行政書士事務所のAI活用|聞いたことと確認できたことを分ける

聞き取った内容と証拠が対になっているか、片方しか無いかが一目で分かる行政書士事務所のAI活用イメージ
目次

1. 結論:行政書士事務所なら、何から始めるか

行政書士事務所でAIを使うなら、最初の一手は「顧客が言ったこと」と「証拠で確認できたこと」を項目ごとに突き合わせる作業です。次が手続種別ごとの要件表と資料依頼リストを作ること、その次が補正理由を分類してナレッジに戻すことです。

この記事が想定しているのは、許認可等の申請書類の作成と提出手続を受託する行政書士事務所です。共同事務所で税務・登記・労務が中心の場合や、コンサルティングが主たる収益源である場合は、適用される制限が変わるため範囲外です。

この順番になるのは、行政書士の実務がそれ自体、証拠管理の仕事だからです。顧客は要件を知らない状態で相談に来ます。話してくれる内容は貴重ですが、その時点では「申請書へ記載する根拠として未確認」です。証拠と突き合わせて初めて、申請書へ書ける状態になります。

一方で、AIに渡せない領域もはっきりしています。受任できるかどうかの判断、記載の根拠として採否を決めること、提出可否の承認——最終的な採否と提出内容について責任を負うのは行政書士です。とくに業務範囲の判定は、誤れば法令違反になり得ます。

ただ、これは「だからAIは使えない」という話ではありません。突き合わせるという作業量の大きい部分はAIが担え、採否を決める権限だけが人に残ります。

2. 業務全体の流れ

行政書士事務所の仕事は、相談から結果の報告、そして更新までが一本です。

  1. 問い合わせを受け、手続・目的・期限・対象官公署に分解する
  2. 受任できるかを判定する——依頼された「事項」と「行為」の組み合わせで決まります
  3. 本人・依頼主体・代理権を確認する
  4. ヒアリングし、聞いた内容を記録する——この段階では「申請書へ記載する根拠として未確認」です
  5. 手続の要件を特定し、根拠を確認する
  6. 必要な資料・証拠のリストを設計する
  7. 資料を受け取り、有効期限と版を管理する
  8. 聞いた内容と証拠を突き合わせ、記載の根拠として使えるかを判断する
  9. 提出方法(電子/窓口/郵送)を判定し、期限から逆算で日程を組む
  10. 申請書を作る——確認方法と根拠が記録された情報だけを転記します
  11. 顧客へ説明して承認を得て、最終レビューを経て提出版を確定する
  12. 提出し、受付の証跡を残す
  13. 補正・追加照会に対応する
  14. 結果を受け取り、報告し、次の手続を設計する
  15. 請求し、事件簿を記載し、更新期限を管理し、ナレッジに戻す

この流れの特徴は、「不確実性が合意ではなく、事実の検証にある」ことです。何を作るかは手続で決まっており、決まっていないのは顧客の状況がその要件に当てはまるかどうかです。

3. AI導入優先Top3

Top 1:聞いた内容と証拠を、項目ごとに突き合わせる

何をするか。ヒアリングで得た各項目と、受け取った証拠資料の記載を突き合わせ、一致/不一致/証拠なしに区分します。

なぜ最初か。この業種で最も事故に近い工程であり、かつ作業量が大きいからです。事実と異なる記載は補正や不許可に直結し、顧客の不利益になります。突き合わせる作業自体はAIが担えるため、効果が出やすい工程でもあります。

どう始めるか。取扱件数の最も多い手続1種別だけで、申告項目と証拠資料の対応表を作ります。対応表が無い状態で突き合わせだけ自動化しても、何と何を比べるかが決まりません。

何を測るか。

  • 記載の相違を原因とする補正の件数
  • 不足する証拠の発見が、提出後になった件数

どこがAIの仕事か。項目と記載を照らす作業のうち、氏名・日付・番号のように文字列が一致するかを見る部分は、決まった条件による照合です。AIが効くのは、表記の揺れや書式の違いを越えて「同じ項目を指しているか」を見当づけること証拠のどこに該当の記載があるかを探すこと自由記述のヒアリングメモから項目を取り出すことです。

注意。AIが「一致」と出しても、それは記載の一致であって、証拠の証明力の評価ではありません。記載の根拠として採用するかどうかを決めるのは行政書士です。

そして、AIは法律上の作成者ではありません。 書類を作成したのは受任した行政書士です。AIの出力をそのまま提出版にすると、誰が内容を確認したのかが記録に残りません。

Top 2:手続種別ごとに、要件表と資料依頼リストを作る

何をするか。官公署の手続案内・法令・審査基準から要件を抽出して要件表を作り、そこから必要資料の候補と取得先を起こします。

なぜ2番目か。Top 1の前提になるからです。要件表が無ければ何を突き合わせるべきかが決まりません。初回の資料依頼で揃う割合が上がれば、往復が減って期限に余裕が生まれます。

どう始めるか。取扱件数の最も多い手続1つで、要件表と資料依頼リストを作ります。手続案内をAIに構造化させ、過去の補正理由を突き合わせて補います。

何を測るか。

  • 初回の依頼で揃った資料の割合
  • 要件の見落としによる補正の件数

注意。要件表は「候補」であって「適用が確定した要件」ではありません。官公署ごとの運用差は、要件表には反映されていません。

Top 3:補正理由を分類し、匿名化してナレッジへ戻す

何をするか。補正通知の内容を要件項目に紐づけて分類し、過去の同種補正とその対応を引けるようにします。

なぜ3番目か。補正通知は、官公署が無償で指摘してくれた「要件理解のずれ」だからです。これを蓄積すると、Top 2の要件表が実務に合っていきます。Top 1・Top 2が案件単位の改善であるのに対し、これは事務所の資産形成です。

どう始めるか。過去1年の補正通知だけを対象に、要件項目へ紐づけて分類します。分類軸は「記載不備/資料不足/要件の当てはめ/官公署の運用差」の4つから始めれば十分です。

何を測るか。

  • 同種の補正が繰り返された件数
  • 要件表が更新された回数

注意。行政書士には守秘義務があります。顧客が特定できる情報を除いたうえで登録してください。技術的な制約ではなく、法令上の要請です。

4. AIに任せやすい仕事

この業種でAIが主に担えるのは、次のような性質の作業です。

性質 行政書士事務所での具体例
形を整える 問い合わせを手続・目的・期限・対象官公署へ分解する。ヒアリング内容を論点ごとに分類する
照らし合わせる 聞いた内容と証拠資料を項目単位で突き合わせる。申請書の記載と証拠、提出要領のチェックリストと形式を照合する
違いを見つける 聞いた内容の矛盾・欠落・追加確認点を出す。受領台帳から有効期限切れや古い版を検出する
足りないものを探す 要件表と受領資料を比べて不足証拠を出す。根拠の無い欄を「未確定」として残す
下書きを作る 様式へ転記する。事件簿の記載事項を案件台帳と請求記録から組み立てる。顧客への説明資料を作る
探し出す 補正理由を分類して過去の同種補正と対応を引く。手続案内から要件を抽出する

共通するのは、答えが一意に決まるか、候補として出せば資格者が短時間で確認できることです。

5. AI支援に向く仕事

次は、AIが案を出し、人が確認してから使う領域です。

  • 制限規定の候補提示——依頼内容から、関係し得る制限規定を並べることはできます。しかし、受任できるかどうかの判定はしません(節6)
  • 不足証拠の代替手段——代替の証明方法を候補として出せます。採用するかは資格者が決めます
  • 確認方法の設計——追加で確認すべき事項と、その方法の候補を出せます
  • 電子申請の可否と準備——手続ごとの受付方法と必要な準備を整理できます。顧客側の段取りは人が決めます

確認を挟むことは、品質の設計です。確認を省くと、補正や不許可という形で戻ってきます。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方の原則は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。

法令が資格者に限定している行為

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とします(行政書士法第1条の3第1項)。ただし、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができません(同条第2項)。

そして、行政書士又は行政書士法人でない者は、報酬を得て業としてこの業務を行うことができません(同法第19条第1項本文)。

つまり、書類の作成そのものが業務独占です。同時に、その範囲は「他の法律で制限されているもの」によって外側から限られています。

「事項」と「行為」で境界を判定する

他士業との境界は、分野では決まりません。「どの事項について、どの行為をするか」で決まります。

  • 弁護士法第72条——弁護士でない者が報酬を得る目的で、訴訟事件・非訟事件および不服申立事件その他一般の法律事件に関して、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています(別段の定めがある場合を除く)
  • 税理士法第2条——税理士の業務を税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つとし、税務相談を「申告等、主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」と定義しています

行政書士法第1条の4は、書類作成のほか、提出手続の代理、不服申立ての代理、契約その他に関する書類の代理人としての作成、書類作成についての相談を業とすることができるとしています。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでないとされ、さらに提出手続等の代理からは弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものが除かれています。

「同じ分野でも、行為によって扱いが変わる」——これが境界判定の実質です。

特定行政書士に限られる業務

不服申立ての手続の代理等は、日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(特定行政書士)に限り行うことができます(行政書士法第1条の4第2項)。これは事務所ではなく、個々の行政書士に紐づく資格です。事務所に1名いても、その者以外は行えません。

会社として責任を持つ判断

  • 受任できるか、他士業へ紹介すべきかの判定
  • 紛争性の有無の見極め
  • 代理権・依頼主体の適切性の確認
  • 判断が分かれる要件の当てはめ方針
  • 聞いた内容を、確認済みの事実へ昇格させるかどうか
  • 重要事項・選択肢・不許可リスクの説明と、顧客の承認
  • 最終提出可否の承認
  • 補正方針と回答内容の決定

AIは、法律上の独立した作成者ではない

ここは、この業種でいちばん誤解が起きやすいところです。 行政書士法が業務独占としているのは、報酬を得て業として書類を作成することです。AIが下書きを出したとしても、作成者が行政書士でなくなるわけではありません。 裏を返せば、AIが書けるようになったからといって、無資格者が独立して受任してよいことにはなりません。

次の2つは、別の問題として起きます。

  • 無資格者の独立受任——「AIが作るので資格は要らない」という形で、業務独占の外側に出てしまうこと
  • 責任の形骸化——資格者の名前はあるが、実質的な確認が行われず、AIの出力がそのまま提出版になっていること

後者は、外から見えにくいぶん危険です。 名義だけが残り確認の実体が抜けると、補正や不許可のときに「誰が何を確認したのか」を説明できません。対策は記録の側にあります。 誰が、どの証拠を見て、どの項目を採用したのかを案件に残す——その記録があってはじめて、確認は行われたと言えます。

「AIが90%正しくても、人が全部確認する仕事がある」

記載の根拠として採用するかどうかが、まさにそれです。AIが項目ごとの一致を高い精度で出せたとしても、その証拠にどれだけの証明力があるかは、資格者が評価します。精度の問題ではなく、責任の所在の問題です。

7. Best Practice

到達点として、次の3つの構造を示します。

ひとつ。案件正本で、5つの状態を分ける。

状態 意味
顧客申告 ヒアリングで得た内容。申請書へ記載する根拠としては未確認
確認方法と根拠が記録された情報 どの証拠のどこを見て確認したかが、確認者と日付とともに残っているもの
不足証拠 要件に必要だが未取得のもの
法的要件候補 当てはまり得る要件であって、適用が確定したものではないもの
提出版 顧客の承認を経て確定した書類

申請書へ転記してよいのは、確認方法と根拠が記録された情報だけです。 「確認した」という記憶ではなく、何をどう確認したかが記録に残っていることが条件になります。

ふたつ。受任の前に「事項×行為」で境界を判定し、根拠を記録する。判定を残すことで、判定そのものが再利用できる資産になります。

みっつ。補正理由と質問を、匿名化してナレッジに戻す。補正通知は要件理解のずれを教えてくれます。守秘義務があるため、顧客が特定できる情報を除いたうえで登録します。

なお「案件正本」は、すべてを1画面へ平置きすることではありません。案件ID・版・状態・アクセス権限で関連付け、どれが最新で、どこまで確認済みかが分かるようにすることです。

8. Before / After

Before。相談を受け、経験から受任できると判断します。ヒアリング内容をもとに申請書を書き始め、並行して資料を依頼し、届くたびに記載を直します。補正通知が来たら対応し、終われば次の案件へ移ります。事件簿は年度末にまとめて記載します。

この流れには理由があります。顧客は期限を抱えており、資料が揃うのを待っていては間に合いません。先に書き始めるのは、合理的な選択です。

After。受任の前に、依頼された事項行為を分解し、境界の判定根拠を案件に記録します。ヒアリング内容は顧客申告として記録され、証拠と突き合わせるまで転記されません。申請書には確認方法と根拠が記録された情報だけが入り、証拠のない欄は未確定として残ります。補正通知は要件項目に紐づけて分類され、匿名化されて要件表に戻ります。

変わるのは書類作成の速さではありません。「何が確認済みで、何がまだ確認できていないか」が、いつでも見える状態になることです。

9. 法令・規制・情報管理

条番号は現行法に基づきます。行政書士法は改正が続いており、業務の規定は第1条の3にあります(かつての条番号を引用した資料が残っていることがあります)。

業務の範囲と、他の法律による制限

条文の位置は次のとおりです(内容は節6を参照してください)。

  • 第1条の3:業務の範囲(第1項)と、他の法律で制限されているものは行えないこと(第2項)
  • 第1条の4:提出手続の代理、不服申立ての代理、代理人としての書類作成、書類作成の相談。他の法律で制限されている事項は除かれ、第1号には「弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く」の括弧書きがある。第2項は特定行政書士の限定
  • 第19条第1項:行政書士等でない者の業務制限。ただし、他の法律に別段の定めがある場合と、定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない

最後のただし書は、電子手続を名指ししています。対象となる手続と者の範囲は総務省令で定められるため、具体的な範囲を推測で判断しないでください。

帳簿の備付けと保存

行政書士は、業務に関する帳簿を備え、事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載し(同法第9条第1項)、関係書類とともに帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければなりません。行政書士でなくなったときも同様です(同条第2項)。

起算点は「作成時」ではなく「帳簿閉鎖の時」です。

守秘義務

行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはなりません。行政書士でなくなった後も同様です(同法第12条)。

この条文が、AIへ投入してよい情報の線引きの根拠になります。外部サービスへの入力は「漏らす」に当たり得るという前提で、投入の可否と匿名化の運用を決めることになります。守秘義務の対象は「業務上取り扱った事項について知り得た秘密」であり、個人情報に限られません。

具体的には、次を確認したうえで使います。

  • 必要最小限の情報だけを入れる(要件の当てはめだけなら、氏名・番号・住所は要らないことがあります)
  • AI事業者が入力データを学習に使わない設定・契約になっているか
  • 保存期間と削除の方法
  • 契約上の機密保持とデータの取扱条件
  • アクセス権限と操作ログが残るか
  • 再委託・国外保管など、自社の規程上あらかじめ決めておくべき事項

そのうえで、顧客の情報を扱うのは事務所が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。 守秘義務は事務所ではなく行政書士個人にかかるため、この線引きは全員で共有しておく必要があります。

情報通信技術の活用

行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないとされています(同法第1条の2第2項)。

これは努力義務です。電子化しなければ違法という規定ではありません。ただし、業務改善の方向として法が明示していることは、投資判断の材料になります。

個人情報

在留資格関連の国籍・在留歴、相続関係の親族情報、事業者の財務情報を扱います。利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法第17条第1項)、本人の同意なく必要な範囲を超えて取り扱うことはできません(同法第18条第1項)。官公署への提出は手続の目的そのものですが、それ以外の第三者提供には同意が要ります(同法第27条第1項)。外部の翻訳・記帳・システム事業者への委託は委託先の監督が必要で(同法第25条)、相続・在留関連では要配慮個人情報(同法第2条第3項)を扱うことがあります。

行政書士法第12条の守秘義務と個人情報保護法は、重なりますが同一ではありません。両方を前提に線を引いてください。

法令・制度の記述について

※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自社の具体的な条件を確認してください。

10. 最初の30日プラン

1週目:測ることから始めます。

取扱件数の最も多い手続1種別で、資料受領と補正対応を対象にします。測るのは、①資料の追加依頼が発生した回数 ②初回依頼で揃った資料の割合 ③補正の件数と原因区分(記載不備/資料不足/要件の当てはめ/運用差)。この週はAIを使いません。あわせて過去1年の補正通知を集めます。

2週目:ルールを決めます。

顧客申告と、確認方法と根拠が記録された情報を分ける記録方法を決めます。列を分けるだけで十分で、システムは要りません。対象手続の要件表を作り、AIへ投入してよい情報の線引きを守秘義務を前提に明文化します。事件簿の記載事項が案件台帳と請求記録から出せるかも確認します。

3週目:低リスクな範囲でAIを使います。

過去案件で試します。進行中の案件でいきなり使わないでください。手続案内から要件表を作る作業と、過去1年の補正通知を要件項目に分類する作業を試します。出力はすべて「候補」として扱い、要件表として採用するかは人が決めます。

4週目:同じ測り方で比べます。

1週目と同じ項目を再計測します。判断するのは、①初回依頼で揃った資料の割合が上がったか ②補正の原因区分に偏りが見えたか ③確認工数が増えていないか。②で「要件の当てはめ」が多いなら、要件表ではなく判断基準の整理が要ります。「資料不足」が多いなら資料依頼リストの改善で効きます。

11. AI活用成熟度

レベル1:人に依存している。受任可否も要件の当てはめも担当者の経験によります。補正理由は案件フォルダに残りますが、振り返られません。

レベル2:台帳やツールがある。案件台帳と期限管理、申請書の様式は蓄積されています。ただし聞いた内容と確認済みが同じ場所にあり、要件表は手続ごとに整っていません。

レベル3:一元化されている。顧客申告・確認済み・不足証拠・法的要件候補・提出版が、案件IDの下で別の状態として管理され、要件表が手続種別ごとにあり、補正理由が要件項目に紐づいています。ここまで来て、はじめてAIに突き合わせをさせる意味が出ます。

レベル4:AIが支援している。突き合わせ・要件抽出・資料リスト生成・様式転記・補正理由の分類をAIが担い、行政書士は採否・境界の判定・当てはめ・説明・承認に時間を使っています。

レベル5:仕組みになっている。この業種のレベル5は「AIが申請書を出す」ことではありません。書類の作成は業務独占であり、そこは動きません。行政書士が「判断すべきこと」だけに時間を使えている状態です。過去の補正理由が次の案件の要件表に反映され、確認できていないものが申請書に載ることがありません。

12. よくある質問

AIに申請書を作らせることはできますか。

書類の作成は業務独占です(行政書士法第19条第1項)。AIが様式へ転記することと、AIが書類の作成者になることは別です。転記の対象を「確認方法と根拠が記録された情報」に限り、証拠のない欄は未確定として残す——この形なら支援として使えます。最終的な提出可否の承認は行政書士が行います。

受任できるかどうかを、AIに判断させてよいですか。

判断させないでください。AIができるのは、依頼された「事項」と「行為」を分解し、関係し得る制限規定の候補を挙げるところまでです。受任の判定は、誤れば法令違反になり得ます。とくに紛争性の有無の見極めは、経緯を踏まえた判断です。

顧客から聞いた内容を、そのまま申請書に書いてはいけないのですか。

法令が「書いてはいけない」と定めているわけではありません。ただし、記載が事実と異なっていた場合の帰結は、補正では済まないことがあります。聞いた内容と証拠を突き合わせ、確認できたものだけを転記する——事故を避けるための実務設計です。

AIに顧客の資料を読み込ませても大丈夫ですか。

行政書士には守秘義務があり、行政書士でなくなった後も続きます(行政書士法第12条)。対象は「業務上取り扱った事項について知り得た秘密」であり、個人情報に限られません。外部サービスへの入力は「漏らす」に当たり得るという前提で、投入の可否と匿名化の運用を決めてください。

電子申請に対応すべきでしょうか。

情報通信技術の活用は努力義務です(同法第1条の2第2項)。ただし、提出方法が電子か窓口かで移動時間・郵送費・受付証跡の形が変わります。「対応するかどうか」ではなく「どの手続から対応するか」で考えると判断しやすくなります。

13. 関連する業種の記事

同じ「着手時点で何をすべきかが確定していない案件型」でも、不確実性の性質が違います。

シリーズの一覧は業種別AI活用からご覧いただけます。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じ行政書士事務所でも、取扱分野と情報の整理状況によって最初の一手は変わります。

特定分野に特化した事務所と、地域で幅広く受ける事務所では、要件表を作る優先順位が違います。前者は深さ、後者は分岐の整理から始めるほうが、無理がありません。

この記事の内容を自事務所に当てはめるところから始めたい方は、次の診断をお使いください。

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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