最終更新日: 2026年9月26日/内容確認日: 2026年9月26日
本記事では、土地家屋調査士1〜数名と補助者数名の個人事務所又は土地家屋調査士法人が、所有者・不動産事業者・住宅の建築事業者(ハウスメーカー・工務店)・司法書士から依頼を受け、建物の表示に関する登記(表題・変更・滅失)、土地の表示に関する登記(分筆・合筆・地目・地積)、登記の前提となる境界の調査・測量、筆界特定の手続の代理を行う形を想定します。本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。権利に関する登記、訴訟、民間紛争解決手続の代理、公共嘱託登記土地家屋調査士協会の業務、地籍調査の受託、公共測量は対象にしていません。法令の記述は2026年9月25日・26日に確認した条文に基づき、未施行の改正は扱っていません。
1. 結論:土地家屋調査士事務所なら何から始めるか
土地家屋調査士事務所でAIを使うなら、最初の一手は「筆界点ごとの台帳(建物の案件では計測値の台帳)を作り、図面・申請情報・調査報告書をそこから作ること」です。次に「隣接所有者ごと・筆界点ごとの確認の状態を記録し、期日から逆算すること」、その次に「完了した案件の成果を地番区域ごとに索引にし、次の案件の起点にすること」が続きます。
この番号は効果の大きさの順位です。本記事では、取組みの出力が業務のどれだけの工程と法令上の書類の入力になり、どの種類の案件に及ぶかという、業務のつながりの広さで効果の大きさを整理しています。案件の件数や所要期間を比べた結果ではありません。実施の順序は節3の表で別に示します。
一方で、受任の可否、筆界点の判断、所有者への説明と進め方、立会いで認識が一致しないときの扱い、図面・申請情報への記名・電子署名と申請の代理、補正、筆界特定の手続の代理は、AIに渡しません(法令上の制限の範囲は節9)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。
2. 業務全体の流れ
本記事のモデルでは、1件の案件は次の流れで進みます。
- 引き合いの受付。依頼者と、申請人になる所有者等を分けて記録します。
- 受任の判断、報酬の基準の明示、見積、契約と委任状。
- 申請の期間と申請人の整理、所有者本人の意思と委任の確認。
- 資料調査。登記記録、地図又は地図に準ずる図面、過去の地積測量図。
- 現地の観測。境界標の探索と観測、建物の計測。
- 資料と現況の照合と、筆界点の判断。
- 土地の案件では、隣接所有者の特定、立会い、境界標の設置。
- 図面・申請情報・調査報告書の作成と申請、補正、完了、成果の引渡しと請求。
本シリーズでは、この業態を、現地で観測し資料と照合するまで状態が確定しない案件を1件ずつ進める現場不確実性を持つ案件プロジェクト型として整理し、所有者の側の新築・取壊しなどを起点に、条文が一月以内の申請の期間を定める登記の案件が生じるイベント駆動型の性格も併せ持つものとしています(本シリーズの分類です)。
令和7年に全国の法務局及び地方法務局が取り扱った表示に関する登記は、建物の表題が450,693件、分筆が258,565件でした(法務省「登記統計」)。職権による登記(建物の表題91件、分筆22,935件)を含む登記所の取扱件数で、事務所が受けた件数ではありません。同じ年の筆界特定事件の新受は1,826件です。
3. AI導入優先Top3
| 効果の大きさ(本記事の整理) | 実施の順序 | |
|---|---|---|
| 導入前提 | — | ① 台帳の列、確認の状態の区分、補助者とAIに任せる範囲、外部のAIに入力してよい情報を決める(節10の2週目) |
| Top1 筆界点ごとの台帳 | 最も大きい | ② 進行中の案件1件から。他のTopの完了を前提にしない |
| Top2 確認の状態 | 2番目 | ③ Top1の筆界点を列に使うため、その後 |
| Top3 地番区域ごとの索引 | 3番目 | ④ Top1の台帳の行を索引の単位にするため、その後 |
Top1:筆界点ごとの台帳を作り、図面・申請情報・調査報告書をそこから作る
何をするか。 本記事が提案する台帳です。筆界点ごとに、資料上の根拠、現地の観測(境界標の有無と種類、観測した座標)、差異、立会いの結果、調査士の判断を1行にまとめ、図面・申請情報・調査報告書の草案をそこから作ります。建物の案件では、所在・種類・構造・各階の床面積と所有権を証する情報を1つの台帳にまとめます。
なぜ最初か。 地積測量図は、筆界点間の距離や、境界標があるときはその表示などを記録事項としています(不動産登記規則第77条・節9)。本記事の整理では、この台帳は土地と建物の両方の案件に及び、出力が筆界点の判断を経て図面・調査報告書・申請情報に入り、Top2とTop3の単位にもなります。そのため3つのうちで効果が最も大きいと置きました。
どう始めるか。 進行中の土地の案件1件で、筆界点ごとに「資料上の根拠・観測値・差異・立会いの結果・判断」の5列の表を作ります。建物の案件なら、計測値と所有権を証する情報の一覧を1枚にします。
何を測るか。 1案件あたりの資料の読み取りと書き写しの時間、図面と申請情報の不一致の件数、補正の件数。
注意。 AIの読み取り結果は担当者が原本と照合して全件確認します。本記事では、読み取りに誤りがあればその誤りが復元案と筆界点の判断に及ぶものとして扱います。読み取った値と調査士が判断した位置は別の列に置きます。
Top2:隣接所有者ごと・筆界点ごとの確認の状態を記録し、期日から逆算する
何をするか。 隣接所有者を行、筆界点を列にした表を作り、各欄に「未特定・特定済み・依頼済み・立会い済み・書面受領・認識不一致」のどれかを入れます。この6区分は本記事の設計です。
なぜ二番目か。 土地の表題登記、地目又は地積の変更の登記、土地の滅失の登記は、条文が定める所有者等が、条文が定める日から一月以内に申請しなければならない登記です(節9)。本記事では、事務所の日程をその期間を支える設計として置きます。本記事の整理では、この表の出力は認識が一致しない場合の扱いの判断と案件別原価に入り、進行中の案件で効きます。一方、この表は筆界点を列に使うため、対象は土地の案件に限られます。そのため2番目に置きました。
どう始めるか。 進行中の土地の案件1件で表を作り、所有者等の申請の期間(その登記に条文上の期間がある場合)と、依頼者の側の引渡しなどの期日を表の上に書きます。
何を測るか。 隣接所有者の特定から立会いまでの日数、未了の状態が残った日数。
注意。 状態の区分は本記事の設計で、所有者や隣接所有者に法令上の区分として説明しません。
Top3:完了した案件の成果を地番区域ごとに索引にし、次の案件の起点にする
何をするか。 完了した案件の筆界点の座標・境界標の種類・確認の書面の有無・補正の理由を地番区域ごとに索引にし、新しい案件の資料調査と見積の最初に、同じ区域の過去の成果を引きます。
なぜ三番目か。 土地家屋調査士法第25条第2項は、調査士が、その業務を行う地域における土地の筆界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならないと定めています(努力義務)。本記事の索引は、この努めを事務所の記録で支える設計です。本記事の整理では、効果は同じ地番区域の完了案件がたまってから現れます。そのため3番目に置きました。
どう始めるか。 直近に完了した案件のうち、同じ地番区域の案件を5件選んで1枚の表にまとめ、次の新しい案件でその表を最初に引きます。
何を測るか。 過去の成果を引いた案件の割合、資料調査の時間、見積と実績の差。
注意。 過去の成果には業務上の秘密や個人情報が含まれうるため、索引の利用範囲と外部への入力の条件は事務所が決めます(節9)。新しい案件の筆界点の判断は、案件ごとに調査士が行います。
4. AIに任せやすい仕事
基準が機械的に決まり、人は例外だけを見る仕事です。
- 形を整える。 受領した資料の一覧づくり、観測データの台帳への取り込み、境界標の設置の記録。
- 照らし合わせる。 新しい依頼の関係者と事件簿の関係者の照合、資料の座標と観測値の重ね合わせ。
- 違いを見つける。 調査士が確定した筆界点の座標・地積と、図面・申請情報に書かれた値の差分。
- 足りないものを探す。 地積測量図の記録事項の漏れ、確認の状態が未了の欄、登記の種類ごとの添付情報のうち受領していないもの。
- 下書きを作る。 受任の登録からの事件簿の記載、入金の記録からの請求書と領収証(記名と職印は調査士)。
- 探し出す。 地番区域ごとの索引からの同じ区域の過去の成果、補正の理由が同じ過去の案件。
5. AI支援に向く仕事
AIが候補や下書きを作り、担当者が全件確認してから使う仕事です。
- 資料の読み取り。 年代の古い地積測量図、地図に準ずる図面、閉鎖された登記記録からの座標・辺長・境界標の記載の読み取りと、資料どうしの矛盾の一覧。
- 復元案と根拠の対応表。 筆界点ごとの復元の候補と根拠の並び。判断は調査士です。
- 図面と申請の書類の草案。 地積測量図・建物図面・各階平面図、申請情報と添付情報の一覧、調査報告書の草案。
- 対人の書面の草案。 立会いの依頼文、立会いの記録(本人が言ったことと調査士の判断は別の欄)、委任状と契約書。
- 見積と筆界特定の書類。 作業量の候補、筆界特定の申請書と意見書の草案。
確認を挟むのは手間ではなく、誰が確認したかを記録に残す品質の設計です。
6. 人に残す仕事・判断
線の引き方は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。
受任。 依頼を受けるかどうか。調査士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(筆界特定の手続の代理とこれに関する相談、民間紛争解決手続代理関係業務に関するものを除く)を拒んではならず(土地家屋調査士法第22条)、公務員として職務上取り扱った事件、仲裁人として取り扱った事件、筆界特定の手続の代理等で相手方の協議を受けて賛助した事件などは業務を行ってはなりません(第22条の2。一部は依頼者の同意による例外あり)。
筆界点と進め方。 筆界点の位置の判断と根拠の記録、地積の更正の要否・分筆の可否・筆界特定を提案するかについての所有者への説明。調査士は、その業務に関して虚偽の調査又は測量をしてはなりません(第23条)。
立会いの後。 所在が分からない・相続が生じている隣接所有者の調査の方針。認識が一致しない場合や立会いが得られない場合に、再調査・再立会い・保留・筆界特定の提案のどれを示すか。
申請。 図面・申請情報・調査報告書の最終確認と記名・職印又は電子署名、申請の送信、補正の方針と補正、筆界特定の手続の代理。
補助者・外注・情報・お金。 補助者に任せる作業と調査士が自ら行う判断・確認の線引き、外注するかどうかと範囲、秘密の提供の可否、外部のAIサービスに入力してよい情報と条件、漏えい等の報告と本人への通知の要否、見積金額と前提条件、未収の回収。
AIが90%正しくても、筆界点の判断や記名のように結果を確定させる行為は、調査士が全件を確認して行う設計にしています。
7. Best Practice
到達点は、既にある筆界と建物の現況を明らかにした根拠が1か所に残る構造です。本記事の設計として、次の3つを置きます。
第一に、筆界点ごとに資料・観測・立会いの結果・判断が1行の台帳にあり、図面・調査報告書・申請情報がそこから作られます。
第二に、確認の状態が一覧になり、期日から逆算して工程が組まれています。立会いで聞いた認識は記録しますが、本記事の整理では、筆界は所有者や隣接所有者の合意で決まるものではありません。
第三に、完了した案件の成果が地番区域ごとの索引から、次の案件の最初に引かれています。
8. Before / After
Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界や特定の事務所の実態を述べたものではありません。 筆界点ごとの読み取り・観測値・立会いの結果・判断が野帳・写真・図面・担当者のメモに分かれ、図面・申請情報・調査報告書・事件簿・請求書に同じ所在と地番を書き写しています。
After。到達点として置いた姿です。 案件の初日に筆界点台帳ができ、確認の状態の遅れが毎日見え、書類の草案は台帳から作られます。調査士は台帳の上で筆界点を判断して根拠を記録し、記名・電子署名を行います。判断の担い手は変わりません。
9. 法令・規制・情報管理
以下は本記事の実務上の整理です。個別の判断は専門家や所管の窓口に確認してください。
調査士でない者の業務の制限。 土地家屋調査士法第68条第1項は、調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者(公共嘱託登記土地家屋調査士協会を除く)が、第3条第1項第1号から第5号までの事務(第1号は不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量、第2号・第3号はその申請手続等の代理と書類等の作成で、第1号の調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る、第4号・第5号は筆界特定の手続の代理と書類等の作成)又はこれらに関する相談を業とすることを制限しています。弁護士・弁護士法人等が第2号から第5号までの事務(第2号・第3号は、第1号の調査又は測量を必要とする申請手続に関する審査請求の手続に関するものに限る)とこれらに関する相談を行う場合と、司法書士法第3条第2項に規定する司法書士等が第4号・第5号の事務(同法第3条第1項第8号に規定する筆界特定の手続に係るものに限る)とこれらに関する相談を行う場合は、この限りではありません(同項ただし書)。本記事では、筆界点の判断や申請の代理を調査士が行うことを事務所の業務の設計として置き、法令上の制限の根拠として扱うのは同項の限定に当たる場合に限っています。
申請の義務者と期間。 不動産登記法は、次の登記について、条文の主語である所有者等に一月以内の申請を義務づけています。本記事の整理では、土地家屋調査士は所有者等から依頼を受けて申請手続を代理する立場で、期間を守る義務は所有者等にあります。
| 登記 | 申請の義務者 | 一月の起算点 |
|---|---|---|
| 土地の表題登記(第36条) | 新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者 | 所有権の取得の日 |
| 地目又は地積の変更の登記(第37条第1項) | 表題部所有者又は所有権の登記名義人 | 変更があった日 |
| 土地の滅失の登記(第42条) | 表題部所有者又は所有権の登記名義人 | 滅失の日 |
| 建物の表題登記(第47条第1項) | 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者 | 所有権の取得の日 |
| 建物の表示に関する登記事項(家屋番号と共用部分である旨を除く)の変更の登記(第51条第1項) | 表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物は所有者) | 変更があった日 |
| 建物の滅失の登記(第57条) | 同上 | 滅失の日 |
一方、分筆又は合筆の登記と、土地の表題部の登記事項に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができないと定める規定で(第38条・第39条第1項)、両条の文言には申請すべき期間は定められていません。
図面。 地積測量図には、筆界点間の距離、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値、境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識)があるときはその表示などを記録します。基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合は、平面直角座標系の番号又は記号と座標値に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録します(不動産登記規則第77条第1項・第2項)。
事務所の規律とAI。 調査士は、依頼者に交付し又は官庁に提出すべき書類(民間紛争解決手続代理関係業務に関するものを除く)を作成したときは記名し職印を押し、依頼者又は官庁に提供する電磁的記録を作成したときは職名及び氏名を記録して電子署名(連合会が発行する電子証明書等で法務大臣が指定するものにより確認できるものに限る)を行わなければなりません(土地家屋調査士法施行規則第26条)。他人をしてその業務を取り扱わせてはならない一方(第22条)、業務の補助をさせるため補助者を置くことができ、置いたとき・置かなくなったときは遅滞なく所属の調査士会に届け出なければなりません(第23条)。本記事では、これらを踏まえてAIと補助者の担う範囲を観測・読み取り・計算・候補・草案・記録までとし、最終確認と記名・電子署名を調査士の工程に置いて確認の記録を残す設計にしています。AIの出力を確認の記録なしにそのまま提出する運用はこれらの規定との関係で問題になるおそれがあるとみているためで、規則の解釈を確定するものではありません。調査士又は調査士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはなりません(土地家屋調査士法第24条の2)。
個人情報と、生成AI・クラウドへ出す条件。 事務所が個人情報データベース等を事業の用に供している者(国の機関等を除く)として個人情報取扱事業者に当たる場合、個人情報データベース等を構成する個人情報(個人データ)について安全管理のために必要かつ適切な措置を講じ(個人情報の保護に関する法律第23条)、取扱いを委託するときは委託を受けた者に必要かつ適切な監督を行います(第25条)。外部のAIやクラウドへ個人データを渡すときは、委託(利用目的の達成に必要な範囲内の委託に伴う提供で、提供を受ける者は第三者に当たらず、委託先の監督の対象になる。第27条第5項第1号)・第三者提供(法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要。同条第1項)・その他のどれに当たるかを人が確かめます。生成AIやクラウドへ入れる前に、入れる情報を必要最小限にし、入力が学習に利用されるか、保存期間と削除の方法、契約上の機密保持とデータの取扱条件、アクセス権限と利用ログ、再委託や国外保存など組織の規程上確認が必要な事項を確かめ、組織が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。
10. 最初の30日プラン
1週目:測る。 進行中と直近に完了した土地の案件と建物の案件で、受任から申請までの日数、そのうち隣接所有者の特定と立会いの調整に使った日数、同じ情報を書き写した回数、図面と申請情報の不一致・補正の件数と理由、過去の成果を引いた案件の数、見積と実績の工数の差を、案件ごとに1行の簡易ログで記録します。記録は2週目の終わりまで続けます。
2週目:正本とルールを決める。 Top1の5列に判断者と日付を加えた筆界点台帳の列、建物の計測値の台帳の列、確認の状態の6区分と更新の担当を決めます。補助者とAIに任せる作業と調査士が自ら行う判断・確認の線を文書にし、外部のAIに入力してよい情報と条件を決めます。
3週目:人が全件確認する小規模試行。 進行中の土地の案件1件で、読み取り結果と観測値の重ね合わせ、復元案の対応表の下書きをAIに作らせ、担当者が原本と照合します(Top1)。同じ案件で確認の状態の表をAIに更新させ、遅れの抽出を毎朝見ます(Top2)。同じ地番区域の完了案件5件で索引を試作します(Top3)。記名・電子署名と申請、筆界点の判断、立会いは、これまでどおり調査士と担当者が行います。
4週目:比べる。 試行した案件を1週目と同じ項目・方法で測って比べ、次の工程に進むかを調査士と事務所の責任者が決めます。
11. AI活用成熟度
- Lv1 人依存。 資料の読み取り、確認の進み具合、過去の成果の所在が担当者の記憶とメモにある。
- Lv2 台帳化。 筆界点台帳、確認の状態の表、事件簿が案件ごとに整っている。ただし台帳と図面・申請情報の間は手で転記する。
- Lv3 一元化。 台帳・確認の状態・図面・申請情報・事件簿・請求が案件番号でつながり、完了した案件の成果が地番区域ごとに索引になる。
- Lv4 AI支援。 読み取り、復元案、書類の草案、記録事項の点検、遅れの抽出、過去の成果の検索をAIが担い、出力は候補・草案のまま人が確認する。
- Lv5 仕組み化。 台帳・確認の状態・索引が事務所の標準になり、所要期間・立会いの回数・補正の理由・見積との差が見積と受注方針に戻る。
Lv5は、AIが筆界点の判断や申請の代理を自動で行う状態ではありません。判断・説明・記名・申請の代理は、Lv5でも調査士が行う設計です。
12. FAQ
Q. 表示に関する登記は、土地家屋調査士に頼まなければならないのですか。 A. 土地家屋調査士法第68条第1項は、調査士・調査士法人でない者が一定の事務を「業とすること」を制限する規定です(限定と例外は節9)。本記事の整理では、同項の文言には所有者が自ら表示に関する登記を申請することを制限する文言は無いと読んでいます。個別の案件は専門家に確認してください。
Q. 建物を新築したとき、一月以内に申請する義務は事務所にありますか。 A. 建物の表題登記の申請の義務者は、新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者で、所有権の取得の日から一月以内に申請しなければなりません(不動産登記法第47条第1項)。本記事の整理では、調査士は所有者から依頼を受けて申請手続を代理する立場で、事務所の日程はその期間を支える設計です(節9)。
Q. AIが作った図面や調査報告書の草案を、そのまま申請に使えますか。 A. 本記事では使わない設計にしています。土地家屋調査士法施行規則第22条・第26条(節9)を踏まえ、調査士が最終確認をして記名・電子署名を行い、確認の記録を残します。規則の解釈を確定するものではありません。
Q. 立会いで隣接所有者と認識が一致しないとき、AIに筆界点を決めさせてもよいですか。 A. 決めさせません。筆界は、表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間で、その一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線で(不動産登記法第123条第1号)、本記事の整理では所有者どうしの合意で決まるものでもありません。AIは記録と選択肢の整理までで、再立会い・保留・筆界特定の提案のどれを所有者に示すかは人が決めます。
13. 関連業態・シリーズ導線
行政書士事務所の記事は、官公署に出す書類を扱う隣の士業として、業務の範囲と他の法律による制限の考え方を見比べるときに読めます。
不動産売買仲介の記事は、本記事のモデルで依頼の窓口の一つに置いた不動産事業者の側から、物件調査の流れを読めます。
業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。
14. この記事を自社に当てはめたい方へ
同じ土地家屋調査士事務所でも、いま手元にある記録の形によって最初の一手は変わります。筆界点の根拠が何か所に分かれているかを数えるところからか、完了した案件の成果の置き場所を確かめるところからか、整理状況が出発点です。
15. 無料AI戦略診断/AI顧問
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