不動産や建築の世界でキャリアを広げたいと考えたとき、「宅建と建築士、両方持っていたら強そうだな」と一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
「宅建と建築士、両方持っていたら最強なの?」「そもそも、どっちの試験のほうが難しいの?」――宅建と建築士のダブルライセンスを検討しているあなたは、こんな疑問を抱えていませんか。
先に結論からお伝えすると、宅建士と建築士は仕事のフィールドが近く、相性のよいダブルライセンスです。ただし、ここで多くの方が誤解しているポイントがあります。それは、「片方を持っていれば、もう片方の試験で科目が免除になる」という制度は存在しないということです。そして難易度や受験のしかたも、宅建士と建築士(一級・二級・木造)ではまったくの別物です。
この記事では、宅建と建築士のダブルライセンスを検討しているあなたに向けて、まず両資格の仕事と試験制度の違いを整理し、そのうえでダブルライセンスのメリット、難易度・勉強時間の比較、取得の順番、そして「受験資格の有無」という見落としがちなポイントまで、年度で変わる数値は公式の最新発表に注意しながら、ひとつずつ解説していきます。読み終えるころには、「自分はどちらから手をつけるべきか」がはっきりイメージできるはずです。
宅建と建築士の仕事内容の違い|活躍するフィールドが異なる
人気資格である宅建と建築士は、どちらも不動産業界で重宝され、就職や転職を有利に進めやすい国家資格です。だからこそ「両方取りたい」と考える方が多いわけですね。
ただ、同じ不動産や物件に関わるとはいっても、宅建士と建築士では仕事内容に次のような違いがあります。
- 宅建士は不動産取引の専門家。お客様に対して重要事項を説明(35条書面)したり、契約書面(37条書面)に記名したりするのがメインの業務です。
- 建築士は建物の専門家。建物の設計やデザインを行い、お客様の要望に合わせて工事監理まで担うのがメインの業務です。
このように、宅建士と建築士では活躍するフィールドが異なります。一方は「不動産取引の法律と手続きのプロ」、もう一方は「建物をかたちにするプロ」というわけです。
逆に言えば、フィールドが異なるからこそ、両方を持つと「建てる」と「取引する」をひとつながりで扱えるようになり、補完し合えるのです。ここがダブルライセンスの価値の出発点になります。
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宅建士と建築士は試験制度が別物|まず押さえたい受験のしかたの違い
ダブルライセンスを考えるうえで、メリットの話に入る前に、ぜひ最初に押さえておいてほしいことがあります。それは、宅建士と建築士では「受験のしかた」そのものが大きく違う、という点です。ここを知らずに進むと、計画が根本から狂ってしまうことがあるからです。
まず、宅建士(宅地建物取引士)の試験制度を整理しておきましょう。
- 形式:50問・四肢択一・マークシート方式
- 実施:年1回(例年10月の第3日曜日)
- 出題構成:権利関係(民法等)14問/宅建業法20問/法令上の制限8問/税・その他8問
- 合格基準:相対評価で、合格点は年度によって変動します(おおむね31〜38点の範囲・固定点ではありません)
- 受験資格:なし(年齢・学歴・実務経験を問わず、誰でも受験できます)
ポイントは、宅建士には受験資格が一切ないことです。思い立ったその年から挑戦できます。なお、宅建業に従事している方が登録講習を修了すると、本試験のうち問46〜50の5問が免除され、45問で判定される「5点免除」の制度がありますが、これはあくまで宅建側だけの制度で、建築士とは関係がありません。
一方、建築士の試験はかなり様子が違います。
- 形式:学科試験に加えて、設計製図(実技)の試験を突破する必要があります(二段構え)
- 受験資格:あり。一級建築士は、指定科目を修めて卒業した者・二級建築士・建築設備士など複数の受験資格区分があり、実務経験は令和2年以降おもに合格後の免許登録時に審査されます(受験時の要件ではありません)。二級・木造建築士は、試験の段階で所定の学歴(建築系の課程など)または建築実務の経験が求められます
つまり、ここが宅建と建築士でいちばん取り違えやすいポイントです。建築士には受験資格があり、宅建士には受験資格がありません。「とりあえず一級建築士から受けよう」と思っても、受験資格を満たしていなければそもそも受験できないのです。
なお、建築士の受験資格の細かな要件は法改正で見直されることがあります。最新の要件は、試験を実施している建築技術教育普及センターの公式情報で確認するようにしてください。「自分は今、どの建築士を受けられる立場なのか」を最初に確認しておくと、計画が立てやすくなりますよ。
宅建と建築士のダブルライセンスをおすすめする理由|相性がよい4つの根拠
宅建士と建築士は、まったく無関係な資格ではありません。転職を有利にしたい、スキルアップしたいといった目的で、ダブルライセンスを目指す方は年々増えています。
そもそもダブルライセンスとは、仕事の相乗効果を高める目的で2つの資格を取得することです。宅建士と建築士は相性のよい組み合わせですので、両方を持つことには大きな価値があります。ここでは「なぜ相性が良いのか」を、4つの根拠に分けて見ていきましょう。
1. 試験範囲で重なる部分がある(ただし科目免除は無い)
宅建士と建築士は、試験範囲で重なる部分があります。具体的には、宅建業法の「宅地建物取引業法」、権利関係の「区分所有法」、法令上の制限の「建築基準法」「都市計画法」、税・その他の「建物」「宅地」といった分野が、建築士の試験範囲と重なっています。
建築に関わりがある分野は二級建築士の対策で学習が進みやすいため、両方を狙うなら学習効率の面でメリットがあります。ただし、ここで大事な注意点があります。
試験範囲で重なる部分はあるのですが、残念ながら「どちらかの科目を取得済みの場合、もう一方の試験の一部科目が免除になる」、いわゆる「科目免除」はありません。
「片方を持っていれば、もう片方がラクになる」と期待しがちですが、制度上の科目免除は無いということは、最初に正しく押さえておきましょう。学習内容に重なりがあるので「理解はしやすい」けれど、「試験を免除される」わけではない――この区別が大切です。
2. 仕事の関連性が非常に高い
宅建士の不動産資産に関する知識と、建築士の建物全般の知識は、不動産業界と建築業界の両方で重宝されます。両方を併せ持つと、たとえば次のように仕事の幅が広がります。
- 建築士として、大型商業施設などの建造物の設計に携わる場面を考えてみましょう
- 設計やデザインの技術力は、もちろん建築士の資格があってこそ発揮できます
- さらに融資先の銀行との連携や、税金対策に関する知識も必要になります(ここで宅建士の知識が活きます)
- 宅建士と建築士の知識を併せ持っていれば、技術的な提案に加えて、不動産取引に関する一般的な説明まで幅広くカバーできます(※個別の税務相談は税理士、法律判断は弁護士など、各専門家との連携が前提です)
- 結果として、顧客やクライアントの満足度がさらに高まります
「建築のプロ」+「法律面のプロ」という人は、お客様から信頼されやすくなります。たとえば設計から売買契約や重要事項説明まで、ひとつの案件で建築と不動産取引の専門知識を対応させながら活かせます。ただし、それぞれの仕事には各資格の独占業務の範囲があり、宅建業を営むには宅建業免許や専任の宅建士、設計を業として行うには建築士事務所登録など、資格とは別の要件が必要です。資格を併せ持っても「何でも一人でできる」わけではなく、独占業務と業登録の線引きは守る必要があります。活躍の場や仕事の幅が大きく広がるという点で、宅建士と建築士は相性が良いのです。
3. 就職・転職活動で差別化できる
宅建士と建築士のダブルライセンスは、就職・転職活動でも有利に働きやすいといえます。不動産業界や建築業界はもちろん、不動産を担保に融資する機会が多い金融業界、店舗の出店知識を活かせる飲食・物販などの小売業界でも、他の求職者と差別化を図りやすくなります。
「2つの難関試験に合格した」という努力そのものも評価されやすいですから、転職の武器が欲しい方にとっても心強い組み合わせです。ただし、年収アップにつながるかどうかは、職種・企業・地域・実務内容によって変わります。資格を持っているだけで一律に上がるわけではない点は、あらかじめ押さえておきましょう。
4. 独立開業で役立つ
専門的な国家資格を取って独立したい、と考えている方にも、宅建士と建築士のダブルライセンスは役立ちます。不動産業で建築士の資格が必須なわけではありませんが、建築の仕事をメインで行う際には、前述のとおり宅建士の知識が重宝します。
独立開業して成功するには、まず顧客やクライアントを確保しなければなりません。お客様から信頼される建築士であれば仕事を獲得しやすくなりますから、宅建士の知識も併せ持っていたほうが有利に働きやすいのです。2つの専門領域を掛け合わせることで、扱える案件の幅が広がり、収入源を増やせる可能性も高まります(ただし、これも案件次第で幅がある点は変わりません)。
ちなみに、宅建と相性のよいダブルライセンスは建築士だけではありません。たとえば、FP(ファイナンシャルプランナー)と組み合わせれば資金計画の提案力が、マンション管理士なら分譲マンション分野の専門性が、社労士なら不動産会社の労務面まで、それぞれ強みを広げられます。気になる方は、後述の内部リンクから自分の目的に合う組み合わせも見比べてみてください。
なお、「建築士とのダブルライセンスで年収はどのくらいになるのか」という疑問もよく聞きます。高単価の業務につながり得るのは事実ですが、案件・地域・営業力によって幅が大きいため、ここでも「あくまで目安・傾向」として捉えるのが現実的です。
宅建と建築士はどっちが難しい?|合格率・出題で比較
宅建士と建築士の両方を取得しようと思ったとき、「どちらの難易度が高いのか」はやはり気になるところですよね。
ただ、結論から言うと「○○の試験のほうが難しい」と一概には言えません。というのも、宅建士が1種類の資格なのに対して、建築士は次のように複数の種類に分かれているからです。
- 一級建築士:木造・鉄筋を問わず、建物の高さなどの制限もなく、すべての建築物を設計・管理できる最上位の資格
- 二級建築士:建築士法で定められた範囲の建物について、設計・工事監理ができる資格
- 木造建築士:木造の建築物について、設計・工事監理ができる資格
建築士の試験は、「木造建築士」⇒「二級建築士」⇒「一級建築士」の順に難しくなっていきます。難易度を考えるうえで参考になるよう、それぞれの合格率の目安を見てみましょう。
| 資格 | 総合合格率(近年の目安) |
|---|---|
| 宅建士 | 約15〜18%(令和6年度 18.6%) |
| 木造建築士 | 約35%前後 |
| 二級建築士 | 約20〜25%(近年の目安) |
| 一級建築士 | 約8〜10%(近年の目安) |
※合格率は年度により変動します。最新の数値は、宅建士は不動産適正取引推進機構、建築士は建築技術教育普及センターの公式発表でご確認ください。
ここで取り違えないでほしいのは、上の表の数値はそれぞれの資格ごとの合格率だということです。建築士の合格率を宅建士の数値と混同しないよう注意しましょう。表を見ると、木造建築士と二級建築士は宅建士よりも合格率が高めです。一方で一級建築士は合格率が1割を下回る年度も多く、宅建士と比べてかなりの難関といえます。
なお、一級建築士は「1級」と表記されることもありますが、同じ資格を指します。しかも、一級建築士に合格するには、学科試験と設計製図試験の両方を突破しなければなりません。出題される問題のボリュームも多く、仕事と両立しながら学習環境を整えるだけでも相応の覚悟が要ります。宅建士は一度の筆記で合格基準点を超えればよいのに対し、建築士は実技まで含めて二段構えで突破する必要があるわけです。これらを踏まえると、総合的な難易度では一級建築士のほうが高いと考えてよいでしょう(あくまで傾向としての比較です)。
なお、「建設業で1番難しい資格は?」といった声もありますが、一級建築士はその中でも最難関級に位置づけられることが多い資格です。とはいえ、宅建士・二級建築士も決して簡単な試験ではありませんので、どちらも念入りな対策が必要です。「一級建築士と宅建士はどちらが難しいか」「宅建と二級建築士はどちらが難しいか」という問いには、こうした種類ごとの違いを踏まえて判断するのが正解です。
宅建と建築士の勉強時間を比較|独学が厳しいなら講座も
合格率と並んで気になるのが、合格までに必要な勉強時間ですよね。宅建士と建築士の試験に合格するまでの勉強時間の目安を、比較してみました。
- 宅建試験の合格までの目安は約300時間
- 二級建築士試験の合格までの目安は約400〜500時間
- 一級建築士試験の合格までの目安は約800〜1,000時間
これはあくまで一般的な目安で、必要な勉強時間は学習方法や前提知識によっても変わります。それでも、宅建士と比べると、二級建築士・一級建築士の合格には長い時間がかかる傾向があるとわかります。
しかも、建築士はどちらの種類も、学科に加えて設計製図の対策を同時に進めなければなりません。初学者が独学で取り組むには、正直ハードルが高い試験です。
そこで、効率良く合格を目指したいなら、資格スクールや通信講座を活用するのがおすすめです。著名なスクールや通信講座には、多くの受験生を合格に導いてきた実績があります。これは建築士に限らず、宅建士の合格を目指す場合も同じです。どの講座を選べばよいか迷う方は、宅建講座のおすすめ比較も参考に、自分の学習スタイルに合うものを探してみてください。
宅建と建築士は同時取得できる?|取得の順番とキャリアの考え方
宅建士と建築士のダブルライセンスを目指すとき、「どちらの資格を先に取ればいいのか」で迷う方は多いものです。
試験範囲で重なる部分があるため、宅建士と二級建築士の同時取得を狙うのも、選択肢のひとつです。ただし、前述のとおり科目免除は無いので、あくまで「それぞれ別々に合格する」必要がある点は忘れないでください。
では、取得の順番はどう決めればよいのでしょうか。ここで効いてくるのが、先に触れた「受験資格の有無」です。あなたの今の状況に当てはめて考えてみましょう。
- 建築系の学歴・実務経験がある方:すでに二級建築士の受験資格を満たしていることが多いので、建築士を先に取得してから宅建士を目指す流れが組みやすいです
- 不動産業に関わる仕事をしている方:受験資格の不要な宅建士から始め、その後に二級建築士へ進む流れが自然です
- どちらも未経験の方:まずは受験資格のいらない宅建士で基礎(不動産・法律)を固めるのが、現実的なスタートになりやすいです
自分の業務に関連した資格を先に取るほうが、今の仕事にすぐ役立てやすいというメリットもあります。
なお、どちらも簡単な試験ではありませんので、無理に同時並行すると両方が中途半端になりかねません。基本的には一つずつ着実に進めるのがおすすめです。
ちなみに、宅建と組み合わせるダブルライセンスは建築士以外にもあります。資金計画に強くなるFP×宅建のダブルライセンス、分譲マンション分野を深めるマンション管理士、労務分野まで広げる社労士×宅建のほか、現場寄りなら施工管理技士などもあり、目的に応じた選択肢を検討してみると、自分に合うキャリアの方向性が見えてきますよ。
まとめ|宅建と建築士のダブルライセンスは相性がよいが、科目免除は無い
ここまで、宅建士と建築士(一級・二級・木造)のダブルライセンスについて、仕事の違いから試験制度、メリット、難易度、勉強時間、取得の順番まで整理してきました。
最後に、押さえておきたいポイントを振り返っておきましょう。
- 相性はよい:仕事の補完性が高く、転職や独立で武器になりやすい(年収アップは職種・地域・実務次第なので、あくまで傾向として捉える)
- 科目免除は無い・受験資格は別物:試験範囲に重なりはあっても科目免除は無く、受験資格は建築士にあり宅建士には無い――この制度の違いを正しく押さえる
- 難易度・勉強時間は別物:建築士は種類によって差が大きく、最新の合格率は公式(不動産適正取引推進機構/建築技術教育普及センター)で確認する
土地と建物に関する資格には、これからも安定した需要が見込めます。キャリアアップのためにも、宅建士と建築士のダブルライセンスをぜひ前向きに検討してみてください。大切なのは、やみくもに両方を狙うのではなく、受験資格と勉強時間をふまえて資格取得の順番を計画的に組み立てることです。
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