宅建と行政書士のダブル受験(同時に受験)の問題は?ダブルライセンスは?先に取るなら、どっち?

宅建と行政書士のダブル受験

「宅建と行政書士、ダブルライセンスを目指すなら先に取るのはどっち?」「2つ取ると本当に仕事の幅は広がるの?」――宅地建物取引士(宅建士)と行政書士の両取りを検討しているあなたは、こんな疑問を抱えていませんか。

宅建士も行政書士も、どちらも国家資格で、宅建士試験・行政書士試験はいずれも受験資格なしで挑戦できます。資格保有者しかできない独占業務があるからこそ、根強い人気がありますよね。ただ、両方を目指すとなると、こんな悩みが出てくるのではないでしょうか。

  • 宅建と行政書士、難易度が高いのはどっち?
  • ダブルライセンスにメリットや相乗効果はある?
  • 先に取るなら、どちらから始めればよい?

先に結論からお伝えします。宅建も行政書士もどちらも受験資格がなく、誰でも挑戦できますが、試験範囲も難易度も方向性が大きく違います。合格率は宅建が例年15〜18%前後(令和6年度=2024は18.6%)、行政書士が10%台前半(令和7年度=2025は14.54%)で、勉強時間も行政書士のほうが大きく必要です。

一方で「不動産×許認可」という相乗効果は、あなたの働き方しだいで評価が分かれます。「最強の組み合わせ」と煽る情報もありますが、現実はもう少していねいに見ていく必要があります。

この記事では、W取得・取得順序を検討しているあなたに向けて、(1)仕事内容の違い、(2)試験制度・試験範囲の違い、(3)合格率・勉強時間から見た難易度の差、(4)ダブルライセンスのメリットと相乗効果の現実、(5)どちらを先に取るべきか、を最新の公表データに注意しながら一つずつ整理します。数字は年度で変動するため、最後は必ず一次情報(宅建=不動産適正取引推進機構 retio.or.jp/行政書士=行政書士試験研究センター)で確認することをおすすめします。

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目次

宅建士と行政書士の仕事内容の違い

宅建士と行政書士は、どちらも専門性が高く、国家資格の保有者(ライセンスホルダー)にしか行えない業務を持っています。ただ、活躍するフィールドは大きく異なります。まずは、この2つの資格で何ができるのか、仕事内容の違いから押さえておきましょう。

  • 宅建士は、宅建業者が行う不動産取引のなかで、重要事項の説明(35条書面)・重要事項説明書への記名・契約書面(37条書面)への記名などを担う「不動産取引のプロ」
  • 行政書士は、依頼を受けて官公署に提出する書類の作成・提出代行、権利義務や事実証明に関する書類の作成代行などを行う「許認可・書類作成のプロ」(他の法律で制限されている業務を除く)

どちらも「書類を扱う仕事」という点は似ていますが、向いている方向はまったく違います。宅建士が不動産分野に特化した資格なのに対して、行政書士は「飲食店を始めたい」「建設業を開業したい」「農地に住宅を建てたい」といった許認可申請のプロフェッショナルで、扱う分野が幅広いのが特徴です。

この「仕事の方向性の違い」こそ、あとで触れる難易度やダブルライセンスの相乗効果を考えるときの土台になります。

では、よくある疑問にも先に触れておきましょう。「宅建と行政書士はどちらが稼げるの?」と気になる方も多いですが、これは仕事の方向性が違うため一概には言えません。不動産取引の件数で稼ぐのか、許認可の継続案件で積み上げるのかで収入の作り方が変わり、働き方や営業力による個人差も大きいのが実情です。

また「宅建業と行政書士は兼業できる?」という点については、兼業は可能です。ただし、宅建士として業務を行うには取引士証の交付、行政書士として業務を行うには行政書士登録が必要で、さらに不動産仲介を業として営むなら宅建業免許も必要と、それぞれの制度要件は別々に満たす必要があります。「2つ受かれば自動的に両方の仕事ができる」わけではない点は、あとの章でも詳しく整理します。

宅建と行政書士の試験制度・試験範囲の違い

仕事内容と同じくらい、試験のしくみも大きく違います。学習計画を立てる前提として、宅建士と行政書士の試験制度・試験範囲を正確に押さえておきましょう。

国家資格 宅建士 行政書士
受験資格 なし(誰でも受験可) なし(誰でも受験可)
試験科目 権利関係(民法等)・宅建業法・法令上の制限・税その他 【法令等】基礎法学・憲法・行政法・民法・商法/会社法 【基礎知識等】一般知識・行政書士法等の業務関連諸法令・情報通信/個人情報保護・文章理解
出題形式 四肢択一式(マークシート) 5肢択一式・多肢選択式・記述式
問題数 50問 全60問(法令等46問+基礎知識等14問)
試験時期 年1回・10月(第3日曜) 年1回・11月

まず大事な共通点から。宅建も行政書士も受験資格に制限がなく、年齢・学歴・国籍を問わず誰でも受験できます。「受けられるかどうか」で迷わなくてよいので、これはダブルライセンスを計画するうえでうれしい前提です。

宅建士の試験制度(50問・四肢択一・相対評価)

宅建士試験は50問・四肢択一式(マークシート)で、出題構成は権利関係(民法等)14問・宅建業法20問・法令上の制限8問・税その他8問です。

合格基準は毎年の受験者全体の成績に応じて決まる相対評価で、合格点は固定ではありません。おおむね31〜38点の範囲で年度ごとに変動し、たとえば令和6年度(2024)は37点でした。「○点取れば必ず合格」という絶対基準ではない点に注意しましょう。

また、宅建業に従事している方が対象の登録講習(5点免除)を修了すると、問46〜50が免除され、実質45問で合否が判定されます。

なお、宅建は受験資格はありませんが、合格後すぐに宅建士として働けるわけではありません。実際に取引士として業務を行うには、2年以上の実務経験(または登録実務講習の修了)を経て登録し、取引士証の交付を受ける必要があり、その後も5年ごとの法定講習が課されます。「受験資格/合格後の登録要件/実務経験」は別物として区別しておくと安心です。

行政書士の試験制度(全60問・記述式あり・足切り)

行政書士試験は全60問で、内訳は法令等46問+基礎知識等14問。出題形式は5肢択一式・多肢選択式・記述式で、宅建士にはない記述式がある点が大きな違いです。記述式は部分点での採点になるため、択一中心の宅建とは対策の質が変わります。

さらに行政書士試験には足切り(基準点)があります。法令等科目と基礎知識等科目のそれぞれに最低ラインが設けられており、総合点で合格基準に達していても、どちらかの足切りを下回ると不合格になります。なお、令和6年度(2024)から従来の「一般知識等」が「基礎知識」に改められ、行政書士法等の業務に関連する諸法令が出題範囲に加わりました。「法令は得意だが基礎知識が手薄」という方が取りこぼしやすいポイントなので、バランスのよい学習が欠かせません(最新の出題範囲は行政書士試験研究センターで確認してください)。

このように、宅建士は択一中心で範囲が不動産分野に絞られるのに対し、行政書士は記述式を含み、足切りもある幅広い試験です。同じ「法律系の国家資格」でも、求められる対策はかなり違うことを押さえておきましょう。

宅建と行政書士の難易度を比較|合格率・勉強時間の差

「宅建と行政書士、どちらが難しいの?」――これは多くの方が一番気にするポイントですよね。ここでは合格率勉強時間という2つの軸から、難易度の差を見ていきます。

なお、合格率は年度によって変動します。各資格の数値を取り違えないよう、必ず宅建は宅建、行政書士は行政書士の数字として読んでください(司法書士やマンション管理士など、ほかの資格の合格率と混同しないよう注意しましょう)。

合格率で比較する

近年の合格率を、それぞれの資格に正しく対応づけて並べると次のようになります。

試験年度 宅建士の合格率 行政書士の合格率
令和3年度(2021) 17.9% 11.18%
令和4年度(2022) 17.0% 12.13%
令和5年度(2023) 17.2% 13.98%
令和6年度(2024) 18.6%(合格点37点) 12.90%
令和7年度(2025) 18.7%(合格点33点) 14.54%

ならしてみると、宅建士は例年15〜18%前後(令和6年度=2024は18.6%)、行政書士は近年10%台前半(令和6年度12.90%・令和7年度14.54%)で、総じて行政書士のほうが合格率が低く、難しい傾向にあります。

行政書士は近年やや上昇傾向にありますが、それでも宅建より合格のハードルは高めです。記述式があり、出題範囲が広く、足切りもある――この積み重ねが合格率の差として表れていると考えられます。

ただし、これらの数字は年度で変動します(上表は各年度の公式発表値にもとづく目安です)。受験を判断するときは、宅建=不動産適正取引推進機構(retio.or.jp)、行政書士=行政書士試験研究センターの最新の公表値を必ず確認してください

勉強時間で比較する

合格までに必要な勉強時間の目安も、行政書士のほうが長くなります。

  • 宅建の合格までの勉強時間の目安は約150〜300時間
  • 行政書士の合格までの勉強時間の目安は約500〜800時間

どちらも知識ゼロから始めた場合のあくまで目安で、学習効率や前提知識による個人差は大きい点に注意してください。

ひとつ補足すると、宅建合格者は民法の素地があるぶん、行政書士の法律学習に入りやすいという利点があります。宅建試験でも行政書士試験でも民法は出題されるため、学習の流れを作りやすいのです。ただし、行政書士試験の民法は宅建よりも深く問われ、試験範囲の重複は限定的で、記述式は新たに対策が必要になります。「宅建で学んだぶん行政書士がラクになる」と過度に期待しすぎないほうが現実的でしょう。

まとめると、「宅建士と行政書士ではどちらが難しい?」という問いには、合格率・勉強時間・記述式の有無のいずれから見ても、行政書士のほうが難度が高い傾向と答えられます(あくまで傾向で、個人差はあります)。そのため、受験資格がなく短期で取りやすい宅建を先に取り、そのあと行政書士へという順序が現実的なケースが多くなっています。

宅建と行政書士のダブルライセンスのメリットと相乗効果の現実

宅建士と行政書士は活躍のフィールドが異なるため、「2つ取っても意味がないのでは?」とイメージする方も少なくありません。確かに仕事内容には違いがありますが、近年では両方を取得してダブルライセンスを目指す方は増えています。ここでは、メリットと相乗効果を正直に整理してみましょう。

相乗効果の正直な評価(不動産×許認可)

宅建士と行政書士の相乗効果は、「不動産×許認可」という親和性のある事例があるのが強みです。たとえば、農地転用の許可申請・開発行為の許可申請・建設業許可など、不動産にからむ許認可は少なくありません。宅建士として不動産取引を扱いながら、行政書士として関連する許認可申請をワンストップで対応できる場面があるのです。

ただし、その効果はあなたの働き方や専門分野しだいです。不動産がらみの許認可を扱う場であれば相性は良いですが、業務が重ならなければ相乗効果は限定的になります。「ダブルライセンスは最強」と煽る情報もありますが、現実は取り組む分野によって評価が分かれると考えておきましょう。

扱える業務・選択肢が広がる

2つの資格を持つと、関われる業務の選択肢が広がります。宅建業者のもとで宅建士として物件の売買・賃貸の取引に関わりつつ、行政書士として「農地法の許可」「開発行為の許可申請」といった不動産関連の許認可も扱えるようになります。逆に、行政書士として仕事をしていても不動産売却に関する相談は舞い込みますから、宅建士の不動産知識が役立つ場面は多いでしょう。なお、不動産の売買・賃貸の仲介を業として営む(宅建業を営む)には、宅建士資格とは別に宅建業免許が必要です。宅建士証を持っているだけで自分の不動産仲介業を開けるわけではない点は区別しておきましょう。

また前章でも触れたとおり、民法の学習が重なるため、宅建合格者は行政書士の法律学習に入りやすいという学習面のメリットもあります(試験範囲の重複は限定的なので過度な期待は禁物です)。

独立開業での差別化

将来的に独立開業を目指すなら、ダブルライセンスは差別化に役立ちます。「宅建士の資格を持つ行政書士」として自分を売り込めば、ほかの士業との違いを打ち出しやすくなります。宅建士は受験者の多い人気資格のため、宅建単体では評価が上がりにくい面もあり、行政書士との組み合わせで強みを作る、という考え方です。

ただし、「宅建士と行政書士をダブル取得すれば独立できる?」という問いには、独立の選択肢は広がるが、それだけでは十分でないと答えるのが正直なところです。実際に独立して成功するには、顧客開拓の営業力や実務経験が欠かせません。年収アップを期待する声もありますが、収入は働き方・地域・営業力で大きく変わり、個人差が非常に大きいため、ここでは断定を避けます。

目的別の組み合わせ候補

宅建と一緒に取った方がいい資格は?」「宅建のダブルライセンスでおすすめは?」と考える方も多いですよね。行政書士のほかにも、不動産分野志向なら相性のよい資格があります。あなたの目的に合わせて、次の記事もあわせて検討してみてください。

どれを選ぶにせよ、「2つ取れば最強」ではなく、自分の目指す方向に合うかで組み合わせを決めるのがポイントです。

宅建と行政書士、どちらの資格を先に取るべき?取得順序と同時受験

ここまでを踏まえて、「結局どちらを先に取ればいいの?」という疑問に答えていきます。結論からいうと、「どちらが正解」という唯一の答えはありません。不動産に特化したいのか、許認可も幅広く扱いたいのか――あなたの志向によって最適な順序は変わります。

取得順序のおすすめ

そのうえで現実的なケースとして多いのは、「宅建→行政書士」の順です。理由はシンプルで、宅建は受験資格がなく、勉強時間の目安も短めで取りやすいうえに、合格すれば民法の素地を作れるからです。まず宅建で「資格に合格した」という成功体験と法律学習の土台を作り、その勢いで行政書士へ進む――という流れが取り組みやすいでしょう。

もちろんこれは目安で、すでに法律の学習経験がある方や、行政書士の業務を本命にしている方は、最初から行政書士を狙う選択もあります(断定はできません)。

同時受験は現実的か

「いっそ同時に受けてしまえば早いのでは?」と考える方もいますよね。宅建士の試験は10月の第3日曜、行政書士試験は11月ですので、日程上は同時受験も不可能ではありません。

ただし、1年で両方の合格を狙うのは負荷が高く、現実的でないことが多いと考えておきましょう。とくに行政書士は記述式を含む幅広い試験で、まとまった勉強時間が必要です。両方を中途半端に進めて「どちらも不合格だった」という事態は十分に起こり得ます。精神的な負担も大きいので、よほど学習時間を確保できる場合を除き、1つずつ確実にがおすすめです。

兼業・登録の注意点

2つに受かれば、すぐ両方の仕事ができる」と思いがちですが、ここは正確に区別しておきましょう。前述のとおり、宅建士として業務を行うには合格後の登録(実務2年または登録実務講習)と取引士証の交付が必要で、行政書士として業務を行うには行政書士登録が必要です。試験合格はスタートラインで、業務を行う要件はそれぞれ別に満たす必要がある、と覚えておいてください。

なお、宅建の学習を効率よく進めたい方は、通信講座の活用も検討してみてください。講座の選び方は宅建講座のおすすめ、宅建全体の学習ロードマップは宅建|資格全体ガイドでまとめています。

まとめ|難易度は行政書士が高め・組み合わせは志向で選ぶ

宅建と行政書士のダブルライセンスについて、最後に要点を整理します。

  • 宅建も行政書士も受験資格なし=誰でも挑戦できる
  • 難易度は行政書士のほうが高め(合格率は宅建15〜18%/行政書士10%台前半・勉強時間も行政書士が長い)。数値は年度変動するので公式で確認
  • 相乗効果は「不動産×許認可」で働き方しだい=志向に合えば有効・「最強」とは言い切れない
  • 取得順序は宅建→行政書士が現実的なケースが多い・同時受験は負荷が大きい

大切なのは、「資格を2つ持つこと」そのものをゴールにしないことです。資格は手段であり、どんな顧客に、どんな価値を、どう届けて稼ぐのかという事業の設計があって初めて、ダブルライセンスは武器になります。宅建士と行政書士の相乗効果も、「不動産取引の入口で接点を作り、関連する許認可へつなげる」というように、仕事の導線として組み立てられるかで価値が決まります。まず1つを確実に取り、実務で稼ぐ感覚をつかんでから2つ目に進む――この順序のほうが、回り道に見えて結局は近道になることが多いものです。

難易度や勉強時間に違いはありますが、宅建士と行政書士は相性のよい組み合わせです。あなたの目指す方向に合うなら、ぜひ計画的に挑戦してみてください。数字は年度で変わるため、最終的な判断は宅建=不動産適正取引推進機構(retio.or.jp)、行政書士=行政書士試験研究センターの最新情報で確認しましょう。

これから目指す方は、通信講座も含めて宅建講座のおすすめ宅建の全体ロードマップから、自分に合った学習スタイルを見つけてみてください。

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験など、情報処理技術者試験の学習法・過去問解説を中心に発信しています。著書に『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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