化学製品製造のAI活用|最初の一手と人に残す判断

化学製品製造のAI活用:製品ごとの処方の版を正本にし、そこから区分・SDS・表示を引き、区分の確定を人が行う流れ

最終更新日: 2026年10月9日/内容確認日: 2026年10月9日

本記事では、購入した原料を化学反応を伴わない配合(計量・混合・分散・溶解・調色)で、塗料・シンナー・合成樹脂系接着剤・工業用の洗浄剤・めっき薬品などの工業用の調合品にし、缶・ペール・ドラムなどに充填して事業者に出荷する中小の調合品メーカー(従業者はおおむね数名から数十名)を主なモデルとして想定します。顧客の仕様に合わせて配合を決める受注配合と、顧客のブランド・処方で作る受託製造を主とし、自社の標準品の繰り返しの注文も受ける形です。これは本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。石油化学・基礎化学品の製造と、化学反応を伴う合成(樹脂の重合・有機合成など)は扱いません。仕入品の小分け・再包装だけの事業、ゴム系接着剤、家庭用品としての販売、エアゾール製品の充填、製品の輸出、原料を自社で輸入する場合の手続も、本記事では扱いません。

目次

1. 結論:化学製品製造なら何から始めるか

化学製品製造でAIを使うなら、最初の一手は「処方の版を正本にし、製品の法令上の区分・SDS(安全データシート)・表示をその版から引くこと」です。次に「バッチの調合の記録を、処方の版と原料ロットで照らし合わせること」、その次に「原料と製品の保管量と年間の取扱量を一つの台帳にし、危険物の指定数量の倍数と、化学物質の排出量の届出の要件に照らし合わせること」が続きます。

Topの番号は本記事の整理による効果の大きさの順位で、各Topの出力を入力に使う仕事の数(本記事の業務の分解で数えた計算値。Top1は27、Top2は11、Top3は6)と、その出力が入る法令上の書類・届出の範囲で並べました。業界の実態や法令上の重要度の順位ではありません。Top1とTop2は処方の台帳を共通の入力にするのでTop1が先で、Top3は原料の台帳ができればTop1と並行して始められます(節3)。

一方で、区分の確定、処方の承認、原料の採用、逸脱したバッチの扱いと出荷の可否、製造所等を設けて許可を申請するか、届出の内容、選任された人が法令に基づいて行う職務は、AIに渡せない領域として残ります(節6)。原則は「AIは候補と照合まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、2つの流れが工場で交わります。

  1. 受注ごとの配合の決定。引合いと見積、試作・調色、見本の送付と顧客の承認、処方の版の承認と製品の区分の確定。
  2. 繰り返しの製造。注文と生産計画、原料の受入れと保管、調合、検査、充填と容器の表示、SDSの提供、出荷、請求と入金(収益の入口)。

この周りで、危険物・劇物・化学物質の管理、届出、廃液の処理、外注が動きます。本シリーズではこの仕事を、顧客の仕様を起点に案件ごとに配合と工程を作り込む型を主、処方が確定した製品の繰り返しの注文とSDSの定期の確認などの暦で動く型を従として整理しています。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(本記事の整理) 記録の単位 実施の順序
導入前提:製品・処方・原料の一覧 — 1製品1行・1原料1行 ①
Top1:処方の版と区分・SDS・表示 最も大きい(27) 1製品(処方の版) ②(導入前提の後)
Top2:調合の記録の照合 2番目(11) 1バッチ ③(Top1の処方の台帳ができた後)
Top3:保管量と取扱量の台帳 3番目(6) 1場所(危険物)・1事業所(届出) ③(原料の台帳ができた後、Top1と並行してよい)

記録の単位は本記事の設計で、法令が求める記録の単位とは分けて考えます。

Top1:処方の版を正本にし、製品の区分・SDS・表示をその版から引く

何をするか。 製品ごとに処方の版を台帳にし、版ごとに製品の区分(危険物の類・品名、劇物、表示・通知の対象物、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化管法」)の指定化学物質など)を「該当/対象外と確認済み/未確認」の3つの状態で記録します。AIは処方の版・原料の台帳・告示の台帳から成分と含有量を計算し、根拠の原料と含有率を付けて区分の候補を出し、SDSと表示の案を作ります。処方の変更、原料のSDSの改訂、人体に及ぼす作用の5年以内ごとの確認の時期の3つから、見直しの候補が同じ版の上で出る形にします。

なぜ効果が最も大きいか。 本記事の業務の分解では、処方の台帳と区分の確定を入力に使う仕事は27あり、表示・SDS・劇物の手続・危険物の許可の範囲の照合・化学物質管理者の選任の要否などに及びます。

どう始めるか。 出荷量の多い5製品について処方の版を台帳にし、表示・通知の対象となる含有量の基準などの告示を、改正と適用日を含めて台帳にして区分の候補を出し、区分を確定して、いまのSDSとラベルと照らし合わせます。

何を測るか。 製品ごとの区分の「未確認」の件数、出荷の前にSDSの提供の記録があった出荷の割合。

注意。 区分の候補は担当者が全件確認し、確定は責任者が行います。本記事の設計では、告示の台帳に照らせない成分を含む製品は区分を「未確認」のまま残し、未確認の区分が残る製品は製造・出荷しません。

Top2:バッチの調合の記録を、処方の版と原料ロットで照らし合わせる

何をするか。 処方の版から調合指図書を作り、実際の秤量値・原料ロット・投入順・時間・温度・追加投入の記録を、処方の版と原料ロットに照らし合わせます。AIは逸脱の候補を出し、逸脱のあるバッチの扱いは責任者が決めます。検査の記録とバッチの記録(原料ロット→バッチ→製品ロット)も結びます。

なぜ2番目か。 照合とバッチの記録を入力に使う仕事は11で、バッチの扱い・合否・不適合の対象ロットの特定・年間の取扱量の集計・実績原価に及びます。

どう始めるか。 直近1か月のバッチの調合の記録を、処方の版と原料ロットに照らし合わせ、逸脱の候補を出します。

何を測るか。 直近1か月のバッチのうち、処方の版と調合の記録が照合できたバッチの数。

注意。 計量・投入・調色は人の作業です。製造所等で危険物を取り扱う場合は、危険物取扱者が行うか、甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会います(節9)。

Top3:保管量と取扱量を一つの台帳にし、危険物の倍数と届出の要件に照らし合わせる

何をするか。 受入れ・調合・充填・出荷の記録から、場所ごとに危険物の品名別の数量と指定数量の倍数を一覧にし、許可の記録と照らし合わせます。同じ記録から、第一種指定化学物質の事業所ごとの年間の取扱量を集計し、化管法の要件の確認に渡します。

なぜ3番目か。 保管量の一覧と年間の取扱量を入力に使う仕事は6で、製造所等の許可の範囲・所在地の条例の確認・化管法の要件と届出・生産計画の条件に及びます。本記事の整理では、指定数量の倍数と、化管法の要件のうち年間の取扱量は、どちらも同じ原料・製品の量から確かめるものです。

どう始めるか。 まず場所ごとの一覧を作り、許可の記録と照らし合わせます。

何を測るか。 場所ごとの保管量と倍数の集計にかかった時間。

注意。 倍数と許可の範囲の照合、化管法の要件の候補は担当者が全件確認し、製造所等を設けて許可を申請するかと化管法の届出の内容は責任者が確定します。

4. AIに任せやすい仕事

結果をそのまま次へ渡せる仕事です。照らし合わせる相手は、人が確定した値です。

  • 形を整える。 引合いや注文を案件台帳・受注台帳の項目にそろえる。場所ごとの保管量と事業所ごとの年間の取扱量を集計する。
  • 照らし合わせる。 調合の記録と、承認された処方の版・割り当てた原料ロット。
  • 違いを見つける。 受け入れた原料の容器の表示とSDSの版の不一致。請求と入金の差。
  • 足りないものを探す。 承認者の欠けた処方の版。出荷の前にSDSの提供の記録が無い出荷。
  • 下書きを作る。 承認された処方の版からの調合指図書。出荷の記録と単価からの請求書。
  • 探し出す。 人体に及ぼす作用の5年以内ごとの確認の時期が近いSDS。拾ったものは候補で、見直すかは人が決めます。

不一致・欠け・例外だけを人が見ます。区分や表示に関わる照合は節5です。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や下書きを作り、担当者が全件確認してから使う仕事です。確認を挟むことは手間ではなく、品質の設計です。

  • 処方の版からの区分の候補。原料のSDSからの成分と区分の候補(告示の台帳と照らす)。
  • SDSと表示の案。担当者の確認の後、選任された化学物質管理者が技術的事項として確認します(節9)。
  • 場所ごとの倍数と許可の範囲の照合、製造所等に当たるかの候補、化管法の要件の候補。
  • 類似の処方からの見積の案、含有化学物質の調査票への回答の案。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。調合・充填・運搬の現物作業は人の作業のままです。

自社の責任者が決めること。 受注の可否、処方の承認(本記事の設計では、化学反応を伴う工程を含む処方と、含むかが未確認の処方は承認しません)、製品の区分の確定、原料の採用、逸脱したバッチの扱い、合否と出荷の可否、製造所等を設けて許可を申請するか、化管法の届出の内容、生産計画、外部のAIに入れる情報の条件。

法令が人や義務者を定めていること。 いずれも節9の条件に当たる場合のもので、AIは材料の整理までです。

  • 表示と通知(製品を譲渡し又は提供する者)。
  • 化学物質管理者を選任した事業場で、選任された化学物質管理者が管理する表示・通知などの技術的事項。
  • 製造所等での危険物の取扱いは、危険物取扱者が行うか、甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会う。
  • 劇物を販売又は授与の目的で製造する場合の製造業の登録。
  • 第一種指定化学物質等取扱事業者に当たる場合の化管法の届出。

AIの候補が9割正しくても、区分の確定と出荷の可否は1件ずつ人が決める、というのが本記事の設計です。

7. Best Practice

到達点は、製品ごとの処方の版が正本で、区分・表示・SDS・劇物の手続・危険物の許可の範囲の照合がその版から引かれ、バッチの記録は処方と原料ロットで、保管量と取扱量は場所ごと・事業所ごとに一つの台帳で結ばれる構造です。区分の確定・出荷の可否・選任された人の職務は人が持ち、記録・照合・集計は仕組みが持ちます。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界の実態の描写ではありません。 処方の版・製品の区分・SDSの提供・調合の記録・保管量が、製品・バッチ・場所の単位で一つの台帳につながっていない状態です。

After。到達点として置いた姿です。 処方の版から区分・SDS・表示が引かれ、処方の変更・原料のSDSの改訂・5年以内ごとの確認の3つの起点から見直しの候補が出ます。逸脱のバッチは責任者が扱いを決め、保管量と取扱量は許可の範囲と届出の要件に照らし合わされます。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文を確かめた規律だけを挙げており、すべての規律ではありません。法令は2026年10月9日に確認した、その日に施行されている版によります(労働安全衛生法・同法施行令・労働安全衛生規則は2026年10月1日施行の版)。未施行の改正は扱っていません。

表示とSDS。 労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの(これを含有する製剤で、含有量が厚生労働大臣の定める基準未満のものを除くなど)を容器に入れ又は包装して譲渡し又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、容器又は包装に名称・人体に及ぼす作用・貯蔵又は取扱い上の注意などと標章を表示します(労働安全衛生法第57条第1項。主として一般消費者の生活の用に供するための容器・包装を除く)。通知対象物を譲渡し又は提供する者は、名称・成分及びその含有量・人体に及ぼす作用などを、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により相手方に通知します(第57条の2第1項。主として一般消費者の生活の用に供される製品として譲渡し又は提供する場合を除く)。通知は譲渡し又は提供する時までに行います(継続的に又は反復して譲渡し又は提供する場合で、既に通知しているときを除く。労働安全衛生規則第34条の2の5第1項)。通知対象物を譲渡し又は提供する者は、人体に及ぼす作用について、直近の確認から5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づき変更の必要性を確認し、必要があれば確認の日から1年以内に変更し、変更後の事項を適切な時期に、譲渡し又は提供した相手方の事業者に通知し、文書の交付などの方法で閲覧できるようにします(同条第2項・第3項)。通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、速やかに変更後の事項を通知するよう努めます(法第57条の2第2項)。本記事の整理では、義務者は行為で決まり、自社の製品を譲渡し又は提供する場面では調合品メーカーが義務者になりえます。

化学物質管理者。 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し又は取り扱う事業場ごとに化学物質管理者を選任し(対象物を製造している事業場では厚生労働大臣が定める講習を修了した者等のうちから)、表示・通知や、危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施に関することなどの技術的事項を管理させます(同規則第12条の5。表示等を他の事業場で行っている場合の定めがあります)。

劇物。 毒物及び劇物指定令は、例えば塩化水素又は硫酸を含有する製剤(それぞれ10%以下を含有するものを除く)、水酸化ナトリウムを含有する製剤(5%以下を含有するものを除く)を劇物としています(第2条第1項。毒物であるものを除く)。毒物及び劇物取締法の製造業の登録(製造所ごとに所在地の都道府県知事が行い、5年ごとに更新)を受けた者でなければ、劇物を販売又は授与の目的で製造できません(第3条第1項・第4条)。販売・授与(その目的での貯蔵・運搬・陳列を含む)には販売業の登録が要り、製造業者が自ら製造した劇物を他の毒物劇物営業者(製造業者・輸入業者・販売業者)に販売・授与する場合などは除かれます(第3条第3項)。本記事の設計では、相手方が当たるかを取引ごとに確かめます。毒物劇物営業者は、劇物の容器と被包に「医薬用外」の文字と白地に赤色で「劇物」の文字を表示し、名称・成分及びその含量などを表示しなければ販売・授与できず、貯蔵・陳列する場所にも「医薬用外」と「劇物」の文字を表示します(第12条)。また、販売・授与する時までに譲受人へ性状及び取扱いに関する情報を提供し(同法施行令第40条の9第1項。既に提供している場合などを除く)、変更が必要になったときは速やかに変更後の情報を提供するよう努めます(同条第2項)。他の毒物劇物営業者への販売・授与ではその都度、名称・数量・年月日・譲受人の氏名等を書面に記載し、それ以外の者への販売・授与では譲受人が署名又は押印した書面など(承諾を得た電磁的方法を含む)の提出を受け、いずれも販売又は授与の日から5年間保存します(第14条)。毒物劇物営業者など以外で劇物を業務上取り扱う者にも、第12条第1項・第3項などが準用されます(第22条第5項)。

危険物。 指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所で貯蔵し、又は製造所・貯蔵所・取扱所(以下「製造所等」)以外の場所で取り扱えません(消防法第10条第1項。所轄消防長又は消防署長の承認を受けて10日以内の期間、仮に貯蔵し又は取り扱う場合を除く)。品名又は指定数量の異なる危険物を同一の場所で貯蔵し又は取り扱う場合は、それぞれの数量を指定数量で除した商の和が1以上なら、指定数量以上とみなされます(同条第2項)。製造所等を設置し又は位置・構造・設備を変更しようとする者は、政令で定めるところにより製造所等ごとに、消防本部及び消防署を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事などの許可を受け、完成検査で技術上の基準に適合すると認められた後でなければ使用できません(第11条第1項・第5項。変更の工事の際の仮使用の承認を除く)。製造所等では、危険物取扱者以外の者は、甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ危険物を取り扱えません(第13条第3項。取り扱い、立ち会うことができる危険物の種類は免状の種類に応じて総務省令で定められています。第13条の2第2項)。指定数量未満の危険物の貯蔵・取扱いの基準は市町村条例で定めます(第9条の4)。

化学物質の排出量の届出と情報の提供。 化管法では、第一種指定化学物質等取扱事業者(政令で定める業種(製造業を含む)に属し、いずれかの第一種指定化学物質(政令で定める要件に当たる製品に含有されるものを含む)の年間の取扱量が1トン以上(特定第一種指定化学物質は0.5トン以上)の事業所を有することなどと、常時使用する従業員の数が21人以上であることの要件に当たる者)は、主務省令で定めるところにより排出量と移動量を把握し、物質と事業所ごとに、毎年度6月30日までに前年度の排出量と移動量に関し主務省令で定める事項を、都道府県知事を経由して主務大臣に届け出ます(第5条・同法施行令第3条・第4条・同法施行規則第5条)。これとは別に、指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等(指定化学物質と、政令で定める要件に当たるその含有製品)を他の事業者に譲渡し又は提供する時までに、その性状及び取扱いに関する情報を、文書又は磁気ディスクの交付その他経済産業省令で定める方法により提供し(第14条第1項)、変更は速やかに提供するよう努めます(同条第2項)。提供は譲渡し又は提供するごとに行います(同一の事業者に同種のものを継続的・反復して譲渡し、既に提供しているときを除く。相手方から求められたときはこの除外に当たらない。指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の提供の方法等を定める省令第6条)。本記事の設計では、この情報の提供を表示・通知と同じSDSで行い、届出の要件は要件ごとに3つの状態で確かめます。

情報と生成AI。 本記事の30日プランは、従業員の健康診断の結果など個人データに当たりうる情報を、生成AIやクラウドに入れずに進めます。それらを入れる場合の個人情報の保護に関する法律上の扱い(委託・第三者提供・外国にある第三者への提供のどれに当たるか)は、本記事では扱っていません。顧客の処方・仕様を生成AIやクラウドへ入れる前に、①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④顧客との秘密保持の取り決めとサービスのデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など自社の規程上確認が必要な事項、の6点を確かめ、組織が利用を承認したサービスに限ります。これは法令の要件ではなく、組織として決める運用です。本記事の設計では、入れる情報の条件を責任者が決め、委託先の確認を記録するまで入れません。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 化学物質の担当と製造の責任者が、直近1か月分の記録を1週間で突き合わせ、①出荷量の多い5製品の区分の「未確認」の件数②直近1か月のバッチのうち処方の版と調合の記録が照合できたバッチの数③直近1か月の出荷のうち、出荷の前にSDSの提供の記録があった出荷の割合④場所ごとの保管量と指定数量の倍数の集計にかかった時間、を測ります。

2週目:正本とルールを決める。 5製品の処方の版を台帳にし、告示の台帳と、原料のSDSの版と区分を並べた原料の台帳を作ります。区分の3つの状態の付け方と、「未確認」の製品を製造・出荷しないルールを決めます。

3週目:人が全件確認する小規模試行。 5製品で区分の候補とSDS・表示の案を作り、担当者と、選任された化学物質管理者が確認します。調合の記録の照合と保管量の一覧も試します。

4週目:比べる。 ①〜④を同じ方法で測り直して1週目と比べ、対象を広げる製品群と、Top2・Top3を本格的に始めるかを責任者が決めます。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 処方の版と区分・SDS・記録が結ばれておらず、確かめるには担当者に聞く。
  • Lv2 台帳化。 製品・処方・原料の一覧と、処方の版・原料の台帳がある。
  • Lv3 一元化。 区分・SDS・表示・提供の記録が処方の版に結ばれ、調合の記録と保管量が同じ台帳から出る。
  • Lv4 AI支援。 区分・見直し・逸脱・倍数の候補とSDS・表示の案をAIが出し、人が確認する。
  • Lv5 仕組み化。 処方の変更・原料のSDSの改訂・確認の時期の到来から見直しと届出の候補が出て、確認と承認の記録が残る。AIが区分の確定・選任された人の職務・出荷の可否を自動で行う状態ではありません。

12. FAQ

Q. 顧客に送る見本にも、SDSとラベルは必要ですか。 A. 本記事では、必要とも不要とも断定しません(行政の解釈は確認していません)。本記事の設計では、見本も「譲渡し又は提供」する物に当たりうるものとして扱い、試作の配合からSDSと表示の案を作って確認してから送ります。

Q. AIが出した区分の候補を、そのまま使えますか。 A. 使いません。候補は担当者が全件確認し、区分の確定は責任者が行います(節3)。

Q. 劇物に当たる製品を商社に売るとき、販売業の登録は要りますか。 A. 製造業者が自ら製造した劇物を他の毒物劇物営業者に販売・授与する場合は、販売業の登録が無くても販売・授与できます。本記事の設計では相手方が当たるかを取引ごとに確かめ、当たらない相手方への販売・授与には販売業の登録が要ります(毒物及び劇物取締法第3条第3項・節9)。

Q. 従業員が20人以下なら、化管法は関係ありませんか。 A. 届出(第5条)の要件には、常時使用する従業員の数が21人以上であることが含まれます(業種と年間の取扱量の要件もあります)。情報の提供(第14条)は届出とは別の規定です(節9)。要件に当たるかは事業者ごとに確かめます。

13. 関連業態・シリーズ導線

飲料製造の記事は、清涼飲料水を自社の工場で調合し殺菌又は除菌・充塡・密封して出荷する中小の事業者を想定し、品目ごとの殺菌条件の票を正本にして記録を照らし合わせることをTop1に置いています。調合と充填の工程を持つ点は本記事と同じで、食品の規律が中心になる点が違います(本記事の整理)。

プラスチック製品製造の記事は、顧客の図面・仕様に基づき樹脂部品を射出成形で量産する中小の受託成形メーカーを想定し、品番ごとの成形条件の票を正本にして記録と材料ロットを照らし合わせることをTop1に置いています。本記事は、樹脂そのものの製造と成形材料の配合を扱いません。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じ調合品メーカーでも、劇物・危険物に当たる製品の有無、受注配合と繰り返しの注文の比重、記録の整理状況によって、最初の一手は変わります。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自社の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標登録出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Claude AI活用 最強の教科書』(技術評論社・2026年10月刊)、『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)、『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

目次