生成AIパスポート合格講座「現在の生成AIの動向(第3回)」の内容を記事にまとめました。動画で見たい方は下の動画を、要点だけ読みたい方は本文をご覧ください。また、記事末に確認問題(解答・解説つき)があります。
本講座は「生成AIパスポート試験」(一般社団法人 生成AI活用普及協会:GUGA)の合格を目指す全6回シリーズです。本文・図解・確認問題は当講座オリジナルです。
▼この動画のチャプター(クリックでその場面から再生)
この章で、あなたが「判断できるようになる」こと
第1章で「AIとは何か」、第2章で「生成AIの仕組みと進化」を押さえました。ここまでは、いわば土台と歴史の話でした。
第3章では、ぐっと現在に近づきます。テーマはシンプルです。
「いまの生成AIで、実際に何ができるのか」
ニュースやSNSでは、「AIで動画が作れる」「AIが調べものから資料作成までやってくれる」「AIが外部ツールを操作する」といった話が次々に流れてきます。すごそうだけれど、何が本当で、何を試験対策として覚えればよいのか、少し分かりにくいところです。
この章では、そのモヤモヤを整理します。
第3章は、2025年10月のシラバス改訂で内容が大きく増えた章です。とくに後半のRAGとAIエージェントは、新しく加わった重要テーマです。ここは差がつくところなので、用語だけでなく「何のための仕組みか」まで押さえましょう。
ただし、この章を読むときは一つ注意があります。生成AIサービスは、とにかく変化が速いです。サービス名、機能名、提供形態は、出版後に変わることもあります。そこで本書では、最新ニュースの追いかけっこではなく、2026年2月適用シラバスで問われる用語と考え方を軸に整理します。
この章を読み終えると、あなたは次のことができるようになります。
- テキスト・画像・音楽・音声・動画、それぞれの生成AIで何ができるか説明できる
- ディープフェイクの危険性と、なぜ社会問題になるのかを語れる
- RAGの仕組みを、「検索してから生成する」と一言で説明できる
- チャンクとベクトルデータベースの役割を区別できる
- AIエージェントが、従来の生成AIと何が違うかを説明できる
- MCPが、AIと外部ツールをつなぐ接続規格だと理解できる
では、生成AIで「できること」の全体像から見ていきましょう。
3-1 生成AIができることと主なサービス
生成AIは「あらゆるコンテンツ」に広がっている
第2章では、おもに文章を生成するAIを見てきました。しかし、いまの生成AIは文章だけにとどまりません。画像・音楽・音声・動画――人間が作ってきた多くの種類のコンテンツに、生成AIの対象は広がっています。
試験対策では、細かなサービスの機能差を全部覚える必要はありません。まずは、次の地図を押さえましょう。
| 分野 | 生成できるもの | 試験で押さえるポイント |
|---|---|---|
| テキスト生成AI | 文章、要約、翻訳、アイデア、会話 | Claude、Geminiなどのサービス名と開発企業 |
| 画像生成AI | イラスト、写真風画像、図版、画像加工 | リサイズ、正規化、データ拡張、リマスタリング |
| 音楽生成AI | 楽曲、BGM、メロディ、伴奏 | 音声生成AIとの違い |
| 音声生成AI | 読み上げ音声、ナレーション、声の再現 | ディープフェイク悪用リスク |
| 動画生成AI | 短い映像、映画風動画、映像+音声 | Sora、Veo3、自己回帰モデル |
テキスト生成AI
まずはテキスト生成AIです。ChatGPTが代表例ですが、シラバスではほかの主要サービスも押さえる必要があります。
ここでは、とくに次の2つを確認します。
- Claude(クロード):Anthropic社のテキスト生成AI。長文の読解や、丁寧な文章作成に強みがあるとされます。
- Gemini(ジェミニ):Google社の生成AI。文章だけでなく画像なども扱えるマルチモーダル設計で、Googleの各種サービスと連携します。
これらは、文章作成、要約、翻訳、アイデア出し、議事録整理など、幅広い仕事に使われています。具体的なプロンプトの作り方や業務活用は、第5章で詳しく扱います。
攻略MEMO 第3章では「どのサービスが、どの会社か」を問われることがあります。 ・Claude=Anthropic ・Gemini=Google 第2章のChatGPT、Copilotと合わせて、会社名とセットで覚えましょう。
画像生成AI
次に画像生成AIです。「夕焼けの海辺を歩く猫」と入力すれば、そのイメージに合う画像を生成する、といった使い方ができます。広告バナー、SNS投稿用画像、企画書のイメージ図、イラスト制作などで活用されています。
ここで重要なのは、画像生成AIそのもののサービス名だけではありません。シラバスでは、画像を扱うAIを支えるデータの下ごしらえに関する用語が出てきます。
| 用語 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 画像のリサイズ | 画像の縦横サイズをそろえること | 大きさをそろえる |
| 正規化 | 明るさや色などの数値を一定範囲にそろえること | 数値のばらつきを整える |
| データの水増し(augmentation)/データ拡張技術 | 回転、反転、切り取りなどで学習データを人工的に増やすこと | 少ない画像からバリエーションを作る |
| リマスタリング | 古い・低画質の画像や映像を高画質によみがえらせること | 画質をよくして復元する |
たとえば、犬の画像が100枚しかないとします。その画像を少し回転させる、左右反転させる、明るさを変える、一部を切り取る。こうした加工を行えば、AIにとっては少しずつ違う画像として学習できます。これがデータの水増し(augmentation)です。
一方、リサイズは画像サイズをそろえること、正規化は数値の範囲をそろえることです。どちらも、AIが学習しやすいようにデータを整える作業です。
リマスタリングは少し性質が違います。古い写真や映像を、AIでくっきりさせる、高解像度化する、色を補う、といった使い方を指します。
ここが分かれ目 「データの水増し」「augmentation」「データ拡張技術」は、基本的に同じ方向の用語です。画像を加工して、学習データを人工的に増やすと覚えましょう。
音楽生成AI
音楽生成AIは、楽曲を生成するAIです。「明るいポップス」「落ち着いたピアノ曲」「動画の冒頭に合う短いBGM」といった指示から、メロディや伴奏を作ります。サービスによっては、歌詞を与えて歌入りの楽曲を作ることもできます。
試験対策では、音楽生成AIを「音声生成AI」と混同しないことが大事です。
- 音楽生成AI:曲、BGM、メロディ、伴奏を作る
- 音声生成AI:人間の声、読み上げ、ナレーションを作る
音楽は「曲」、音声は「声」。まずはこの区別で十分です。
音声生成AI
音声生成AIは、人間のような声を生成するAIです。文章を入力すると、自然な抑揚で読み上げてくれます。ナレーション、音声アシスタント、教材の読み上げ、動画の吹き替えなどで使われます。
さらに、特定の人の声を学習して、その人らしい声で話させる技術もあります。これは便利である一方、本人が言っていないことを本人の声で話しているように見せる悪用リスクがあります。
このリスクは、次の節で扱うディープフェイクに直結します。
動画生成AI
そして、いま最も注目を集めている分野の一つが動画生成AIです。テキストや画像を入力するだけで、短い映像や映画風のシーンを生成できます。
シラバスでは、代表的な動画生成AIとして次の2つが挙げられています。
- Sora:OpenAI社の動画生成AI。テキストの指示からリアルな映像を生成する技術として注目されました。
- Veo3(ヴェオ・スリー):Google/DeepMindの動画生成AI。一般には「Veo 3」と表記されることもあります。映像だけでなく、音声、効果音、環境音、会話などを扱える点が特徴として押さえられます。
ここで注意したいのが、サービスの「現在の提供状況」と、試験シラバス上の「出題用語」は別だということです。
Soraは、シラバス上は動画生成AIの重要語として残っています。ただし、執筆時点(2026年6月)では、OpenAIのSora Web版・アプリ版は提供終了済みで、APIも2026年9月に終了予定と案内されています。したがって本書では、Soraを「いま誰でも使える代表サービス」としてではなく、試験で問われるOpenAIの動画生成AIとして扱います。
Veo3も同じです。シラバス表記は「Veo3」ですが、一般には「Veo 3」と書かれることがあります。また、サービスやモデル名は後継版・関連版へ更新される可能性があります。試験対策では、まずVeo3=Google/DeepMindの動画生成AI、映像と音声を扱えると押さえましょう。
動画生成AIの仕組みには、第2章で学んだ自己回帰モデルの考え方も関係します。自己回帰モデルとは、「ここまでの流れから次に来るものを予測する」考え方でした。動画では、前後の流れを踏まえて次のフレームや動きを作る、と考えるとイメージしやすいでしょう。
ただし、現代の動画生成AIは、自己回帰だけで説明できるものではありません。さまざまなモデルや処理を組み合わせています。試験対策では、動画生成AIの文脈で自己回帰モデルという言葉が出ることを押さえれば十分です。
実務でひとこと 動画・音声・画像の生成AIは、表現の幅を大きく広げます。一方で、「実在しない映像や声を、本物のように作れてしまう」という危うさもあります。この危うさが、ディープフェイクの問題に直結します。
3-2 ディープフェイク(深層偽造)技術――生成AIの影の側面
ディープフェイクとは
生成AIの「創り出す力」は、便利な反面、悪用されると深刻な被害を生みます。その代表がディープフェイク(深層偽造)技術です。
ディープフェイクとは、ディープラーニング(深層学習)を使って、実在する人物が「言っていないこと」「やっていないこと」を、本物そっくりの映像・音声で作り出す技術です。
「ディープ」はディープラーニング、「フェイク」は偽物。つまり、深層学習を使った偽造技術です。
たとえば、有名人の顔を別の映像に合成して、本人が話しているかのような偽動画を作る。あるいは、ある人の声を学習させて、本人が言ってもいない発言を音声で作り出す。技術の進歩により、見ただけ・聞いただけでは判断しにくいものも増えています。
偽情報(ディスインフォメーション)の拡散
ディープフェイクが特に危険なのは、偽情報(ディスインフォメーション)の拡散に使われる点です。
ディスインフォメーションとは、意図的に作られた、人をだますための偽情報のことです。
ここで大事なのは、「間違って広まった情報」と「だます目的で作られた情報」は違う、という点です。試験では、ディスインフォメーションを意図的な偽情報として押さえます。
ディープフェイクで作った偽の映像や音声がSNSで広まれば、人々が事実を見誤り、社会が混乱したり、特定の人物の名誉が傷つけられたりします。政治、災害、企業不祥事、投資詐欺などの場面では、特に大きな影響が出ます。
ディープフェイクによる事件
ディープフェイクは、すでにさまざまな被害を引き起こしています。試験対策では、具体的な事件名を細かく覚えるより、悪用パターンを押さえましょう。
- 詐欺への悪用:経営者や知人の声・顔を偽装し、「お金を振り込んでほしい」と従業員や家族をだます。
- 偽の発言・なりすまし:政治家や著名人が、実際にはしていない発言をしているかのような偽動画を作る。
- 個人への攻撃:一般の人の顔写真を悪用して、本人の意図しない不適切な映像を作る。
- 世論操作:選挙、国際問題、災害などで、人々の判断を誤らせる偽映像を流す。
これらは、生成AIを使う私たち一人ひとりが、「見たものを鵜呑みにしない」「発信する側として悪用しない」という意識を持つべき理由になります。
攻略MEMO ディープフェイクは、生成AIの「便利さ」と「危険性」が表裏一体であることを示す重要語です。 ・ディープフェイク=深層学習で作る、本物そっくりの偽の映像・音声 ・ディスインフォメーション=意図的な偽情報 第4章の情報リテラシー、セキュリティ、法律の話にもつながります。
3-3 RAG(検索拡張生成)――AIに外部情報を参照させる仕組み
ここからは、2025年10月のシラバス改訂で新しく加わった重要テーマに入ります。まずはRAGです。
少し難しそうな略語ですが、解決しようとしている問題はとても分かりやすいです。
「AIに、手元の資料を見てから答えてもらう」
このイメージで読むと、ぐっと理解しやすくなります。
RAGとは――生成AIの「弱点」を補う発想
第2章で、生成AIには弱点があると学びました。代表的なのは、次の2つです。
- ハルシネーション:事実でないことを、もっともらしく答えてしまう
- 学習時点までの知識に左右される:最新情報や社内独自情報を、そのままでは知らない
たとえば、生成AIに「うちの会社の就業規則では、副業はどう扱われていますか」と聞いても、AIは答えられません。AIは、あなたの会社の就業規則を最初から知っているわけではないからです。
この弱点を補うのが、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)です。
RAGとは、AIが答えを生成する前に、外部の情報源を検索し、見つけた情報を踏まえて回答させる仕組みです。
日本語では「検索拡張生成」と訳されます。
- Retrieval:検索する
- Augmented:拡張された
- Generation:生成
つまり、検索してから生成する。これがRAGの核心です。
人間でたとえれば、記憶だけで答えるのではなく、資料を確認してから答えるようなものです。
ただし、ここで大事な注意があります。RAGを使えば、必ず正確になるわけではありません。検索された資料が古い、間違っている、質問とズレている場合は、回答もズレます。RAGはハルシネーションを減らす有力な仕組みですが、ハルシネーションをゼロにする魔法ではありません。
ここが分かれ目 RAGは「AIを再学習させる技術」ではありません。AI本体は大きく変えずに、外部資料を検索して渡す仕組みです。ここは試験でひっかけにされやすいポイントです。
RAGの歴史と発展
RAGという考え方は、2020年ごろの研究で、事前学習済みの言語モデルに外部知識の検索を組み合わせる方法として注目されました。
それまでの言語モデルは、学習した知識をモデル内部のパラメータに持っていました。しかし、モデル内部の知識だけに頼ると、最新情報への更新が難しく、出典を示すことも簡単ではありません。
そこで、外部の文書を検索し、その結果を回答生成に使う方法が発展しました。
その後、ChatGPTなどの生成AIが企業で使われるようになると、RAGは一気に実務で注目されました。企業には、就業規則、業務マニュアル、製品仕様書、FAQ、過去の問い合わせ履歴など、社内に閉じた情報がたくさんあります。AI本体を毎回再学習させるのは大変ですが、RAGなら、社内文書を検索させてから回答させることができます。
このため、RAGは社内向けAIチャットボットやカスタマーサポートの定番技術として広がりました。
RAGの仕組みとメリット
RAGの仕組みを、準備段階と利用段階に分けて見てみましょう。
準備段階:文書を検索できる形にする
まず、社内文書やマニュアルなどの資料を、扱いやすい形に整えます。
1. 文書を小さなかたまりに分ける 2. それぞれのかたまりを、意味を表す数値に変換する 3. その数値を、ベクトルデータベースに保存する
ここで重要な用語が、チャンクとベクトルデータベースです。
チャンクとは、長い文書を分割した小さなかたまりのことです。長いマニュアルを丸ごとAIに渡すのではなく、見出しや段落ごとに区切って、検索しやすくします。
ベクトルデータベースとは、文章を「意味」で検索できるようにしたデータベースです。普通の検索では、キーワードが一致するかどうかを見ます。一方、ベクトルデータベースでは、文章の意味を数値の並びで表し、質問と意味が近い文書を探します。
利用段階:質問に近い情報を探してから答える
利用時には、次のように動きます。
1. ユーザーが質問する 2. その質問に意味が近いチャンクを、ベクトルデータベースから探す 3. 見つけたチャンクを、質問と一緒に生成AIへ渡す 4. 生成AIが、その情報を踏まえて回答を作る
つまり、RAGは「検索」と「生成」を組み合わせた仕組みです。
RAGのメリットと限界
RAGのメリットは大きく3つあります。
1つ目は、AIが学習していない情報を参照できることです。社内文書、最新情報、製品マニュアルなど、モデル本体に入っていない情報を使えます。
2つ目は、AI本体を再学習させなくても情報を更新しやすいことです。資料を差し替えれば、参照できる情報を更新できます。
3つ目は、根拠に基づく回答を作りやすいことです。検索された文書をもとに回答するため、出典や参照箇所を示しやすくなります。
ただし、限界もあります。
- 検索対象の文書が間違っていれば、回答も間違いやすい
- 必要な文書が検索されなければ、正しい回答にたどり着けない
- チャンクの分け方が悪いと、文脈が切れて回答が不自然になる
- 機密情報を検索対象に入れる場合、アクセス権限の管理が必要
RAGは便利ですが、情報源の質、検索精度、権限管理がセットで重要になります。
攻略MEMO RAGは「検索してから生成する」。 ・チャンク=文書を分割した小さなかたまり ・ベクトルデータベース=意味で検索できるデータベース ・RAGは再学習ではない ・RAGはハルシネーションを減らせるが、ゼロにはしない
RAGのユースケース
RAGは、すでに多くの場面で使われています。代表例を押さえましょう。
- 社内ヘルプデスク:就業規則、マニュアル、FAQを検索源にして、社員の質問に自動で答える。
- カスタマーサポート:製品仕様書や問い合わせ履歴をもとに、顧客の質問に回答する。
- 専門文書の検索:法律、医療、技術文書など、大量の資料から必要な情報を探して要約する。
- 営業支援:提案書、事例集、製品資料から、顧客に合う情報を探して回答する。
いずれも共通しているのは、特定の正しい情報源に基づいて答えさせたいという場面です。
3-4 AIエージェント――「答えるAI」から「行動するAI」へ
第3章の締めくくりは、いま注目度が高いAIエージェントです。これも2025年10月のシラバス改訂で加わった重要項目です。
AIエージェントは、生成AIの「次の段階」を象徴する言葉です。
AIエージェントとは
これまでの生成AIは、基本的に質問に答えるAIでした。
人間が「この文章を要約して」と指示する。AIが要約を返す。人間が「もう少し短くして」と言う。AIが修正する。こうした使い方では、AIは人間の指示に対して返答する存在です。
これに対してAIエージェントは、目標(ゴール)を与えると、その達成に向けて手順を考え、必要なツールを使いながら複数の作業を進めるAIです。
人間でたとえるなら、「言われた作業だけをするアシスタント」から、「ゴールを聞いて段取りを考える担当者」に近づくイメージです。
たとえば、「来週の競合分析レポートを作って」と頼んだとします。AIエージェントは、次のような作業を自分で組み立てます。
1. 競合企業を調べる 2. 必要な情報を集める 3. 価格、機能、強み、弱みを整理する 4. 表やスライドの形にまとめる 5. 不足情報があれば追加で調べる
このように、AIエージェントはゴールに向けて計画し、実行し、結果を確認しながら進める点が特徴です。
ただし、すべてを完全に任せられるわけではありません。重要な判断、外部サービスの操作、個人情報や機密情報を扱う作業では、人間の確認や権限管理が必要です。
| 比較項目 | 従来の生成AI | AIエージェント |
|---|---|---|
| 主な役割 | 質問に答える、文章を作る | ゴールに向けて作業を進める |
| 動き方 | 指示ごとに応答する | 計画・実行・確認を繰り返す |
| 外部ツール利用 | 人間が操作することが多い | AIがツールを使うことがある |
| 注意点 | 出力の正確性確認 | 出力確認に加え、権限・操作範囲の管理 |
AIエージェントの仕組み
AIエージェントは、大まかに次のサイクルで動きます。
1. 計画:与えられたゴールを、小さなタスクに分解する。 2. 実行:検索、計算、ブラウザ操作、ファイル作成など、必要なツールを使ってタスクを進める。 3. 観察・修正:実行結果を確認し、うまくいかなければ計画を修正する。
この「計画→実行→観察・修正」の繰り返しが、AIエージェントの基本です。
中心にいるのは生成AI、特にLLMです。LLMが「頭脳」として、何をすべきかを考えます。そして、検索ツール、ブラウザ、表計算、コード実行、ファイル操作などの外部ツールを使って、実際の作業を進めます。
ここが分かれ目 AIエージェントは「自動で何でも完璧にやるAI」ではありません。試験対策では、ゴールに向けて計画・実行するAIと押さえましょう。実務では、権限管理と人間の確認が欠かせません。
AIエージェントのツール事例
シラバスでは、AIエージェントの事例として、次の3つが挙げられています。
- GenSpark(ジェンスパーク):シラバス表記は「GenSpark」ですが、一般には「Genspark」と表記されることもあります。情報収集、資料作成、画像・動画・コードなど、複数の作業をまとめて扱うAIワークスペースとして押さえます。
- Manus(マヌス):従来のチャットボットのように質問へ答えるだけでなく、タスクを計画し、実行し、成果物を届けるAIエージェントとして知られます。
- Skywork AI(スカイワークAI):文書、スライド、表計算、Webページ、音声・ポッドキャストなど、成果物の作成に強みを持つAIエージェント/AIワークスペースとして押さえます。
これらのサービスは、機能名や提供形態が変わる可能性があります。試験では、細かいUIや料金プランではなく、AIエージェントの事例として名前が挙がっていることを覚えましょう。
攻略MEMO AIエージェントのツール事例は、3つまとめて覚えます。 ・GenSpark(一般表記:Genspark) ・Manus ・Skywork AI 「BERT・RoBERTa・ALBERT」のような第2章のモデル名と混同しないようにしましょう。
MCPと外部連携
AIエージェントが本当に「使える」ものになるには、AI単体だけでは足りません。外部のツールやデータに接続する必要があります。
たとえば、競合分析レポートを作るには、Web検索、社内ファイル、表計算、スライド作成ツールなどにアクセスする必要があります。予定調整をするなら、カレンダーやメールともつながる必要があります。
しかし、AIを外部ツールと接続するたびに、ツールごとにバラバラの方法で連携を作るのは大変です。
この問題を解決するために登場した共通ルールが、MCP(Model Context Protocol)です。
MCPは、AIアプリケーションと外部ツール・データソースをつなぐための標準化された規格です。2024年11月にAnthropic社が提唱しました。
よく「AIのためのUSB-C」と説明されます。USB-Cが、さまざまな機器を共通の差し込み口でつなぐように、MCPはAIと外部システムを共通の作法でつなぐためのものです。
ここで絶対に間違えてはいけないのは、MCPはAIモデルではないという点です。動画生成AIでも、LLMでもありません。MCPは、AIが外部ツールやデータに接続するための接続規格です。
MCP利用時の注意点
MCPによってAIが外部ツールとつながると、とても便利になります。ただし、便利になるほどリスクも増えます。
たとえば、AIが社内ファイルにアクセスできるなら、どのフォルダまで見せてよいのかを決める必要があります。メールを送れるなら、勝手に送信されないように確認フローが必要です。データベースを操作できるなら、誤って重要データを変更しない権限設計が必要です。
つまり、MCPやAIエージェントを使うときは、次の3点が大事です。
- アクセス権限:AIに何を見せてよいか
- 操作権限:AIに何を実行させてよいか
- 人間の確認:重要な操作の前に承認を入れるか
第4章で学ぶセキュリティ、プライバシー、個人情報保護の考え方が、ここで効いてきます。
実務でひとこと AIエージェントは「便利な自動化ツール」であると同時に、「権限を持った作業者」でもあります。人間の新人にいきなり全社ファイルへのアクセス権を渡さないのと同じで、AIにも必要最小限の権限から始めるのが安全です。
第3章のまとめ
おつかれさまでした。この章は、生成AIの「いま」がぎゅっと詰まった、情報量の多い章でした。最後に、地図にして振り返りましょう。
- 生成AIの広がり:文章だけでなく、画像・音楽・音声・動画へ拡大している。
- テキスト生成AI:ClaudeはAnthropic、GeminiはGoogle。会社名とセットで覚える。
- 画像生成AI:リサイズ、正規化、データの水増し(augmentation)/データ拡張技術、リマスタリングを区別する。
- 音楽生成AIと音声生成AI:音楽は曲やBGM、音声は人間の声や読み上げ。
- 動画生成AI:SoraはOpenAI、Veo3はGoogle/DeepMind。サービス提供状況は変わるため、試験ではシラバス語として押さえる。
- 自己回帰モデル:ここまでの流れから次に来るものを予測する考え方。動画生成AIの文脈でも出る。
- ディープフェイク:深層学習で作る本物そっくりの偽映像・偽音声。ディスインフォメーション、詐欺、なりすましに悪用される。
- RAG(検索拡張生成):検索してから生成する仕組み。再学習ではない。チャンクとベクトルデータベースが重要。
- RAGの限界:ハルシネーションを減らせるが、ゼロにはしない。情報源の質と権限管理が重要。
- AIエージェント:ゴールに向けて計画・実行・観察・修正するAI。GenSpark、Manus、Skywork AIを事例として押さえる。
- MCP:AIモデルではなく、AIと外部ツール・データソースをつなぐ標準規格。「AIのためのUSB-C」と考える。
第1〜3章で、生成AIの「仕組み・歴史・現在のできること」をひととおり押さえました。ここまでが、いわば技術の話です。
次の第4章からは視点が変わります。生成AIを社会で安全に使うための情報リテラシー、セキュリティ、個人情報保護、知的財産権、AI社会原則、AI新法へ進みます。ディープフェイクやAIエージェントで触れたリスクの話が、ここから本格的に展開されていきます。
第3章の重要用語整理
| 用語 | 試験対策での押さえ方 |
|---|---|
| テキスト生成AI | 文章、要約、翻訳、会話などを生成するAI |
| Claude | Anthropic社の生成AI |
| Gemini | Google社の生成AI |
| 画像生成AI | テキストなどから画像を生成するAI |
| 画像のリサイズ | 画像の縦横サイズをそろえること |
| 正規化 | データの数値範囲をそろえること |
| データの水増し(augmentation) | 画像を加工して学習データを人工的に増やすこと |
| データ拡張技術 | データの水増しと同じ方向の用語。学習データのバリエーションを増やす技術 |
| リマスタリング | 古い・低画質の画像や映像を高画質によみがえらせること |
| 音楽生成AI | 楽曲、BGM、メロディなどを生成するAI |
| 音声生成AI | 人間の声、読み上げ、ナレーションなどを生成するAI |
| 動画生成AI | テキストや画像から映像を生成するAI |
| Sora | OpenAIの動画生成AI。試験ではシラバス語として押さえる |
| Veo3 | Google/DeepMindの動画生成AI。映像と音声を扱える点が特徴 |
| 自己回帰モデル | ここまでの流れから、次に来るものを予測する考え方 |
| ディープフェイク | 深層学習で作る、本物そっくりの偽映像・偽音声 |
| ディスインフォメーション | 意図的に作られた、人をだますための偽情報 |
| RAG | 検索してから生成する仕組み。Retrieval-Augmented Generation |
| チャンク | 文書を分割した小さなかたまり |
| ベクトルデータベース | 文章を意味で検索できるようにしたデータベース |
| AIエージェント | ゴールに向けて計画・実行するAI |
| GenSpark | AIエージェント事例。一般にはGenspark表記もある |
| Manus | タスクを計画・実行し成果物を届けるAIエージェント事例 |
| Skywork AI | 文書、スライド、表計算などの成果物作成に強みを持つAIエージェント事例 |
| MCP | AIと外部ツール・データソースをつなぐ標準規格。AIモデルではない |
確認問題
まずは答えを隠して挑戦してみましょう。
問1 現在の生成AIで生成対象になりうるものとして、最も適切な組み合わせはどれか。
- A. 文章のみ
- B. 文章・画像のみ
- C. 文章・画像・音楽・音声・動画
- D. 数値計算のみ
問1 の解答を見る
正解:C
現在の生成AIは、文章だけでなく、画像・音楽・音声・動画など幅広いコンテンツを生成対象にしています。
問2 画像の縦横サイズをそろえる処理を何と呼ぶか。
- A. リサイズ
- B. 正規化
- C. リマスタリング
- D. ディスインフォメーション
問2 の解答を見る
正解:A(リサイズ)
リサイズは画像の大きさをそろえる処理です。正規化は数値範囲をそろえる処理、リマスタリングは高画質化です。
問3 画像の明るさや色などの数値を一定範囲にそろえ、学習を安定させる処理はどれか。
- A. 正規化
- B. チャンク化
- C. RAG
- D. MCP
問3 の解答を見る
正解:A(正規化)
正規化は、明るさや色などの数値を一定範囲にそろえ、学習を安定させる処理です。
問4 画像を回転・反転・切り取りするなどして、学習データを人工的に増やす技術を何と呼ぶか。
- A. リサイズ
- B. データの水増し(augmentation)
- C. ベクトルデータベース
- D. ディープフェイク
問4 の解答を見る
正解:B(データの水増し/augmentation)
画像を回転・反転・切り取りするなどして学習データを人工的に増やす技術です。データ拡張技術とも呼ばれます。
問5 古い・低画質の画像や映像を、AIなどを使って高画質によみがえらせることを何と呼ぶか。
- A. リマスタリング
- B. 半教師あり学習
- C. アライメント
- D. NSP
問5 の解答を見る
正解:A(リマスタリング)
古い・低画質の画像や映像を高画質によみがえらせることをリマスタリングと呼びます。
問6 音楽生成AIと音声生成AIの区別として、最も適切なものはどれか。
- A. 音楽生成AIは文章、音声生成AIは画像を生成する
- B. 音楽生成AIは曲やBGM、音声生成AIは人間の声や読み上げを生成する
- C. 音楽生成AIと音声生成AIはまったく同じ意味である
- D. 音声生成AIは動画しか生成できない
問6 の解答を見る
正解:B
音楽生成AIは曲やBGM、音声生成AIは人間の声や読み上げを生成します。名前が似ているので注意しましょう。
問7 動画生成AIの開発企業の組み合わせとして正しいものはどれか。
- A. Sora ― Google、Veo3 ― OpenAI
- B. Sora ― OpenAI、Veo3 ― Google/DeepMind
- C. Sora ― Microsoft、Veo3 ― Anthropic
- D. Sora ― Anthropic、Veo3 ― Microsoft
問7 の解答を見る
正解:B
SoraはOpenAI、Veo3はGoogle/DeepMindの動画生成AIとして押さえます。
問8 Veo3の特徴として最も適切なものはどれか。
- A. 画像のサイズだけを変更する
- B. 映像と音声を扱える動画生成AIとして押さえる
- C. AIと外部ツールをつなぐ接続規格である
- D. 文書を小さく分割する処理である
問8 の解答を見る
正解:B
Veo3は、映像と音声を扱える動画生成AIとして押さえます。CはMCP、Dはチャンクの説明です。
問9 自己回帰モデルの考え方として最も適切なものはどれか。
- A. 2つのAIを競わせる
- B. ここまでの流れから次に来るものを予測する
- C. 文書を小さなかたまりに分割する
- D. AIと外部ツールを標準規格でつなぐ
問9 の解答を見る
正解:B
自己回帰モデルは、ここまでの流れから次に来るものを予測する考え方です。文章生成や動画生成の文脈で登場します。
問10 ディープフェイク(深層偽造)技術の説明として最も適切なものはどれか。
- A. 古い画像を高画質に復元する技術
- B. 深層学習で本物そっくりの偽の映像・音声を作る技術
- C. 文章を小さく分割する技術
- D. AIを外部ツールにつなぐ規格
問10 の解答を見る
正解:B
ディープフェイクは、深層学習を使って本物そっくりの偽の映像・音声を作る技術です。Aはリマスタリング、DはMCPに近い説明です。
問11 ディスインフォメーションの説明として最も適切なものはどれか。
- A. AIが偶然出した誤情報
- B. 意図的に作られた、人をだますための偽情報
- C. 画像の色の数値をそろえる処理
- D. 学習データを増やす処理
問11 の解答を見る
正解:B(ディスインフォメーション)
ディスインフォメーションは、意図的に作られた偽情報です。AIが意図せず誤情報を出すハルシネーションとは区別します。
問12 RAG(検索拡張生成)の説明として最も適切なものはどれか。
- A. AIを大量のデータで一から再学習させる手法
- B. 答えを生成する前に外部情報を検索し、それを踏まえて回答する仕組み
- C. 画像を回転させてデータを増やす技術
- D. 2つのAIを競わせる仕組み
問12 の解答を見る
正解:B
RAGは、生成の前に外部情報を検索し、それを踏まえて回答する仕組みです。
問13 RAGの説明として誤っているものはどれか。
- A. 外部文書を検索してから回答に使う
- B. 社内文書を参照するAIチャットボットなどで使われる
- C. AI本体を必ず一から再学習させる必要がある
- D. ハルシネーションを減らす助けになる
問13 の解答を見る
正解:C
RAGは、AI本体を必ず一から再学習させる手法ではありません。外部資料を検索して渡す点がポイントです。
問14 RAGにおけるチャンクの説明として正しいものはどれか。
- A. 文書を分割した小さなかたまり
- B. AIの学習回数
- C. 動画の音声部分
- D. 画像の明るさをそろえる処理
問14 の解答を見る
正解:A(チャンク)
チャンクは、文書を分割した小さなかたまりです。RAGでは、長い文書をチャンクに分けて検索しやすくします。
問15 ベクトルデータベースの説明として最も適切なものはどれか。
- A. 文章を意味で検索できるようにしたデータベース
- B. 音声だけを保存するデータベース
- C. 画像を高画質化する処理
- D. 偽情報を自動で作る仕組み
問15 の解答を見る
正解:A
ベクトルデータベースは、文章を意味で検索できるようにしたデータベースです。キーワード一致だけでなく、意味の近さを使います。
問16 RAGの限界として適切なものはどれか。
- A. 必ずハルシネーションをゼロにできる
- B. 検索対象の文書が誤っていれば、回答も誤る可能性がある
- C. 外部情報を一切参照できない
- D. 社内文書の活用には使えない
問16 の解答を見る
正解:B
RAGはハルシネーションを減らす助けになりますが、ゼロにする魔法ではありません。検索対象の文書の質に回答が左右されます。
問17 AIエージェントの説明として最も適切なものはどれか。
- A. ゴールに向けて計画し、必要なツールを使いながら作業を進めるAI
- B. 画像のサイズをそろえる処理
- C. 深層学習で偽映像を作る技術
- D. 文章を意味で検索するデータベース
問17 の解答を見る
正解:A
AIエージェントは、ゴールに向けて計画し、必要なツールを使いながら作業を進めるAIです。
問18 AIエージェントの基本的な動きとして最も適切な流れはどれか。
- A. 正規化→リサイズ→リマスタリング
- B. 生成器→識別器→敵対的学習
- C. 計画→実行→観察・修正
- D. MLM→NSP→BERT
問18 の解答を見る
正解:C
AIエージェントの基本サイクルは、計画→実行→観察・修正です。
問19 AIエージェントのツール事例として、シラバスで挙げられているものの組み合わせはどれか。
問19 の解答を見る
正解:A(GenSpark・Manus・Skywork AI)
これらはシラバスに挙げられたAIエージェントの事例です。BはBERT系、Cは第2章の生成モデル系、Dは別分野の用語が混ざっています。
問20 MCP(Model Context Protocol)の説明として最も適切なものはどれか。
- A. 動画を生成するためのモデル
- B. AIと外部ツール・データソースをつなぐための標準化された規格
- C. 偽情報を検出する専用AI
- D. 画像を正規化する手法
問20 の解答を見る
正解:B
MCPは、AIと外部ツール・データソースをつなぐための標準化された規格です。AIモデルそのものではありません。
問21 MCPについて誤っているものはどれか。
- A. AIと外部システムをつなぐための規格である
- B. 「AIのためのUSB-C」のように説明されることがある
- C. AIモデルそのものであり、動画生成を行う
- D. 外部ツール連携時には権限管理が重要である
問21 の解答を見る
正解:C
MCPはAIモデルではなく、接続規格です。動画生成を行うモデルではありません。
問22 AIエージェントやMCPを実務で使う際の注意点として最も適切なものはどれか。
- A. すべての社内情報へ無条件にアクセスさせるべきである
- B. AIの操作結果は人間が確認する必要がない
- C. アクセス権限・操作権限・人間の確認を設計する必要がある
- D. セキュリティやプライバシーとは無関係である
問22 の解答を見る
正解:C
AIエージェントやMCPを使う際は、アクセス権限、操作権限、人間の確認を設計する必要があります。便利さとリスクは表裏一体です。
次の章へ ここまでで、生成AIの「技術」と「できること」をひととおり押さえました。便利さと同時に、ディープフェイクやAIエージェントのようなリスクも見えてきましたね。第4章では、生成AIを社会の中で安全に使うための土台――情報リテラシー、セキュリティ、個人情報保護、知的財産権、AI社会原則、AI新法へと進みます。「使う側の責任とルール」を学ぶ、実務に直結する章です。
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