---|
| 読み取り(OCR) | 紙やPDFの文字を読む | 請求書・領収書・通帳の読み取り |
| ルールによる処理 | 決められた条件で照合・計算する。AIでなくても実現できます | 期限の計算、完全一致の突合、金額の照合、重複の検出 |
| 生成AI | 曖昧な文章を整理し、候補や説明文を作る | 摘要の意味の整理、不足資料の連絡文の草案、面談記録からの論点抽出 |
Top 1の資料回収は読み取りとルールが主役で、Top 2の例外抽出はルールが中心です。生成AIが担うのは、摘要の整理や、なぜ確認が必要かの説明といった部分です。
どれを使っているかを分けておくと、精度の議論も、情報の投入条件の議論も具体的になります。「AIが間違えた」で終わらず、読み取りの精度なのか、条件の設計なのか、生成の癖なのかを切り分けられます。
税理士事務所の仕事のうち、AIが引き受けやすいものには共通の性質があります。
| 性質 | 事務所での具体例 |
|---|---|
| 形を整える | 紙・PDF・画像で届いた証憑を分類し、データにする |
| 照らし合わせる | 帳簿と証憑を突き合わせる |
| 違いを見つける | 前月・前年と比べて変わっている取引を拾う |
| 足りないものを探す | 今月まだ届いていない資料を特定する |
| 下書きを作る | 経営報告資料、催促の連絡、面談の議事録の第一版 |
| 探し出す | 税制改正の情報を集める、過去の相談内容を見つける |
| 進み具合を追う | 顧問先ごとの進捗、レビュー待ち、期限の管理 |
いずれも、判断そのものではなく、判断の前段にある作業です。
AI導入がうまくいかないとき、この前段を飛ばして「判断そのもの」を任せようとしていることが少なくありません。
最後の「進み具合を追う」は見落とされがちですが、所内の品質管理に直結します。誰の手元で何が止まっているかが見えていれば、期限直前の駆け込みは減ります。これも税務判断を含まない領域です。
AIの支援が向く仕事——人の確認を挟むもの
前の節と似ていますが、性格が違う仕事があります。AIが案を出し、人が確認してから使う領域です。
- 仕訳の候補を作る
- 月次を締める、試算表をレビューする
- 決算前の検討、決算整理
- 税務論点の候補を挙げる
- 申告書の作成を支援する、申告内容をレビューする
- 税務調査の準備として資料を集め、整理する
- 税制改正が顧問先ごとにどう影響するかを分析する
これらは、AIの出力をそのまま使うわけにはいきません。必ず人が確認してから業務に使います。
確認を挟むことは、手間ではなく品質の設計です。どこで誰が確認するかを決めておけば、確認していない出力が業務に流れ込むことを防げます。
人に残す仕事・判断
ここが、この記事で最も重要な部分です。
線を引くときの基準は、ひとつです。
「AIが答えを出せるか」ではなく、「誰がその答えに責任を持つのか」。
法令が税理士に限定しているもの
税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士法第2条が税理士の業務として定めています。国税庁は「税務書類の作成」を、申告書等を自己の判断に基づいて作成すること、「税務相談」を租税の課税標準等の計算に関する事項について具体的な質問に答弁し、指示し又は意見を表明することと整理しています。
つまりこれらは、AIに任せられるかどうかを議論する前に、誰が行うかが決まっている領域です。
ここで注意したいのは、「税に関することなら何でも税理士以外は触れられない」わけではないことです。定義には「租税の課税標準等の計算に関する事項について」という限定があります。
- 一般的な制度情報の収集・整理——税制改正の内容を調べる、過去の相談内容を検索する、資料を要約する
- 個別具体的な事実関係にもとづく税務判断・税務相談——この会社のこの取引をどう扱うか
この2つは性質が違います。AIに任せられるのは前者であり、後者は税理士の業務として残ります。この記事で「AIに任せやすい」としている情報収集や検索は、前者にあたります。
誰の責任かを分けて考える
「AIに任せてよいか」を考える前に、その行為が誰の責任かを分けます。
- 法令上の義務者——申告の義務は顧客(納税者)にあります
- 税理士でなければ行えない行為——税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法第2条)
- 事務所内で確認・承認する者——担当者、レビュー担当、所長
- 顧客として承認する者——申告内容の最終的な了解
この4つは重なりません。AIが関われるのは、いずれの承認でもない準備の工程です。
仕事ごとの線引き
| 仕事 | AIが担うところ | 人が担うところ |
|---|---|---|
| 証憑の読み取り | 実行する | 例外を確認する |
| 仕訳 | 候補を出す | 重要なもの・例外を判断する |
| 法令調査 | 関連資料を探す | 適用するかを判断する |
| 税務論点 | 候補を挙げる | 税務判断を下す |
| 申告書 | 作成支援・照合 | 最終確認 |
| 税務相談 | 情報整理・回答案 | 税理士が回答する |
| 節税・選択肢 | 試算する | リスクを踏まえて提案する |
| 税務調査 | 資料検索・整理 | 主張・説明・対応 |
| 顧客への説明 | 説明資料の案 | 文脈と責任を伴う説明 |
| 電子申告 | 技術的な処理の支援 | 権限と最終実行 |
精度が上がるほど、確認は形骸化しやすい
実務で難しいのは、AIの精度が高いときほど、確認が甘くなることです。
仮に9割が正しいとしても、100件を見れば10件の誤りが混じります。そして正しい出力を見続けた人間は、注意力を保てません。
だからこそ、「人が全部を見る」のではなく「人が見るべきものを絞る」設計が要ります。Top 2で書いた例外抽出は、効率化の話であると同時に、品質を保つための設計でもあります。
目指す姿
税理士事務所のあるべき姿は、「クラウド会計を導入している状態」ではありません。
構造として言えば、こうなります。
一度デジタル化した取引データを、原則として再入力しない。
国税庁は、取引から会計・税務までを一貫してデジタル処理し、人手による入力を介さない「デジタルシームレス」を推進しています。クラウド会計への銀行データ・証憑の取り込みや、デジタルインボイスによる自動処理も、この方向にあります。
事務所側に引き寄せると、次の移行になります。
資料を集める → 人が入力する → 人が全部確認する
から、
データを直接受ける → システムが処理する → AIが例外を絞る → 人が重要事項を判断する
へ。
ツールを入れることが目的ではなく、この流れを作ることが目的です。
Before / After
Before
資料回収 → 人が入力 → 人が全件確認 → 月次・決算・申告 → 顧客説明
After
データを直接受ける → システムが定型処理 → AIが不足・異常・論点を抽出 → 人が重要事項を判断 → 顧客説明
Beforeが悪いわけではありません。そうなっているとすれば、理由があります——顧客が紙で持ってくる、システムを変える余力がない、担当者が慣れている。
変えるとしたら、全部を一度にではなく、Top 1の1業務からです。
法令・規制・情報管理
税理士事務所のAI導入は、単なるITツールの導入ではありません。情報管理の設計そのものとして扱う必要があります。
税理士法と事務所の管理体制
税理士法第41条の2は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならないと定めています(見出しは「使用人等に対する監督義務」)。
また、日本税理士会連合会は「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」を公開しています。
あわせて、税理士法第38条は、税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないと定めています(税理士でなくなった後も同様です)。
この義務は、AIを使ったからといって外れません。外部のAIサービスへ顧客の資料を投入することは、事務所の外へ情報を出す行為です。個人情報保護法の観点だけでなく、税理士法上の守秘義務の観点からも、投入してよいかを判断してください。
AIの利用も、この枠組みの中に置くのが適切です。
職員が個々に好きなAIを使うのではなく、事務所として、使ってよいAI・入力してよい情報・レビューの方法・利用の記録・権限を定める。
生成AIへ顧客情報を入力するとき
個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が生成AIサービスへ個人情報を含むプロンプトを入力する際、利用目的の範囲内であることを十分に確認するよう求めています。
また、本人の同意なく個人データを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には、個人情報保護法違反となる可能性があるため、サービス提供者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう注意喚起しています。
したがって、投入の前に少なくとも次を確認してください。
- 必要最小限の情報だけを投入する——顧客名や取引先名を伏せて処理できないかを先に検討する
- AI事業者が入力データを学習に利用するか
- 保存期間と削除の方法
- 契約上の機密保持・データの取扱条件——利用規約と、顧問契約上の取り決めの両方
- アクセス権限と操作ログ——誰が投入でき、誰が見られるか
- 再委託・国外保管など、事務所の規程上確認が必要な事項
顧客の帳簿・証憑などの機密情報は、事務所が利用を承認したアカウント・サービスに限定します。
この確認を済ませる前に、顧客の資料をAIへ投入しないでください。
マイナンバー
特定個人情報は、通常の顧客情報以上に慎重な管理が求められます。
初期の設計では、生成AIでの処理の対象外から始めるのが安全側の考え方だと整理しています。実際に扱えるかどうかは、使用するAIサービス・契約・安全管理措置・事務所の規程を確認して判断することになります。
改正法が公布されています(施行はこれから)
個人情報保護法は、2026年7月17日に改正法が公布されました。施行は一部を除き、公布の日から起算して2年を超えない範囲内で政令が定める日とされており、現時点では施行日が確定していません。
改正には、統計情報等の作成(AI開発等を含む)にのみ利用される場合に本人同意を不要とする規定が含まれます。ただしこれは事業者間でデータを提供・取得する場面の話であり、事務所が自らの業務のために生成AIを使う場面とは別の論点です。具体的な範囲は、今後の政令・委員会規則・ガイドラインで定まる予定です。
施行前の改正を、現時点の義務として扱わないでください。 上に書いた確認事項は、引き続き有効な実務指針です。
この節の法令の記述について
※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自事務所の具体的な条件を確認してください。
制度の状態を混同しない
現行の制度、公布済みで未施行のもの、業界の慣行、そして推測。これらは分けて考えてください。
この記事も、公開時点で確認できた情報にもとづいています。制度は変わります。判断の前には、必ず最新の情報をご確認ください。
事務所としてのAI利用ルールをどう作るかは、生成AIの社内ルールにまとめています。
最初の30日プラン
1週目:測る
対象を1業務に絞ります。資料回収・不足確認、レビュー、面談準備のどれかです。所要時間、件数、再確認の回数を、1〜2週間の簡易な記録で取ります。
ここを飛ばすと、後で効果を語れなくなります。
2週目:整える
資料・会計データ・顧客とのやり取りについて、どれが正本かと、受け渡しのルールを確認します。
3週目:試す
リスクの低いところから試します。資料回収、不足の抽出、照合と例外抽出、面談準備。やり直しのきく作業から選びます。ただし、顧客情報の取扱いは最初から後述の条件を満たしてください。
4週目:比べる
1週目に測った数字と比べます。時間、確認件数、差し戻しの回数。ここで次の対象業務を決めます。
30日で事務所全体が変わることはありません。変わるのは、AIをどう使えばよいかの判断基準が、事務所の中にできることです。
AI活用の成熟度
あなたの事務所がいまどの段階にあるかを確かめてみてください。
Lv1 人に依存している 紙、メール、Excel、担当者の頭に情報が分散している。
Lv2 台帳はある 会計ソフトや顧客管理はあるが、資料・メール・進捗が分断されている。
Lv3 一元化されている 顧客、資料、会計データ、進捗、面談記録の正本が決まっている。
Lv4 AIが支援している AIが資料の分類、不足の検知、照合、例外抽出、検索、下書きを担っている。
Lv5 仕組みになっている 正常な処理はシステムで流れ、例外はAIが絞り、判断は税理士が行う構造になっている。
ここで大事なのは、Lv5を「AIが自動で申告する状態」と定義しないことです。
税理士事務所にとってのLv5は、
「税理士が全部を見る」から「税理士が見るべきものだけを見る」への転換
です。
よくある質問
Q. AIに申告書を作らせてもよいのでしょうか。
税務書類の作成は、税理士法第2条が定める税理士の業務です。AIが担えるのは、データの照合や作成の支援、チェックリストとの突き合わせといった前段の作業までです。内容の確認と責任は税理士にあります。
Q. 顧客の資料を生成AIに入れてもよいですか。
使うサービスの契約と設定によります。上の「法令・規制・情報管理」に挙げた7点を確認してください。確認が済むまでは入れないのが原則です。マイナンバーを含む特定個人情報は、対象外から始めることをお勧めします。
Q. 職員が個人的にChatGPTを使っているようです。
禁止するか放置するかの二択にしないほうがよいと考えます。事務所として、使ってよいAI・入力してよい情報・レビューの方法・記録・権限を決めることが先です。ルールがないまま個々に使われている状態では、事務所として把握も監督もできないためです。
Q. どのくらい時間が減りますか。
現時点で、確かな数字はお示しできません。 事務所ごとに資料の受け取り方も、担当者の分担も、確認の段階数も違うためです。だからこそ1週目に測ることをお勧めしています。自事務所の数字が、いちばん確かな根拠になります。
Q. AIに税制改正を調べさせるのは、税務相談にあたりませんか。
税理士法上の「税務相談」は、租税の課税標準等の計算に関する事項について、具体的な質問に答弁・指示・意見表明することと定義されています。一般的な制度情報を集めて整理する作業は、この定義には当たりません。AIに情報収集を任せられるのはこの範囲です。
一方、集めた情報を「この顧問先のこの取引にどう適用するか」と判断する段階からは、税理士の業務になります。
Q. クラウド会計を入れていれば十分ではないですか。
入力を自動化することと、人が見るべきものを絞ることは別の設計です。自動仕訳が動いていても、その結果を全件人が確認しているなら、確認の負荷は残ったままです。Top 2はそこに効きます。
近い構造の業種
社労士事務所のAI活用 同じ顧問先を担当することの多い隣の士業です。社労士事務所は入退社などの出来事が起点で動くため、仕事の回り方は税理士事務所と違いますが、「不足を見つける」「例外を人に上げる」という設計は共通しています。
保険代理店のAI活用 契約更新や満期という暦で動く仕事という点で、税理士事務所と同じ構造を持ちます。期限の管理と、更新のたびに繰り返す準備作業をどう設計するかは、業種が違っても参考になります。
シリーズの一覧は 業種別AI活用ベストプラクティス からご覧いただけます。
この記事を自社に当てはめたい方へ
同じ税理士事務所でも、資料の受け取り方や情報の整理状況によって、最初の一手は変わります。
顧客のほとんどが会計データを直接連携できる事務所と、紙の領収書が段ボールで届く事務所では、Top 1の中身が違ってきます。
まず、自事務所の現在地を確かめる
AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、いまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。
自事務所への当てはめを一緒に進めたい場合は、AI顧問サービスでご案内しています。初回は30分の無料リモート面談を承っています。
具体的なご相談はお問い合わせからどうぞ。
なお、AI活用の全体像——市場分析、価格や商品設計、発信、採用、社内ルールまでを経営の機能ごとに整理したものは、社長の経営OSをAI化する戦略のすべてにまとめています。
最終更新日: 2026年8月25日/内容確認日: 2026年8月22日
