公務員として働く中で、「今のままで良いのかな?」と疑問を抱えている方は少なくありません。
そこで、キャリアアップやステップアップを目的として、公務員の方が社会保険労務士(社労士)の資格取得を目指すことも、おすすめです。
社会保険労務士(社労士)は労働保険や社会保険の専門家で、公務員の普段の業務とも密接な関わりがありますので、キャリアアップの方向性は悪くありません。
この記事では、
- 公務員が社労士になるメリット
- 社労士試験における公務員の免除制度
などについて分かりやすく説明しますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。
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目次
公務員が社労士になるメリット! どのように役立つ?
将来的に独立する目的で、社会保険労務士(社労士)を目指す公務員も増えて来ました。
この項では、公務員が社会保険労務士(社労士)になるメリットを解説していきます。
労務関係の知識が充実する
社会保険労務士(社労士)の試験科目は、次の10分野から構成されています。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 国民年金法
- 厚生年金保険法
労働保険や社会保険のスペシャリストですので、労務関係の仕事に従事している公務員は社会保険労務士(社労士)の資格を取得するメリットが非常に大きいですよ。
社会保険労務士(社労士)の勉強で該当分野の知識が充実すれば、公務員としての業務遂行に役立ちます。
社会保険労務士(社労士)の資格取得者は専門家として高く評価されますので、普段の業務を充実させる目的で取得を目指すのは選択肢の一つです。
公務員時代の実務経験を活かしてスムーズに働ける
社会保険労務士(社労士)の資格を活かした働き方は、次の2種類に大きくわけられます。
- 会社の一員として自社の仕事に携わる勤務社労士
- 独立開業してお客様から依頼された仕事を行う開業社労士
勤務社労士でも開業社労士でも、何も経験を持たない人と比べてみると、公務員時代の実務経験を活かせる人の方が有利です。
労務関係の仕事に従事している公務員は特に、社会保険労務士(社労士)として勤務してからもスムーズに仕事に慣れることができるでしょう。
公務員を辞めて独立開業する道ができる
これは、公務員に限る話ではありませんが、社労士資格を取得することで、独立開業への道を目指すことができます。
「何らかの事業を自ら始めたい」「もっと高い年収を目指したい」と考えているのであれば、社会保険労務士(社労士)の資格を活かして独立開業すべきですね。
社会保険労務士(社労士)として独立開業するメリットは次の2つ!
- 働き方や職場環境など、自分に最適な仕事との付き合い方が可能
- 事業の利益が自分の収入に直接反映する
誰でも開業してすぐに稼げるようになるわけではありませんが、社会保険労務士(社労士)は独立に向いている代表的な資格です。
※社会保険労務士の独立開業に関して詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
https://syaroushi-ganba.com/syaroushi-dokuritsu-kaigyou/
公務員は社労士試験の免除制度あり!
公務員として、定められた条件以上、あるレベル以上の勤務の実績があれば、一部の社労士試験の科目が免除となります。
これが「公務員特例免除」といいます。
「公務員特例免除」では、試験の一部が免除となるので、社労士試験の合格率を上げられます。
「公務員特例免除」について詳細は、「試験科目の一部免除資格者一覧」(試験センターHP)に記載されています。
社労士試験の免除科目と免除資格者の概要は次のとおりです。
試験の免除科目 | 免除資格者(公務員特例免除に関わる部分を抜粋) |
---|---|
労働基準法及び労働安衛法 | 国家公務員として労働基準法や労災保険法、労働安全衛生法(安衛法)の施行事務に就いた期間が通算で10年以上 |
労災保険法 | 国家公務員として労働基準法または労災害保険法の施行事務の仕事に就いた期間が通算で10年以上 |
雇用保険法 | 国または地方公共団体の公務員として、雇用保険法や職業安定法(職安法)の施行業務に就いた期間が通算で10年以上 |
労働保険徴収法 | 国または地方公共団体の公務員として、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行事務に従事した期間が通算で10年以上 |
健康保険法 | 国または地方公共団体の公務員として、健康保険法の施行事務に就いた期間が通算で10年以上 |
厚生年金保険法 | 国または地方公共団体の公務員として、厚生年金保険法の施行事務に就いた期間が通算で10年以上 |
国民年金法 | 国または地方公共団体の公務員として、国民年金法の施行事務に就いた期間が通算で10年以上 |
労働社会保険法令に関わる仕事をしたことのある公務員は、実務経験だけで試験の一部が免除される仕組みです。
公務員として携わってきた業務により、社会保険労務士(社労士)の試験で免除される科目は変わります。
公務員特例免除者の合格率は、一般の方の2倍!
公務員特例免除を適用された受験者数・合格者数・合格率などは、例年合格発表時に詳細が公開されています。
2020年度の第52回社労士試験については、以下の通りです。
- 受験者数 34,845人 (うち公務員特例の免除者431人)
- 合格者数 2,237人 (うち公務員特例の免除者 55人)
- 合格率 6.4% (公務員特例の免除者 12.8%)
公務員特例免除者の合格率は例年、10~15%程度であり、科目免除のない受験者の合格率と比較すると2倍程度となることが多いです。
公務員特例免除の適用は、かなり大きなアドバンテージとなることは間違いありません。
社労士試験の科目免除の申請方法!
社労士試験で公務員が科目免除を申請するには、次の2つの書類を提出しないといけません。
- 受験資格証明書
- 免除資格を証明する書類
受験資格と免除資格の証明書類が同一でも、それぞれ1部ずつ用意する必要があると全国社会保険労務士会連合会試験センターの公式サイトで記載されています。
また、科目免除の点数に関しては、満点ではなくその年の合格基準点をもとに得点が自動的に決まる仕組みです。
公務員の実務経験があるは、科目免除を受けるよりも、一般受験をした方が高得点を出せるケースもありますので注意してください。
社会保険労務士(社労士)の試験は科目免除講習もあり!
社会保険労務士(社労士)の試験は、科目免除講習もあります。
一定の実務経験をお持ちの方が科目免除講習を受講すれば、社労士試験科目の免除申請が可能です。
具体的な要件は以下のとおり。
労働社会保険法令事務の従事期間が通算して15年以上(又は近い将来その期間に該当するもの)ある次の(1)又は(2)に該当する者。
- 社労士事務所又は社会保険労務士法人事務所の補助者
- 健康保険組合・厚生年金基金・労働保険事務組合等の指定団体の役員又は従業者
「試験が免除されるのは嬉しい」と考えている方はいますが、科目免除講習は1科目につき45,000円の費用が発生する点には注意が必要です。
※その他、社労士の免除制度の詳細については、下記の記事も参考にしてみてください。
社会保険労務士(社労士)以外の公務員におすすめの資格!
社会保険労務士(社労士)以外にも、公務員の方が取得すべき資格はたくさんあります。
この項では、公務員に向いている資格の概要や試験の免除制度についてまとめてみました。
行政書士
行政書士とは、官公署(役所等)に提出する申請書類の作成や、提出の代行をしたりする行政手続きの専門家です。「街の法律屋さん」などと言われることもあります。
行政書士は公務員におすすめの資格で、取得することで次の2つのメリットがあります。
- 行政書士の業務と公務員の業務は親和性が高い
- 独立開業すれば公務員の勤務時代よりも年収がアップする可能性がある
一般的に行政書士として仕事をするためには、行政書士試験に合格した後に登録しないといけません。
しかし、国または地方公共団体(自治体)の公僕(公務員)として、通算17ねん以上の行政事務を担当された方(※中卒の場合は20年以上)方は、行政書士の資格を手に入れることができます。
つまり、公務員になって17年間以上の行政事務の経験があれば、行政書士の試験自体が免除されるわけです。
司法書士
司法書士は司法書士法に基づく国家資格で、人々の財産と権利を守ってトラブルの法的解決を行う専門家です。
国家資格の中でも難関資格の一つですが、公務員は司法書士になるに当たって優遇制度があります。
公務員として次の業務に10年以上の期間、勤務することで、司法書士登録が可能となります。
- 裁判所事務官
- 裁判所書記官
- 法務事務官
- 検察事務官
これらの職業は裁判所職員採用試験のクリアが条件となるものの、司法書士ほど難易度は高くありません。
司法書士を目指すために、まずは上記の公務員になる方も少なくありません。
中小企業診断士
中小企業の経営診断の業務に従事する中小企業診断士は、公務員におすすめの資格です。
公務員が中小企業診断士の資格を取得するに当たり、次の3つのメリットがありますよ。
- 戦略や計画の立案などのスキルがキャリアアップに役立つ
- 公務員の部署によっては中小企業と深い関わりがある
- 将来的に資格を活かして独立開業できる
中小企業診断士は単年度合格が難しい国家資格ですが、公務員は中小企業事業団が実施する中小企業大学校の養成課程の受講を優先できる場合があります(所属の組織によります)。
民間の方は1次試験合格者のみが中小企業大学校に入れるのに対して、公務員の場合、無試験で養成課程の受講がOKなケースが多く、修了すれば中小企業診断士の資格を取得できる仕組みです。
税理士
税理士試験に合格した税理士は、顧客の納税相談や納税に関わる業務の代行が可能です。
税理士試験における科目免除制度は、大きくわけると次の2つです。
- 学位の取得による科目の免除
- 国税関連業務の従事による科目免除
公務員として税務署の国税業務に23年間に渡って携わっていれば、税理士試験の一部が免除されます。
国税に長く勤務すればするほど、税理士試験で優遇措置を受けられる仕組みです。
弁理士
弁理士とは知的財産に関する専門家で、特許庁に対する申請・出願などの事柄を代理して行う職業の人を指します。
法律系の資格でありながらも、試験に合格するには工業分野の深い知識も同時に兼ね備えておかないといけません。
弁理士は公務員におすすめの資格で、試験の公務員優遇措置が取られているからです。
特許庁の裁判官や審査官として7年間以上に渡って勤務している公務員は、無試験で弁理士の資格を得られます。
そのため、特許庁を退社した後に弁理士になるケースも少なくありません。
宅建士
宅建士(宅地建物取引士)は不動産取引のプロフェッショナルで、土地や建物の売買の仲介や、賃貸物件のあっせんなどの業務を行っています。
1年間で20万人以上が受験するほど宅建士は人気の資格ですね。
「公務員と宅建士は関係ないのでは?」とイメージしている方は多いものの、決してそんなことはありません。
宅建の知識があることをプッシュすることで、様々な用地取得に関係する部門・ポジションに配属される可能性が高まりますし、公務員を定年退職した後に独立開業する選択肢もできます。
住宅や用地に関する知識を持っていた方が有利な部署は、思いのほか多いので、公務員にとって宅建は有望な資格と言えるのです。
まとめ
公務員として働き続けるにしても将来的に独立開業を目指すにしても、社会保険労務士(社労士)の資格は役立ちます。
公務員の業務経験があれば、社労士の試験の科目免除を受けることも可能です。
社会保険労務士(社労士)以外の資格も公務員に役立ちますので、どれを取得すべきなのか考えてみてください。