行政書士試験の記述式と聞いて、こんなふうに感じていませんか。
「配点は大きいらしいけど、何を、どの順番で対策すればいいのか分からない」。
その気持ち、よく分かります。記述式は3問で60点、つまり300点満点のうち2割を占めるのに、択一とちがって”勘”が効きません。だからこそ、苦手なまま後回しにして、本番直前に慌ててしまう人は少なくありません。
この記事では、まず記述式の全体像(配点と「部分点」の考え方)をつかみ、次に「何を書くか」を決める解き方の手順を整理します。そのうえで、記述式対策の定番であるLEC「出る順」シリーズの問題集を題材に、その中身をレビューします(誌面の写真は同シリーズのもの。最新の2026年版の仕様は、出版社とAmazonの公式情報で確認しています)。他社の問題集との位置づけも添えますので、書店で「どれを選べばいいんだろう」と迷っているあなたの判断材料になればうれしいです。
記述式は「捨てる」と受からない──配点と”部分点”の考え方
最初に、記述式があなたの合否にどれだけ効くのかを、数字で確認しておきましょう。
行政書士試験の記述式は、民法から2問、行政法から1問の計3問。1問20点で、合計60点です。試験は300点満点で、合格には総得点180点以上が必要とされます(このほかに、法令等科目と基礎知識科目それぞれの基準点もクリアする必要があります。配点・基準は年度により変わる場合があるため、最新の要項は一般財団法人 行政書士試験研究センターでご確認ください)。記述式の60点は、その合格点のおよそ3分の1にあたります。
「では択一だけで180点を取ればいいのでは」と思うかもしれません。けれど、択一式と多肢選択式の合計240点の中だけで180点を積み上げるのは、現実にはかなり厳しいといわれています。記述式を捨てると、択一でのわずかなミスがそのまま合否に響いてしまう。これが「捨てない方がいい」といわれる理由です。
”全部完璧に書ける気がしない”あなたへ──部分点の考え方
記述式と聞くと、「40字を3問、すべて完璧に書ききらないと点にならない」と身構えてしまいますよね。でも、そこは安心してください。
記述式の採点は、0点から20点満点までのあいだで部分点がつく方式です。採点基準そのものは公表されていませんが、模範解答どおりでなくても、解答に必要なキーワードや論点を押さえていれば部分点が期待できるといわれます。だから、白紙だけは避けたいのです。
現実的な目標の置き方は、こうです。
- 3問のうち1問は、しっかり書ききって満点近くを狙う
- 残りの2問は、キーワードを拾って部分点を確実に取りにいく
「3問すべて完答」ではなく「1問完答+2問は部分点」。この組み立てなら、ぐっと手が届く目標に見えてこないでしょうか。
なお、記述式の採点の厳しさは、その年の択一の難易度によって変わるといわれます(採点基準は公表されていません)。だからこそ、最後まで何かを書いて部分点を残しておくことが、合否を分ける最後のひと押しになり得ます。
記述式の「解き方」──何を書くかを決める手順
部分点の大切さが分かったところで、次は「では、どう書くのか」です。記述式は、思いつきで書き始めるとうまくいきません。事案からテーマ(論点)を特定し、そのテーマに対応するキーワードを引き出して、40字にまとめる。この順番を体に入れておくと、初見の問題でも手が止まりにくくなります。
| ステップ | やること |
|---|---|
| ① 事案を読む | 「誰と誰が、何を争っているのか」を把握する |
| ② テーマ(論点)を決める | その事案がどの論点の問題なのかを特定する |
| ③ キーワードを引き出す | 条文・判例から、解答の核になる語を取り出す |
| ④ 40字にまとめる | 問われたことだけを、過不足なく言い切る |
特につまずきやすいのが②です。テーマを取り違えると、その後の記述がまるごと見当ちがいになってしまう。だからこそ、択一の学習段階から「この事案のテーマは何か」を意識しておくと、記述の力が自然に育ちます。たとえば近年の本試験では、行政法で抗告訴訟の類型を問う問題、民法で物上代位や対抗要件をめぐる問題などが出題されています(実際の問題文は前掲の行政書士試験研究センターで確認できます)。出題の型に触れておくほど、②のテーマ設定が速くなります。
いつから始める?
記述式は、択一の知識がある程度入っていないと太刀打ちできません。目安としては、択一を一通り回し終える初夏(5月ごろ)から本格化させ、夏にかけてキーワードの精度を上げていくイメージです。学習が進んでいる人は、もっと早く着手して構いません。記述式の勉強法そのものをもっと詳しく知りたい方は、行政書士の記述式の勉強法はこちらで解説しています。
そして、この「解き方の型」を、解説のかたちで丁寧に教えてくれる問題集があります。それが、今回の本題であるLECの一冊です。
2026年版 出る順行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集レビュー
ここからは、LECの出る順シリーズ「記述式・多肢選択式問題集」の中身を、誌面に沿ってレビューします。最新は2026年版(定価1,650円・2026年2月発刊・ISBN 9784844958871・ASIN 4844958879。LEC公式/Amazon)です。なお、この記事の誌面写真は旧年度版の実物ですが、出る順シリーズの構成は各年度版で共通で、最新2026年版の仕様(価格・収録数など)はLEC公式とAmazonで確認しています。
そもそも、記述式・多肢選択式の問題を解くには、5肢択一式以上に正確な知識と理解力が必要とされます。
そのため、多くの受験生が苦手意識を持っていると思います。
特に記述式問題は配点が大きいにも関わらず、つい学習を後回しにして、苦手なまま本番に持ち込んでしまう方も少なくありません。
そんなことにならないよう、記述式が苦手な方は、本書のような記述式対策専門の問題集を早い段階から取り入れておくと安心です。
さて、今回レビューするLECの問題集ですが、個人的に本書の最大のポイントは
- 単なる問題集ではなく、記述式を解くための実践テキストでもある
- 記述式や多肢選択式対策のプロが執筆している
- 解説や部分点の説明などに納得度が高い
上記3点だと考えています。
記述式問題を解くための解法・解説が充実
「記述式問題の傾向と対策」
どのあたりが「記述式を解くための実践テキスト」なのか、本書の構成から説明します。
まず、本編(問題+解答・解説)に入るまえに「記述式問題の傾向と対策」という章があり、ここに解法が説明されています。
解法の見出しだけ挙げると、次のとおり。
- 問題の所在の発見
- 適用法令・制度の発見
- 事例への適用制度等の「当てはめ」
- 表現における注意点
簡潔にまとめられた解法ですが、シンプルだからこそ、問題を解く際に忘れずに活用して欲しいと思います。さきほど整理した「事案→テーマ→キーワード→40字」の手順とも、きれいに重なりますよね。
本編見開きも充実

つづいて本編は、左頁に問題、右頁に各解説の見開きスタイル。
左ページの問題の下には「著者からのひとこと」があり、問題を解くためのヒントになっています。
学習初期は「著者からのひとこと」を見て考え、次第に問題文だけみて解けるようにするとよいでしょう。あなたの理解度に合わせて、ヒントへの頼り方を少しずつ減らしていけます。
右ページの解答・解説も非常に充実しています。
- 解答例
- 配点の目安
- 解答のポイント
- 詳細な解説
- プラスアルファ(関連する基礎知識や発展的知識)
問題を解きっぱなしにせず、こうした解説群を使って復習すれば、あなたの実力アップや記述式テクニックの定着につながります。
以上、本書が記述式・多肢選択式対策に特化した「実践テキスト+問題集」であることがお分かりかと思います。
記述式や多肢選択式対策のプロが執筆している
本書は、記述式・多肢選択式の指導実績が豊富な講師陣によって執筆されています。
著者は嶋崎 英昭(しまざき・ひであき)先生をはじめ、東京リーガルマインドLEC総合研究所 行政書士試験部による編集体制です。長年、行政書士講座などで記述式の指導にあたってきた実績があり、行政書士試験で得点に直結するポイントを押さえた解説に定評があります。
解説や部分点の説明などに納得度が高い
著者陣がまとめた本書の解説や部分点のポイントなどの説明は、非常に分かりやすく納得度が高いです。
個人的な見解ですが、LECの「出る順」シリーズが以前からずっと多くのユーザーに支持されているポイントは、LECの知名度だけではなく、地味ではあるが基本中の基本である「解説などの品質の高さ」にあると思うんですよね。
最近は、「テキスト分冊」「フルカラー」「文字が少なく図表が多い」など、派手なポイントを訴求するテキストが多い風潮がありますが(非難しているわけではありません)、やはり、派手な特長も基本的な品質が担保されていなければ、意味はないですよね。
そういう意味では、LECや伊藤塾はすごいなぁ、と感じています。
充実の掲載問題数
本試験出題科目のオリジナル問題を120問以上掲載(LEC公式)。
こちらは過去問ではなく全てオリジナル問題です。過去問に加えて本書の問題を解くことにより、十分な演習量を確保できます。
また、LEC講師により出題傾向を分析して作られた良問のため、問題を解いていくごとに自然に実力がアップするよう設計されています。
記述式の繰り返し演習に最適な練習用解答用紙が付属

解答用紙が別冊で付いています。
書籍に書き込むと繰り返し演習ができないため、こうした別冊はありがたいです。記述は「書く訓練」が物を言いますから、40字のマスを使ってあなたが何度も手を動かせるのは、地味ですが効いてきます。
基本テキストとのリンク、重要度や難易度等も抜かりなし

このあたりは、実績のある大手資格スクールLECなので、安心して任せられます。あいまいな知識はすぐに基本書へ戻れる導線があると、あなたの復習の効率がまるで変わります。
ほかの記述式問題集と比べてどう?──あなたに合う1冊の選び方
記述式の問題集は、出る順以外にも定番が複数あります。どれも一定の質はあるので、最後は「あなたの今の状態」に合うかどうかで選ぶのが現実的です。ざっくりとした位置づけを表にしました(特徴は各社公式の構成説明によります。価格・刊行年は版によって変わるため、購入時に最新版をご確認ください)。
| 問題集 | 特徴 | こんなあなたに |
|---|---|---|
| 出る順(本書) | 解法解説+オリジナル120問以上。実践テキスト型 | 解き方から体系的に固めたい |
| みんなが欲しかった! | 解法がマニュアル化されていて、はじめてでも入りやすい | 記述がまったく初めて |
| 合格革命 | 基礎編+応用編の2段階構成 | 段階を踏んで演習したい |
| トレーニング問題集(記述式・多肢選択式) | 過去問+オリジナルで問題量が多い | とにかく数をこなしたい |
迷ったときの考え方はシンプルです。「解き方そのものを教わりたい」なら本書(出る順)、はじめての一冊で不安が大きいなら「みんなが欲しかった!」、という具合に、入口の不安レベルで選べば大きく外しません。
教材全体(テキスト・六法・過去問まで含めた組み合わせ)の選び方は、行政書士のテキスト・問題集おすすめランキングでまとめています。また、同じ出る順シリーズには直前期の予想模試もあり、問題集と相性よく使えます(出る順の直前予想模試のレビューはこちら)。
まとめ:あなたが次にやること
LECの「出る順・行政書士シリーズ」記述式・多肢選択式問題集をレビューしました。
あらためて、個人的なおすすめポイントは
- 単なる問題集ではなく、記述式を解くための実践テキストでもある
- 記述式や多肢選択式対策のプロが執筆している
- 解説や部分点の説明などに納得度が高い
という3点になります。
最後に、記述式を得点源にするための道筋を、手順にまとめておきます。
- まず択一を一通り固める(記述は択一の知識があってこそ)
- 本書のような記述式問題集で「解き方の型」を入れる
- 別冊の解答用紙で、40字で書く訓練を繰り返す
- 本番では1問書ききり+2問は部分点。白紙にしない
「本気で実力を付けたい方」にとっては、出る順シリーズが独学用教材の有力候補になると思います。気になった方は、購入前にAmazonや楽天で最新版かどうかと価格をあわせて確認してみてください。書店などで教材をチェックする際にも、この記事が参考になればうれしいです。
独学に不安があるなら、講義つきの通信講座も選択肢になります(行政書士の通信講座おすすめはこちら)。過去問題集の選び方は行政書士の過去問おすすめでまとめています。
