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社労士の試験科目の免除制度について徹底解説
社労士の試験は範囲が幅広いため、「全ての科目を完璧にこなすのは難しい…」と悩んでいる受験生は多いのではないでしょうか。
通常の受験生は全ての科目を受ける必要がありますが、社会保険労務士(社労士)の試験には科目の免除制度があります。
該当する方は試験科目の一部が免除されますので、勉強範囲が狭くなるわけです。
以下、社会保険労務士(社労士)の試験で科目免除が適用される条件をまとめてみました。
- 地方公務員・国家公務員:労働局や市役所など、公務員(国・地方)として労働社会保険法令に関する施行事務に通算して10年以上従事している
- 労働社会法関連の従事者:厚生労働大臣の指定団体の役員や社労士事務所で、労働社会保険法令事務に通算して15年以上従事している
- 日本年金機構:日本年金機構の役員または従業員として、社会保険諸法令の実施事務に通算して15年以上従事している
- 全国健康保険協会:全国健康保険協会の役員や従業員として、社会保険諸法令の実施事務に通算して15年以上従事している
これらの条件に当てはまる方は、社会保険労務士(社労士)の試験の受験申込と合わせて申請することにより、一部の試験科目が免除される仕組みですね。
社会保険労務士(社労士)と関係する実務経験をお持ちの方は、他の受験者と比べて少ない科目の受験で済みます。
社会保険労務士(社労士)の免除制度の対象になるのは、一般企業で勤務している会社員やサラリーマンではありません。
地方公務員や国家公務員など、労働社会保険法令に関わる業務に従事している人が対象です。
他にも社会保険労務士(社労士)の試験科目ごとに免除資格がありますので、詳細はこちらのページをご覧になってください。
参考:https://www.sharosi-siken.or.jp/pdf/04_01_menjyo_list.pdf
免除指定講習で社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除を受けられる
社会保険労務士(社労士)の試験科目の免除制度は、公務員や日本年金機構の役員・従業員として従事していた方だけではありません。
社労士会では、試験の一部科目を免除する社会保険労務士試験試験科目免除指定講習が実施されています。
免除指定講習を受講して修了試験で良い成績を修めると、次の中から最大で4科目が免除される仕組みです。
- 労働災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識
科目免除の申請は、「①~③の中から2科目」「④と⑤のいずれか」「⑥は申請可能」の組み合わせで適用されます。
例えば、労働災害補償保険法の試験科目が免除されると他の科目の勉強に時間を費やすことができますので、免除指定講習は社会保険労務士(社労士)の試験を有利に進められるでしょう。
しかし、社会保険労務士(社労士)の免除指定講習は、次の条件をクリアしないといけません。
- 社労士事務所または社会保険労務士法人事務所の補助者として、労働社会保険法令事務の従事期間が通算して15年以上
- 健康保険組合・厚生年金基金・労働保険事務組合等の指定団体の役員または従業者で、労働社会保険法令事務の従事期間が通算して15年以上
参考:https://www.shakaihokenroumushi.jp/qualification/tabid/228/Default.aspx
実務経験をお持ちの方しか免除指定講習の条件を満たせませんし、講習の内容は通信指導と面接指導を組み合わせた大変なものです。
通信教育の形式で行われる通信指導や添削指導を約6ヵ月に渡ってこなし、決められた日程で3日間の面接指導が実施されます。
講習を受講するには1科目当たり45,000円と高額な費用がかかりますので、社会保険労務士(社労士)の免除指定講習が必ずしも良いとは言い切れないですよ。
講習の受講資格を持つ方は今までの実務経験で知識が豊富だと考えられますので、無理に免除指定講習を受けて試験科目を免除しなくても良いでしょう。
社会保険労務士(社労士)の試験で科目免除の申請に必要な手続き!
社会保険労務士(社労士)の試験で科目免除を申請する前に、まずは免除資格があるのかどうか確認しましょう。
事前に確認しておけば勉強科目を絞れるだけではなく、「試験免除の対象になると思っていたけど実は対象外だった…」というケースを未然に防ぐことができます。
試験の一部免除の審査は、様式3号と送付状に必要事項を記入して試験センターに送ればOKです。
しかし、免除資格の確認は留意事項全てに同意頂ける方限定ですので、詳細は社会保険労務士試験オフィシャルサイトの公式サイトをご覧になってください。
参考:https://www.sharosi-siken.or.jp/exam/exempt.html#exempt03
社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除を申請する手続きは、受験資格証明書とは別に免除資格を証明する書類が必要です。
2つの書類を添付し、社会保険労務士(社労士)の試験の受験を申し込む形になります。
申し込みの期間は例年4月中旬から5月末日までですので、忘れずに免除資格を証明する書類を用意しましょう。
社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除を利用した時の点数の算出方法は?
社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除では、「総得点の合格基準点÷満点相当の点数×免除科目の満点相当の点数」の計算式に当てはめて点数が算出されます。
毎年同じ点数ではなく、各年度の合格基準点を元に算出される仕組みです。
以下では、2018年度に実施された社会保険労務士(社労士)の試験を例に挙げて科目免除時の点数の算出についてまとめてみました。
- 選択式問題の合格基準は総得点23点以上かつ各科目3点以上、配点は各問1点/一科目5点満点の計40点満点
- 「23点÷40点×5点」の計算式で、科目免除の場合の点数は2.9点
- 択一式問題の合格基準は総得点45点以上かつ各科目4点以上、配点は各問1点/一科目10点満点の計70点満点
- 「45点÷70点×10点」の計算式で、科目免除の場合の点数は6.4点
この点数を見ればわかる通り、社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除で充当される点数は満点ではありません。
他の試験科目で高得点を叩き出したとしても、免除された科目には関係ないわけです。
つまり、総得点で社会保険労務士(社労士)の試験で高得点を狙うには、科目免除制度を適用させずに実際に受験した方が可能性がアップしますね。
社会保険労務士(社労士)の科目免除が試験で有利にならない理由!
社会保険労務士(社労士)の科目免除制度と聞き、「実務経験がある人は有利だな~」「ちょっと不公平じゃない?」と感じている方はいませんか?
しかし、社会保険労務士(社労士)の科目免除制度の内容を確認してみると、必ずしも適用された方が有利になるとは言い切れないのです。
なぜ社会保険労務士(社労士)の科目免除が試験で有利にならないのか、いくつかの理由を見ていきましょう。
総得点の合格基準点のみで免除科目の得点が決まる
上記の項目でも解説しましたが、社会保険労務士(社労士)の試験は総得点の合格基準点のみで免除科目の得点が決まります。
自身の他の科目の得点には全く影響を受けないため、総得点の合格基準点をベースにした得点にしかならない科目免除制度には大きなメリットがありません。
一定の実務経験をお持ちの方でも、免除を申請せずにそのまま受験した方が高得点を狙えますよ。
科目免除者の合格率が著しく高いわけではない
ここでは、社会保険労務士(社労士)の試験で一般受験者と科目免除者の合格率の違いをまとめてみました。
社労士試験 | 一般受験者の合格率 | 科目免除者の合格率 |
---|---|---|
2017年度社労士試験 | 6.6% | 10.4% |
2018年度社労士試験 | 6.2% | 9.1% |
科目免除者は相当の実務経験と知識を有していますので、「試験の科目数が減れば合格率が高くなる」と一概に決め付けることはできません。
むしろ、社会保険労務士(社労士)の試験の科目免除を受けたとしても、合格率が通常の1.5倍程度しか高くならないと考えられます。
免除できる科目は自身の実務経験と関連が深い
社会保険労務士(社労士)の試験で免除できる科目は、日常的に当該業務に従事されています。
自身の実務経験と関連の深い科目ですので、得意不得意に関わらず一般の受験者と同じように受験した方が得策です。
一般の受験者よりも遥かに専門知識を持っているのにも関わらず、試験の免除を受けるのは勿体ないと言えるでしょう。
免除指定講習の費用が高い
対象者であれば、社会保険労務士(社労士)の免除指定講習を受講して試験科目の免除が受けられます。
しかし、講習の受講費用は1科目当たり45,000円、4科目で180,000円と非常に高いのがデメリット…。
更に通信教育に半年間もの時間を要しますので、社会保険労務士(社労士)の免除指定講習は積極的におすすめできません。
わざわざ高額な費用を支払って講習を修了しなくても、普通に社会保険労務士(社労士)の試験を受けて高得点を取った方が遥かにメリットが大きいのです。
まとめ
以上のように、社会保険労務士(社労士)の試験は一定の実務経験の条件を満たし、書類の提出や申請で科目免除を受けられます。
社会保険労務士(社労士)の科目免除制度に該当する方は、地方公務員や国家公務員、労働社会法関連の従事者が代表的です。
しかし、必ずしも科目免除して合格に有利になるとは言い切れませんので、社会保険労務士(社労士)の試験を受ける前に科目免除制度を利用すべきなのかどうか考えてみてください。