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社労士の年末調整は税理士法違反です!
企業に勤めている会社員は、納税についてあまり気にする機会はありません。
それは自分の代わりに会社が納税をしてくれるのが理由ですね。
独立開業して事務所を構えている事業主は、税金に関する知識を得ておく必要があります。
年末調整とは、従業員の給与や賞与から所得税を徴収する源泉徴収と本来徴収すべき一年間の所得税を再計算し、過不足金額を調整する手続きです。
年末調整が終わると、会社は働いている従業員に源泉徴収票を渡さないといけません。
複雑な手続きですので、年末調整を専門家に代理しようと考えている方はいます。
しかし、社労士(社会保険労務士)が年末調整を行うのは税理士法違反です。
一昔前までは、年末調整が社労士の仕事なのか税理士の仕事なのか曖昧でした。
実際のところ業務に携わっている社労士は少なからずいましたが、2016年の業務範囲の厳格化で税理士の業務範囲だと明らかにされています。
全国社会保険労務士会連合会及び日本税理士会連合会は、話し合いの末に業務の範囲に関する協議を次のように決定しました。
- 付随業務に関して疑義が生じた場合は、その都度、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で協議の上、解決を図ることとする。
- なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。
現在では年末調整が税理士業務だと明言されていますので、社労士の資格を持つ方が代行すると税理士違反として取り扱われます。
税理士の独占業務
税理士とは税金に関するプロフェッショナルで、税理士法に定める国家資格です。
以下では、税理士の資格を持つ人しかできない独占業務についてまとめました。
税理士の独占業務 | |
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税務申告の代理 | 会社や個人事業主の代わりに税務署への税務申告や届出書の提出代行を行う |
税務書類の作成 | 納税者に代わって税務署に申告する税金の税務書類を作成する |
税務相談 | 適正な申告方法や税金対策など、個人や法人の税金に関する相談に応じる |
税理士が取り扱える税務書類は、「個人事業等の決算書の作成」「所得税・消費税の確定申告書の作成」「中間決算書の作成」「法定調書の作成」など様々!
更に独占業務に付随する会計業務(会社の財務書類の作成・会計帳簿の記帳代行)も同時に手掛けています。
適切な節税で会社にどのくらいお金を残せるのか経営に大きく影響しますので、経営者にとって信頼できる税理士はなくてはならない存在です。
社労士の独占業務
社労士は労務管理の専門家で、税理士と同じように独占業務を持っています。
社労士の独占業務として認められているのは次の2つです。
- 労働・社会保険関連の申請書の作成、手続き代行:労働保険や社会保険に関わる全ての手続き(申請書の作成や提出代行)を雇用主の代わりに行う
- 規程及び備え付け帳簿等の作成:会社を経営する上で大事な「就業規則」「賃金規定」「労働者名簿」などの書類を作成する
上記のうち、①を「1号業務」といい、②を「2号業務」といいます。これらが社労士の独占業務とされているのです。
近年では新型コロナウイルスの流行により、雇用調整助成金などの各種助成金の申請業務にも社労士が欠かせない存在になりました。
その他、社労士しかできない独占業務ではありませんが、人材育成や賃金、労務管理に関するコンサルティングも重要な役割ですよ。
前述のとおり、税理士の業務範囲の年末調整については、社労士は実施できません。
逆に社労士の独占業務の労働保険・社会保険関連手続きは、税理士の資格を持っていても行うことはできません。
給与計算の代行は社労士でも税理士でもできる!
社労士の年末調整は税理士法違反に当てはまりますが、給与計算の代行はどちらの資格を持つ方でもできます。
給与の計算方法は多種多様で、従業員の規模数や会社の状況で変化する傾向あり!
従業員の少ない小規模の会社であればExcel(エクセル)を使って給与計算できますが、社員数が増えると業務量が多くなって対応できなくなります。
給与計算ソフトを導入するのは選択肢の一つでも、計算間違いなどのリスクを伴う点には注意しないといけません。
そこで、社労士や税理士などの専門家に給与計算の代行を依頼するのが効果的です。
社労士に依頼する方法と税理士に依頼する方法で、一体何が変わるのか見ていきましょう。
- 社労士に給与計算を依頼する方法:従業員の雇用時や退職時の雇用保険などの手続きを含めて依頼できる
- 税理士に給与計算を依頼する方法:給与計算や年末調整をワンセットでスムーズに依頼できる
どちらの資格も書類作成や手続き代行のプロフェッショナルですので、自分で行うよりも確実に給与計算ができます。
社労士に給与計算を任せるメリット
顧客側の立場に立ってみると、給与計算と年末調整の依頼先を分けるのは煩わしいですよね。
年末調整は日々の給与データを把握する者が行うと円滑に手続きを進められますので、税理士に給与計算を任せる方は少なくありません。
法定調書や合計表など税務署に提出する書類の作成も必須ですので、税理士がまとめて担うべき業務だと捉えられます。
しかし、社労士に給与計算を任せるメリットが何もないわけではありません。
社労士は年末調整ができませんが、それでも給与計算を代行するメリットは次の2つです。
- 労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎の手続きを一括で任せられる
- 給与データから未払残業代や長時間労働などの課題を抽出して早期解決を図ることができる
社労士にお願いすれば、毎月の給与計算に加えて社会保険関係の手続きを一括で依頼できます。
更に給与計算から労務課題を抽出して企業が抱えている問題を早期に解決するのは社労士の専門分野で、税金のプロの税理士にお願いすることはできません。
つまり、社労士は年末調整に携わることができませんが、労務管理のプロフェッショナルとして企業の給与計算業務をこなせるわけです。
ただし、繰り返しになりますが、「社労士は税理士の独占業務ができない」「税理士は社労士の独占業務ができない」といったデメリットがあります。
双方の特徴をよく把握したうえで、給与計算を社労士に任せるべきなのか税理士に依頼すべきなのか決めて欲しいと思います。
社労士と税理士の業際問題
社労士と税理士の業際問題が一体何を指しているのか簡単にまとめてみました。
- 社労士が依頼主の給与計算の中で所得税の年末調整を行うのは税理士法違反に当たると日本税理士会連合会が主張している
- 税理士の独占業務に該当するのは事実でも、日本税理士会連合会の主張自体が税理士の使命に反する
- 日本税理士会連合会は都合良く税理士の使命を知らないフリをして、税理士の独占業務を既得権益として守りたいと主張している
この業際問題は何も年末調整に限った話ではありません。
社会保険関連の手続きや雇用関係助成金申請支援など、社労士と税理士のグレーゾーンは多岐に渡ります。
こう聞くと、「社労士と税理士はお互いの業際を意識していがみ合っているのでは?」とイメージする方は少なくありません。
しかし、「自分たちが○○○の業務を行うべきだ」と他士業を敵対視するのはNGで、社労士と税理士が手を取り合って支援することが結果的に顧客のためになります。
まとめ
以上のように、社労士と税理士は独占業務に違いがあります。
年末調整は税理士の業務範囲ですので、社労士が行うと税理士法違反に当てはまりますので注意しないといけません。
社労士の年末調整はNGでも、給与計算の代行は認められています。
社労士に給与計算を任せるに当たり、「社会保険関係の手続きを一括で依頼できる」「労務課題の抽出で企業が抱えている問題を解決できる」といったメリットがありますので、税理士ではなく社労士に依頼するのも選択肢の一つです。
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