内科クリニックのAI活用|最初の一手と人に残す判断

内科クリニックのAI活用:外部に出した検査を1件ごとの状態で持ち、結果の戻りを医師の確認と患者への連絡まで閉じる流れ

最終更新日: 2026年9月27日/内容確認日: 2026年9月27日

本記事では、無床の一般診療所のうち、内科を主たる診療科として外来で診療する診療所を主なモデルとして想定します。生活習慣病などの慢性疾患の継続受診と、発熱・かぜ症状などの急性疾患の外来を診て、医師1〜数名と看護師・准看護師・医療事務を置き、保険医療機関として保険診療を中心にし、処方は院外処方(処方箋の交付)を基本にする、個人開設から医療法人の診療所です。これは本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。入院や訪問診療を主とする診療所、健康診断の受託を主たる収入とする施設、特定の検査・治療を主とする診療所は対象にしていません。法令の記述は2026年9月26日に確認した条文に基づき、未施行の改正は扱っていません。

目次

1. 結論:内科クリニックなら何から始めるか

内科クリニックでAIを使うなら、最初の一手は「外部に出した検査を1件ごとの状態で持ち、結果の戻りを医師の確認と患者への連絡まで閉じること」です。次に「紹介状・主治医意見書・診断書を診療録の同じ記載から草案にし、提供先と提供の根拠を1件ごとに記録すること」、その次に「慢性疾患の継続受診を、処方日数・次回予約・検査の予定で患者ごとに結ぶこと」が続きます。

この番号は効果の大きさの順位です。本記事では、取組みの出力がほかのどれだけの工程の入力になるかという、業務のつながりの広さで効果の大きさを整理しています。受診の件数や所要時間を比べた結果ではありません。実施の順序は節3の表で別に示します。

一方で、診察・診断・処方・検査結果の評価、診療録の確定、診断書の交付、紹介するかどうかは、AIに渡しません(担い手と条件は節6・節9)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、1件の来院は次の流れで進みます。

  1. 予約・受付と、受給資格の確認。
  2. 問診。主訴・経過・既往・服薬などを聞き取ります。
  3. 医師の診察と、診断・治療方針の決定。
  4. 検査。院内で行うものと、外部に委託するものがあります。
  5. 処置・注射と、処方・処方箋の交付。
  6. 診療録の記載と確定、説明と療養の指導。
  7. 会計(一部負担金・自費)と、月ごとの療養の給付費等の請求。

来院の後にも、外部に委託した検査の結果、他の医療機関からの返書、保険薬局からの疑義照会、市町村からの意見の求めが戻ってきます。

本シリーズでは、この業態を、予約・症状・来院・検査の結果・処方切れといった状態の変化を起点に処理が進む型とし、継続受診や月ごとの請求という周期の性格も併せ持つものと整理しています(本シリーズの分類です)。

令和5年10月1日現在、内科を標榜する一般診療所は64,747施設で、一般診療所104,894施設の61.7%です(厚生労働省「医療施設調査」)。診療科目を重複して数えた標榜の数で、内科を主たる診療科とする診療所の数ではありません。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(本記事の整理) 実施の順序
導入前提:予約・患者の登録・診療録・検査会社への依頼で同じ患者の識別子を使う — ①
Top1 検査の状態台帳 最も大きい ② 導入前提の後。Top2・Top3の完了を前提にしない
Top2 文書と提供の記録 2番目 ③ Top1の結果の突合を入力にするため、その後
Top3 継続管理台帳 3番目 ④ Top1の台帳とTop2の返書の反映を入力にするため、その後

本記事の業務の分解では、出力を入力として使うほかの工程の数は、Top1が15、Top2が6、Top3が3です。業務のつながりを数えた構造の物差しで、時間や件数の効果を測ったものではありません。

Top1:外部に出した検査を1件ごとの状態で持ち、結果の戻りを医師の確認と患者への連絡まで閉じる

何をするか。 本記事が提案する台帳です。検査1件ごとに1行を作り、「指示→依頼→採取→提出→結果の受信→医師の確認→患者への説明・連絡→次の受診」の状態を持ちます。AIとルール処理が担うのは、依頼書とラベルの作成、結果と依頼の突合、未着・未確認・未連絡の抽出、医師の評価の記載をもとにした連絡文の草案までです。

なぜ最初か。 本記事の整理では、外部に委託した検体検査の結果は来院の後に戻るため、来院の記録とは別に状態を持つ場所が要ります。この台帳の出力は、診察の材料、処方の案、診療録の草案、紹介状、文書、継続管理台帳などの入力になり、3つのTopの中で最も多くの工程につながります。

どう始めるか。 直近2週間に外部へ出した検査を1件1行で並べ、「依頼日・採取日・提出日・結果の受信日・医師の確認日・患者への連絡日・次の受診」の7欄を埋めます。

何を測るか。 結果の受信から医師の確認までの日数、確認から患者への連絡までの日数、未着・未確認・未連絡の件数。

注意。 結果の評価の欄は医師が入力し、AIに判定させません。基準範囲外の抽出はルールで行い、「異常なし」の判断に使いません。管理者が検体検査の業務を委託するときの委託先は、医療法第15条の3第1項が定めています(節9)。

Top2:紹介状・主治医意見書・診断書を診療録の同じ記載から草案にし、提供先と提供の根拠を1件ごとに記録する

何をするか。 文書の依頼を1件ごとに記録し、診療録と検査結果の同じ記載から草案を作ります。紹介状や照会への回答を送るときは、提供先、提供の根拠(本人の同意・院内掲示等で特定した利用目的・法令に基づく場合)、送付・手渡しを同じ行に残します。この欄は本記事の設計です。

なぜ二番目か。 診断書には医師法第20条の定めがあり(節6)、主治医意見書は市町村からの求めに応じる文書で、紹介状で個人データを他の医療機関に渡す場合は第三者提供の論点になります(節9)。本記事の整理では、この記録の出力は会計、書類の郵送、継続管理台帳などの入力になり、つながる工程の数がTop1の次に多いため2番目に置きました。草案はTop1の結果の突合を入力にするので、実施もTop1の後です。

どう始めるか。 直近1か月に作った紹介状・主治医意見書・診断書などを1つの表に並べ、「依頼日・依頼元・草案の元にした診療録の日付・医師の確定日・交付と送付の方法・提供先・提供の根拠」の7欄を埋め、提供の根拠が空の行を数えます。

何を測るか。 文書1件の作成にかかる医師の時間、依頼から交付までの日数、提供の根拠が記録されていない送付の件数。

注意。 AIが診療録に無い所見や病名を補わないよう、草案の元にした記載を示させます。黙示の同意の扱いは、法令ではなくガイダンスの記述です(節9)。

Top3:慢性疾患の継続受診を、処方日数・次回予約・検査の予定で患者ごとに結ぶ

何をするか。 継続して受診する患者ごとに、最終の処方日・処方日数・リフィル処方箋の使用回数と上限・次回予約日・次の検査の予定(Top1の台帳から)を1行に並べ、処方切れの見込み日と予約日のずれ、未来院、検査の未実施を抽出します。AIは受診の案内の草案までを作り、担当者が全件確認して送ります。

なぜ三番目か。 医師である保険医の診療では、投薬量は予見することができる必要期間に従ったものでなければならず、厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬については1回14日分、30日分又は90日分を限度とするとされています。リフィル処方箋は、保険医が診療に基づき、大臣が定める医薬品以外の医薬品を処方する場合に限り、3回までの使用を認めた処方箋です(保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下、療担規則)第20条)。本記事の整理では、この台帳の出力は受診間隔の方針の決定などにつながり、つながる工程の数が3つの中で最も少ないため3番目に置きました。Top1の検査の状態とTop2の返書の反映を入力にするので、実施も最後です。

どう始めるか。 継続受診の患者から20人を選び、上の5欄を1行に並べます。

何を測るか。 処方切れの件数、未来院から連絡までの日数、継続率。

注意。 処方日数の限度やリフィル処方箋の対象に当たるかをAIに判定させません。台帳は処方された値だけを持ち、受診間隔・長期処方・リフィル処方箋とするかは医師が決めます。病名や検査の内容を案内の文面に入れるかは、院内で範囲を決めてからにします(節9)。

4. AIに任せやすい仕事

結果をそのまま次の処理へ渡せ、人は例外だけを見る仕事です。

  • 形を整える。 Web・電話の予約の予約台帳への一元化、初診の患者の登録、受給資格の確認の結果の記録。
  • 照らし合わせる。 外部の検査結果と依頼、処置・注射の実施の記録と診療録・会計、日次の締めの決済・現金・入金。
  • 違いを見つける。 医師が確定した処方の変更と、処方歴・継続管理台帳に入っている値の差。
  • 足りないものを探す。 検査の状態台帳の未着・未確認・未連絡、紹介状の送付の記録の「提供の根拠」の空欄、処方切れ・未来院・定期の検査の未実施。
  • 下書きを作る。 医師の検査の指示からの依頼書と検体のラベル、医師が決めた処方からの処方箋の記載事項の組成。
  • 探し出す。 登録の重複、保存期間を管理している診療録・帳簿、使用期限が近い医薬品・ワクチン・検査試薬。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や草案を作り、人が全件確認してから使う仕事です。

  • 問診と変化の要約。 Web問診票の整理と聞き漏れの候補、過去の診療録・検査結果・処方歴からの前回との変化の要約。診察の材料で、看護職員・医師が患者に確かめます。
  • 診療録の草案。 問診・医師の口述と入力・検査結果・実施の記録から、記載事項に沿って作ります。病名と治療方法の欄は、医師の入力と口述を構造化するだけにします。
  • 説明と文書の草案。 検査結果の説明資料と連絡文、紹介状・訪問看護指示書・主治医意見書・診断書、受診の案内。
  • 処方と照会の材料。 用量・重複・相互作用の確認の材料を並べた処方の案と、保険薬局からの疑義照会の内容の整理。処方と照会への回答は医師が決めます。
  • 請求の点検の候補。 レセプトの病名と診療行為の整合・記載の漏れの候補、返戻・査定の原因の分類。

確認を挟むのは手間ではなく、誰がいつ確認したかを記録に残す品質の設計です。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。AIが90%正しくても、診療録の確定のように、人が全件確認して確定する仕事があります。

法令が担い手を定めているもの。 医師でなければ、医業をなしてはなりません(医師法第17条。共用試験に合格した医学生が大学の臨床実習において医師の指導監督の下に行う医業については、第17条の2に定めがあります)。本記事では、診察、診断、治療方針と処方の決定、検査結果の評価、予防接種の予診と接種の可否の判断を医業の中核として医師に残す整理にしています。個々の行為が医業に当たるかの当てはめは扱いません。医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付してはなりません(医師法第20条。診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書は除かれます。出生証明書・死産証書・検案書にも同条の定めがあります)。

看護職員の個々の行為が診療の補助に当たるかの当てはめも扱わず、医師の指示と実施を記録に残す設計にしています。

医師・管理者・診療所が行う判断。 診療録の確定、紹介するかどうか、主治医意見書と診断書の確定、疑義照会への対応、検体検査の委託先の選定(節9)、法令が対象と条件を定める届出・報告の要否、外部サービスに渡す情報の区分と条件、漏えい等の報告と通知の要否、苦情と事故への対応。

7. Best Practice

到達点は、来院の後に戻ってくるもの(節2)を1件ごとの状態で受け止め、医師の確認と患者への連絡・次の受診まで閉じる構造です(本記事の整理)。

第一に、検査が1件ごとの状態で持たれ、未着・未確認・未連絡が滞留として見えています。第二に、紹介状・主治医意見書・診断書・訪問看護指示書が診療録の同じ記載から草案になり、提供先と提供の根拠と送付・手渡しが1件ごとに残っています。第三に、慢性疾患の患者ごとに処方日数・次回予約・検査の予定が1行に並び、処方切れの見込みが来院の前に分かります。

本記事では、医師1〜数名の診療所でも回るように記録と文書の組み立てを仕組みに寄せ、医師の時間を診察と判断に残す形を置いています。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、内科の診療所の実態を述べたものではありません。 外部の検査結果は検査会社のシステムか紙の結果票で届き、医師の確認と患者への連絡は別々の場所に残ります。紹介状・主治医意見書・診断書は依頼のたびに診療録を見ながら書き起こされ、提供先と提供の根拠は控えにしか残りません。処方日数と次回予約と検査の予定は別々の場所にあり、処方切れは患者が来院して分かります。

After。到達点として置いた姿です。 同じ患者の識別子の上で、検査は1件ごとの状態で並び、滞留がその日のうちに一覧になります。文書は診療録の同じ記載から草案になり、提供の記録が残ります。処方切れの見込みが来院の前に分かります。診察・診断・処方・検査結果の評価・診療録の確定を担う人は変わりません。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理です。個別の判断は所管の窓口や専門家に確認してください。

診療録。 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません(医師法第24条第1項)。記載事項は、診療を受けた者の住所・氏名・性別・年齢、病名及び主要症状、治療方法(処方及び処置)、診療の年月日です(医師法施行規則第23条。美容を目的とする医学的処置等を行う場合の定めもあります)。病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関する診療録はその病院又は診療所の管理者が、その他の診療に関するものはその医師が、5年間保存しなければなりません(医師法第24条第2項)。本記事では、AIが作るのは記載事項に沿った草案までとし、確定は診療をした医師が行う設計にしています。

検体検査の委託。 病院、診療所又は助産所の管理者は、検体検査の業務を委託しようとするときは、臨床検査技師等に関する法律第20条の3第1項の登録を受けた衛生検査所の開設者、又は病院若しくは診療所その他厚生労働省令で定める場所において検体検査の業務を行う者であって省令で定める基準に適合するものに委託しなければなりません(医療法第15条の3第1項)。

紹介と意見書。 保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、又はその診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、又は他の保険医の対診を求める等、診療について適切な措置を講じなければなりません(療担規則第16条)。市町村は、要介護認定の申請があったときは、申請に係る被保険者の主治の医師に対し、身体上又は精神上の障害の原因である疾病又は負傷の状況等につき意見を求めるものとされています。主治の医師がないときその他意見を求めることが困難なときは、市町村は、その指定する医師又は職員で医師であるものの診断を受けるべきことを命ずることができます(介護保険法第27条第3項)。

個人情報。 本人の病歴が含まれる個人情報は要配慮個人情報で(個人情報の保護に関する法律第2条第3項)、本人に対して医師等により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査の結果や、その結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたことも、政令で定める記述等に含まれます(同法施行令第2条第2号・第3号。本人の病歴に該当するものを除く)。個人情報データベース等を事業の用に供している者(国の機関等を除く)は個人情報取扱事業者に当たり(同法第16条第2項)、法令に基づく場合、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるときなどを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはなりません(同法第20条第2項)。

個人情報取扱事業者は、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じ(第23条)、取扱いを委託する場合は委託先に必要かつ適切な監督を行います(第25条)。個人データの漏えい等のうち規則で定める事態が生じたときは、個人情報保護委員会に報告し、本人に通知します(第26条。委託を受けた者が委託元に通知したとき、本人への通知が困難で代わるべき措置をとるときの例外があります)。規則で定める事態には、要配慮個人情報が含まれる個人データ(高度な暗号化その他の個人の権利利益を保護するために必要な措置を講じたものを除く)の漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態が含まれます(同法施行規則第7条)。

外部へ個人データを渡すときは、委託(利用目的の達成に必要な範囲内の取扱いの委託に伴う提供で、提供を受ける者は第三者に当たらず、委託先の監督の対象になる。個人情報の保護に関する法律第27条第5項第1号)、第三者提供(法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要。同条第1項)、その他のどれに当たるかを人が確かめます。紹介状について、個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンス(法令ではありません)は、院内掲示等で他の医療機関等との連携などを利用目的として公表し、患者から明示的に留保の意思表示がなければ黙示の同意があったものと考えられること、紹介状を本人が持参する場合は本人の同意があったものと考えられることを記述しています。同ガイダンスは、黙示の同意の範囲を医療の提供に必要な利用で示した利用目的に限り、同意しがたいものについて明確な同意を求めることができる旨なども掲示するものとしています。本記事では、提供の根拠の欄を空けたまま送らない運用を置いています。

生成AIやクラウドへ入れる前に、①入れる情報を必要最小限にする、②入力データが学習に利用されるか、③保存期間と削除の方法、④契約上の機密保持とデータの取扱条件、⑤アクセス権限と利用ログ、⑥再委託や国外保存など組織の規程上確認が必要な事項、を確かめ、組織が利用を承認したアカウント・サービスに限ります。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 医療事務1名と看護職員1名が7日間、4項目を数えます。①患者の識別子の食い違いの件数、②直近2週間に外部へ出した検査の、結果の受信から医師の確認・連絡までの日数と滞留の件数、③直近1か月の文書の、依頼から交付までの日数・医師の作成時間・提供の根拠の記録が無い件数、④継続受診の患者20人の、処方切れの見込みと予約日のずれの件数です。仕組みはまだ入れません。

2週目:正本とルールを決める。 最初に患者の識別子をそろえます(導入前提)。次に、検査の状態台帳の欄と委託先の確認(節9)、提供の根拠の選択肢、継続管理台帳の欄、生成AIに入れてよい情報と条件を決めます。

3週目:人が全件確認する小規模試行。 2週目に決めた台帳で、検査の結果の突合と滞留の抽出を1週間試します(Top1)。出力は候補のまま、医師と担当者が全件確認します。結果の評価、処方の決定、受診間隔の方針、診断書の交付には手を付けません。

4週目:比べる。 1週目の①②を同じ方法で測り直して比べます。Top2へ広げるか、台帳の欄を直すかを院長が決め、決めたことと決めなかったことを記録に残します。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 検査の結果の確認と連絡、紹介状の作成と提供の記録、処方切れの把握が、医師と担当者の記憶と紙で回っている。
  • Lv2 台帳化。 検査の結果、紹介状の控え、処方歴、予約が紙や表計算・個別のシステムにある。ただし別々にある。
  • Lv3 一元化。 同じ患者の識別子で3つの台帳が1か所に集まり、未確認の検査、未交付の文書、処方切れの見込みが誰にでも分かる。
  • Lv4 AI支援。 突合と滞留の抽出、文書と案内の草案、問診の構造化と診療録の草案をAIが出し、出力は候補・草案のまま人が確認する。
  • Lv5 仕組み化。 検査結果の評価、返書、疑義照会への回答が継続管理台帳と次の受診の準備に戻り、新しい職員も同じ台帳で回せる。

Lv5は、AIが診断や処方を自動で行う状態ではありません。節6に挙げた判断は、Lv5でも医師と管理者が行う設計です。

12. FAQ

Q. AIに検査結果の評価や診断をさせてもよいですか。 A. 本記事ではさせない設計です。医師法第17条は、医師でなければ医業をなしてはならないと定めており(医学生の臨床実習については節6)、本記事では検査結果の評価・診断・処方を医業の中核として医師に残す整理にしています。AIは突合と未確認の抽出、変化の要約までです。

Q. 紹介状を他の医療機関に送るとき、患者の同意は必要ですか。 A. 個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供する場合は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要です(個人情報の保護に関する法律第27条第1項)。院内掲示による黙示の同意や、紹介状を本人が持参する場合の扱いはガイダンスの記述で、院内掲示等での利用目的の公表と留保の機会が前提です(節9)。本記事では「同意は要らない」とも「外部への提供はすべて同意が要る」とも一般化せず、提供の根拠を1件ごとに記録します。

Q. 生成AIに問診票や診療録の内容を入れてもよいですか。 A. 本人の病歴が含まれる個人情報は要配慮個人情報です(節9)。個人データを入れる場合は、委託・第三者提供・その他のどれに当たるかを人が確かめ、節9の6つの事項を確かめたうえで、組織が承認したサービスに限ります。

Q. 処方日数の限度やリフィル処方箋にできるかを、AIに判定させてもよいですか。 A. 本記事ではさせません。保険医の診療での投薬量の限度は厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬についての定めで、リフィル処方箋は大臣が定める医薬品以外の医薬品を処方する場合に限られます(節3)。どの医薬品が当たるかは本記事では扱わず、判断は医師が行います。

13. 関連業態・シリーズ導線

健診センターの記事は、健康診断を受託して結果を返す側から、検査の結果の扱いと追跡の組み立てを見比べるときに読めます。

調剤薬局の記事は、本記事の診療所が交付する処方箋を受けて調剤する側から、疑義照会と処方の情報のやり取りを読めます。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じ内科の診療所でも、いま手元にある記録の形によって最初の一手は変わります。検査の結果票と連絡の記録が何か所に分かれているかを数えるところからか、紹介状の控えの置き場所を確かめるところからか、整理状況が出発点です。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自社の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)
『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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