この記事でわかること
「ChatGPTは使っているけれど、毎回同じ説明を入れるのが少し面倒だ」と感じる場面が、あなたにもありませんか。会社で問い合わせ対応、文書作成、議事録整理などにChatGPTを使い始めると、次に出てくる悩みは“使い方の属人化”です。
この記事では、ChatGPTのGPTsを使って、自社向けの小さなAIエージェントを作る流れを整理します。プログラミングは必要ありません。画面の項目を埋めていくノーコードの作業だけで、最初の1体は作れます。
この記事でわかることは、次の4つです。
- GPTsと「ChatGPT Work」の違いを整理し、自社がどちらを使う側かを判断する
- GPTsでAIエージェントを作るときの設計順序をつかむ
- 社内配布・権限・情報管理で考えるべき点を押さえる
- 問い合わせ一次対応、文書チェックへの当てはめ方を知る
最初から高度な自動化を目指す必要はありません。まずは、あなたの会社で繰り返し発生している「毎回同じ説明をしている仕事」を、GPTsに固定化するところから始めるのが現実的です。
先に用語の交通整理:GPTsと「ChatGPT Work」は別物
本題に入る前に、ひとつだけ整理させてください。ChatGPTで「エージェント」と呼ばれるものは、いま2つあります。混同したままだと、途中で話が噛み合わなくなります。
ひとつは、この記事で扱うGPTs。自社の業務手順を覚えさせた専用のChatGPTを、自分で作るしくみです。もうひとつがChatGPT Workで、長い複数ステップの作業をChatGPTが進め、資料やファイルといった成果物まで仕上げる使い方です。ひとことで言えば、GPTsは「作る」もの、ChatGPT Workは「任せる」ものです。
| 観点 | GPTs(この記事の主題) | ChatGPT Work |
|---|---|---|
| 主目的 | 繰り返し使う専用アシスタントを作る | 長い複数ステップ作業を実行し、成果物まで作る |
| 作成 | 指示・ナレッジ・機能を設定して再利用する | 作業ごとに目標を渡し、進行を確認する |
| 利用条件 | 利用はサインインユーザー、作成・編集は有料プラン。組織は管理設定にも依存 | 対象の有料プランへ段階提供。組織設定や提供状況を確認 |
| 向く用途 | FAQ、文章下書き、社内ルール参照 | 調査、分析、資料・ファイルなどの完成品作成 |
なお、GPTsを「使う」ことと「作る」ことは、条件がはっきり違います。OpenAIの公式ヘルプによれば、GPTの利用はサインインしたユーザーであれば可能で、作成・編集にはChatGPTの有料プランが必要です。会社で管理されているワークスペースを使っている場合は、さらに権限設定にも左右されます。
自社の目的が「長い調べ物や資料作成をまとめて任せたい」ならChatGPT Workを、「業務手順を固定して社内で使い回したい」なら、このまま読み進めてください。
ChatGPTは使うが、その先へ
ChatGPTを普段使っているなら、質問を投げれば文章案や要約、アイデア出しに使える感覚はすでにあるはずです。一方で、あなたが毎回「当社はこういう会社で」「この文体で」「このルールを守って」と説明しているなら、その部分が次の改善ポイントになります。
たとえば、自社の問い合わせ対応で考えてみます。通常のChatGPTでは、商品情報、返信トーン、回答してよい範囲、担当者へ回す条件を、その都度入力する必要があります。
GPTsを使うと、この“毎回伝えている前提”をあらかじめ持たせられます。社内の業務手順書、FAQ、チェック観点を反映した「専用の相談窓口」を作るイメージです。
ここまで腹落ちしたうえで言うと、この記事で扱うAIエージェントは「目的、手順、参照情報、判断基準を持ち、対話しながら作業を前に進める仕組み」です。GPTsは、その最初の形として使いやすい入口になります。
ただし、GPTsを作ったからといって、いきなり人の判断や社内システム操作まで全部任せる話ではありません。まずは“担当者の下書き作業を安定させる道具”として捉えるほうが、導入後の混乱を抑えやすくなります。
結論:GPTs=手順書の固定化から始める
結論から言うと、ChatGPTでAIエージェントを作る最初の一歩は、GPTsに業務手順書を固定化することです。難しい連携や自動実行よりも、まず「この仕事では何を見て、どう判断し、どんな形式で返すか」を固めます。
GPTsで固定化する要素は、大きく3つです。1つ目は役割、2つ目は参照する知識、3つ目は出力形式です。
役割とは、「あなたは問い合わせ一次対応の補助者です」「あなたは契約書の確認観点を整理する担当です」といった立ち位置です。人に仕事を頼むときと同じように、何をしてほしいのかを明確にします。
参照する知識は、FAQ、商品説明、社内ルール、過去の文例などです。ここが曖昧なままだと、毎回プロンプトで補足する状態から抜け出しにくくなります。
出力形式は、返信文、チェックリスト、表、要約、次アクションなどです。その後の業務に使いやすい形にそろえることで、ChatGPTの回答をコピーして整える手間が減ります。
どの業務からGPTs化するかは、3Cで見ると整理しやすくなります。Customerは顧客や社内利用者の困りごと、Companyは自社が持つ資料や運用体制、Competitorは既存の代替手段、つまりマニュアル、外注、SaaS、担当者の経験です。
この3Cで見ると、「問い合わせは多いがFAQがある」「文書チェックは属人化しているが観点は決まっている」といった業務が候補になります。AIエージェント全体の設計をもう少し広く見たい場合は、初心者でも進めやすいAIエージェント作成の5ステップも合わせて確認すると、GPTsの位置づけがつかみやすくなります。
GPTsの作成手順
ここからは、GPTsを作る手順に落とし込みます。画面名や細かな配置は変わることがありますが、実務で考える順番は大きく変わりません。
手順0:プランと権限を確認する
作り始める前に、前提を1つだけ確認します。繰り返しになりますが、GPTの利用はサインインしたユーザーであれば可能ですが、作成・編集にはChatGPTの有料プランが必要です。無料プランのままでは、自社用のGPTsを新しく作れません。あなたが会社で管理されているワークスペースを使っている場合は、さらに権限設定にも左右されます。「有料プランなのに作成画面が出てこない」ときは、管理者に確認してください。
一方で、必要なのは契約と権限だけで、開発スキルは要りません。GPTsの作成はノーコードで、名前、説明、指示文、会話の始め方、知識ファイル、使う機能を画面上で埋めていく作業です。社内にエンジニアがいない中小企業でも、業務を知る担当者が自分で構築できます。
手順1:業務を1つに絞る
最初に、GPTsに任せたい業務を1つに絞ります。「問い合わせ対応も、見積書作成も、SNS投稿も」と広げたくなるかもしれませんが、最初は1業務1GPTsのほうが検証しやすくなります。
おすすめは、繰り返しが多く、判断基準がある程度言語化できる業務です。問い合わせ一次対応、社内規程の確認、提案書のたたき台、文書チェックなどが候補になります。
手順2:利用者とゴールを決める
次に、そのGPTsを使う人を決めます。社長が使うのか、営業担当が使うのか、総務が使うのかで、必要な説明の粒度が変わります。
ゴールも具体化します。たとえば「顧客メールへの返信文を作る」ではなく、「FAQに基づき、返信案と確認すべき不足情報を出す」と決めると、実務で使える出力に近づきます。
手順3:指示文を作る
GPTsの中心になるのが指示文です。ここでは、プロンプトを毎回入力するのではなく、業務手順として固定する感覚で書きます。
指示文には、次の項目を入れると整理しやすくなります。
- 役割:このGPTsは何の担当か
- 対象:誰が使うのか、誰に向けた出力か
- 参照基準:何を優先して判断するか
- 進め方:入力を受けて、どの順番で考えるか
- 出力形式:表、箇条書き、返信文など
- 禁止事項:判断しないこと、断定しないこと、担当者へ回す条件
たとえば、自社の問い合わせ対応GPTsなら、「FAQを優先し、不足情報がある場合は確認質問を作る。クレーム、返金、法的判断に関わる内容は担当者確認として分類する」といった形です。
プロンプトの組み立て方を基礎から見直したい場合は、プロンプトエンジニアリングの基本とデータ補強の考え方が参考になります。GPTsでは、その場限りのプロンプトではなく、繰り返し使う“業務の型”として考えるのがポイントです。
ここで、私がGPTsを実際に作ってきた中での勘所を一つお伝えします。
「自社独自の作業を明文化する」と言っても、いざ書き出すとなかなか難しいものです。そういうときは、他人の力を適切に借りることが有効です。
やり方は2つあります。ひとつは、同僚とブレーンストーミング(ブレスト)をすること。
もうひとつは、ChatGPT自身に「この業務について、分からないことを質問してください」と頼み、質問に答えながら言語化していく方法です。
一人で唸るより、対話の中で引き出してもらう方が、業務の型は早く言葉になります。
手順4:知識ファイルを用意する
指示文だけでは、会社固有の情報は十分に伝わりません。FAQ、商品説明、対応マニュアル、文書ルール、過去の良い文例などを整理し、GPTsの知識として使える形にします。
ここで大切なのは、資料を大量に入れることではなく、業務に必要な情報へ絞ることです。古い資料や矛盾した資料が混ざると、実際の運用と合わない回答が出やすくなります。
手順5:会話の始め方を用意する
GPTsには、利用者が最初に押せる会話のきっかけを用意できます。社内の担当者が迷わず使えるように、「顧客メールを貼り付けて返信案を作る」「この文書をチェックする」「FAQに基づいて回答分類する」といった入口を作ります。
この会話の始め方は、社内定着にかなり影響します。「何を入力すればよいかわからない」という状態を減らせるため、使い始める人の心理的な負担を下げられます。
手順6:必要な機能だけ有効にする
GPTsでは、時期やプランにより、Web参照、データ分析、画像関連、外部サービス連携などの機能範囲が異なります。最初から多機能にするより、業務に必要な機能だけを選ぶほうが管理しやすくなります。
問い合わせ一次対応なら、まずはFAQと返信案作成で十分なことがあります。外部システムとつなぐ場合は、API、認証、ログ、権限の設計が必要になるため、別プロジェクトとして扱うほうが安全です。
手順7:テストして直す
最後に、実際の業務に近い例でテストします。自社で過去にあった問い合わせ、よくある文書ミス、判断に迷ったケースを使うと、GPTsの弱点が見えやすくなります。
テストでは、良いケースだけでなく、情報不足、例外、対応不可のケースも入れます。ここで「担当者確認に回す」「追加質問を出す」「判断しない」といった動きができるかを見ると、社内で使う準備が整いやすくなります。
社内配布と権限の考え方
GPTsを作ったあと、次に考えるのが配布範囲です。あなたが「社内に配って大丈夫だろうか」と感じるのは、自然なことです。
公式ヘルプによれば、作ったGPTは、自分だけで使う、特定の相手に直接共有する、ワークスペース内で共有する、リンクを知っている人に共有する、条件を満たせばGPTストアで一般公開する、から選べます。ただし、どこまで選べるかはプランしだいで、管理対象ワークスペースでは管理者が一部の共有方法を制限・無効化できます。なお一般公開まで進めるならビルダープロフィールの整備などの追加条件がありますが、社内利用が目的ならそこまで踏み込む必要はありません。
大切なのは、作れるかどうかよりも、誰が何を見られる状態にするかです。
まず、GPTsに入れる情報を分類します。公開情報、社内限定情報、機密情報、個人情報に分け、自社としてGPTsに入れてよい資料の範囲を決めます。顧客の個人情報や、取引先との秘密保持契約に関わる資料は、原則として知識ファイルに載せない線引きにしておくのが無難です。
次に、利用者の権限を決めます。全社員が使ってよいGPTs、特定部署だけが使うGPTs、管理者だけが編集できるGPTsを分けると、運用時の混乱を減らせます。
中小企業診断士の実務では、こうした運用設計にRACIを使うことがあります。Responsibleは作成・更新する担当者、Accountableは責任を持つ部門長や社長、Consultedは総務・法務・情報システム、Informedは利用者です。
小さく始めるなら、最初のGPTsごとに「業務責任者」「更新担当」「利用範囲」「見直しタイミング」を1枚にまとめるだけでも十分です。完璧な規程を先に作るより、運用しながら管理項目を育てるほうが現場に合いやすくなります。
業務例:問い合わせ一次対応/文書チェック
ここでは、使いやすい2つの業務例に絞って見ていきます。どちらも、ChatGPTを単発で使うより、GPTsとして手順を固定する効果を感じやすい領域です。
問い合わせ一次対応GPTs
問い合わせ一次対応では、GPTsに“返信する人”ではなく、“返信案を整える補助者”として役割を持たせます。自社のFAQ、商品説明、営業時間、対応できない内容を参照させると、下書き作成が安定しやすくなります。
入力は、顧客から届いたメールやフォーム内容です。出力は、問い合わせの要約、分類、返信案、不足情報、担当者確認が必要な点に分けると、担当者が次に動きやすくなります。
たとえば、出力形式は次のように設計できます。
- 問い合わせ要約
- 問い合わせ分類
- FAQに基づく回答方針
- 顧客への返信案
- 不足している確認事項
- 担当者へ回すべき理由
この形にすると、担当者は返信文だけでなく、判断の根拠も見られます。新人や兼任担当が対応する場合も、確認観点の抜け漏れを減らす助けになります。
文書チェックGPTs
文書チェックでは、GPTsに“文章をうまくする係”だけを任せると、目的がぼやけます。本当に見たいのは、誤字脱字、表記ゆれ、トーン、必須項目、リスク表現、社内ルールとのズレなどです。
たとえば、見積書送付メール、提案書、求人原稿、社内通知文を対象にできます。GPTsには、チェック観点と出力形式を固定し、「修正案」と「確認理由」を分けて出させると実務で使いやすくなります。
出力形式は、表にすると確認しやすくなります。
- 該当箇所
- 気になる点
- 修正案
- 理由
- 担当者確認の要否
自社にブランドトーンや禁止表現があるなら、それも知識として入れます。たとえば「過度な断定を避ける」「専門用語には補足を入れる」「顧客向けには柔らかい表現にする」といった基準です。
この2つに共通するのは、GPTsに最終判断を任せず、担当者が確認しやすい形に整えることです。社内の業務フローに合わせて、下書き、分類、チェックリスト化から始めると、現場で受け入れられやすくなります。
制約と費用
GPTsは便利ですが、すべての業務を単体で完結させる道具ではありません。外部システムへの登録、在庫更新、請求処理、顧客データベースの変更などを行うには、別途連携や権限設計が必要になります。
AIの出力には誤りが混ざりうるため、最終判断や顧客対応の責任は、あなたの会社の業務ルールで担保します。特に、契約、法務、労務、医療、金融、個人情報に関わる領域では、担当者確認の線引きを明確にしておくことが大切です。
費用面では、まず前提の整理からです。GPTの利用はサインインしたユーザーであれば可能ですが、作成・編集にはChatGPTの有料プランが必要で、会社で管理されているワークスペースでは権限設定にも左右されます。そのうえで、個人向け有料プランか、チーム・法人向け契約かは、利用人数、管理機能、データの扱い、外部連携の有無で判断します。
費用を考えるときは、次の4つに分けると整理しやすくなります。
- ChatGPTの利用プランに関わる費用
- 外部連携やAPIを使う場合の費用
- GPTsを作成・更新する社内工数
- 利用者教育や運用ルール整備の工数
中小企業では、最初から大きな投資にせず、1つのGPTsを小さく作って検証する方法が取りやすいです。「月に何件使うか」「何分の作業を置き換えるか」「確認工程はどこに残すか」を見れば、費用対効果を冷静に見積もれます。
また、GPTsは作って終わりではありません。FAQが変わる、商品情報が変わる、社内ルールが変わるたびに、自社のGPTsも見直す必要があります。月1回や四半期に1回など、見直しタイミングを決めておくと続けやすくなります。更新履歴を残しておけば、なぜその指示にしたのかを後から確認できます。
よくある質問
GPTsとChatGPT Workの違いは何ですか?
GPTsは「作る」もの、ChatGPT Workは「任せる」ものです。
GPTsは、役割・知識・出力形式を覚えさせた専用のChatGPTを自分で構築するしくみで、同じ業務を同じ品質で繰り返させたいときに向きます。ChatGPT Workは、作業ごとに目標を渡して長い複数ステップの作業を進めてもらい、資料やファイルなどの完成品まで作らせる使い方です。対象の有料プランへ段階的に提供されているため、自社で使えるかは組織設定と提供状況を確認してください。
社内の定型業務を安定させたいならGPTs、調査や資料作成をまとめて任せたいならChatGPT Workです。
無料で作れますか?
いいえ。GPTの利用はサインインしたユーザーであれば可能ですが、作成・編集にはChatGPTの有料プランが必要です。
つまり、公開されているGPTや共有されたGPTを「使う」だけならサインインで足りますが、自社用のGPTsを新しく作ったり編集したりはできません。会社で管理されているワークスペースでは、さらに権限設定にも左右されます。
プログラミングは必要ですか?
不要です。GPTsの作成はノーコードで進められます。
作業内容は、名前、説明、指示文、会話の始め方、知識ファイル、使う機能を画面上で設定していくことです。日本語の文章が書ければ、業務を知っている担当者が自分で作れます。コードやAPIの知識が要るのは外部システムと連携させる段階からで、最初の1体はその手前で十分に役立ちます。
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自社でChatGPTを使ったAIエージェント作成を進めるなら、まずは1業務1GPTsで試すのが取り組みやすい流れです。問い合わせ一次対応や文書チェックのように、手順と判断基準を言語化しやすい業務から始めると、社内で説明しやすくなります。
AI活用を単発のツール導入で終わらせず、経営課題や業務設計とつなげて考えたい場合は、中小企業社長のためのAI戦略活用の全体像に戻って全体像を確認してください。どの業務にAIを入れるべきかを考える土台になります。
次に進むなら、あなたの会社の既存業務を棚卸しし、GPTs化する候補を3つほど出してみてください。そのうえで、最初の1つを「利用者」「参照資料」「出力形式」まで決めると、具体的な一歩になります。
仕様・プランの確認日:2026年7月21日(出典:OpenAI Help Center「GPTs in ChatGPT」、OpenAI Help Center「ChatGPT Work and Codex」)
