この記事でわかること
「ChatGPTを試してはみたが、販促の仕事のどこで使えばいいのか分からない」。そこで止まっている経営者や、ひとりで販促を回している担当者は多いと思います。検索して出てくるのは大手ベンダーの導入事例か、ツールを並べただけの記事で、自分の会社の仕事に置き換わらない、という感覚です。
この記事では、生成AIをマーケティングに使うとは具体的にどういうことかを工程ごとに整理し、指示文(プロンプト)をどう考えると出力が変わるのか、どこで人が確かめる必要があるのかまで、中小企業の実務の目線でまとめます。
この記事で扱う主な内容は、次のとおりです。
- 生成AIマーケティングとは何か(従来型のAI活用との違い)
- 販促の工程ごとに、生成AIで実際にできること
- 出力の質を決めるプロンプトの考え方(4つの要素)
- うまくいかない典型的なつまずき方
- 事例の読み方と、中小企業が真似できる範囲
- 何から始めるか
なお、この記事は生成AIに限った各論です。広告配信の自動最適化のような従来型のAIも含めたマーケティング全体の話は、AIマーケティングとはにまとめてあります。総論から知りたい場合は、そちらを先に読むと位置づけがつかみやすくなります。生成AIという言葉そのものがあいまいな場合は生成AIとはが入口になります。
生成AIマーケティングとは
生成AIマーケティングとは、文章・画像・企画案などを生成するAIを、市場調査から企画、制作、顧客対応までのマーケティング業務に組み込んで進めるやり方を指します。業界で使われている呼び名で、公的に統一された定義があるわけではありません。
ここで押さえておきたいのは、AIをマーケティングに使うという話が、以前から二つに分かれていたことです。ひとつは、広告配信の入札やレコメンドの最適化のように、システムに組み込まれた形で裏側を動かしてきたAI。もうひとつが、2022年末以降に広まった、人が言葉で指示すると成果物を作ってくれる生成AIです。
前者は担当者が直接触る場面が多くありません。後者は「担当者の手元の作業そのもの」に入ってきます。調べる、書く、まとめる、案を出すという工程を、担当者が指示して回す。ここが実務での違いです。したがって本記事は後者に絞り、従来型のAIも含めた全体像はAIマーケティングとはが担当します。
結論=生成AIが効くのは「調べる・作る」であって、「決める」ではない
結論から言うと、生成AIマーケティングとは、調査と制作にかかっていた時間を短くして、その分を「何を狙うか」と「出してよいかを決める」ことに回す進め方です。
この線引きが要点です。生成AIを入れれば売れるようになる、という因果関係はありません。売れる理由を作るのは、これまでどおり商品と顧客理解です。生成AIが効くのは、その理由を探す調査時間と、見つけた理由を形にする制作時間のほうです。
そしてもう一点。生成AIは、知らないことでも、もっともらしく書いてしまうことがあります。ですから生成AIマーケティングは、「AIに作らせる仕組み」と「人が確かめてから出す仕組み」をセットで持つことになります。片方だけを導入すると、速く間違える体制ができあがります。
生成AIマーケティングをわかりやすく(下書き専門の助手が増えたイメージ)
もう少しイメージしやすく説明します。生成AIをマーケティングに使う状態は、下書き専門の助手が何人も増えた状態にたとえると分かりやすいです。
この助手は、調べ物が速く、文章もそれなりに書けて、案を10個出してと言えば10個出します。一方で、自社の商品を使ったことがなく、顧客の顔も知りません。過去にどんなクレームがあったか、なぜその価格にしたのかも知りません。そして知らないことを聞かれても「分かりません」と言わず、それらしい答えを作ってしまうことがあります。
そう考えると、任せ方の見当がつきます。調べる、下書きする、数を出す。ここは任せられます。世に出してよいかの判断と、自社ならではの経験を語る部分は人が持ちます。
ただし、このたとえには限界があります。人の助手は働くうちに自社のことを覚えていきますが、生成AIの場合は、重要な前提を自動で正確に覚えていると期待しないほうが安全です。技術的に言えば、生成AIは渡された文脈(プロンプトに含めた情報)をもとに次の言葉を予測しているのであって、こちらが渡さなかった社内事情を勝手に把握しているわけではありません。
なお、サービスによっては、資料をあらかじめ登録しておく機能や、毎回の指示を保存しておく機能もあります。ただし何がどこまで反映されるかは製品や設定によって異なるため、外せない前提は、その都度示すか、参照させる資料の側に書いておくのが確実です。だからこそ、後述する「自社の情報を先に整理しておく」という準備が、そのまま出力の質になります。
マーケティングの工程別・生成AIで実際にできること
生成AIでできることは幅広いのですが、中小企業の実務では工程ごとに整理すると考えやすくなります。
| 工程 | 生成AIに任せやすいこと | 人が持つこと |
|---|---|---|
| 市場調査・企画 | 情報の収集と要約、論点の洗い出し、仮説を複数出す | どの仮説を採るかの判断 |
| コンテンツ制作 | 記事・メール・LPの下書き、構成案、見出し案の量産 | 事実確認と、世に出す最終判断 |
| 広告 | 見出し・説明文の案出し、訴求軸ごとの書き分け | 予算配分と表現の可否判断 |
| SNS | 投稿文の言い換え、投稿カレンダーの叩き台 | 発信のトーンと炎上リスクの判断 |
| 顧客対応 | 問い合わせの分類、よくある質問への回答文の下書き | 例外対応と、責任を伴う回答 |
| 効果測定 | 数値の要約、レポートの下書き、変化点の言語化 | 打ち手の決定 |
この表のとおり、生成AIが担当するのは素材を作るところまでで、決定は人の側に残ります。ここを曖昧にしたまま導入すると、後述するつまずき方をします。
なお、Web集客に絞って工程ごとの向き不向きを見たい場合はWebマーケティングのAI活用、生成AIを使ってSEOをどう進めるかは生成AIでSEOはどう変わるかにまとめています。
生成AIマーケティングのプロンプトの考え方
「同じAIを使っているのに、人によって出てくるものの質が違う」。これは指示文、いわゆるプロンプトの差で起きます。ここでは個別の文例ではなく、考え方を整理します。プロンプトという言葉自体の説明はプロンプトとはを参照してください。
実務で出力が安定するかどうかは、次の4つが指示に入っているかで、かなり決まります。
- 役割:誰として書くのかを指定する。前提知識の水準と語彙が変わります。
- 前提:自社の商品、価格の考え方、想定読者、過去に効いた訴求。ここを渡さないと一般論しか返ってきません。
- 制約:文字数、使ってよい表現、書いてはいけないこと、出力の形式。
- 評価基準:何をもって合格とするか。これを書いておくと、AI自身に自己点検させる余地が生まれます。
このうち、いちばん差が出るのは前提です。「自社の情報を渡す手間」を惜しむと、どこにでもある文章が返ってきて、結局書き直すことになります。逆に言えば、商品説明・よくある質問・過去の失敗をまとめた資料を一度作っておけば、あとはそれを渡すか、サービスの資料登録機能から参照させるだけで出力が変わります。
もうひとつ、実務上の作法として、一度で完成させようとしないことです。構成案を出させる、良い部分を選ぶ、選んだ方向で書かせる、直したい点を具体的に伝える。この往復のほうが、長い指示文を一発で書くより早く着地します。
なお、業務ごとの具体的な指示文の実例は本記事では扱いません。記事制作の実例はAI記事作成プロンプト実例集にまとめてあります。
生成AIマーケティングでよくあるつまずき方
導入して止まってしまう会社には、共通したつまずき方があります。
第一に、事実と違う内容をそのまま出してしまうことです。統計、法令、他社事例、価格。この4つは、出力をそのまま信じてはいけない領域です。公開前に一次情報で確認する工程を省くと、誤情報の発信につながります。
第二に、情報漏えいです。顧客名簿や未公表の計画を安易に入力すると、社外のサービスに預けることになります。入力データの扱いはサービスによって違うので、何を入れてよいかの線引きは始める前に決めておく必要があります。
第三に、どこにでもある文章になることです。生成AIは一般的な説明を作るのが得意なので、前提を渡さずに書かせると、他社と似た内容ができあがります。あわせて、生成物の商用利用の可否や責任の所在は、使うサービスと契約によって異なります。画像を扱う場合は特に、規約を確認してから使ってください。
第四が、意外と多いつまずきです。「AIに任せたのに、確認に時間がかかって結局遅くなった」。これは合格ラインを決めずに始めた場合に起きます。何をもって使える下書きとするかを先に決めていないと、出力のたびに評価がぶれて、際限なく直すことになります。
これらは「だから生成AIを使わない」という結論に導くものではありません。ただし、確認の工程を作れば消えてなくなる性質のものでもありません。入力してよい情報をあらかじめ分類し、使うサービスの契約と設定を確かめ、公開前に人が確認する。この三つを組み合わせて、起きる可能性と影響を減らしていく、という付き合い方になります。
生成AIマーケティングの事例は、そのままでは真似できない
「生成AI マーケティング 事例」で検索すると、大手企業やベンダーの導入事例が数多く出てきます。参考にはなりますが、そのまま持ち込めないことのほうが多いのが実情です。理由は3つあります。
一つは、前提となるデータの量が違うことです。多くの事例は、蓄積された購買履歴や会員データを前提にしています。顧客が数十社という規模では、同じ分析は成り立ちません。
二つ目は、体制が違うことです。専任のマーケティング部門と、AIを扱える技術者がいる前提の事例を、社長が営業も制作も兼ねている会社に持ち込んでも、工程が合いません。大手広告会社の中には、生成AIを扱う専門の組織やサービスを設けているところもありますが、これも規模の前提が異なります。
三つ目は、目標の大きさが違うことです。大企業の事例では「数%の改善で数千万円」という規模の話が多く、中小企業では「担当者ひとりの作業時間を週に何時間空けるか」が現実的な目標になります。
では中小企業は事例をどう読めばよいか。成果の数字ではなく、どの工程を置き換えたかを見ることです。広告文の案出しをAIにした、問い合わせの分類をAIにした、という工程単位の情報なら、規模が違っても移植できます。中小企業の実際の成果と失敗はAI経営の活用事例集にまとめています。
生成AIに書かせた文章を、そのまま出せない理由
実務でいちばん時間を使うのは、実は生成ではなく、生成後の手直しです。
生成AIの出力は平均的にはよくできていますが、平均的であることがそのまま弱点になります。自社が長年伝えてきた言い回し、顧客が実際に使う言葉、あえて言わないと決めている表現。こうしたものは、指示しなければ反映されません。
私自身、自社サイトの記事制作でこの工程を回していますが、下書きは短時間で出せても、自社の言葉に直す部分は人が担当しています。ここを省くと、記事は増えるのに問い合わせは増えない、という状態になります。
「自社らしくない」と感じたとき、私が実際に直している順序
誤字があるわけでも、内容が間違っているわけでもない。それでも「うちの会社が書いた文章には見えない」と感じることがあります。私はこれを、語尾や言い回しの問題とは考えていません。
最初に確認するのは、その文章に、自社が実際に見てきたもの、決めたもの、捨てたものが入っているかです。
生成AIは、一般的に正しそうな文章を作るのが得意です。だから「重要です」「効果的です」「適切に活用しましょう」「自社に合った方法を選びましょう」といった表現が増えます。間違いではありませんが、どの会社でも書ける文章です。
そこで、一般論になっている箇所に自社の判断を入れます。「AIで作業を効率化できます」で終わらせず、「調査と下書きはAIへ移したが、公開判断と事実確認は人に残した」と書く。「小さく始めることが重要です」ではなく、「最初は下書き1業務だけで試し、修正時間が減ることを確認してから対象を広げた」とする。
自社らしさは、独特の語尾から生まれるのではありません。何を試し、何を残し、どこで止めたかという判断の履歴から生まれます。
次に直すのが、読者との距離です。AIの文章は、読者を広く想定しすぎることがあります。経営者向けなのか、現場の担当者向けなのか、これから始める人向けなのか。ここが曖昧になると、説明が無難になります。私は届ける相手を一人に近いところまで絞り、その人がいまどこで困っていて、何を誤解していて、どの言葉で立ち止まるのかを確認します。
三つ目は、断定の強さです。AIは自信のある文章を書きますが、実務では条件によって結論が変わります。「必ず成果が出ます」ではなく「この条件なら試す価値があります」。「すべて自動化できます」ではなく「人の確認を残せる工程から始めます」。
最終的に見ているのは、次の3点です。自社の経験や数字が入っているか。自社の判断や線引きが入っているか。読者へ次の行動を具体的に示しているか。
語尾だけを調整しても、自社らしさは戻りません。一般論を削り、経験と判断と失敗を入れる。自社らしさとは文体ではなく、会社が積み重ねた判断が見えることだと考えています。
何から始めればよいか
最後に着手の順序です。ツール選びから入らないことが要点です。
- 手作業で繰り返している工程を1つ書き出す:週に何度も同じことをしている作業が候補です。
- その工程の合格ラインを先に決める:何をもって使える成果物とするかを決めていないと、出力を評価できません。
- 自社の情報を1か所にまとめる:商品の特徴、価格の考え方、よくある質問、過去の失敗。これが前述の「前提」になります。
- 1つの工程で3週間続ける:複数を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。
- 入力してよい情報の線引きを決める:始めてからでは遅くなります。
この順序なら、ツールは後から決められます。逆にツールから決めると、契約したが使っていない状態になりがちです。
生成AIマーケティングについてよくある質問
生成AIマーケティングとは何ですか?
文章や画像を生成するAIを、市場調査・企画・制作・広告・顧客対応といったマーケティングの工程に組み込んで進めるやり方です。広告配信の自動最適化のような従来型のAI活用と区別して使われることが多く、担当者が言葉で指示して成果物を作らせる点が特徴です。統一された定義がある言葉ではありません。
生成AIとマーケティングに関する本はありますか?
入門書は複数出ています。ただし、この分野は変化が速く、書籍によって前提としているサービスや機能の時点が違うため、出版時期を確認してから読むことをおすすめします。なお、Webマーケティングの土台となる考え方については、AIマーケティングとはの中で私自身の書籍とあわせて整理しています。
生成AIマーケティングは無料で始められますか?
試すだけなら、無料で使える範囲がある生成AIサービスで始められます。ただし無料版は、利用回数や機能に制限がある場合や、入力内容の扱いが有料版と異なる場合があります。業務で継続的に使うなら、各サービスの規約と料金体系を確認したうえで判断してください。
生成AIマーケティングの資格は必要ですか?
必須の公的資格はありません。関連する民間検定はいくつかありますが、実務で問われるのは、自社の課題に合わせて任せる工程を設計できるかどうかです。資格の取得より、自社の1工程で試してみるほうが判断材料になります。
生成AIマーケティングは副業にできますか?
生成AIを使った記事制作や広告文作成を請け負う働き方は実際にあります。ただし、生成AIが使えること自体は差別化になりにくく、発注側が求めるのは、事実確認まで含めて成果物の品質を保証できることです。AIを使える人ではなく、AIの出力を評価できる人が求められる、という理解が実態に近いと考えています。
講座やセミナーを受けたほうがよいですか?
自社の工程に当てはめて考えられる内容であれば有効です。判断の目安は、ツールの操作説明が中心か、業務の分解の仕方まで扱っているかです。操作は自社で試せば分かりますが、どの工程を任せるかの設計は、自社の業務を知っている人と一緒に考えないと進みません。
生成AIで作った記事は検索で評価されないのですか?
AIを使ったこと自体を一律に不利とする案内は、Googleからは出ていません。ただし「使ってよい」で話が終わるわけでもありません。Googleが求めているのは、読者にとっての付加価値と正確性であり、誰がどのように作ったのかを示すことも検討するよう案内されています。さらに、検索順位を上げること自体を主な目的とした大量生成は、スパムに関するポリシーの対象として扱われます。
要するに、問われるのは「AIを使ったかどうか」ではなく、目的・独自性・正確性のほうです。この論点は生成AIでSEOはどう変わるかで、Googleの公開資料に沿って詳しく扱っています。
関連記事と「AI戦略」に関するご案内
生成AIマーケティングとは、調査と制作の時間を短くして、判断に時間を回すための進め方です。出力の質は前提の渡し方で決まり、確認の工程を先に設計しておくことが導入の条件になります。新しいマーケティング理論に置き換わるものではない、と押さえておけば十分です。
従来型のAIも含めた全体像はAIマーケティングとは、Web集客の工程ごとの整理はWebマーケティングのAI活用、記事制作の具体的な指示文はAI記事作成プロンプト実例集、中小企業の実例はAI経営の活用事例集をご覧ください。
AI活用を個別の施策で終わらせず、経営課題や業務改善につなげたい場合は、中小企業社長のためのAI戦略活用完全ガイドで全体像を確認できます。
確認日:2026年8月5日(生成AI・マーケティングに関する各社の公開情報を参照)
