1. 結論:人材派遣会社なら、何から始めるか
人材派遣会社でAIを使うなら、最初の一手は抵触日の管理です。事業所単位と個人単位の2つの期限を2軸で台帳に持つ。次が契約前の法定確認の照合、その次が確定勤怠を請求・給与・台帳の共通根拠にすることです。
本記事では、労働者派遣事業の許可を受け、事務・製造・軽作業・IT等の一般的な派遣を行う派遣元事業主を主なモデルとして想定します。人材紹介や採用代行のように労働者を雇用しない事業、請負専業は範囲外です。
この順番になるのは、派遣元の仕事が「派遣先と派遣労働者の双方に対する責任が、就業が始まってからも続く」構造で動いているからです。
そして、記事全体を貫く原則を先に言います。派遣できるかどうかを、AIは確定しません。AIが作るのは、法令の要件と依頼の事実を突き合わせた「照合表」と「まだ確認できていないこと」の一覧までです。可否を決めるのは派遣元の責任者です。AIが作るのは候補と草案、確定するのは人。以下の各節は、この原則の各工程への当てはめです。
2. 業務全体の流れ
派遣元の仕事は、派遣先からの依頼と登録者の応募という二つの入口から始まり、就業が始まってから長く続きます。
| 段階 | 主なこと |
|---|---|
| 1. 依頼受付 | 派遣先から業務内容・就業場所・組織単位・期間・時間を聞く |
| 2. 契約前の法定確認 | 派遣できる業務か、日雇いや離職後1年に当たらないか、抵触日の通知と待遇情報を受け取っているかを確かめる |
| 3. 契約・料金 | 労働者派遣契約を結び、料金を交渉する |
| 4. 登録・マッチング | 登録者の情報を整え、候補を出し、本人の意思を確認する |
| 5. 待遇・雇入れ | 労使協定方式か派遣先均等・均衡方式かで待遇を決め、雇い入れる |
| 6. 明示・通知・台帳 | 就業条件を明示し、派遣先に通知し、派遣元管理台帳を作る |
| 7. 就業中の管理 | 抵触日、勤怠、給与、請求、欠勤・交代、契約変更、苦情、教育訓練 |
| 8. 更新・終了 | 雇用安定措置を講じ、更新・終了・再配置を判断する |
| 9. 年度の報告 | 事業報告、マージン率等の公開、許可の更新 |
流れの特徴は、「成約が終わりではない」ことです。しかも法令上の期限(抵触日、許可の有効期間、事業報告)が業務を区切ります。
3. AI導入優先Top3
Top 1:抵触日を「事業所」と「組織単位×派遣労働者」の2軸で持ち、期限キューを出す
何をするか。派遣先から通知された事業所単位の抵触日を派遣先事業所IDに、個人単位の抵触日を組織単位と派遣労働者IDの組に紐づけて登録し、3か月前・1か月前の期限一覧と雇用安定措置の対象者を同じ台帳から出します。期限の計算と一覧の出力は台帳のルール処理で、AIが担うのは契約書・通知書からの日付と組織単位の抽出です。
なぜ最初か。期間制限を超えると派遣元自身の違反になり、派遣先には労働契約の申込みをしたものとみなされる効果が及びます(節9)。帰結が重い一方で、手元の契約書と通知書だけで始められます。そして抵触日は、契約の継続や配置転換を検討する重要な期限でもあります。
どう始めるか。主要な派遣先1社について、事業所単位の抵触日(通知書の日付)と、そこに派遣している全員の組織単位・開始日・個人単位の抵触日を1枚の表にします。
何を測るか。
- 抵触日を超過した件数(ゼロを維持する)
- 1か月前に対応方針が決まっている割合
- 雇用安定措置を講じていない対象者の件数
注意。派遣先が延長の通知をしてきても、動くのは事業所単位だけです。個人単位の抵触日は、開始日に3年を足せば決まるものではありません。無期雇用か、60歳以上か(節9)、組織単位を実態としてどう認定するか、派遣していない期間をどう扱うかを確認したうえで台帳に登録します。AIが抽出した抵触日は「候補」です。通知書の原本と組織単位の認定を、原則として派遣元責任者が確認してから明示書に使う運用を、本記事では推奨します。
Top 2:契約前の法定確認を、案件の「状態」として持つ
何をするか。新規の依頼ごとに、①派遣できない業務に当たらないか ②30日以内の雇用(日雇派遣)に当たらないか ③候補者が派遣先を離職して1年以内でないか ④抵触日の通知を受け取ったか ⑤待遇情報を受け取ったか——の5項目を、依頼の記述・候補者の職歴・届いた書面から照合し、「該当候補」と「未確認」を分けて一覧にします。この5項目は本記事でまず管理する主要項目であり、契約前に確認すべき事項の全部ではありません。
なぜ2番目か。照合の相手となる要件が法令・政令に書かれているので、照合表の生成が設計しやすい領域です。効果は違反の防止と、派遣先への確認の往復の減少として案件ごとに見えます。
どう始めるか。新規依頼1件ごとに、主要5項目の状態欄(未確認/照合済み/責任者確認済み)を案件シートに付け、「責任者確認済み」でなければ派遣を開始しない運用とセットにします。
何を測るか。
- 依頼を受けてから法定確認が完了するまでの日数
- 未完了のまま派遣を開始した件数(ゼロを目標にする)
- あとから確認漏れが判明した件数
注意。節1の原則が特に効く場所です。業務内容の記述が曖昧なまま、AIの「該当なし」を答えにしないでください。通知や待遇情報が届いていなければ、そもそも契約を結べません(節9)。
Top 3:確定勤怠を、請求・給与・台帳の共通根拠にする
何をするか。派遣先ごとに異なる締め日と様式で集まるタイムシートを契約の就業日・時間と突き合わせ、派遣先から毎月届く通知とも照合して差異を出します。時間外・深夜・休日の区分と集計は勤怠システムのルール処理で、AIは様式の異なるタイムシートの読み取りと差異の原因候補の整理を担います。人が差異を解消して「確定勤怠」にし、そこから請求と給与を組み、派遣元管理台帳も更新します。
なぜ3番目か。月次の作業量が大きく、突合と差異抽出の代表例です。請求と給与のずれ、台帳の記載漏れ、年度のマージン率の集計誤りを同時に減らせます。Top 1・Top 2が案件単位、これは会社単位の月次業務の改善です。
どう始めるか。直近1か月・派遣先1社分について、タイムシート・派遣先からの月次通知・請求・給与の4つを突き合わせ、差異の件数と原因を数えます。
何を測るか。
- 請求と給与の差異件数
- 派遣先の月次通知と台帳の差異件数
- 請求書の修正再発行の件数
注意。確定前の勤怠を請求の根拠にしないでください。支給額と請求金額の承認は、それぞれの責任者が行います。
4. AIに任せやすい仕事
AIが主に担えるのは、次の性質の作業です。
| 性質 | 派遣元での具体例 |
|---|---|
| 形を整える | 依頼メールやオーダー票を法定の項目に整える。登録者の職歴と希望条件を検索できる形にする |
| 照らし合わせる | 依頼の業務を派遣できない業務の一覧と照合する。候補者の職歴と派遣先名を突き合わせる。労使協定の賃金表と案件の職種・地域を当てはめる |
| 違いを見つける | 契約書の前回版との差分、タイムシートと契約時間の差異、派遣先の月次通知と台帳の不一致を出す |
| 足りないものを探す | 契約に定めるべき事項の欠落、未提出のタイムシート、未受講の教育訓練を抽出する |
| 下書きを作る | 契約データから明示書・通知書・台帳の初期記載の案と、請求内訳の説明文を組む |
| 探し出す | 欠勤の連絡を読み取り、代替候補を抽出して離職後1年の再照合の候補まで並べる |
共通するのは、照合の相手が手元にあり、候補として出せば人が短時間で確認できることです。なお、期限計算と期限一覧、IDの採番、勤怠・給与・請求の金額計算は台帳やシステムのルール処理で行い、AIは自由記述からの抽出、候補提示、下書き、未確認事項の整理に寄せます。
5. AI支援に向く仕事
次は、AIが案を出し、人が確認してから使う領域です。
- 派遣料金の見積——賃金・法定福利費・有給休暇・教育訓練・管理費の積み上げ(計算は表計算やシステムで)から、試算の説明案を作れます。派遣先と交渉するのは人です
- 待遇の候補——労使協定方式なら賃金表への当てはめ、派遣先均等・均衡方式なら派遣先の待遇情報との差異一覧まで出せます。確定は雇用主としての判断です
- 候補者の絞り込み——条件の一致と不一致は並べられます。打診の順序と本人の意思確認は人が行います。AIのスコアを採否として扱わないでください。見送った候補だけでなく、AIが高く評価した候補も抜き取りで確認すると、評価の偏りに気づけます
- 契約変更・中途解除の影響整理——契約・明示書・台帳・請求・抵触日のどこに波及するかを並べられます。休業手当や再配置の判断は責任者が行います
6. 人に残す仕事・判断
線の引き方の原則は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。
制度上、役割が定められている人——派遣元責任者
労働者派遣法は、派遣元事業主に派遣元責任者の選任を義務づけています(第36条)。明示・通知・台帳に関すること、助言・指導、苦情処理、個人情報管理、教育訓練とキャリア相談の機会確保、安全衛生についての派遣先との連絡調整が、その職務です。事業所ごとに専属で、派遣労働者100人以下で1人以上、100人を超えると人数に応じて増え、製造業務へ派遣する事業所では製造業務専門の責任者を別に置きます(同法施行規則第29条)。要件には、過去3年以内の派遣元責任者講習の修了が含まれます(同規則第29条の2)。
大切なのは、派遣元責任者は「制度上、配置と要件が定められた役割」であって、独占資格ではないことです。第36条が定めるのは職務の範囲で、確定の操作を行う者までは定めていません。本記事では、明示書を組む、台帳に転記する、苦情を記録する作業は他の担当者やAIが行い、派遣元責任者が確認して交付する、台帳の記載を確定する、苦情への対応方針を決める運用を推奨します。この業種に、有資格者でなければ行えない行為はありません。
会社として責任を持つ判断
- 派遣できるか、どの契約形態にするか——照合表を見て決めるのは責任者です
- 抵触日以降の対応方針——継続するか、組織単位を変えるか、無期雇用への転換を進めるか。実態を伴わない組織単位の変更を、期間制限の回避に使わないでください。名称だけを変えても、個人単位の期限は同じ組織単位として扱う判断が要ります
- 待遇の確定と、待遇差の説明——労使協定を結び、個々の待遇を決め、求めがあれば理由を説明する
- 本人の就業意思の確認——面談で意思と懸念を聞く対話そのものが業務です
- 料金交渉、契約の締結、請求と支給の承認、更新・終了
「AIが90%正しくても、人が全部確認する仕事がある」
たとえば就業条件明示書です。そこに書かれた抵触日を根拠に派遣労働者は働くため、派遣元責任者が交付前に確認する意味があります。精度ではなく、書面の効力の問題です。
7. Best Practice
到達点として、次の3つの構造を示します。これは本記事における設計上の整理です。
ひとつ。契約前の法定確認事項が、「受け取っていなければ進めない」ゲートになっている。主要5項目が案件の「状態」として付き、未完了なら派遣開始へ進めない構造です。
ふたつ。抵触日が2軸で持たれ、雇用安定措置と同じ期限キューで動いている。3年の見込みがある人への雇用安定措置が、個人単位の抵触日の手前で同じ一覧から出ます。
みっつ。確定勤怠が請求・給与・台帳の共通根拠になっている。そこから請求・給与・台帳の更新と、年度のマージン率の集計が出ます。
8. Before / After
Before。依頼は電話とメールで受け、営業が候補者に打診して開始日を決めてから、契約書と抵触日の通知を揃える。抵触日は個別契約書の期限欄で見て、更新のたびに派遣先へ聞く。派遣先からの月次通知はファイルに綴じる。請求は営業事務が、給与は労務担当が、別々の元データから作り、月末に差異を電話で確かめる。
この流れには理由があります。派遣先は「明日から来てほしい」と言い、登録者は他社と比べています。速さを優先すれば、法定確認が後追いになるのは自然です。
After。依頼は受付時に案件IDを持ち、契約前確認の主要5項目の状態が案件に付く。抵触日は2軸で台帳に登録され、期限一覧が雇用安定措置の対象者と同時に出る。明示書・通知書・台帳は契約データから組まれ、派遣元責任者が確認して交付する。請求と給与は確定勤怠から作られる。
変わるのは「確認する項目」ではなく、「確認した状態が、案件・派遣労働者・派遣先に属性として付いているか」です。
9. 法令・規制・情報管理
派遣元に効く制度を、誰に義務があるかという観点で整理します。義務者を取り違えると運用設計を誤ります。
派遣期間の制限と抵触日
- 事業所単位——派遣先は、事業所ごとの業務について派遣可能期間(3年)を超えて継続して派遣を受け入れてはなりません(労働者派遣法第40条の2第1項・第2項)。延長には抵触日の1か月前までの過半数労働組合等への意見聴取が要り、延長したときは新しい抵触日を派遣元へ通知します(同条第3項・第4項・第7項)。派遣元も抵触日以降に継続して派遣を行ってはなりません(同法第35条の2)
- 個人単位——派遣元は、同じ派遣労働者を同じ組織単位へ3年を超えて派遣してはなりません(同法第35条の3)。事業所単位を延長しても個人単位は延びません(同法第40条の3)
- 通知と明示——派遣先は新たな契約の締結前に事業所単位の抵触日を派遣元へ通知しなければならず、通知がなければ派遣元は契約を結べません(同法第26条第4項・第5項)。派遣元は派遣に際し、両方の抵触日と、違法派遣の場合のみなし制度の旨を派遣労働者に明示します(同法第34条第1項・第3項)
- みなし制度——派遣先が派遣できない業務への従事、期間制限違反、請負などの名目による受入れを行った場合、派遣先が派遣労働者へ労働契約を申し込んだものとみなされます(同法第40条の6第1項)。義務者は派遣先ですが、派遣元の確認漏れが派遣先との関係を直接壊します
- 無期雇用の派遣労働者や60歳以上の方などは期間制限の対象外です(同法第40条の2第1項各号)
契約前に確かめること
- 派遣できない業務——港湾運送・建設・警備と、政令で定める医療関係の業務には派遣できません(同法第4条第1項、同法施行令第2条)。医療関係は「一律に禁止」ではなく、紹介予定派遣など例外があります
- 日雇派遣——日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣は原則禁止で、政令業務と60歳以上・学生・一定収入以上などの例外があります(同法第35条の4、同法施行令第4条)
- 離職後1年——派遣先を離職して1年以内の人を、その派遣先へ派遣することはできません(同法第35条の5、第40条の9)
- 待遇情報——派遣先は契約締結前に比較対象労働者の待遇情報を派遣元へ提供しなければならず、提供がなければ派遣元は契約を結べません(同法第26条第7項・第9項)
待遇の決め方と説明
派遣元は、派遣労働者の待遇について、派遣先の通常の労働者との間に不合理な相違を設けてはなりません(同法第30条の3)。過半数労働組合等との書面協定で賃金の決定方法などを定めた場合は、協定対象の派遣労働者について別の仕組みで待遇を決めます(労使協定方式。同法第30条の4)。協定を守らない、公正な評価に取り組んでいない場合は前者に戻ります。登録時・雇入れ時・派遣時の待遇の説明と、求めに応じた待遇差の説明は派遣元の義務です(同法第31条の2)。
明示・通知・台帳と、派遣先からの通知
派遣元は派遣に際し、就業条件を派遣労働者に明示し(同法第34条)、氏名・協定対象かどうか・社会保険等の資格取得届の提出の有無などを派遣先に通知し(同法第35条)、派遣元管理台帳を作成して3年間保存します(同法第37条)。派遣先は、派遣先管理台帳の就業日・時刻・苦情処理の状況などを1か月ごとに1回以上派遣元へ通知します(同法第42条第3項、同法施行規則第38条)。派遣先管理台帳の作成は派遣先の義務で、派遣元は通知を受け取って突き合わせる側です。
雇用安定措置・教育訓練・情報提供
- 同じ組織単位に1年以上の派遣見込みがある有期雇用の派遣労働者等には雇用安定措置を講ずるよう努め、3年の見込みがある人には講じなければなりません(同法第30条)
- 段階的かつ体系的な教育訓練と、キャリア相談の機会の確保は派遣元の義務です(同法第30条の2)
- 派遣元は、派遣労働者数、派遣先数、マージン率、教育訓練に関する事項などを、インターネット等で情報提供しなければなりません(同法第23条第5項、同法施行規則第18条の2)。マージン率は派遣料金の平均額と賃金の平均額との差を料金平均額で除した指標で、社会保険料・教育訓練費・有給休暇費用・管理費等を含み得るため、会社の粗利率・利益率そのものではありません
施行前の改正(2026年10月1日)
未施行の改正が2つあります。いずれも現時点の義務ではなく、施行日に向けて準備する事項です。
- カスタマーハラスメント・求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置——労働施策総合推進法等の改正法が2025年6月11日に公布され、これらの防止措置は2026年10月1日に施行されます。「顧客等」には取引の相手方が含まれ、事業主には方針の明確化、相談体制、事後対応などの措置が求められる規定です。求職者等には求人への応募者が含まれるため、派遣元では登録者との面談のルール化や相談窓口の周知が論点です。派遣先での顧客からの言動について派遣元と派遣先がどう分担するかは、施行後の条文で確認が必要です
- 雇入れ時・派遣時の明示事項の追加——2026年4月28日公布の改正省令により、2026年10月1日から、明示事項に「待遇の相違の内容と理由等について説明を求めることができる旨」が加わります。明示書の様式は施行日前後で版を分けます
個人情報
派遣元は、派遣の業務の目的に必要な範囲で個人情報を収集し、その範囲で保管・使用しなければなりません(同法第24条の3)。扱う情報には賃金、社会保険、健康診断の結果、苦情の内容が含まれます。利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法第17条第1項)、その範囲を超えて扱うには本人の同意が要ります(同法第18条第1項)。健康診断の結果や病歴は要配慮個人情報に当たり得ます(同法第2条第3項)。
外部へ情報を渡す場合は、それが第三者提供・委託その他のどの類型に当たるかを確認し、必要な同意・通知・契約・委託先の監督等を行います(同法第27条第1項、第25条)。派遣先へ渡す情報は、法令の通知事項のほかは派遣就業に必要な範囲に限ります。
AIへ投入する情報は、次の条件で線を引きます。
- 投入する情報を必要最小限にする(候補の照合に健康情報・苦情内容を使わない)
- AI事業者が入力データを学習に使う設定・契約になっていないか
- 保存期間と削除の方法
- 契約上の機密保持とデータの取扱条件(派遣先の待遇情報を他の案件に使わない)
- アクセス権限と操作ログ
- 再委託・国外保管など、自社の規程上決めておくべき事項
そのうえで、登録者・派遣労働者の情報を扱うのは、会社が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。
法令・制度の記述について
※法令・制度に関する記述は、内容確認日時点の一般的な整理です。実際の適用は、業務内容、契約関係、事業規模、地域、施行時点の法令・行政解釈等によって異なります。重要な判断は、最新の一次情報と自社の具体的な条件を確認してください。
10. 最初の30日プラン
1週目:測ることから始めます。
対象は、進行中の全案件の抵触日と、直近1か月・派遣先1社分の勤怠・請求・給与です。測るのは、①事業所単位・個人単位の両方が台帳に記録されている派遣労働者の割合 ②直近3か月の新規依頼のうち、契約前確認の主要5項目が派遣開始前に完了していた件数 ③勤怠・月次通知・請求・給与の間の差異件数と原因。この週はAIを使いません。
2週目:ルールを決めます。
案件ID・派遣労働者ID・派遣先事業所IDの採番と、抵触日の2軸の登録項目を決めます。主要5項目の状態欄を案件シートに付け、「責任者確認済み」でなければ派遣を開始しない運用を営業と共有します。確定勤怠を共通根拠にすることを営業事務と労務で合意し、AIへの投入情報の線引き(節9)も決めます。
3週目:低リスクな範囲でAIを使います。
法定確認の照合表を過去の依頼10件で試します。契約書・通知書からの抵触日の抽出は主要派遣先1社分で試し、台帳の期限一覧と派遣元責任者が突き合わせます。出力は候補として扱います(節1)。
4週目:同じ測り方で比べます。
1週目と同じ項目を再計測します。判断するのは、①法定確認が派遣開始前に揃うようになったか ②抵触日の2軸登録が全員分そろったか ③差異が減ったか ④人の確認工数が増えていないか。④が増えているなら、AIの精度より先に入力(組織単位の定義や締め日)を疑ってください。変わるのは、次に何をすべきかが分かることです。
11. AI活用成熟度
自社がどの段階にあるかを判定してみてください。
レベル1:人に依存している。抵触日も法定確認の経緯も、営業担当と派遣元責任者の記憶にあります。担当者が変わると、派遣できている理由を説明できません。
レベル2:台帳やツールがある。システムはありますが、抵触日は契約書の期限欄、派遣先の通知はファイル、苦情はメールにあり、案件IDで横断できません。
レベル3:一元化されている。3つのIDで依頼から給与までがつながり、法定確認の状態が案件に付き、抵触日が2軸で持たれています。ここがAIを入れる前提です。
レベル4:AIが支援している。照合表、書類の下書き、突合の差異抽出をAIが担い、人は確認と承認に時間を使っています。判断は動いていません。
レベル5:仕組みになっている。派遣元責任者とコーディネーターが、判断すべきことだけに時間を使えている状態です。抵触日の超過が起きず、待遇差の説明を求められたときに根拠がその場で出る。
12. よくある質問
派遣できるかどうかを、AIに判定させてよいですか。
AIが担えるのは照合表と未確認事項の一覧までで、可否を確定するのは派遣元の責任者です(節1・節9)。
派遣元責任者がいれば、明示書や台帳をAIで作ってはいけないのですか。
いいえ。作業はAIや担当者が行い、派遣元責任者が確認して確定する運用です(節6)。
マージン率を公開すると、利益率が知られてしまいませんか。
マージン率は料金と賃金の平均額の差の割合で、社会保険料・教育訓練費・有給休暇費用・管理費等を含み得ます(節9)。粗利率・利益率そのものではないことを、派遣先にも登録者にも説明できる形にしておきます。
2026年10月の改正に、いま何をしておけばよいですか。
施行前なので現時点の義務ではありませんが、登録者との面談ルールと相談窓口、明示書の様式の版管理は施行日までに整える対象です(節9)。
13. 関連する業種の記事
「二者を同期させる仕事」でも、成約後に何が残るかが違います。
- 人材紹介会社のAI活用——入社で二者の同期が解ける構造です。違いは、雇用主として続く責任の有無です
- 採用代行・RPOのAI活用——労働者を雇用しないため、待遇・台帳・給与の工程がありません。雇用主かどうかの違いが業務の輪郭を決めます
シリーズの一覧は業種別AI活用からご覧いただけます。
14. この記事を自社に当てはめたい方へ
同じ派遣元でも、情報の整理状況によって最初の一手は変わります。抵触日が契約書の期限欄にしかない会社と、台帳はあるが事業所単位と個人単位を区別していない会社では、次にやることが違います。前者は「主要派遣先1社分を1枚の表にする」、後者は「組織単位の定義を決める」から始めます。
15. 無料AI戦略診断/AI顧問サービス
AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。
より踏み込んだ伴走をご希望の方は、AI顧問サービスもご覧ください。個別のご相談はお問い合わせから承ります(30分の無料リモート面談)。
最終更新日: 2026年8月27日/内容確認日: 2026年8月27日
