タクシー会社のAI活用|最初の一手と人に残す判断

タクシー会社のAI活用:乗務を単位に、点呼・日常点検・業務記録・営収を1本の乗務記録に結ぶ流れ

最終更新日: 2026年9月26日/内容確認日: 2026年9月26日

本記事では、道路運送法第4条第1項の一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受けた法人のうち、タクシー(運送の引受けが営業所のみで行われるハイヤー以外のもの)を使って事業を営み、事業用自動車5両以上の運行を管理する営業所を1つ以上持ち、自社で雇用する運転者を乗務させる中小の事業者を主なモデルとして想定します。これは本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。個人タクシー、福祉輸送に限定した事業、バスは対象にしていません。

目次

1. 結論:タクシー会社なら何から始めるか

タクシー会社でAIを使うなら、最初の一手は「乗務を単位に、点呼・日常点検・業務記録・営収を1本の乗務記録に結ぶこと」です。次に「事故と苦情を、1件ごとの記録から報告の期限と指導の対象へつなぐこと」、その次に「運転者を選任する前の要件を、一人ごとの照合表で確かめること」が続きます。

番号は効果の大きさの順位で、実施の順序とは分けています。効果の大きさは、その記録を入力に使う後ろの作業の数(本記事の業務の分解で17・13・5)で比べた業務の構造の物差しで、時間や金額の削減の大きさではありません。実施では、営業所の属性と運転者の台帳の一覧を導入前提として先に置きます(節3)。

一方で、旅客を乗せた運転、乗務させるか・車両を運行させるかの判断、運送の引受けの拒絶、事故の現場の措置と報告の要否、苦情への弁明、運転者の選任は、AIに渡せない領域として残ります(節6)。原則は「AIは記録の組立てと候補まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、1日の仕事は乗務を単位に次の順で回ります。

  1. 乗務割を作り、乗務前の点呼と車両の日常点検をして出庫する。
  2. 流し・乗り場のほか、電話や配車アプリ、法人契約の依頼を受けて配車する。
  3. 旅客を運送し、運賃・料金を収受する。
  4. 乗務後の点呼を受け、業務記録を付ける。
  5. 納金と、決済や配車アプリの入金を照らして営収を締める。

裏側では事故と苦情、指導、車両の点検も動きます。本シリーズではこの仕事を、1件ごとの乗車という出来事が起点になる型として整理し、乗務ごとの点呼と日常点検、定期点検や車検という暦と乗務の周期で動く性格も併せ持つものとしています。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ 実施の順序
導入前提:営業所の属性と運転者の台帳の一覧 — ①
Top1:乗務記録 最も大きい ②
Top2:事故・苦情の記録 2番目 ③
Top3:選任前照合表 3番目 ④(②・③と並行してよい)

導入前提。 営業所ごとに、配置車両数と、旅客自動車運送事業運輸規則(以下「運輸規則」)やタクシー業務適正化特別措置法(以下「タクシー適正化法」)の指定地域に当たるか(公示・告示を人が確かめて入力)を台帳にします。あわせて、運転者全員の乗務員等台帳から、運転免許の有効期限・条件と、指導・適性診断の受診の状況を一覧にします。Top3の登録の要件は営業所が指定地域に当たるかで変わります(節9)。

Top1:乗務を単位に、点呼・日常点検・業務記録・営収を結ぶ

何をするか。 乗務(運転者×車両×日)をキーに、乗務前後の点呼の記録、日常点検の記録、乗車ごとの運賃の記録、業務記録の距離と積算キロ数、納金と入金を1行に並べます。

なぜ最初か。 法令は、これらを記録ごとに別の単位で求めています。運輸規則は、乗務前の点呼で日常点検の実施又はその確認、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由で安全な運転ができないおそれの有無の報告を求めて確認し必要な指示を与えること、乗務後の点呼で報告を求め酒気帯びの有無を確認することを求め、一般乗用の事業者は点呼を運転者等ごとに記録して1年間保存します(第24条)。日常点検は、自動車運送事業の用に供する自動車の使用者又は運行する者が1日1回、その運行の開始前に行います(道路運送車両法第47条の2)。業務記録は、一般乗用の事業者が運転者等ごとに記録させ、旅客が乗車した区間と積算キロ数を加え、事業用自動車ごとに整理して1年間保存します(運輸規則第25条第3項)。本記事では、これらと乗車ごとの運賃の記録を乗務をキーに結ぶ設計にし、営収の照合の前提と整理しました。この記録を入力に使う作業が最も多いため、効果が最も大きいと置いています。

どう始めるか。 1つの営業所の1週間分の乗務で、5つの記録を1行に並べ、点呼の記録の横に導入前提の一覧を出します。欠けている項目は「照合不能・要確認」と表示し、AIには欠けと差異の抽出と点呼の記録の下書きだけをさせます。点呼の記録は点呼を行った者が全件確認して確定し、乗務させるかは運行管理者が決めてその欄に入力します(節6)。点呼で伝える指示事項の下書きは事故の記録を材料にするため、Top2の後に足します。

何を測るか。 乗務の締めから差異が確定するまでの日数、差異の件数、点呼の記録の作成にかかる時間。

注意。 乗務記録は照合のための設計で、保存は法令の単位(点呼は運転者等ごと、業務記録は事業用自動車ごとに整理)のまま行います。AIに「乗務可」を出させないでください(節12)。

Top2:事故と苦情を、1件ごとの記録から報告の期限と指導の対象へつなぐ

何をするか。 事故(報告の対象か否かを問わない)と苦情を1つの表に並べ、事実、自動車事故報告規則の該当の候補と根拠の号、報告書・速報の期限と提出、事故の記録の8項目の充足、特別な指導と適性診断の対象者、弁明と改善措置の欄を埋めます。

なぜ二番目か。 本記事の整理では、1件の事故・苦情から、義務者・相手方・期限の違う義務が同時に生じます(節9)。この記録を入力に使う作業はTop1に次いで多いと置きました。苦情の照合にはTop1の業務記録を使うため、実施はTop1の後です。

どう始めるか。 直近3か月の事故と苦情で表を埋めます。AIには第一報の構造化、該当の候補と期限、記録の欠けの抽出、弁明の文案だけをさせます。

何を測るか。 第一報から事故の記録の確定までの日数、報告・速報の期限内の提出率、指導の対象者の抽出から実施までの日数。

注意。 表の欄は「報告が要る」ではなく「該当の候補と根拠の号」と書きます。

Top3:運転者を選任する前の要件を、一人ごとの照合表で確かめる

何をするか。 選任の手続中の運転者と、直近に選任した運転者(例えば5人)で、①政令の要件、②選任の制限、③指導・特別な指導・適性診断(例外に当たるか)、④タクシー運転者の登録、⑤乗務員等台帳へ引き継ぐ記載事項、の欄を埋めます。

なぜ三番目か。 選任の前提になる要件が、道路運送法と政令、運輸規則、タクシー適正化法に分かれています(節9)。この表を入力に使う作業は3つの中で最も少ないと置きました。Top1・Top2の出力を材料にしないので、導入前提の後、Top1・Top2と並行して始めてかまいません。

どう始めるか。 免許の欄には、運転免許証の原本を確かめた結果だけを入れます。④の指定地域の要件は導入前提の台帳を使い、該当を確かめていない営業所は「要確認」と表示します。AIには照合と欠けの抽出だけをさせます。

何を測るか。 採用から選任までの日数、選任の時点で照合表の欄が埋まっていなかった件数。

注意。 「2年以内に通算90日以上」は2つあり、別の欄にします。運輸規則の選任前の指導の例外と、指定地域での登録の運転の経歴で、対象と地域が違います(節9)。

4. AIに任せやすい仕事

人が確定した記録や値を機械的に並べ、結果をそのまま次の処理へ渡せる仕事です。

  • 形を整える。 メーター・決済端末・配車アプリの記録の取込みと、乗務ごとの集計。
  • 照らし合わせる。 運転者が確認した業務記録の乗車区間と、メーター・決済の記録の対応付け。
  • 違いを見つける。 人が計数した納金と、メーターの記録や入金明細の差。
  • 足りないものを探す。 点呼の記録や日常点検の記録が紐づかない乗務、乗務員等台帳の記載事項の空欄。
  • 下書きを作る。 確定した乗務記録からの、営業所ごとの日次の営収の集計表。
  • 探し出す。 台帳の運転免許の有効期限や自動車検査証の有効期間から、満了が近いもの。

差や空欄をどう扱うかは人が決めます。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や下書きを作り、人が全件確認してから使う仕事です。確認は記録の確かさを担保する設計です。

  • 点呼と業務記録の下書き。 点呼の記録は点呼を行った者が、業務記録は運転者が確認し付記してから記録にします。
  • 差異の原因の候補。 経理担当が納金・決済の原本と照らし、処理は責任者が決めます。
  • 事故と苦情。 第一報の構造化、該当の候補と期限、事故の記録の下書き、再発防止の案、特別な指導と適性診断の対象者の候補、弁明の文案。
  • 選任前の照合。 応募書類からの要件の照合と、選任までに要る事項の一覧。
  • 配車。 依頼の構造化、割当の候補、営業区域外・乗合の運送に当たるかの候補。割当は配車担当が確定し、乗務させるかが未確定の運転者は候補に入れません。
  • 乗務割の案。 社内基準に照らした超過の候補。社内基準に改善基準告示の値を写す場合も、隔日勤務・車庫待ち等の区分と労使協定による延長の該当はAIに決めさせません(節9)。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。AIの照合がどれだけ当たっていても、乗務させるかは1件ずつ人が決めます。

行う人を法令が限っていること。 旅客自動車を旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転するには、自動車の種類に応じた第二種運転免許が要ります(道路交通法第86条第1項。第一種免許ではこの目的で運転できません。第85条第11項)。

法令が義務者や役割を定めていること。 AIは材料の整理までです。

  • 乗務させるかどうか。 酒気を帯びた状態にある乗務員等や、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由で安全に運行の業務を遂行できないおそれがある乗務員等を運行の業務に従事させない義務は事業者にあり(運輸規則第21条第4項・第5項)、従事させないことは運行管理者の業務です(第48条第1項。一般乗用の事業者の運行管理者の選任は、事業用自動車5両以上の運行を管理する営業所で求められ、補助者は選任することができます。第47条の9)。
  • 車両を運行させるかどうか。 乗車定員10人以下の自動車運送事業の用に供する自動車5両以上の使用の本拠では整備管理者を選任し、日常点検の結果に基づく運行の可否の決定の権限を与えます(道路運送車両法第50条、同法施行規則第31条の3・第32条)。
  • 運送の引受けの拒絶。 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切を除く)は道路運送法第13条各号の場合を除き引受けを拒絶できず、運輸規則第13条は引受け又は継続を拒絶できる者を挙げています。
  • 事故のとき。 運行を中断したときや旅客が死傷したときの旅客の保護と応急手当などは、事業者と乗務員がともに行い、旅客の生命を保護する処置を先にします(運輸規則第18条・第19条・第49条)。報告書・速報の要否と提出、苦情への弁明、運転者の選任も事業者が決めます(節9)。

自社の責任者が決めること。 採用、営収の差異の処理と未収の回収、損害の処理の方針、改善措置の内容、補助者を置くか、自家用車活用事業に取り組むか、AIに入れる情報の範囲。

7. Best Practice

到達点は、本記事の整理では「乗務・運転者・1件の事故が、それぞれの単位で記録され、互いに引ける」構造です。

第一に、点呼、日常点検、乗車ごとの運賃、業務記録、納金と入金が乗務をキーに結ばれ、保存は法令の単位のまま行われます。

第二に、運転者一人ごとの照合表で要件がそろったことを確かめてから選任し、台帳へ引き継ぎます。

第三に、事故と苦情が1件ごとの記録から、報告・弁明の期限と指導・適性診断の対象へ、義務者を分けてつながります。

前提として、運行管理者と整備管理者の5両や指定地域のような条件つきの制度が、営業所・使用の本拠の属性として台帳にあります。

8. Before / After

Before。本記事が置いた想定です。 乗務の記録、運転者ごとの選任前の要件、事故・苦情からの報告の期限と指導の対象が、それぞれの単位で1か所に揃っていない状態を出発点とします。業界の実態ではありません。

After。到達点として置いた姿です。 乗務ごとの欠けと差異がその日のうちに一覧になり、事故と苦情から該当の候補と期限・指導の対象・弁明の文案が出て、選任前照合表で要件がそろったことが分かります。判断は動いていません。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文を確かめた規律だけを挙げており、すべての規律ではありません。法令の条文は2026年9月26日に施行されている版で確認し、それより後に施行される改正の内容は扱っていません。個別の判断は専門家や所管の窓口に確認してください。

運転者の要件と選任。 一般旅客自動車運送事業者は、年齢・運転の経験・第二種運転免許について政令で定める要件を備える者でなければ、事業用自動車を運転させてはなりません(道路運送法第25条、旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件に関する政令。当該運行が旅客の運送を目的としない場合を除く。年齢と経験の年数には教習の修了などによる特例があります)。個人タクシー事業者を除く旅客自動車運送事業者は、日日雇い入れられる者や2月以内の期間を定めて使用される者など、運輸規則第36条第1項が挙げる者を運転者として選任できません。一般乗用の事業者(個人タクシー事業者を除く)は、新たに雇い入れた者に指導・監督と特別な指導を行い、適性診断を受診させた後でなければ選任できません(一般乗用の運転者として選任された経験がある者は、指導の事項が一部に限られます)。ただし、その事業者の営業区域内で雇入れの日前2年以内に通算90日以上、一般乗用の事業用自動車の運転者であった者は除かれます(同条第2項)。

タクシー事業者は、タクシーを配置する営業所がある単位地域(全国を分けて国土交通大臣が指定する地域)の原簿に登録を受けている者以外を、タクシーに運転者として乗務させてはなりません(タクシー適正化法第3条第1項。旅客の運送を目的としない運行を除く)。登録の申請者は運転者本人です(第5条第1項)。講習を修了していないことなどに当たるとき(当たらないことが明らかでないときを含む)は、登録は拒否されます(第7条第1項)。指定地域では、その地域に係る運転の経歴(申請前2年以内にその指定地域内で通算90日以上タクシー又はハイヤーの運転者であったこと)を有していない場合又は試験に合格していない場合を拒否の事由としています(同項第4号、同法施行規則第4条)。

指定地域。 乗務距離の最高限度(運輸規則第22条)と運行記録計による記録(第26条第2項。個人タクシー事業者を除くなどの条件があります)は、それぞれ地方運輸局長が指定する地域内に営業所を有する一般乗用の事業者にかかる規律です。本記事の整理では、これらとタクシー適正化法の指定地域(国土交通大臣が指定)は別の指定で、営業所ごとに公示・告示を人が確かめます。

勤務時間と改善基準告示。 厚生労働省の改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準。令和4年厚生労働省告示第367号による改正後で、令和6年4月1日から適用。2026年9月26日に同省の掲載ページで確認)は告示で法令ではなく、運輸規則第21条第1項が基準を委ねる国土交通大臣の告示(本記事では扱っていません)として挙げるものでもありません。第2条は、使用者が一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者を使用する場合の拘束時間と休息期間を隔日勤務とそれ以外で別に定め、車庫待ち等の運転者と労使協定による延長に条件を付け、ハイヤーに乗務する運転者には第1項から第4項までを適用しません。数値は条件の分岐が多いため挙げていません。

事故と苦情。 自動車事故報告規則の報告書は、死者又は重傷者(自動車損害賠償保障法施行令が定める傷害を受けた者)を生じたものなど第2条各号の事故に限り、事業者等が、事故があった日(救護義務違反は知った日、国土交通大臣の指示による事故は指示があった日)から30日以内に、使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長を経由して国土交通大臣に提出します(第3条第1項)。旅客に1人以上の重傷者を生じたものなど第4条第1項各号の事故があったとき又は国土交通大臣の指示があったときは、24時間以内においてできる限り速やかに運輸監理部長又は運輸支局長へ速報します。

旅客自動車運送事業者は、自動車事故報告規則第2条の事故又は道路交通法第67条第2項の交通事故が発生した場合、乗務員等の氏名、発生日時、概要、原因、再発防止対策など8項目を記録し、その事業用自動車の運行を管理する営業所で3年間保存します(運輸規則第26条の2)。死者又は負傷者(同施行令が定める傷害を受けた者)が生じた事故を引き起こした者などには、告示で定めるところにより特別な指導を行い、認定を受けた適性診断を受けさせます(第38条第2項)。苦情は、申し出た者に遅滞なく弁明し(氏名及び住所を明らかにしない者を除く)、内容、原因究明の結果、弁明、改善措置、担当者を営業所ごとに記録して1年間保存します(第3条)。

個人情報と、生成AI・クラウドへ出す条件。 個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者には、そのデータベース等を構成する個人情報(個人データ)の安全管理措置と、取扱いを委託する場合の委託先の監督が求められます(個人情報の保護に関する法律第16条・第23条・第25条)。外部へ渡すときは、第三者提供(あらかじめ本人の同意を得るのが原則で、法令に基づく場合などの例外があります。第27条第1項)、利用目的の達成に必要な範囲内の委託に伴う提供(提供先は第三者に当たらず、委託先の監督の対象。同条第5項第1号)、その他のどれに当たるかを、配車アプリ事業者や決済事業者ごとに人が確かめます。

生成AIやクラウドへ旅客や運転者の情報を入れる前に、次の6点を確かめ、組織が利用を承認したサービスに限ります。①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④契約上の機密保持とデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など、自社の規程上確認が必要な事項。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 営業所の指定地域の該当と配置車両数を確かめられるか、運転者の免許の有効期限と適性診断の受診の状況で台帳から確かめられない件数を数えます。1つの営業所の直近1週間の乗務で突き合わせの時間と差異の件数・確定までの日数を、直近3か月の事故と苦情で記録の項目の充足を、直近5人の選任で要件の欠けと選任までの日数を数えます。

2週目:正本とルールを決める。 最初に営業所の属性の台帳を作り、次に運転者の一覧を出します。乗務記録の様式に保存の単位を書き込み、選任前照合表では2つの「2年以内に通算90日以上」を別の欄にします。社内で決めた運用は「社内の設定」として法令と分けて書きます。

3週目:人が全件確認する小規模試行。 1つの営業所の1週間で乗務記録の組立てと差異の抽出を試し、点呼を行った者・運行管理者・経理担当が全件確認します。並行して、手続中の運転者で選任前照合表を試します。節6の判断には手を付けません。

4週目:比べる。 1週目と同じ項目を測り直し、次に広げるか様式を直すかを決めます。次の候補は事故・苦情の表と配車の受付です。30日で変わるのは「測れること」と「ルールが文章になったこと」です。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 記録が担当者の記憶と紙で回る。
  • Lv2 台帳化。 記録が紙や表計算にあるが、記録ごとに別で、同じ乗務を何度も書く。
  • Lv3 一元化。 乗務を単位に記録が集まり、運転者の照合表と台帳、事故・苦情の記録も同じ場所にある。
  • Lv4 AI支援。 乗務記録の差異、事故・苦情からの該当の候補と期限、選任前の照合、配車の候補をAIが出し、人が確かめて確定する。
  • Lv5 仕組み化。 乗務の締めのたびに、差異・事故・苦情が次の点呼の指示事項と指導の計画の材料として戻る。

Lv5は、AIが運転や乗務させるかの判断を自動で行う状態ではありません。節6の判断は人が行います。

12. FAQ

Q. アルコール検知器の数値を見て、AIに「乗務可」を出させてよいですか。 A. 本記事では勧めません。酒気を帯びた状態にある乗務員等や、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由で安全に運行の業務を遂行できないおそれがある乗務員等を運行の業務に従事させない義務は事業者にあり、従事させないことは運行管理者の業務です(節6)。AIは記録と注意の喚起までです。

Q. 事故が起きたら、すべて国に報告するのですか。 A. 報告書は自動車事故報告規則第2条各号の事故に、速報は第4条第1項各号の事故があったとき又は国土交通大臣の指示があったときに限られます。一方、運輸規則の事故の記録は、自動車事故報告規則第2条の事故のほか道路交通法第67条第2項の交通事故も対象です(節9)。

Q. タクシー運転者の登録は、指定地域だけの制度ですか。 A. 登録は単位地域(全国を分けて国土交通大臣が指定する地域)ごとの原簿への登録で、指定地域に限りません。指定地域では、その地域に係る運転の経歴を有していない場合又は試験に合格していない場合を拒否の事由とする定めが加わります(節9)。

Q. 日本版ライドシェアに取り組むと、運行管理は何が変わりますか。 A. 道路運送法第78条第3号の許可を受けて自家用自動車で旅客を運送するときは、点呼や業務記録などの運輸規則の規定に準じて、その自家用自動車の運行を管理します(運輸規則第47条の8)。「自家用車活用事業」の名称と許可の取扱いは2024年3月29日の国土交通省の通達(法令ではありません)によるもので、その後の運用の改善の通達は本記事では扱っていません。

13. 関連業態・シリーズ導線

運送会社の記事は、自社の車両と自社で雇用するドライバーを持つ一般貨物自動車運送事業者をモデルにし、旅客運送を範囲に入れていません。本記事の整理では、運ぶものと許可の根拠で分かれる隣の業態です。

レンタカー事業者の記事は、Top1を1件の貸渡しを一つの記録に載せることに置いています。本記事の整理では、運転者を付けずに自家用自動車を貸し渡す側で、許可の根拠(道路運送法第80条第1項と第4条第1項)が本記事の業態と分かれます。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じタクシー会社でも、配置車両数、指定地域に当たる営業所があるか、自家用車活用事業に取り組んでいるかで、最初の一手は変わります。営業所の台帳を作るところからか、1週間分の乗務を並べるところからか、整理状況が出発点です。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自社の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

目次