今回は、行政書士試験で利用する「判例集」に関する記事です。
最初に、「行政書士の試験勉強において、判例集が必要か?」という論点については、「必須!」「不要!」など、様々なスタンスや意見があります。
予備校によっても細かく違うようですが、私は「あったほうがよい」と考えています。
特に、行政書士試験においては
- 憲法の人権分野
- 行政法の国家賠償法全般、および行政事件訴訟法の一部
- 民法の債権分野
など、選択・記述・択一のいずれにおいても、主要な部分で判例から多く出題されます。
また、おすすめ判例ですが、受験に使用するならばTACの「みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2024年度」が、初学者の方には一番向いていると考えています。
※TACの回し者ではありませんw 理由は本文で! ぜひチェックしてみてください。
目次
行政書士の試験対策で判例集が必要な理由をまとめてみた
行政書士の試験対策において、判例集は受験生の心強い味方です。
行政書士試験では条文と判例の知識が問われますので、法律の意味を知るだけではなく判例学習も並行して行わないといけません。
なぜ行政書士の試験対策で判例集が必要なのか、具体的な理由を以下に一覧にしましたので見ていきましょう。
- 行政書士の実務では条文の知識に加えて、裁判所での判決が重要になる
- 起こり得る様々な問題に対して対処しないといけない
- 個々の事情に応じて裁判所で判断した判例が最終的な行動指針になる
行政書士の基本書の中にも、重要な判例はいくらか記載されています。
しかし、本番の試験において判例の重要度を加味すると、専門の判例集を使った踏み込んだ学習が必要ですよ。
特に憲法の判例問題では、「判例の結論」だけ覚えていても正答できず、判例(判決)に至るまでの筋道の理解を問う問題も出題されています。
もちろん、ただ判例集を漠然と読んでいても、頭には何も残らないので試験で活かすことができません。
行政書士の基本書で正しい知識を身につけて問題集を解きながらも、判例集で理解度を上げる学習を並行すると合格に一歩近づきます。
行政書士になってからも判例の学習は実務で役立てることができますので、試験対策で学んだ内容が無駄になることはないでしょう。
法律の勉強で条文の暗記に集中しすぎている方は、判例が疎かになりやすいので気を付けてください。
行政書士の試験対策でおすすめの判例集はこれ!
判例集と一口に言っても、実店舗やネット通販では様々なものが販売されています。
闇雲に購入して学習するのではなく、行政書士試験に出題されたことのある判例をまとめた判例集を選ぶのがポイントですね。
ここでは、行政書士の試験対策でおすすめの判例集を紹介しますので、選び方で迷っている受験生は参考にしてください。
みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2024年度
『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』は、大手スクールのTACから出版されている判例集です。
冒頭でも書いたように、ほとんどの方におすすめできる判例集がコレ。
読みやすい文章ながら、しっかり説明をしており、内容的にもバランスがよい判例集に仕上がっていますので、行政書士の初学者の方でも安心です。
コンパクトなサイズで携帯しやすく、その点もおすすめです。※一点だけ、分厚いのが惜しいところですが、こればかりは仕方無いですよね。
他にも、『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』には、以下のおすすめポイントがあります。
- 行政書士の試験に特化した「判例」「図解」「練習問題(確認問題)」がワンセットになっている
- 行政書士試験に良く出る「憲法」「民法」「行政法」「商法」の重要判例を厳選している
- 実際に本試験で取り上げられた実績の掲載で効率良く勉強ができる
- 主な争点の適宜図表化やポイント解説でわかりやすく手ほどきしてくれる
重要判例や関連判例の確認に加えて、過去問などの問題集を解いた後の復習としても活用できます。
そのため、『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』は学習初期から直前期まで幅広く使える判例集と言っても過言ではありません。
ボリュームが結構ありますが(なんと800ページ以上)、まずは興味のあるところから、どんどん読んでいくのが良いと思います(読んでいて面白いですから、息抜きのつもりでも良いでしょう)
行政書士試験 初学者向けの判例集は減っている?
ここまで、『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』を手放しで絶賛しているのが不自然、と感じられた方もいるかも知れません。
しかし、実情は「この判例集以外に、初学者におすすめできるものがない」という状況なのです。
というのも、この後、何冊か「行政書士試験向け判例集」をご紹介しますが、2023年度版最新のものが販売されていないケースが多いのです。
これは、行政書士試験の受験者数が年々減少しているのと関係があるのかも知れません(2006年に7万人以上いた受験生は、2019年には4万人を切っています)。
そのため、おすすめできる判例集の選択肢が減少している、という状況もあるのです。
「六法+判例集」を使う手もある
六法の記事で紹介した「行政書士 試験六法」(早稲田経営出版)には、条文に加え、過去問や重要判例も掲載されているので、こちらを利用する手もあります。
ただ、記事にも書いたのですが、難点は「大きくて重いこと」。ちょっと持ち歩きには向かないので、自宅や事務所で集中的に勉強する方にとっての候補となりそうです。
試験六法については、以下の記事をご覧ください。
条文は基本書付属のものでOK!
ただ、「六法も買い揃える必要があるか」という点も、人によりケースバイケースです。
ご存知の方も多いと思いますが、最近の基本テキストには、コンパクト六法(ハンディ六法)が付属するものが多いからです。
たとえば、私のおすすめ基本書は以下の4点なのですが、
<行政書士試験の独学用テキスト ランキング>
- 第1位:合格革命 行政書士シリーズ(早稲田経営出版)
- 第2位:うかる!行政書士 シリーズ(伊藤塾)
- 第3位:出る順行政書士シリーズ(LEC)
- 第4位:みんなが欲しかった!行政書士シリーズ(TAC出版)
これらの基本書にはすべて、コンパクト六法が付属します。
そうすると、前述の「行政書士 試験六法」を購入する意味は、あまりないですよね。
結局、判例集は『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』がおすすめ! という話に落ち着いてしまうのです。
※おすすめ基本テキスト(独学用テキスト)については、下記記事をどうぞ。
以下、その他の判例集をご紹介しますが、いずれも2023年版は発売されていませんので、あくまでご参考の位置づけです。
今年こそ行政書士! 試験にデル判例
※こちらの判例集は、最新版が2018年度版になっています。
『今年こそ行政書士! 試験にデル判例』は以前まで出版されていたパーフェクト行政書士シリーズの一つで、試験対策用の判例集が掲載されています。
面白くてわかりやすい判例対策の決定版で、「基本判例はじっくりと」「チェック判例はスピーディーに」とメリハリを付けた効率の良い学習が可能です。
『今年こそ行政書士! 試験にデル判例』にどのような強みがあるのか見ていきましょう。
- 約1,100件の判例が科目ごと・テーマごとに配列されていて、行政書士試験の対策として十分
- 収録されている判例は重要度に合わせて、「基本判例」「関連判例」「チェック判例」の3つに分類されている
- 判決文をQ&A形式で記載することで、初心者や初学者でも学習に取り組みやすくなっている
- 本試験で出題された判例も把握できる(過去10年間の出題された判例は出題年度と問題番号が添付されている)
実際の判決文はとても難解で、「内容が理解しにくい」と悩んでいる行政書士の初学者は少なくありません。
しかし、『今年こそ行政書士! 試験にデル判例』は重要度に合わせて判例を分類したり重要ポイントの解説やコメントを加えたりすることで、無理なく効率的に学習できる書籍に仕上がっています。
行政書士試験や司法書士試験など、様々な書籍を執筆している西村和彦先生の判例集なのも『今年こそ行政書士! 試験にデル判例』のポイントといえるでしょう。
電車でデル判行政書士2018
電車でデル判行政書士2018は、上記で紹介した『今年こそ行政書士! 試験にデル判例』のKindle版書籍です。
ここでは、電車でデル判行政書士2018を使って行政書士の試験対策を行うメリットをいくつか挙げていきます。
- Kindle版は分厚い書籍を持ち歩かなくても、スマホで手軽に学習できる
- 通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を有効活用して判例学習に取り組める
- 「問題を解く」「判旨を読む」「暗記用判旨を覚える」の3つのステップで効率良く暗記できる
行政書士試験に合格するには、ちょっとした時間を学習に充てるのが効果的です。
スキマ時間に使いやすいのが、Kindle版のよいところですね。
改訂版 1分マスター行政書士 重要用語・重要判例編
※こちらの書籍は、2016年の発売となっています。
『改訂版 1分マスター行政書士 重要用語・重要判例編』は、伊藤塾行政書士講座の書籍です。
法律系の資格に強い伊藤塾が制作していますので、安心して試験対策として活用できますね。
『1分マスター行政書士 重要用語・重要判例編』のおすすめポイントは次の3つです。
- 行政書士試験に頻出の200項目をカード形式で記憶できる
- 一部が問題形式でインプットとアウトプットを並行した学習に取り組める
- 赤シートで重要用語を消して覚えられるので試験直前の対策に便利
アプリの判例集を使う手もある
判例集は、スマホ用アプリもあります。ただ、「行政書士試験専用ではない」「最新版ではない」など、玉石混合ですので、まずは「自分にとって使えそうか」試してみるのがよいでしょう。
有料アプリも含め、ほとんどが無料で試せますので、まずはチェックしてみてください。
行政書士試験で使えるアプリの記事はこちら
まとめ
行政書士の試験対策で、基本書や過去問に加えて判例集が必要な理由についておわかり頂けましたか?
行政書士試験専用の判例集は少なくなっている現状があり、ほとんどの方(特に初学者)にはTACの『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2023年度』がおすすめです。
学習経験者、および「行政書士試験後、司法書士や予備試験を目指す」と強い意志をお持ちの方は、行政書士試験用ではなく、もっと専門的な判例集でも良いかも知れませんが、個人的には、行政書士試験のことだけを考えるとオーバースペックな気もします。
いずれにしても、自分が信頼できる判例集を選び、行政書士の試験対策を進めて欲しいと思います。
また、社会人の方など、仕事が多忙などでなかなか勉強する時間が取れない方は、スキマ時間に使えるスマホ対応行政書士通信講座の選択肢もありますので、チェックしてみてください。