Web制作会社のAI活用|公開できると公開してよいを分ける

機械検査と承認の2枚の板がともに開いたものだけが通り抜けるWeb制作会社のAI活用イメージ
目次

1. 結論:Web制作会社なら、何から始めるか

Web制作でAIを使うなら、最初の一手は修正指示を変更IDに集約し、契約範囲の消化を見える化することです。次がQA(機械検査)と公開承認を別の工程に分けること、その次が計測タグの送信項目と送信先を、設置と同時に一覧化することです。

この記事が想定しているのは、顧客企業のWebサイトの制作・改修を受託し、公開後の運用も一部担う制作会社です。自社メディアの運営や広告運用が中心の場合は、負う責任が変わるため範囲外です。

この順番になるのは、Web制作の仕事が「技術的に公開できる」と「権利・契約・表示上、公開してよい」という二つの可否を同時に扱うからです。前者は機械で判定できます。後者は判定できません。この二つを同じ工程で判断すると、権利や表示の確認が抜けたまま公開されます。

一方で、この業種には業務独占資格も許認可も存在しません。それでも人が決めなければならない判断は、数多くあります。責任は資格からだけ生まれるのではない——この業種は、そのことがよく見える例です。

2. 業務全体の流れ

  1. 問い合わせを受け、目的・対象・期限・予算感に分解する
  2. ヒアリングし、目的とKPIを設計する——発言を事実/要望/仮説に分けます
  3. 現行サイトとコンテンツを監査する——URL・素材・CMS設定・タグを棚卸しします
  4. 情報設計とサイトマップを作る
  5. 見積・契約・修正ルールを確定する——修正の回数と範囲がここで決まります
  6. コンテンツと素材を集める
  7. 素材の権利と利用条件を確認する
  8. 顧客業務に関する表示要件を確認する
  9. ワイヤー・デザインを作る
  10. 実装し、CMSと外部連携を構築する
  11. 修正指示を変更IDで管理する
  12. 計測タグ・フォーム・外部送信を可視化する
  13. 個人データの取扱いと委託条件を確認する
  14. QA(機械検査)を行う——リンク・表示・フォーム・レスポンシブ
  15. 公開承認する——技術QAとは別の判断です
  16. 公開・切替・監視する
  17. 請求し、案件粗利を見る
  18. 保守・更新・改善を続ける

この流れの特徴は、「作れる状態」と「出してよい状態」がずれることです。リンクが正しく、表示が崩れていなくても、その素材を使ってよいか、その表示で足りるか、そのデータをそこへ送ってよいかは、別の問題です。

3. AI導入優先Top3

Top 1:修正指示を変更IDに集約し、契約範囲の消化を見える化する

何をするか。Figmaのコメント、メール、チャット、電話——どのチャネルから来た指示も、対象ページ・箇所・優先度・契約範囲内/外に整理して変更IDを付けます。

なぜ最初か。この業種で最も頻度が高く、最も採算に効くからです。修正は全案件で発生します。しかも、契約で「修正3回まで」と定めていても、何を1回と数えるかが決まっていなければ機能しません。変更IDが、数える単位になります。

どう始めるか。進行中の1案件で、どのチャネルから来た指示も1行1件で記録するところから始めます(日付・チャネル・対象ページ・箇所・契約範囲内/外の暫定)。AIによる統合は、記録が回り始めてからで十分です。

何を測るか。

  • 修正指示の件数と、チャネル別の内訳
  • 契約範囲外として対応した件数と工数
  • 修正の往復回数

注意。契約範囲内か外かの判定は、AIが出せるのは候補までです。契約の解釈は人が行います。

Top 2:QA(機械検査)と公開承認を分ける

何をするか。リンク切れ・表示崩れ・フォーム送信・レスポンシブは機械検査で判定できます。一方、素材の権利、表示要件の該当性、個人データの取扱いは、確認結果を集約したうえで人が判断します。この二つを別の工程にします。

なぜ2番目か。この業種で最も事故に近い構造の問題を直すからです。しかも、分離すること自体にコストがかかりません。工程表の箱を2つに分けるだけで始められます。

どう始めるか。公開前チェックリストを2枚に割ってください。1枚目は機械で判定できるもの(リンク・表示・フォーム・レスポンシブ)。2枚目は人が判断するもの(素材の権利、表示要件、データの取扱い、顧客承認)。2枚目に署名欄を作ります。

何を測るか。

  • 公開後に発見された不具合の件数
  • 公開後に差し替えた素材の件数
  • 公開承認から公開までの日数

注意。機械検査が通ることは、公開してよいことを意味しません。この一文が、Top 2の全部です。

どこがAIの仕事か。 ここは分けて考えてください。リンク切れ、フォームの送信、表示崩れ、必須項目の欠落といった機械検査は、自動テストと監視の仕事です。決まった手順で確認でき、結果が一意に決まります。AIは要りません。

AIが効くのはその前後です——検査結果を顧客へ説明する文面を作る自由記述の修正指示を項目へ整理する過去の似た指摘を探す原稿の表記揺れを洗い出す

「AIでQAを自動化する」と言うとき、その中身の多くは自動テストです。 呼び方を分けないと、投資先を間違えます。

Top 3:送信項目と送信先を、設置時に一覧化する

何をするか。計測タグ・フォーム・外部連携について、送信される情報の内容と送信先を、設置と同時に一覧にします。

なぜ3番目か。顧客が自社の該当性を判断するための材料を提供できるからです。これは規制への対応であると同時に、「顧客の法令対応を支援する」というサービス価値そのものになります。Top 1・Top 2が自社の採算と品質の改善であるのに対し、これは提供価値の追加です。

どう始めるか。新規に設置するタグから記録を始めてください。既存の全サイトを遡って調べる必要はありません。

台帳の項目は、性質の違う2つを分けて持ちます。

区分 項目
顧客が法令上の判断・対応に使う項目 送信される情報の内容送信先/送信の目的/情報の取得契機(どの操作で送信されるか)/利用者向けの掲載先(通知または容易に知り得る状態に置く場所)
自社が運用管理に使う項目 設置日・設置者・設定変更日・変更者・対象ページ・停止条件

前者は「顧客が判断と対応に使う材料」、後者は「自社が現状を把握し続けるための記録」です。 混ぜると、顧客へ渡すときに何を渡すべきかが決まりません。

そして、その前に確認することがあります。 外部送信の規律は、まず「対象となる電気通信役務に当たるか」から始まります(節9)。台帳は該当・非該当のどちらでも役に立ちますが、「台帳があるから対応済み」ではないことは顧客と共有しておいてください。

何を測るか。

  • 一覧化されているタグの割合
  • 顧客からの問い合わせに回答するまでの時間

注意。一覧は「設置されているもの」の一覧であって、規律の該当性の判断ではありません。該当性を判断するのは顧客です(節9)。

4. AIに任せやすい仕事

形を整える。問い合わせを目的・対象・期限に分解する。ヒアリング内容を事実/要望/仮説に分ける。コンテンツを分類してサイトマップ案とページIDを起こす。

照らし合わせる。素材台帳の各素材について出所と利用条件を照合する。要件と画面要素の対応表を作る。仕様と実装タスクの対応を追跡する。

違いを見つける。リンク切れ・表示崩れ・フォーム送信・レスポンシブを機械検査する。検出された不具合を分類して未修正を追跡する。

足りないものを探す。未受領の素材と期限を抽出する。出所が不明な素材を抽出する。契約と変更IDから請求に結びついていない変更を出す。CMS・プラグイン・証明書の更新期限を抽出する。

下書きを作る。散在する修正指示を対象ページ・箇所・優先度に整理する。送信項目と送信先の一覧から、顧客向けの説明資料を作る。

探し出す。現行サイトのURL・ページ・素材・CMS設定・タグを棚卸しする。

5. AI支援に向く仕事

  • 生成AI由来素材の申告確認——支給元への確認事項を整理できます。権利関係の結論は出しません(節9)
  • 表示要件の候補列挙——顧客の商材・販売形態から、該当し得る表示要件の候補を並べられます。該当性の確定はしません
  • 契約範囲内/外の判定候補——修正指示について候補を出せます。契約の解釈は人です
  • 保守で預かるデータの範囲——データフローの整理はできます。範囲と保管期間を決めるのは人です

6. 人に残す仕事・判断

この業種には、業務独占資格も許認可もありません。それでも、人が決めなければならない判断があります。

  • サイトの目的とKPIの合意
  • 廃止・移行・統合の判断——顧客の資産の扱いです
  • 情報構造と優先導線の決定
  • 価格・修正回数と範囲・責任分界の確定
  • 素材の利用・公開の可否——権利責任です
  • 表示要件の該当性と表示内容の確認——義務者は原則として顧客ですが、自社が名宛人になる場面もあります(節9)
  • デザインの方向性の承認
  • 重要な技術方式・セキュリティ設定の承認
  • 契約外変更の追加費用と実施可否
  • 外部送信の該当性の判断と、通知・公表の実施——名宛人は顧客。実装側は判断の材料を渡す(節9)
  • 個人データの委託条件と自社の管理体制の確認
  • 公開してよいかの判断——この一つが、他のすべてを束ねます
  • 切替のGo/No-Goと戻し判断
  • 追加請求・値引きの決定

「AIが90%正しくても、人が全部確認する仕事がある」——素材の権利がその代表です。照合の精度が高くても、台帳に載っていない素材は検出できません。「不明が無い」ことは「権利上問題ない」ことを意味しません。

7. Best Practice

ひとつ。QA(機械検査)と公開承認を、別の工程として分ける。技術QAは自動化してよい。公開承認は自動化しない。

ふたつ。素材台帳に「出所」と「利用条件」を持たせ、ページIDと結ぶ。ファイル名だけでなく、「誰から受け取ったか」「どの条件で使えるか」を属性として持ちます。

みっつ。修正指示を変更IDに集約し、契約範囲の消化を見える化する。修正指示は必ず複数チャネルから来ます。統一を求めると関係が悪化するので、受け側で統合します。

よっつ。送信項目と送信先を、タグを設置した時点で記録する。後からまとめて調べると高くつきますが、設置時に記録すれば追加工数はわずかです。

8. Before / After

Before。ヒアリングでサイトの方向性を聞き、サイトマップとデザインを作ります。素材は届いた順に配置します。修正指示はFigmaのコメントとメールとチャットで受け、対応できるものから直します。公開前にリンクと表示を確認し、問題がなければ公開します。計測タグは依頼に応じて設置します。

この流れには理由があります。顧客は最も伝えやすい方法で指示を出しますし、素材は制作の律速になります。もしそうなっているとすれば、それは現実的な選択です。

After。ヒアリング内容は事実/要望/仮説に分かれ、目的とKPIが合意されます。素材は出所と利用条件を持ってページIDに紐づきます。修正指示はチャネルを問わず変更IDに集約され、契約範囲の消化が見えます。公開前には、機械検査(技術的可否)公開承認(権利・表示・データの可否)が別々に行われ、承認には根拠が残ります。計測タグは、設置と同時に送信項目と送信先が記録されます。

変わるのは制作の速さではありません。「公開してよい」と言える根拠が、いつでも取り出せるようになることです。

9. 法令・規制・情報管理

この業種の特徴は、多くの論点で「義務者は顧客であり、制作会社は実装する側」だということです。この整理ができていないと、社内の運用設計も、顧客への説明も、どちらも曖昧になります。

素材の権利

  • 著作者は、その著作物を複製する権利を専有します(著作権法第21条)
  • 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合は送信可能化を含む)を行う権利を専有します(同法第23条)

Webでは、複製だけでなく「送信可能化」——サーバーへ置いてアクセス可能な状態にすること——が独立して問題になります。紙媒体との最大の違いはここです。

生成AI由来の素材

顧客支給の原稿・画像が生成AIによるものである可能性があり、制作側が生成AIで素材を作ることもあります。

本記事では、生成AI由来素材の権利関係について断定的な結論を置きません。実務としては、次の扱いを勧めます。

  1. 申告を受ける——素材の出所(生成AI由来かどうか)を支給元へ確認し、記録する
  2. 利用条件を記録する——使用したサービスの利用条件、商用利用の可否
  3. 確認事項として残す——第三者の権利との関係について、確認できていない点を明示する
  4. 契約で扱いを定める——権利保証の範囲と責任分界を条項に置く

これは「安全である」とも「危険である」とも言わない扱いです。確認していないことを、確認したことにしない——それだけです。

計測タグと外部送信

電気通信事業法第27条の12は、電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容・利用者の範囲・利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る)が、利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、送信されることとなる利用者に関する情報の内容、送信先となる電気通信設備その他総務省令で定める事項を利用者に通知し、または利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない、と定めています。ただし、同条各号に掲げる情報(役務の提供に必要な情報等)は除かれます。

ここは誤解が広がりやすい箇所です。「Cookieやタグを使う全サイトに一律適用される」わけではありません。規律の名宛人は電気通信事業者又は第三号事業を営む者であり、かつ総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限られます。まず、対象となる役務に当たるかから確認してください。 制作会社の役割は、顧客がその判断をできるように、送信項目と送信先を可視化することです。

なお、総務省令で定める事項の具体的な範囲は下位規範によります。推測で判断しないでください。

顧客の通信販売の表示

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の販売条件・提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、販売価格(送料が含まれない場合は販売価格及び送料)、代金の支払の時期及び方法等を表示しなければなりません(特定商取引法第11条本文)。ただし、請求により書面を遅滞なく交付し、または電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、これらの事項の一部を表示しないことができます(同条ただし書)。

名宛人は販売業者又は役務提供事業者、つまり顧客です。制作会社は表示要件を満たす実装を行う側です。

実務上の要点は、これが「公開直前に判明すると情報設計からのやり直しになる」ことです。該当し得る案件では、情報設計の段階で表示領域を確保しておくと手戻りを避けられます。

表示の適正

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、実際のものより著しく優良であると示す表示(景品表示法第5条第1号)、取引条件が著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(同条第2号)等をしてはなりません。

名宛人は「自己の供給する商品又は役務」を持つ事業者、つまり顧客です。制作会社は実装する側であり、表示内容の適法性判断は顧客と専門家が行います。

AIへ投入してよい情報

制作会社は、顧客の未公開の企画・原稿、フォームで取得した情報、アクセス解析のデータ、CMSの認証情報を扱います。次を確認したうえで使います。

  • 必要最小限の情報だけを入れる(未公開の原稿が要るのか、構成だけで足りるか)
  • AI事業者が入力データを学習に使わない設定・契約になっているか
  • 保存期間と削除の方法
  • 契約上の機密保持とデータの取扱条件(公開前の情報は特に)
  • アクセス権限と操作ログが残るか
  • 再委託・国外保管など、顧客の規程上あらかじめ決めておくべき事項

認証情報と、フォームで取得した実データは投入しないと決めておくほうが安全です。扱うのは会社が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。

個人データの取扱い

フォームで取得した情報の保存先、CMS上の会員データ、アクセス解析のデータについて、制作会社は顧客の個人データを預かる立場になり得ます。個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いを委託する場合、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません(個人情報保護法第25条)。

この義務の名宛人は委託元=顧客です。制作会社は委託先の側です。「代わりに監督する」のではなく、「顧客が負う監督義務に応えられる体制を示す」という位置づけになります。

あわせて、利用目的の特定(同法第17条第1項)、利用目的による制限(同法第18条第1項)、第三者提供の制限(同法第27条第1項)が関わります。

ただし「義務者は顧客」で終わらせない

ここまで「名宛人は顧客」と繰り返してきました。これを絶対化すると足元を外します。

  • 自社サイト・自社のサービスについて広告や表示を行えば、自社が表示の名宛人になります
  • 自社が販売業者・役務提供事業者になる取引では、通信販売の表示の名宛人も自社です
  • 顧客のデータを預かる委託先の立場には、委託先自身に求められる安全管理の実務が伴います。「監督されるだけの側」ではありません
  • 契約で自社が実施すると引き受けた事項は、法令上の名宛人と関係なく、契約上の責任として残ります

「法令上の名宛人は誰か」と「自社が何を引き受けたか」は、別々に確認してください。 前者だけを見ていると、契約で負った責任を見落とします。

個人関連情報が、提供先で個人データになる場合

Cookie等で取得した閲覧履歴のように、それ単体では特定の個人を識別できない情報(個人関連情報)を第三者へ提供することがあります。

このとき、提供先がその情報を個人データとして取得することが想定される場合には、確認が必要になる場面があります。 提供先で他の情報と結び付けられ、特定の個人が識別できる状態になるためです。

制作会社は、実装する側としてこの構造に触れます。 タグや連携を入れるとき、「その情報が提供先でどう扱われるか」を顧客が確認できる材料を渡すこと——そこまでが実装側の仕事です。該当性の判断と同意の取得は顧客が行います。

法令・制度の記述について

※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自社の具体的な条件を確認してください。

10. 最初の30日プラン

1週目:測ることから始めます。

進行中の1案件の修正管理と、直近で公開した1案件のQA・公開を対象にします。測るのは、①修正指示の件数と、来たチャネルの内訳 ②契約範囲外として対応した件数と推定工数 ③公開後に発見された不具合・差し替えた素材の件数。この週はAIを使いません。

2週目:ルールを決めます。

素材台帳に「出所」と「利用条件」の2列を追加します。進行中の案件に遡って埋めます。公開前チェックリストを2枚に割り、2枚目に署名欄を作ります。新規に設置するタグの記録フォーマット(5列)を決めます。AIへ投入してよい情報の線引きを決めます(顧客の未公開情報、フォームデータを含めない)。

3週目:低リスクな範囲でAIを使います。

完了した過去案件で試します。散在する指示の統合と箇所整理を、過去案件の修正履歴で試します。リンク・表示の機械検査を、公開済みの1サイトで試します。出力はすべて「候補」として扱います。

4週目:同じ測り方で比べます。

判断するのは、①修正指示の取りこぼしが減ったか ②契約範囲外の対応工数が把握できたか ③チェックリストの分離が現場で回ったか。

③が回っていないなら、リストの粒度が細かすぎる可能性があります。2枚目は「誰が何を確認したか」が残れば足ります。

11. AI活用成熟度

レベル1:人に依存している。修正の回数も素材の出所も、担当者の記憶にあります。公開の判断は「動いているかどうか」で行われます。

レベル2:台帳やツールがある。プロジェクト管理ツールと素材フォルダがあります。ただし修正指示は複数チャネルに散り、素材台帳に出所の列がありません。

レベル3:一元化されている。素材が出所と利用条件を持ち、修正が変更IDで数えられ、送信項目と送信先が一覧になっています。そして機械検査と公開承認が別の工程になっています。ここまで来て、はじめてAIに整理と照合をさせる意味が出ます。

レベル4:AIが支援している。指示の統合・素材の照合・送信項目の一覧化・機械検査・未請求の抽出をAIが担い、人は合意・権利判断・公開承認・商務判断に時間を使っています。

レベル5:仕組みになっている。この業種のレベル5は「AIが公開判断をする」ことではありません。業務独占資格が無くても、公開してよいかの判断は人が持ちます。制作責任者が「判断すべきこと」だけに時間を使えている状態がレベル5です。指示の突き合わせ・素材の探索・リンクの確認に時間を使っていない。そして、公開後に「これは使ってよかったのか」と調べ直すことがありません。

12. よくある質問

QAを自動化すれば、公開までの工程は短くできますか。

技術的なQA——リンク切れ・表示崩れ・フォーム送信・レスポンシブ——は自動テストと監視で自動化できます。ただし、それが通ったことは「公開してよい」ことを意味しません。素材の権利、表示要件、データの取扱いは別の工程で人が判断します。工程を分けたうえで、前半だけを自動化するのが正しい順序です。

顧客支給の画像が生成AIで作られていたら、使えませんか。

本記事では、権利関係について断定的な結論を置きません。実務としては、①出所の申告を受けて記録する ②利用条件を記録する ③確認できていない点を明示する ④契約で扱いを定める——という受付・契約の論点として扱うことを勧めます。「問題ない」とも「使えない」とも言わないことが、現時点では誠実な扱いだと考えています。

外部送信規律は、うちが作るサイトすべてに関係しますか。

一律には適用されません。電気通信事業法第27条の12の名宛人は電気通信事業者又は第三号事業を営む者であり、かつ総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限られます。まず、対象となる役務に当たるかを確認してください。

フォームのデータを預かっている場合、監督義務はどちらにありますか。

監督義務の名宛人は委託元=顧客です(個人情報保護法第25条)。制作会社は委託先の側であり、「代わりに監督する」と説明しないでください。ただし、委託先自身に求められる安全管理の実務は自社に残ります。

修正回数を契約で決めているのに、なぜ守られないのでしょうか。

何を1回と数えるかが決まっていないからであることが多いようです。Figmaのコメント3件は1回でしょうか、3回でしょうか。変更IDを発番して数える単位を先に決めると、契約が機能し始めます。

13. 関連する業種の記事

シリーズの一覧は業種別AI活用からご覧いただけます。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じWeb制作会社でも、扱う案件の性質によって最初の一手は変わります。

コーポレートサイト中心の会社と、EC・LP中心の会社では、表示要件の重みがまったく違います。後者は情報設計の段階で確認する仕組みを先に作るほうが、手戻りが減ります。

この記事の内容を自社に当てはめるところから始めたい方は、次の診断をお使いください。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問サービス

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

より踏み込んだ伴走をご希望の方は、AI顧問サービスもご覧ください。個別のご相談はお問い合わせから承ります(30分の無料リモート面談)。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

目次