倉庫・3PLのAI活用|荷主別の例外作業を採算に戻す

荷主ごとに違う例外作業が標準作業と分かれて数えられる倉庫・3PLのAI活用イメージ
目次

倉庫・3PLでAIを使うなら、どこから始めるか

営業倉庫や3PLの会社でAIを使うなら、最初の一手は荷主ごとの例外手順を検索できるようにし、その作業実績を記録することです。次が誤出荷・在庫差異・滞留の例外を抽出すること、その次が記録した例外工数を、料金と契約更新へ戻すことになります。

この記事が想定しているのは、寄託を受けて他人の物品を保管する営業倉庫の事業者と、その保管を含めて荷主の物流業務を包括的に受託する3PL事業者です。両者は重なりますが、同じではありません。倉庫業の登録が要るのは、寄託を受けて物品を保管する事業であり、3PLはそれを含みうる受託の形態を指します。自家用倉庫だけを持つ場合や、輸送だけを受託する場合は、法令上の位置づけが変わるため範囲に入れていません。

この順番になるのには理由があります。

倉庫・3PLの仕事は、荷主ごとに違うルールを、同じ現場で並行して回すという構造を持っています。A社は納品書を2枚入れる、B社は指定の緩衝材を使う、C社は特定の得意先だけ検品を二重にする——こうした「その荷主だけのルール」が積み重なります。

この例外こそが、この業種の付加価値であり、同時に採算を崩す原因でもあります。

付加価値であるのは、荷主から見れば、自社の細かい要求に応えてくれるから委託しているからです。一方で採算を崩すのは、例外が記録されないからです。現場では断りにくく、その場で工数を測れず、契約書にも書かれていない。結果として、作業だけが増えて、料金は変わりません。

だから、まず例外を記録できるようにすることが最初の一手になります。記録がなければ、料金交渉も契約更新も印象論にしかなりません。

一方で、危険物などの受入可否、在庫差異の責任区分、補償を伴う回答、法令上の該当性の最終確認は、AIに渡せない領域として残ります。

倉庫・3PLの仕事は、どう流れているか

新規荷主の受託から契約更新までを、7つの段階で見てみます。

段階 主なこと
1. 受託まで SKU一覧・物量実績・出荷波動・SLA・作業要件を構造化する。ここで標準作業と荷主固有の作業を分ける。 物流設計と見積を作り、SLA・料金・責任分界を確定する
2. マスターを作る 荷主ID、SKU、ロケーションのルール、料金マスター、作業コードを設定し、標準作業と荷主固有ルールを紐づける
3. 入れる 入荷予約とASNを照合し、バースを割り当てる。荷受・検品・入庫で数量・破損・期限の差異を記録し、棚入れして在庫を更新する
4. 出す 受注データを取り込み、荷主ごとの出荷ルールで引き当てる。ピッキング・検品・梱包を行い、荷主固有の梱包・同梱・流通加工を記録して運送へ引き渡す
5. 戻る・数える 返品を元の出荷と紐づけ、状態と理由を分類する。棚卸で理論在庫と実棚を照合し、差異が出ればログを遡る
6. 荷主へ返す 問い合わせに答え、SLA・KPIを集計して報告する。料金マスターと作業実績を照合して請求し、未請求の例外作業を抽出する
7. 次の契約へ 例外作業の上位を洗い出し、標準化できるものを選び、料金・SLA・契約の更新を決める

この流れの特徴は、イベントが大量に発生することです。入荷、出荷、返品、問い合わせが1日に数百、数千の単位で起こります。その中から例外だけを拾い上げる。 これがこの業種でのAIの役割です。

AI導入の優先Top3

Top 1:荷主ごとの例外手順を検索できるようにし、作業実績を記録する

何をするか。 まず、標準作業と荷主固有の例外作業を、作業コードとして分けます。 そのうえで、

  • 作業者が「この荷主のこの作業はどうするか」をその場で検索できるようにする
  • 実施した例外作業を、作業コードと時間と数量で記録する

どこがAIの仕事か。 作業実績そのものを取るのは、AIではありません。WMS、ハンディターミナル、バーコード、重量・寸法を測る機器、そして人の入力が実績を取ります。AIが担うのは、その手前と周辺です——荷主ごとの手順書・契約・過去の指示から該当箇所を探し出すこと、自由に書かれた作業指示を標準コードと例外コードの候補に分類すること。分類はあくまで候補であり、作業コードを確定するのは人か、社内で決めた対応ルールです。

なぜ最初か。 第一に、教育と品質の問題を直接解くからです。荷主ごとのルールが手順書・口頭・掲示に散らばっていると、新人が独り立ちするまでの時間が延び、ベテランへの依存が続きます。第二に、記録がすべての土台だからです。Top 3の料金交渉も契約更新も、記録がなければ始まりません。第三に、AIが得意な形だからです。分散した文書から該当箇所を探し、作業をコードに分類する——判断ではなく、検索と分類です。

どう始めるか。 荷主を1社選び、その荷主だけのルールをすべて書き出してみてください。 手順書、掲示、口伝え。書き出すと、契約書に書かれていない作業がいくつあるかが見えます。

何を測るか。

  • 荷主固有ルールの検索にかかる時間
  • 例外作業の記録件数(記録できるようになった件数)
  • 新人が独り立ちするまでの期間

注意すること。 記録を始めると、現場から「作業が増える」と言われます。記録そのものを軽くする設計が要ります。紙に書かせる運用にすると、記録は続きません。

Top 2:誤出荷・在庫差異・滞留の例外を抽出する

何をするか。 大量のイベントの中から、次のようなものを自動で拾い上げます。

  • 出荷指示と現品の不一致(誤出荷につながるもの)
  • 理論在庫と実棚の差異
  • 期限が近い在庫、動いていない滞留在庫
  • 締時刻に間に合わない可能性のある作業
  • 入荷時の数量・破損・期限の差異

どこがAIの仕事か。 抽出の主役は、ここでもWMSとあらかじめ決めた条件による照合です。出荷指示と現品の不一致も、理論在庫と実棚の差異も、一致・不一致を機械的に比べれば出ます。AIが効くのはその次——在庫差異が入荷・移動・ピッキングのどのイベントで発生したかをログから遡り、原因の候補を挙げること、自由記述で残された作業メモや問い合わせの経緯を整理することです。

AIが挙げたものは「原因」ではなく「候補」です。 候補のまま在庫を調整すると、あとから根拠をたどれません。差異の状態を分けて持ってください。

状態 意味
差異検知済み 理論在庫と実棚が合わないことが分かった
原因候補あり AIまたは人が、発生イベントの候補を挙げた
原因特定済み ログ・現品・記録で発生イベントを確認した
責任区分確定 自社・荷主・システムのどこに帰属するかを人が判断した
在庫調整承認済み 責任者が調整を承認した

「未確認」と「確認して問題なし」は、別の状態です。 同じ空欄のままにすると、調べていないものが確認済みに紛れます。

なぜ2番目か。 Top 1で作業が記録されると、遡れる材料が揃うからです。記録がなければ、差異の原因は「どこかで間違えた」以上のことが言えません。そして在庫差異は、棚卸のときにまとめて調べると原因が追えません——数か月分のイベントを遡ることになるためです。差異が出た時点で、その日のうちに候補を出せるようにすることが目標になります。

何を測るか。

  • 誤出荷の件数と率
  • 在庫差異の件数と金額
  • 差異の原因が特定できた割合
  • 期限切れ・滞留による廃棄の金額

注意すること。 在庫差異の責任がどちらにあるかの判断は、人が行います。 資産と契約に関わる判断であり、AIが出せるのは候補までです。

Top 3:例外工数を、料金と契約更新へ戻す

何をするか。 記録した例外作業を集計し、契約に含まれていない作業を抽出します。そのうえで、

  • 例外作業の発生回数と工数を荷主ごとに集計する
  • 料金マスターと作業実績を照合し、未請求の例外を出す
  • 荷主別の粗利を出す

なぜ3番目か。 Top 1・Top 2が動いていないと、材料が揃わないからです。しかし効果が大きいのがこの3番目です。

見えにくい損失のひとつが、無償で吸収している作業です。 構造はいつも同じで、追加の作業が現場で発生し、その場では金額が出せないので「後で言おう」になり、後で言うと言いそびれるか荷主が納得せず、コストだけが積み上がります。

AIの役割は、この規律を守らせることではなく、守るためのコストを下げることです。 例外が発生した瞬間に作業コードで記録され、月末に「今月これだけありました」と出てくれば、交渉のテーブルに載ります。契約更新のときには、「例外作業がこれだけ増えているので料金を見直したい」と実数で言えます。

何を測るか。

  • 荷主別の粗利
  • 未請求として抽出された例外作業の件数と工数
  • そのうち、追加請求または料金改定に至った割合
  • 標準化できた例外の件数

注意すること。 料金を上げるかどうか、契約をどうするかは、人が決めます。 荷主との関係、他の取引、次の契約更新のタイミング。AIが出せるのは「これだけの作業がある」という事実までです。

そしてもうひとつ。すべての例外を有償にすることが目的ではありません。 頻度が高く品質への影響が小さい例外は、標準作業に組み込んだほうが安くなります。

AIに任せやすい仕事

倉庫・3PLの仕事のうち、AIが引き受けやすいものには共通の性質があります。

性質 倉庫・3PLでの具体例
形を整える SKU・物量・出荷波動を構造化する。受注データをWMSへ取り込む
照らし合わせる 入荷予定とASNの照合。現品と納品書の照合。出荷指示と貨物の照合
違いを見つける 出荷検品の差異を検知する。理論在庫と実棚を照合する
足りないものを探す 契約に含まれていない作業を抽出する。未請求の例外を出す
遡る 在庫差異の発生イベントを、入荷・移動・出荷のログから探す。返品を元の出荷と紐づける
探し出す 荷主ごとの例外手順を、手順書・契約・過去の指示から見つける
異常に気づく 期限・ロットの例外、滞留在庫、締時刻に間に合わない作業、便の遅延
提案する サイズ・回転率・空きロケーションから格納候補を出す。荷主ルールに沿った引当候補を作る
集計する SLA・KPIを契約基準に沿って自動集計する。年間保管量を集計する

いずれも、判断そのものではなく、判断の前段にある作業です。とくに「探し出す」が効きます。荷主ごとのルールは、すでに社内にあります。 使われていないのは、探すのに時間がかかるからです。

AIの支援が向く仕事——人の確認を挟むもの

AIが案を出し、人が確認してから使う領域があります。

  • 標準作業と荷主固有作業の分離(契約前の確認)
  • 例外作業と追加料金条件の明文化
  • 受入を保留して荷主へ確認するかどうかの判断
  • 欠品時の代替引当を荷主へ確認すること
  • 返品を再販するか廃棄するかを荷主と決めること
  • 品質の例外(破損・誤品)の処置
  • 緊急便などの追加費用の記録
  • 料金計算の個別条件の確認
  • 標準化できる例外の選定

これらは、AIの出力をそのまま使うわけにはいきません。必ず人が確認してから業務に使います。

とくに保管料や作業料の計算方式は契約ごとに異なります。 業界で一般的とされる方式があっても、自社と荷主の契約がどうなっているかは契約書で確認してください。 一般論で処理すると、請求の誤りにつながります。

人に残す仕事・判断

ここが、この記事で最も重要な部分です。

線を引くときの基準は、ひとつです。

「AIが答えを出せるか」ではなく、「誰がその答えに責任を持つのか」。

倉庫・3PLで人に残るもの

仕事 AIが担うところ 人が担うところ
新規受託 物量・波動の構造化、標準/例外の分離 受託可否と、設備・人員の適合の判断
物流設計・契約 料金の試算、追加料金条件の整理 SLA・価格・責任分界の確定
入荷受付 予定とASNの照合、バース混雑の可視化 受入不可条件の確認(危険物・温度等)
棚入れ 格納候補の提示、実績の記録 特殊保管条件の確認
棚卸 差異の抽出、発生イベントの遡及検索 在庫調整と責任区分の承認
荷主対応 作業履歴の検索、SLA・KPIの集計 責任・補償を伴う回答の承認
請求・採算 未請求の例外抽出、荷主別粗利の算出 価格改定・追加請求の決定
法令の該当性 年間保管量の集計、基準との比較 自社の義務・取組の最終確認
契約更新 例外作業の上位抽出 料金・SLA・契約更新の決定

在庫差異の責任は、AIが決めない

在庫が合わないとき、それが誰の責任かは、資産と契約に関わる判断です。

AIは「入荷のこのタイミングで数が合わなくなっている」という候補を出せます。しかし、荷主から届いた時点で数が違ったのか、自社の作業で紛失したのか、システム連携で二重計上されたのか、そもそも数え方の定義が違うのか。これらを確定し、荷主に対してどう説明し、どこまで補償するかを決めるのは人です。AIの出力を根拠にすれば、根拠のない責任配分を、根拠があるように見せることになります。

危険物などの受入可否

危険物、温度管理が必要な貨物、重量物。これらを受け入れてよいかどうかは、安全と法令に関わる判断です。AIが「過去に同種の貨物を受け入れた記録がある」と示しても、それは今回受け入れてよい理由にはなりません。 保管場所の状況も他の在庫との関係も、そのときどきで違います。

荷主への回答で、補償に触れるもの

誤出荷や在庫差異について荷主へ回答するとき、その回答が補償の約束になることがあります。 AIは作業履歴を検索して回答案を作れますが、責任や補償に触れる回答は、人が承認してから出してください。

目指す姿

倉庫・3PLのあるべき姿は、「WMSを入れている状態」ではありません。

構造として言えば、こうなります。

荷主ID・SKU・ロット・ロケーション・入出荷・作業実績・請求が、ひとつのIDでつながっている。

ここでいう「つながっている」は、すべてを1つのファイルや1画面へ平置きすることではありません。業務の基準になる情報を、ID・版・状態・アクセス権限で関連付け、どれが最新で、どれが承認済みかが分かるようにすることです。

そして、そのうえで次が成立します。

1. 標準と例外が分かれている——どの作業が標準で、どれが荷主固有かがコードで区別され、例外の発生回数と工数が数えられる。

2. 結果だけでなく、原因が見える——SLAやKPIの達成率だけでなく、例外の発生・手待ち・再作業・問い合わせの原因が荷主別に見える。

3. 例外が採算と契約に戻る——例外工数が料金と契約更新の材料になり、標準化できるものは標準へ組み込まれる。

Before / After

Before

荷主ごとのルールは手順書と掲示と口伝えに分かれ、例外作業は記録されない。在庫差異は棚卸のときにまとめて調べる。請求は料金マスターどおりに出て、実際にかかった作業とは別に動いている。

After

例外は作業コードで記録され、その場で検索できる。差異は発生した日のうちに候補が出る。月末には未請求の例外が一覧になり、契約更新のときには実数で交渉できる。

Beforeが悪いわけではありません。そうなっているとすれば、理由があります——現場は目の前の出荷を止められませんし、荷主の要求に応えることが受託の理由だからです。変えるとしたら、全部を一度にではなく、荷主1社の例外を書き出すところからです。

法令・情報管理

倉庫業では、自社が法令上の義務を負う立場にあります。

倉庫業の登録と、倉庫管理主任者

倉庫業を営むには、倉庫業法に基づく登録が必要です。 また、倉庫ごとに、要件を備えた倉庫管理主任者を選任することが求められます。

倉庫管理主任者の選任は倉庫ごとです。拠点を増やすときには選任も伴うため、AI導入とは別に、拠点計画と人員配置に直接効く要件になります。

3PLという業務の位置づけ

国土交通省は、3PLについて、荷主に対して物流改革を提案し、包括的に物流業務を受託する業務と説明しています。

「提案する」ことが業務に含まれるのであれば、例外作業の記録と分析は、単なる自社の採算管理ではなく荷主への提案材料になります。「この作業は月に何回発生していて、標準化すればこれだけ削れます」——これは値上げ交渉ではなく、改善提案です。

物流効率化法の規模別区分——混同しないこと

物流効率化に関する制度には、規模に応じた区分があります。

2026年度に施行が予定されている内容として、一定規模以上の事業者が特定倉庫業者に指定され、中長期的な計画の作成と定期の報告が求められます。 指定基準は 70万トン以上です。

ここで注意したいのは、この数量が「いま倉庫に置いてある量」ではないことです。国土交通省の指定基準では、寄託を受けた物品を保管する倉庫において入庫された貨物の、年度の合計の重量とされています。保管残高で数えるか、年度内に入庫した貨物の合計で数えるかで、桁が変わります。

中小の倉庫事業者が、この特定倉庫業者に該当するとは限りません。 制度のニュースを見て「うちも中長期計画を作らなければ」と考える前に、まず自社の数字を、この定義どおりに集計してください。

AIができるのは、入庫実績を年度で合計し、基準と比較することまでです。自社にどの義務や取組が及ぶかの最終確認は、制度の資料に当たって人が行ってください。

責任を負う人を、ひとまとめにしない

「倉庫会社が責任を持つ」と一言でまとめると、設計を誤ります。倉庫・3PLでは、次が別々です。

立場 誰か
法令上の義務者 倉庫業の登録を受けた自社(3PLとして包括受託していても、保管を行う事業について負う)
倉庫ごとに選任される者 倉庫管理主任者
業務を実施する者 庫内の作業者、および作業を請け負う協力会社
寄託者として承認する者 荷主(受入条件、代替引当、返品の処置、料金・SLA)
運送の区間に責任を負う者 運送人。引き渡しの境界がどこかは契約で確認する

AIは、このどの立場にも立ちません。AIがいるのは、承認の材料を揃える側です。

AIへ投入してよい情報

倉庫・3PLでは、荷主の在庫と出荷という、荷主にとっての機密情報を預かります。どの商品が、どこへ、いくつ出ているか。これは荷主の販売実績そのものです。

  • 必要最小限の情報だけを入れる(荷主名や得意先名まで入れる必要があるか)
  • AI事業者が入力データを学習に使わない設定・契約になっているか
  • 保存期間と削除の方法
  • 荷主との契約に、情報の取扱いを制限する条項がないか(機密保持とデータの取扱条件)
  • アクセス権限と操作ログが残るか
  • 再委託・国外保管など、自社の規程上あらかじめ決めておくべき事項

加えて、複数の荷主の情報が混ざらない設計になっているか。 同業の荷主を複数抱えている場合、情報の分離は契約上の要求であることがあります。

そのうえで、荷主の在庫・出荷データを扱うのは、会社が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。 個人のアカウントで試すことと、業務で使うことは別です。

この確認を済ませる前に、荷主の在庫・出荷データをAIへ投入しないでください。

会社としてのAI利用ルールをどう作るかは、生成AIの社内ルールにまとめています。

法令・制度の記述について

※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自社の具体的な条件を確認してください。

最初の30日プラン

1週目:測る

荷主を1社選び、その荷主だけのルールをすべて書き出します。 手順書、掲示、口伝え。あわせて、1週間分の作業のうち「標準ではない作業」がどれだけあったかを数えます。

ここを飛ばすと、後で効果を語れなくなります。

2週目:整える

書き出したルールを、標準作業と例外作業に分類し、作業コードを付けます。 契約書と照らして、契約に含まれていないものに印を付けます。

3週目:試す

リスクの低いところから試します。例外手順の検索、作業実績の記録、在庫差異の遡及、未請求例外の抽出。受入可否の判断、在庫差異の責任区分、補償を伴う回答は、対象に入れません。

4週目:比べる

1週目に測った数字と比べ、その荷主について「今月発生した例外作業の回数と工数」を1枚にまとめてください。 これが、次の契約更新で使える最初の資料になります。30日で会社は変わりません。変わるのは、例外が数えられる状態になることです。

AI活用の成熟度

自社がいまどの段階にあるかを確かめてみてください。

Lv1 人に依存している 荷主ごとのルールは、ベテランの記憶と現場の掲示にある。

Lv2 台帳はある WMSはあるが、例外作業は記録されず、請求は料金マスターどおりに出ている。

Lv3 一元化されている 荷主ID・SKU・ロット・ロケーション・作業実績・請求がつながり、標準と例外が作業コードで分かれている。

Lv4 AIが支援している AIが例外手順の検索、差異の遡及、未請求例外の抽出、KPIの集計を担っている。

Lv5 仕組みになっている 例外工数が料金と契約更新へ戻り、標準化できるものは標準へ組み込まれ、責任・安全・契約の判断は責任者が行う構造になっている。

Lv5は「AIが庫内を自動で回す状態」ではありません。倉庫・3PLにとってのLv5は、

「例外を無償で吸収する」から「例外を数えて、価格と改善に返す」への転換

です。

よくある質問

Q. 荷主ごとのルールが多すぎて、標準化できません。

標準化の前に、数えることをお勧めします。 どの例外が月に何回発生し、どれだけ工数を使っているかが分かると、標準化すべきもの、有償にすべきもの、そのまま続けるものが分かれます。

Q. 在庫差異の原因をAIに調べさせられますか。

発生イベントの候補を出すところまでです。 入荷・移動・ピッキングのログを遡り、「このタイミングで合わなくなっている」と示すことはできます。しかし責任がどちらにあるかの判断は、資産と契約に関わる判断であり、人が承認してください。

Q. うちも物流効率化法の対象になりますか。

まず、年度内に入庫した貨物の合計重量を集計してください。 特定倉庫業者の指定基準は70万トン以上ですが、この数量は保管残高ではなく、入庫された貨物の年度の合計の重量です。中小の倉庫事業者が該当するとは限りません。規模別の義務と、それ以外の取組を混同しないことが大切です。最終的な該当性は、制度の資料に当たってご確認ください。

Q. 例外作業を記録すると、現場の負担が増えませんか。

記録そのものを軽くする設計が必要です。 バーコード、作業コードのボタン、既存の端末操作への組み込み。逆に記録が軽くなれば、現場にとっても「やった作業が見えるようになる」という利点があります。

Q. 保管料の計算方式は、どう扱えばよいですか。

契約ごとに異なります。 業界で使われている方式があっても、自社と荷主の契約がどうなっているかは契約書で確認してください。 一般論で処理すると請求の誤りにつながります。AIには、契約条件を参照して照合させるほうが安全です。

Q. どのくらい効果がありますか。

確かな数字はお示しできません。 荷主の数も、例外の多さも、料金体系も会社ごとに違うためです。だからこそ1週目に測ることをお勧めしています。自社の数字が、いちばん確かな根拠になります。

近い構造の業種

運送会社のAI活用 同じ物流でも、運送は車両と人が動く仕事で、倉庫は貨物が留まる仕事です。制約の種類が違うため、引き渡しの境界をどこに置くかを考えるうえで比べる価値があります。

食品製造のAI活用 ロット・期限・出荷先の追跡という論点が共通です。荷主の側から見た同じ構造を知ると、荷主に何を求めれば追跡が成立するかが見えます。

シリーズの一覧は業種別AI活用ベストプラクティスからご覧いただけます。

この記事を自社に当てはめたい方へ

同じ倉庫・3PLでも、荷主の数、EC比率、流通加工の比重によって、最初の一手は変わります。大口の荷主が数社の会社と、小口の荷主が数十社ある会社では、Top 1の重さが違います。

まず、自社の現在地を確かめる

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、いまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自社への当てはめを一緒に進めたい場合は、AI顧問サービスでご案内しています。初回は30分の無料リモート面談を承っています。

具体的なご相談はお問い合わせからどうぞ。

なお、AI活用の全体像——市場分析、価格や商品設計、発信、採用、社内ルールまでを経営の機能ごとに整理したものは、社長の経営OSをAI化する戦略のすべてにまとめています。

最終更新日: 2026年8月25日/内容確認日: 2026年8月24日

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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