今回は、行政書士試験の勉強に六法は必要か? 必要な場合、おすすめの六法は? というテーマでお伝えします。
そもそも、行政書士の試験勉強に六法が必要なのかどうか、については、賛否両論あります。
結論から言えば、私は
「独学ならば、行政書士試験用の六法は利用した方が良い」
と考えています。
その理由から説明していきましょう。
目次
独学に、行政書士試験用の六法が必要な理由
まず、資格スクールに通学している方や、通信講座を受講している方は、六法は無くても大丈夫です。
というのも、それらは講座で利用する教材や講師の指導だけで、行政書士試験に合格できるようカリキュラムが組まれているからです。
※ただ、昨今の行政書士試験の難化により、資格スクール通学校の講師でも「別途、六法を購入して条文に触れておいてください」と指示する方も出てきているようです。もちろん、その場合は利用してください。
一方、独学者は、基本的に市販のテキストや問題集を利用して勉強することになります。
最近のテキストは良く作られていて、関連する条文や判例は、出来るだけ記載するようになっています。
しかし、ページ数の制限もあり、掲載されている条文や判例は、必要最低限です。
必要最低限でも、身近にわからないことを教えてくれる先生のような人がいれば問題ないでしょうが、独学では難しいですよね。
以上のような理由により、関連する条文がすべて掲載されている六法は必要なのです。
その他にも、受験六法が必要な理由には以下のようなものもあります。
法令科目の配点が多い
独学者が行政書士の試験対策で受験六法を読んで理解すべきなのは、法令科目の配点が多いからです。
行政書士試験は大きくわけると法令科目と一般知識で、それぞれの問題数や配点は次のようになります。
法令科目・・・問題数:46問、配点:244点
一般知識・・・問題数:14問、配点:56点
法令科目とは、「憲法」「基礎法学」「民法」「行政法」「商法・会社法」の5つです。
これらの法令科目を適切に勉強するためにも、条文を網羅した六法が必要になるのです。
単純に条文を読むのが大事
行政書士を独学で取り組むに当たり、テキストや過去問を利用しない受験生は、ほぼいないでしょう。
テキストを読み込んで過去問で実践力を身につけるのは大事な試験対策ですが、条文を読むのも忘れてはいけません。
行政書士受験用の六法の中には学習すべき条文が全て記載されていますので、正しい知識を習得する上で役立ちます。
前述のとおり、市販されているテキストや過去問の場合、全ての条文を掲載することはできません。
問題に合わせて頻出分野や重要な箇所に絞って収録されていることが多く、「○○○の条文を読んだことがない」という方は多いです。
中でも、憲法や行政法の一部(行政手続法、行政不服審査法、行政訴訟法など)では、単純に条文の正誤を問うような問題が多く出題されます。
つまり、普段からどれだけ条文に接しているかが正解のカギを握る問題も多いのです。
本番の試験ではマニアックな条文が出題されることもありますので、六法を利用しているとしっかり対応できます。
憲法・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法は条文数が少なく、勉強するコストパフォーマンスが大きい
前項で説明したとおり、憲法・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法は条文そのものの出題が非常に多いです。
そのうえ、これらの法令は、条文数が少ないことでも知られています。それぞれの条文数は以下のとおり(2020年現在)
<各法令の条文数>
- 憲法:103条
- 行政手続法:46条
- 行政不服審査法:87条
- 行政事件訴訟法:46条
いかがでしょうか。全文読んでも、たいした時間は掛かりません。
このように出題範囲が限られているにも関わらず、それぞれの法令から複数問出題されるのですから、他の科目に比べ、圧倒的に勉強のコストパフォーマンスが高いといえます。
再頻出の目的条文(第1条)をはじめ、六法で全文をチェックすることを強くおすすめします。
行政書士用の六法は、一般の六法全書とは異なる
行政書士の勉強で使う六法は、一般的な六法(六法全書)とは違います。
そもそも六法とは、「憲法」「民法」「刑法」「商法」「刑事訴訟法」「民事訴訟法」の6つの法律のことです。
当然ながら、一般的な六法全書は、これらを中心に記載されています(これら以外の法規も記載されています)。
しかし、行政書士試験では、六法のうち、「刑法」「刑事訴訟法」「民事訴訟法」は出題されません。
行政書士試験に出題される法律問題は、「憲法」「民法」「行政法」「商法・会社法」「基礎法学」でした。
行政書士試験で最も配点が大きいのは「行政法」ですが、これが一般の六法の対象外なのです。
行政書士の受験六法には、行政法(正確には、行政手続法、地方自治法、行政不服審査法、行政訴訟法、国家賠償法など)の条文を始め、行政書士試験に関係のある法規を中心に掲載されています。
行政書士の独学に必要なのは、このような行政書士受験用の六法になります。
行政書士の試験勉強でおすすめの六法は?
ここでは、行政書士の試験勉強でおすすめの六法をいくつか紹介していきます。
どの六法を使って行政書士の勉強に取り組めば良いのか迷っている方は参考にしてみてください。
基本テキストに付属の「ハンディ六法(コンパクト六法)」
もっとも私がおすすめする六法はコレです!
現在発売されている基本テキストの多くには、条文だけのハンディ六法(コンパクト六法)が付属しています。
判例や過去問などは一切なく、条文も「憲法」「民法」「行政法」だけの割り切った構成です。
その代わり、薄さが1cm未満の持ち歩きに最適なサイズになっています。
※「商法・会社法」の条文が省略されていますが、「商法・会社法」は配点が小さいうえに条文数が多く、すべての条文にあたるのは非効率という判断でしょう。条文の学習が必須なのは「憲法」「民法」「行政法」になりますので、このような判断も妥当な考え方の一つです。
前述のとおり、条文そのものが問われる行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法は合計しても条文数は約180ほどしかありません。それにも関わらず、この行政三法からは、択一だけで約8問も出題されるのです。
持ち運びに便利なので、通勤・通学途上など、スキマ時間を利用して、ぜひ全文を素読して欲しいと思います。
また、「とにかく、基本テキストを勉強しながら、関連する条文をチェックするクセをつけたい」という方にも、ぴったりの六法でしょう。
「合格革命 行政書士」「うかる!行政書士」「出る順行政書士」「みんなが欲しかった!行政書士」「行政書士 合格のトリセツ」など、現在売れ筋の基本テキストにはハンディ六法が付属しています(いずれも取り外し可となっています)
特に初心者ほど、分厚い六法よりはこちらの方がオススメです。
これらの基本テキストについて詳しくは、下記記事をチェックしてみてください。
行政書士 試験六法 2021年度
早稲田経営出版の「行政書士 試験六法」は、行政書士試験用の六法の定番的な商品です。
この本の優れたところは、単なる六法ではなく、重要な基本判例・過去問を条文とリンクして掲載している点です。
「行政書士 試験六法」では、過去問や重要判例も学べる
具体的には、以下のような構成になっています。
- 行政書士試験に合格するために必要な法律が掲載されている
- 条文ごとに関連判例や過去問が記載されている
- 条文ごとに出題された年が明記されている
六法を頭に入れるだけではなく、過去問や重要判例も同時に学べます。
欲しい情報へのアクセスの時間を短縮できれば、行政書士試験の短期合格も決して不可能ではありません。
「行政書士 試験六法」の唯一残念なところは、ボリュームが大き過ぎる点です。
条文に加え、判例・過去問まで掲載しているため仕方がないのですが、大判かつ1200ページ超のページ数であり、これ一冊持ち歩くだけでも大変。
通勤途中のスキマ時間に勉強・・・という使い方は、正直なところ向いていません。
その代わり、書斎で落ち着いて勉強したい、という方には最適な一冊といえるでしょう。
ケータイ行政書士 ミニマム六法
「ハンディ六法が欲しいが、自分の使っている基本テキストに付属していない」
そんな時は、「ケータイ行政書士 ミニマム六法」が有力な候補になります。コンパクトなことはもちろん、条文のカッコ書きを脚注処理することで、類書にない読みやすさを実現したり、重要キーワードを2色刷りにするなど、使いやすさにこだわった書籍になっています。
スマホアプリを使用する
書籍ではなく、スマホアプリの六法を使って行政書士の試験対策に取り組むのも選択肢の一つです。
六法は分厚くて重いので持ち運びには適していませんが、アプリであればスマホでアクセスするだけでサっと開くことができます。
自宅でも電車の中でも条文を見ることができるスマホアプリはとても便利ですね。
ここでは、六法を読める代表的なアプリをいくつか紹介していきます。
※ただし、行政書士受験に特化した六法のアプリ版はなく、以下は一般の六法のアプリ版となります。
And六法:iPhoneとAndroidの両方で無料版の利用が可能で、行政書士試験で問われる有名どころの六法は揃っている
三省堂 模範六法:無料版でも「日本国憲法」「民法」「刑法」「会社法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」の条文をチェックできる
e六法:憲法や民法、会社法や行政法など行政書士試験で必須の条文を無料で閲覧できる
六法ではなく試験対策で使える行政書士のアプリについては、こちらのページをご覧になってください。
まとめ
行政書士の試験勉強に必要な六法についておわかり頂けたでしょうか?
行政書士試験六法を持っていれば、条文の確認に加えて過去問や重要判例も同時に学ぶことができます。
また、基本テキスト付属のハンディ六法やスマホアプリを使えば、場所を選ばず条文をチェックすることが可能。
あなたに合った使い方のできる六法を一度試してみてください。
また、行政書士試験は難易度の高い試験であり、特に社会人の方などは勉強時間の捻出が難しいと思います。
そのような方は、スマホでスキマ時間に学習できる行政書士オンライン通信講座の利用を検討してみてください。