デイサービスのAI活用|提供記録と欠席の波及から始める

1日の流れの帯にある欠席の切れ目から、送迎・人員・食数の3つの受け皿へ波及が見えるデイサービスのAI活用イメージ
目次

1. 結論:デイサービスなら、何から始めるか

デイサービスでAIを使うなら、最初の一手は提供記録の草案づくりです。介助や活動の直後に音声やメモから草案を作り、原則として提供した職員が確認し、事業所の記録規程に従って確定する。次が欠席・状態変化の波及先を同時に出すこと、その次が提供記録と算定要件の照合です。

本記事では、介護保険の指定通所介護(利用定員19人以上)を行う事業所を主なモデルとして想定します。地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーションは基準が異なるため、そのまま当てはめないでください。

この順番になるのは、デイサービスの仕事が「利用者ごとの曜日で繰り返され、しかも一度に大勢を受け入れる」構造で動いているからです。1人の欠席や体調の変化が、いくつもの帳票へ同時に波及します(節3 Top 2)。

一方で、AIに渡せない領域もはっきりしています。介助も機能訓練も送迎の運転も、人が行います。当日の提供可否、身体的拘束等の要否、通所介護計画の作成も人が決めます(節6)。

介助そのものは人が行い、その周りの情報処理——記録・申し送り・送迎調整・配置・請求——は生成AIとルール処理の組み合わせが担える。この線を引くことが、この業種のAI活用の核です。生成AIが作るのは草案と候補まで、期限や人数の計算・要件との突合はルールや表計算の処理、確定するのは人——この原則は以下の節に通じています。

2. 業務全体の流れ

デイサービスの1日は、前日までの予定と当日の状態で動きます。

段階 主なこと
1. 相談・受入 ケアマネジャーの照会に曜日・送迎範囲・入浴設備・認知症対応の可否を答え、受け入れるかを決める
2. 契約・計画 重要事項と実費を説明し同意を得る。居宅サービス計画に沿って管理者が通所介護計画を作成し、説明・同意・交付する
3. 予定と配置 その日の利用者数に応じた職員の必要人数を出し、配置する
4. 送迎 ルートと乗車表を作り、当日の欠席や状態を見て確定し、運転・乗降介助・居宅内介助を行う
5. 受付 体温・血圧等と前回との差を見て、提供や入浴の可否を判断する
6. 介助・訓練・活動 入浴・排せつ・食事・移乗の介助、機能訓練、レクリエーション・見守り
7. 記録 提供した内容と状態観察を記録し、計画に対する実施状況・目標達成状況を残す
8. 連携・変更 家族・ケアマネジャーへ伝え、欠席・状態変化を予定へ反映する
9. 請求 確定記録と算定要件を照合し、介護報酬と利用者負担を請求する
10. 体制と保存 4つの体制(虐待防止・業務継続計画・感染症・非常災害)を義務ごとに回し、記録を保存する

この流れの特徴は、周期が「人の状態」で決まることです。

3. AI導入優先Top3

Top 1:音声・メモから提供記録の草案を作り、提供者が確定する

何をするか。介助や活動の直後に、音声やメモから「提供した内容・時間・状態観察・未実施の項目」を構造化した草案を作ります。原則として提供した職員が事実と表現を確認し、事業所の記録規程に従って記録として確定します。基準省令上の記録義務は事業者に課されたものであり(節9)、提供者の確認を確定の条件にするのは本記事が推奨する運用です。

ただし、「提供者が確定する」だけでは足りません。集団での活動や、複数の職員が入れ替わりで関わった介助では、確認する人が一人に決まりません。記録の項目ごとに確認者を決め(入浴は介助した職員、活動は進行した職員、送迎中の様子は乗務した職員)、そのうえで最終確定者を1人置きます。

なぜ最初か。作業量が大きく、1対多であるがゆえに後回しにされやすいのが記録です。記録の質が上がれば、請求・申し送り・報告の入力が同時に良くなります。

どう始めるか。1単位の、1日の、入浴の記録だけで試します。先に「入浴の記録に何分かかっているか」を測ってください。

何を測るか。

  • 記録の作成にかかる時間(利用者1人・1日あたり)
  • 草案の修正率
  • 必要な状態変化の記載漏れ率(受付のバイタル記録や申し送りと突き合わせて数えます)
  • 記録が申し送りにつながった件数

注意。草案は記録ではありません。AIが「入浴した」と書いても、入浴の証明ではありません。1対多の現場では、別の利用者の内容が草案に混ざることがあります。

音声を使う場合の運用。録音の目的と範囲を利用者・家族へ説明し、録音しない選択肢(メモ入力)を用意します。録音は場面ごとに開始・停止し、音声は草案が確定するまでの一時保存として、確定後は規程に従って削除します。私物端末での録音・保存はせず、組織が承認した端末に限ります(節9)。混同を防ぐため、音声に利用者名を含めず利用者IDで記録し、複数の利用者の会話を一度にまとめて投入しません。

Top 2:欠席・状態変化の波及先を同時に出し、必要人数を再計算する

何をするか。欠席・振替・時間変更を受けたら、送迎ルート・乗車表・食数と食材の発注・入浴順・配置・単位ごとの人数に加えて、家族への連絡、ケアマネジャーへの報告、キャンセル料の扱いまで影響先を一覧にします。あわせて、その日の利用者数と、職員の資格・勤務時間・送迎中の不在・入浴介助や個別機能訓練への専従から、介護職員・看護職員・生活相談員の必要人数を再計算し、基準に足りない日や定員超過を警報します。この再計算と警報は、条文を設定に落としたルールエンジンや表計算・介護ソフトの処理が主役です。生成AIに寄せるのは、欠席連絡の文面から「誰が・いつ・どう変わるか」を抜き出し、波及先を整理することです。必要人数は頭数ではなく、提供時間帯に実際に配置できる人で数えます。

なぜ2番目か。欠席は毎日起きます。帳票が利用者IDと日付で結ばれていれば波及先の抽出は機械的にでき、人員基準の未達を事後に知る事態を減らせます。Top 1とは独立に始められます。

どう始めるか。欠席の連絡を1枚の共通フォームで受けることから始めます。波及先を並べ、誰がいつ更新したかを残します。波及先ごとに、自動で更新する範囲と人の承認が要る範囲を分けてください。乗車表や食数は自動更新でも、家族連絡・ケアマネジャーへの報告・キャンセル料は人が承認します。必要人数の再計算は、単位の定義・一体運営の有無・常勤要件の設定を人が確認してからにしてください。

何を測るか。

  • 欠席連絡から各帳票の更新までの時間
  • 食数・乗車の伝達漏れの件数
  • 人員基準の未達が事後に判明した日数

注意。乗車表の最終確認、最終的な配置、変更の合意は人が行います。設定が誤っていれば警報も誤るので、警報が出ないことを「基準を満たしている」と読まないでください。

Top 3:提供記録と算定要件を照合し、未確認事項と加算の候補を出す

何をするか。確定記録・所要時間の区分・送迎の実績・加算の要件・減算の事由を照合し、不整合、未確認の事項、算定していない加算の候補に加えて、誤算定・重複算定・算定根拠が記録で裏づけられない項目、該当し得る減算の見落とし、請求内容と提供実績の不一致の候補を出します。取りこぼしだけを見る仕組みにしないでください。要件との突合は請求ソフトやルール表の処理で、生成AIは記録の自由記述と算定根拠の対応づけを担います。返戻は原因を分類します。

なぜ3番目か。単価を自由に決められない業種で、記録の質が採算に直接返ってくる領域です。Top 1で記録が構造化されていれば、照合はその延長で実装できます。

どう始めるか。直近1か月の請求について、記録との照合をAIと人の両方で行い、差を見ます。出力は「照合表と未確認事項」に限り、「算定できる」という出力を作らないでください。

何を測るか。

  • 返戻・過誤の件数
  • 請求業務にかかる時間
  • 照合で見つかった未算定・誤算定・重複算定・根拠不足・減算事由の見落とし・実績との不一致の件数

注意。算定の可否と例外の確認は人が行います。算定要件は改定で変わり、照合に使う要件の版が古ければ結果も古くなります。

4. AIに任せやすい仕事

この業種でAIが主に担えるのは、次のような性質の作業です。数値の計算や要件との突合はルール・表計算の処理が主役です(節1)。

性質 デイサービスでの具体例
形を整える ケアマネジャーの照会を曜日・送迎範囲・介助内容に分ける。利用者台帳から場面別の要点を抜き出す。音声・メモから記録の草案を作る
照らし合わせる 欠席連絡の文面から変更内容を抜き出し、必要人数の再計算(ルール・表計算の処理)へ渡す。確定記録の自由記述と算定要件の根拠を対応づける
違いを見つける 受付の体温・血圧等の前回・平常値との差(数値比較はルール処理)を本人の訴えと合わせて整理する。一定期間の記録から状態変化・未実施の差分を作る
足りないものを探す 計画の未実施項目、保存されていない記録、算定根拠が記録から読み取れない項目、算定していない加算の候補を抽出する
下書きを作る 送迎ルートと乗車表の案、利用者請求書、事故や身体的拘束等の所定項目の記録案を起こす
探し出す 急変や転倒の場面で、手順・連絡先・その利用者の禁忌を即時に提示する

5. AI支援に向く仕事

次は、AIが案を出し、人が確認してから使う領域です。

  • 通所介護計画の案——目標と内容の案は作れます。作成・説明・同意は管理者が行います
  • 個別機能訓練計画の案と評価材料——実施記録から評価の材料を整理できます。作成・評価は機能訓練指導員等が共同で行います
  • 受入可否の照合表——定員・曜日・送迎範囲等との照合表は作れます。受け入れるかは責任者が決めます
  • 4つの体制の実施予定と期限——次回期限の計算と通知は台帳・カレンダーの処理で足ります。指針の整備や計画の実効性は人が判断します

確認を挟むことは、手間ではなく設計です。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方の原則は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。

身体で行う実施

介助・機能訓練・見守り・送迎の運転と乗降介助は、人が行います(節1)。介助中に内容を変える・中止する・応援を呼ぶ判断も、その場の人が行います。

制度上、配置と役割が定められている担い手

  • 通所介護計画の作成・説明・同意・交付は管理者が行います(節9)
  • 機能訓練は機能訓練指導員が担います。人員基準上は「訓練を行う能力を有する者」とされます(節9・節12)
  • 身体的拘束等は緊急やむを得ない場合を除き行えず、行う場合は所定の記録が要ります(節9)。要否の判断は人が行います
  • 虐待防止の体制と、職員による虐待を疑ったときの市町村への通報は制度上の義務であり(節9)、AIが判断するものではありません

これらは「制度上、配置と要件が定められた役割」であって、「その人しか業務を行えない独占資格」ではありません。管理者以外が計画の案を作ることを制度が禁じているわけでもありません。

会社として責任を持つ判断

  • 受入の可否と条件——正当な理由なく提供を拒めないという規定のもとで、定員・配置・安全から決めます
  • 当日の提供可否・入浴可否・医療連携の要否——看護職員が関わる判断です。AIは差分と判断材料を提示するまでです
  • 最終的な配置——必要人数はルール・表計算の処理で出せますが、利用者の状態・相性・職員の経験を含めて決めるのは人です
  • 提供記録の確定——記録の項目ごとに確認者を決め、最終確定者を1人置きます(節3 Top 1)
  • 変更の合意家族・ケアマネジャーへ何をいつ伝えるか算定の可否受入方針・定員・送迎範囲

「AIが90%正しくても、人が全部確認する仕事がある」

提供記録がそれです。請求の根拠であり、事故時の証跡であり、保存対象であるなら、精度にかかわらず提供者が確認する意味があります。

7. Best Practice

到達点として、次の構造を示します。本シリーズにおける実務上の整理です。

ひとつ。実施と記録を分け、AIが作った草案と提供者が確認した記録を状態として分ける。確定記録から請求・申し送りが起きる状態です。

ふたつ。欠席・状態変化をイベントとして波及先へ同時に伝える。利用予定・乗車表・食数表・入浴順・勤務表が、同じ利用者IDと日付で結ばれている状態です。

みっつ。4つの体制を別々の義務として管理し、減算とは切り離さずに見る。似た構成(委員会・指針・研修)を持ちますが、根拠条文は独立しています(節9)。

よっつ。制度・要件の照合は「確認事項」を出し、「適用の可否」を出さない。

8. Before / After

Before。朝、欠席の電話を受けた人が送迎担当と厨房に声をかける。記録は帰りの送迎が終わってから、その日の分をまとめて書く。月末に記録を集めて請求ソフトに入れる。

1対多の現場では、1人の記録を書いている間に別の利用者の対応が要ります。

After。欠席の連絡は共通フォームで受けられ、波及先が同時に出る。必要人数はルール処理で再計算される。乗車表の案はAIが作り、送迎責任者が当日の状態を見て確定する。介助・訓練・送迎は人が行い、その直後に草案ができ、項目ごとの確認者と最終確定者を経て記録になる。確定記録から、請求・申し送り・報告が起きる。

変わるのは記録の速さだけではありません。節1で引いた線が、日々の業務に組み込まれていることです。

9. 法令・規制・情報管理

人員・設備・運営の基準は、介護保険法に基づき都道府県の条例で定められ、国の基準省令(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)がその土台です。所在地の条例・指定権者の通知の確認が前提になります。

対象の区分

介護保険法上の「通所介護」は、居宅の要介護者を施設に通わせ、入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話および機能訓練を行うもので、利用定員が19人以上のものを指します(認知症対応型通所介護を除く)。

人員基準と配置

基準省令の通所介護の章では、事業所ごとに次の従業者を置くこととされています。

職種 員数の考え方
生活相談員 提供日ごとに、提供時間帯を通じて1以上が確保される数
看護職員 単位ごとに1以上
介護職員 単位ごとに、利用者数が15人までは1以上、15人を超える場合は超える部分を5で除した数に1を加えた数以上(提供時間帯の勤務時間数をもとに計算)
機能訓練指導員 1以上。他の職務との兼務可

単位ごとに介護職員を常時1人以上従事させること、生活相談員または介護職員のうち1人以上を常勤とすること、専従・常勤の管理者を置くこと(管理上支障がない場合は兼務可)、利用定員を超えて提供しないこと(災害等のやむを得ない事情を除く)も定められています。Top 2の再計算は、この条文を設定に落とす作業です。

個別機能訓練加算を算定する場合の機能訓練指導員は、留意事項通知で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(はり師・きゅう師は所定の経験を要する)とされています。人員基準の要件と加算の要件は別のもの——両者を混同しない、というのが本記事の整理です。

計画と記録

通所介護計画は管理者が作成し、居宅サービス計画に沿い、利用者・家族へ説明して同意を得、利用者へ交付します。従業者は利用者ごとに実施状況と目標の達成状況を記録し、提供した際には提供した具体的なサービスの内容等を記録します。誰が確定操作を行うかと、記録の項目ごとの確認者は、事業所の記録規程で定めます(節3)。

記録は6種類(通所介護計画、提供内容、身体的拘束等、市町村への通知、苦情、事故)を整備し、完結の日から2年間保存します。基準は条例で定まるため、所在地の条例で保存期間が長く定められている場合があります。

4つの体制と減算

虐待の防止(委員会・指針・研修・担当者)、業務継続計画(策定・周知・研修と訓練・見直し)、感染症対策(委員会をおおむね6月に1回以上・指針・研修と訓練)、非常災害対策(具体的計画・定期的な避難救出訓練)は、それぞれ独立した義務です。

介護報酬上は、令和6年度改定で高齢者虐待防止措置未実施減算業務継続計画未策定減算が設けられています。留意事項通知では、虐待防止の減算は「虐待が発生した場合ではなく、措置を講じていない場合」に利用者全員について適用されると説明されています。一方、感染症対策と非常災害対策は基準省令上の義務であり、対応する独立の減算があるとは本調査では確認していません。減算の率は、告示の本文を確認していないため記載していません。

送迎

実施地域外の利用者に利用者の選定で行う送迎の費用、食費、おむつ代等は利用者から受けることができ、あらかじめ説明して同意を得ます。従業者が居宅と事業所の間の送迎を行わない場合は、留意事項通知上、片道につき減算の対象です。送迎時に居宅内で行った着替え・移乗・戸締まり等の介助の時間は、要件を満たす場合に1日30分以内を限度として所要時間に含められます。

道路運送法は、他人の需要に応じ有償で旅客を運送する事業を許可制とし、自家用自動車の有償運送を原則として禁じています。送迎がこれに当たるかは、費用の受領形態や委託の形態によります。本記事では該当性を断定しません。

高齢者虐待防止法

居宅サービス事業の従事者は「養介護施設従事者等」に当たり、自らが従事する事業所等での虐待を受けたと思われる高齢者を発見したら、速やかに市町村へ通報しなければなりません。通報を理由とする不利益取扱いは禁止され、事業者には研修や苦情処理体制の整備等が求められます。

個人情報

要介護度・疾患・服薬・認知の状況は、病歴を含む要配慮個人情報に触れ得ます。利用目的をできる限り特定し、その範囲を超えて扱うには本人の同意が要ります。ケアマネジャー・主治医・家族へ渡す場合や送迎を委託する場合は、それが第三者提供・委託その他のどの類型に当たるかを確認し、必要な同意・通知・契約・委託先の監督等を行います。

AIへ投入してよい情報は、次で線を引きます。

  • 投入する情報を必要最小限にする
  • AI事業者が入力データを学習に使わない設定・契約になっているか
  • 保存期間と削除の方法
  • 契約上の機密保持とデータの取扱条件
  • アクセス権限と操作ログが残るか
  • 再委託・国外保存など、自社の規程上あらかじめ決めておくべき事項

そのうえで、利用者の情報を扱うのは組織が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。1対多の空間で音声を扱う場合は、他の利用者・家族の会話が含まれることを前提に同意の取り方を決めてください。

職員の保護——現行と施行前

事業者は、性的な言動や優越的な関係を背景とした言動によるハラスメントを防止する措置を講じることとされ、労働施策総合推進法もパワーハラスメントについて相談体制の整備等の雇用管理上の措置を求めています(現行)。

これに加え、施行前の改正として、顧客等(施設の利用者を含む)の言動に起因する問題について雇用管理上の措置を事業主に求める規定があります。指針は、顧客等の言動・社会通念上許容される範囲を超えること・労働者の就業環境が害されることの三つの要素で定義し、苦情のすべてが該当するわけではないとしています。現時点の義務としてではなく、施行に備える論点として扱ってください。利用者・家族への対応と職員を守る相談体制を分けて設計する、というのが本記事の整理です。

法令・制度の記述について

※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自社の具体的な条件を確認してください。

10. 最初の30日プラン

1週目:測ることから始めます。

1単位の提供記録と欠席の波及を対象にします。測るのは、①記録の作成にかかった時間(利用者1人・1日あたり) ②欠席連絡から乗車表・食数表・入浴順の更新までの時間 ③必要な状態変化の記載漏れと、記録から申し送りにつながった件数。この週はAIを使いません。

2週目:ルールを決めます。

記録の「草案」と「確定」を分け、原則として提供した職員がその日のうちに確認し、記録の項目ごとの確認者・最終確定者・確定操作を行う人を事業所の記録規程に明文化します。欠席連絡の共通フォームと波及先、自動更新と承認の境目を決めます。必要人数の計算の設定を条文と所在地の条例で確認し、AIへ投入してよい情報の線引き、音声の同意の取り方、記録の保存期間(所在地の条例)を決めます。

3週目:低リスクな範囲でAIを使います。

過去の記録で試し、進行中の提供でいきなり使わないでください。波及先の抽出は過去1週間の欠席で試します。出力はすべて草案・候補として扱います。

4週目:同じ測り方で比べます。

1週目と同じ項目を再計測します。③の記載漏れが減り、申し送りにつながった件数が増えていれば記録の質が上がっています。草案の修正率が高いなら、草案の項目が場面に合っていません。30日で全事業所は変わりません。変わるのは、次に何をすべきかが分かることです。

11. AI活用成熟度

自社がどの段階にあるかを判定してみてください。

レベル1:人に依存している。利用予定・乗車表・食数表・勤務表が別々の紙や表計算にあり、欠席は口頭で伝わります。記録は手書きです。

レベル2:台帳やツールがある。介護ソフトで記録と請求が連動しています。ただし送迎・食数・配置はソフトの外にあり、記録は「書いて終わり」です。

レベル3:一元化されている。利用者IDと日付で、予定・乗車表・食数・配置・記録・計画・請求がつながっています。ここまで来て、はじめてAIに波及抽出と草案作成をさせる意味があります。

レベル4:AIが支援している。記録草案・波及先の抽出・乗車表案・算定根拠の対応づけを生成AIが、必要人数の再計算・要件との突合をルール処理が担い、人は受入可否・計画・最終配置・提供可否・介助・訓練・記録の確定に時間を使っています。

レベル5:仕組みになっている。この業種のレベル5は「AIが介護をする」ことではありません。職員が「利用者の前にいる時間」と「判断する時間」に集中できている状態です。記録が請求・申し送り・連携に返っています。

12. よくある質問

AIが作った記録の草案を、そのまま記録にしてはいけないのですか。

基準省令が求めているのは「提供した具体的なサービスの内容等の記録」であり、草案は提供の証明ではありません。確認者と確定の運用は節3・節9のとおりです。

機能訓練指導員は理学療法士でなければならないのですか。

人員基準上は「訓練を行う能力を有する者」とされ、職種名では限定されていません。理学療法士等の範囲は、個別機能訓練加算を算定する場合の要件です(節9)。

感染症対策の委員会を開いていないと、減算になりますか。

本調査の範囲では、感染症対策に対応する独立の減算は確認していません(節9)。減算の有無にかかわらず、委員会(おおむね6月に1回以上)を含む基準省令上の義務であることは変わりません。

13. 関連する業種の記事

同じ介護でも、提供の場所と同時に受け入れる人数が違うと、AIの効き方が変わります。

  • 訪問介護事業所のAI活用——利用者の居宅で1対1に提供する業態です。記録草案を提供者が確認する構造は共通で、欠席の波及が1件で済む点が対照的です
  • 歯科医院のAI活用——「処置の実施」と「診療録の確定」を分ける構造が、デイサービスの「介助の実施」と「提供記録の確定」と同じ形です

シリーズの一覧は業種別AI活用からご覧いただけます。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じデイサービスでも、情報の整理状況によって最初の一手は変わります。記録が手書きの事業所と、介護ソフトはあるが送迎・食数が別管理の事業所では、前者は「入浴の記録を1単位で草案化する」、後者は「欠席の共通フォームに波及先を並べる」から始めるほうが無理がありません。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問サービス

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

より踏み込んだ伴走をご希望の方は、AI顧問サービスもご覧ください。個別のご相談はお問い合わせから承ります(30分の無料リモート面談)。

最終更新日: 2026年8月27日/内容確認日: 2026年8月27日

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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