この記事では、宅建試験の科目「税・その他」について説明します。
宅建試験においては、「宅建業法」「権利関係(民法等)」「法令上の制限」「税その他」、計4分野から問われます。
この4科目の中で、「権利関係(民法等)」「法令上の制限」「宅建業法」の主要3科目以外のものを集めた科目が「税・その他」です。
「その他」という言葉が入っているとおり、バリエーション豊かというか、雑多な分野が集められた科目です。
宅建業に従事していて登録講習を受講・終了された方が受験を免除される科目(免除科目)も、このなかに含まれています。
雑多な分野が集められた科目と書いたばかりですが、試験に出題される以上、どれも大切な分野であることは間違いありません。
とはいえ、主要3科目の学習もありますから、税・その他に対しては、できるだけ効率的な勉強をしたいと思うのが、本心だと思います。
それでは、どのようにすれば、効率的な学習ができるのでしょうか?
この記事では、税・その他の概要や試験対策、勉強方法、攻略のコツについてお伝えしたいと思います。
ぜひ、税・その他の科目を得点源にしてください!
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税・その他の分野 概要
税・その他は、大きく「税」と「税以外」に分けられる。
税・その他の科目は、大きく「税」と「税以外」に分けられます。
まずは、その全体像を見てみましょう。
- 国税:所得税、印紙税、登録免許税、贈与税
- 地方税:不動産取得税、固定資産税
●土地価格に関する法律
- 不動産鑑定評価基準
- 地価公示法
●以下、いわゆる5点免除科目
- 住宅金融支援機構法
- 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
- 不動産に関する統計
- 土地
- 建物
宅建業に従事していて、登録講習を受けて修了した方が受験を免除される科目のこと。
宅建の5点免除についての詳細は、下記記事を参考にしてみてください。
つづいて、それぞれの分野の概要を説明します。
「税」に関する法律の概要
所得税
人が儲けたとき、つまり「所得」を得たときに課税されるのが所得税です。
所得税は国が課税する国税です。
所得には、「給与所得」「利子所得」など、様々な種類がありますが、宅建の試験において出題されやすい「譲渡所得」に関する事項です。
家や土地などの不動産を売って得た所得は、譲渡所得になります。
印紙税
一定の条件を充たした売買契約書などには印紙を貼ることが義務付けられています。
印紙税とは、印紙を貼ることにより、国に納税を行う国税になります。
印紙税の課税額(印紙の金額)は、契約金額などによって決まります。
登録免許税
不動産を取得すると、登記などを行います。登録免許税は、登記などに必要な国税です。
贈与税
贈与税は、財産を取得した人に課される国税です。
不動産取得税
不動産の取得に課される地方税(道府県税)です。
支払先は、不動産が存在する都道府県です。たとえば、東京の人が京都の土地を購入した場合、京都府に不動産取得税を納めます。
不動産取得税は、取得の有償・無償などに関係なく、「不動産の所有権が発生」した場合に課せられます。
固定資産税
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を保有している場合、その固定資産が所在する市町村に支払う地方税(市町村税)です。
「税以外」に関する分野の概要
不動産鑑定評価基準
不動産鑑定評基準は、専門家(不動産鑑定士)の方が不動産について評価を行う際に準拠すべきルールのことです。
地価公示法
地価公示とは、毎年1回、標準地の正常価格を公示することです。
地価公示の存在があることで、一般の土地の取引価格に指標を与えるなど、適性な地価の形成に寄与しています。
住宅金融支援機構
住宅金融支援機構の目的は、その業務によって、住宅の建設などに必要な資金を円滑に、および効率的に融通を図ること。その結果として、国民生活の安定と社会福祉の増進を実現することです。
具体的には、銀行などの金融機関が安心して消費者に長期固定金利のローンを提供できるようにするため、
住宅金融支援機構が、住宅ローンの債権を銀行から買い取り、証券化して投資家の投資を募る役割を担います。
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
景品表示法では、不当な景品や広告に関する規制が定められています。
なお、景品表示法は一般的な法律(不動産に特化していない)です。
そのため、不動産業界には、業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。
不動産に関する統計
国土交通省や財務省の統計資料・白書から出題されます。最近は、地価公示統計、住宅着工統計、法人企業統計、土地白書などから出題されています。
土地・建物
土地や建物の基本的な知識が問われます。
つづいて、宅建試験における税・その他の出題数について見ていきましょう。
税・その他の出題数は?
まず、宅建試験の分野別出題数を確認します。
- 権利関係 14問
- 法令上の制限 8問
- 宅建業法 20問
- 税・その他 8問
以上のように、宅建試験全50問中、税・その他は8問出題されます。
内訳は以下のとおりです。
- 国税 1問
- 地方税 1問
- 不動産鑑定評価基準 または 地価公示法 1問
- 住宅金融支援機構法 1問
- 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法) 1問
- 不動産に関する統計 1問
- 土地 1問
- 建物 1問
以上が近年の出題状況です。
宅建「税・その他」の試験対策
宅建試験の税・その他は、法律・分野ごとに対策が異なります。
以下、それぞれの法律・分野について、試験対策上の留意点を記します。
国税
本試験では、国税から1問出題されます。
毎年、所得税・印紙税・登録免許税・贈与税のいずれかが出題されます。
所得税・贈与税は難解ですので、ポイントを絞った学習が必要です。
逆に、印紙税・登録免許税はテキストと過去問をしっかり学習しておけば、対応しやすくなります。
なお、どの法律も基本を押さえたら、「住宅に関して税を軽減する各種特例」を中心に学習しましょう。
宅建試験の税法は、特例が頻出です。この点は、地方税も同様です。
地方税
本試験では、地方税から1問出題されます。
不動産取得税と固定資産税のいずれかが出題されます。
出題傾向を見ると、過去10年間、見事に交互に出題されています。
ちなみに令和元年度は固定資産税でしたので、「令和2年は不動産取得税だ」・・・とヤマを張るのはやめて、どちらも準備しておきましょう。
地方税は国税に比べ対処しやすく、きちんと準備さえすれば、得点源となります。
不動産鑑定評価基準 または 地価公示法
本試験では1問の出題です。
過去10年間の出題を確認すると、毎年交互に出題される傾向がみられます。ただし、3年連続で地価公示法が出題されたケースもあり、決めつける(ヤマを張る)のは危険です。
地価公示法の方が明らかに取り組みやすいので、地価公示法の出題を願っている受験生も多いと思いますが、
どちらが出ても、すべての受験生の条件は同じです。
少なくとも、地価公示法が出題された場合は、取りこぼしのないようにしましょう。
住宅金融支援機構法
本試験では1問出題されます。
証券化支援業務を中心とする機構の業務内容、および、フラット35が頻出です。
取り組みやすい科目ですので、確実に1点を取るつもりで学習しましょう。
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
本試験では1問出題されます。
業界の自主ルールである「不動産の表示に関する、公正競争規約」からの出題がほとんどです。
こちらも取り組みやすい科目です。
不動産に関する統計
本試験では1問出題されます。
ほとんどの市販のテキストでは、出版社ホームページなどで、試験直前に最新データ(予想データ)などを公開する予定です。
出題可能性が高い統計を中心に、把握しておきましょう。
土地・建物
土地・建物で、それぞれ1問ずつ出題されます。
どちらも過去に類似事例のない新傾向の出題がされる年度も多く、取り組みにくい科目です。
ただ、常識的な判断で正答できる問題が出題される場合もあります。
テキストや過去問の範囲で学習し、深入りしないようにしましょう。
宅建「税・その他」 攻略法
税の特例の考え方
前述のとおり、税法では「住宅に関して税を軽減する各種特例」に関する出題が中心とないます。
その税の特例ですが、大きく3種類あります。それは
課税標準の特例
軽減税率
税額控除
の3つです。
この3つを理解するためには、税額の計算方法を理解しておく必要があります。
税額の計算は
課税標準 × 税率 = 税額
となります。
税金を計算するベースとなる金額(課税標準)を最初に明らかにし、それに税率を乗ずることにより、納める税額が決定します。
つまり、各種特例は、「課税標準」「税率」「税額」のいずれかを減ずるもの(3タイプ)に分類されるのです。
以上を理解したうえで、テキストに出てくる各種特例が、どのタイプに該当するのかを確認することで、特例に対する理解が深まることになります。
メリハリをつけた学習が必要
税・その他の科目では、それぞれの試験対策の項で見たとおり、
「取り組みやすい分野」と「取り組みにくい分野」の差
がはっきりしています。
これは様々な分野からの寄せ集め科目である以上、仕方がないと割り切るしかありません。
「今、取り組んでいる法律・分野の勉強法は、この方法がベストなのか?」
常に問題意識を持ち、柔軟に学習スタイルを変えることが、効率的な学習につながります。
毎日、条文にあたる
税・その他の分野で学ぶ法律は、税法を始め専門的な法令ばかり。
そのため、初心者の方にとては、とっつきにくいイメージがあるかと思います。
しかし、焦らず毎日、少しずつ学習することが大事。最初は理解できなくても、何度か目にするうちにイメージが掴めるようになります。
税法は暗記中心ですので、試験直前に大きく伸びることも多いのです。
完全に理解しようと焦らない
前項とも関連するのですが、特に勉強を開始した初期には
「言葉の意味が分からない訳ではないが、どうもしっくりイメージできない」
ということが起こります。
そんな場合でも、決して焦らないでください。前提知識のない初心者の場合、1回目の学習では、そのような状況がむしろ当たり前です。
テキストを毎日読むうちに、難解な概念も少しずつイメージできるようになります。
最初のうちは、多少しっくりこなくても、どんどん先に進むのが重要です。
焦ることなく、着実に学習を進めていくのが吉です。
判例に時間を使い過ぎない
最近は宅建試験でも判例について問われることが多くなっています。
しかし、宅建試験は難解な判例問題が解けなくても、基本的な問題を取りこぼしさえしなければ合格できる試験です。
基本的な論点をしっかり押さえたうえで、判例対策をするのはアリですが、効率的に合格したい場合は、まずは基本事項の習得を優先しましょう。
宅建は実務で判例を扱わない
確かに、難関の法律資格ほど判例は重要です。しかし、それは実務で判例を使うからです。
しかし、宅建の実務では判例は扱いません。
「必ず満点を取る!」と、時間を贅沢に使って学習する方以外は、そんな難問対策よりも、出題の7~8割を占める基本的な問題を確実に押さえるほうが重要です。
「不動産に関する統計」と「土地・建物」の勉強は効率化できる!
メリハリをつけた学習という意味では、「不動産に関する統計」と「土地・建物」は学習時間を絞り、その分、他の科目に注力した方がよいでしょう。
統計問題は、最新の資料・データからの出題なので、過去問対策はほぼ不要(詳しくは後述します)。
土地・建物は、新傾向の問題や常識的な判断で解答できる問題も多いですから、過去問をやりこむのは非効率です。
この2項目については、ポイントを押さえた学習で効率化を図りましょう。
宅建「税・その他」 短期合格勉強法
私が実践した、税・その他の短期合格勉強法は、次のとおりです。
宅建試験の税・その他 短期合格勉強法
①最初にテキストを、ざっと読む
②テキストを読みながら、論点ごとに確認問題を解く(例:「所得税」の項を読み終わったら、「所得税」の確認問題を解いてみる)
③テキスト・確認問題を一回転したら、続いて10年分の過去問(「税・その他」の部分)のみを解く。
④解いた過去問を採点。不正解な過去問について、テキストの該当ページを確認して復習する
⑤正解の過去問についても、テキストに戻り、軽めに復習する
⑥過去10年分の過去問の1回目が完了したら、続いて、間違えた過去問だけを解く(過去問2回目)。
⑦ ⑥について、過去問全てが正解となるまで何回もリピート
以上の①~⑦の流れで、過去10年間に出題された論点をすべて押さえたことになります。
統計問題は、過去問対策は、ほぼ不要
「不動産に関する統計」の問題は、最新の資料・データから出題されるため、過去問対策は意味がありません。
前述のとおり、ほとんどの市販のテキストでは、出版社ホームページなどで、試験直前に最新データ(予想データ)などを公開しますから、直前にしっかり覚えましょう。
過去問は、「どのようなデータが出題されているのか」傾向を把握するために、パラパラ見る程度で充分です。
税・その他の分野の勉強時間は?
宅建の学習に全体で300時間を費やす場合、「税・その他」の勉強時間は50時間程度が目安となります。
全科目の勉強時間の配分は以下のとおり。
宅建業法 | 100時間 |
---|---|
法令上の制限 | 50時間 |
権利関係(民法等) | 100時間 |
税・その他 | 50時間 |
宅建業法と権利関係の勉強時間が長めになりますが、だからといって「税・その他は重要ではない」ということはありません。
むしろ、勉強時間の目安が短い科目ほど、短時間に要領よく、効率的な学習が求められます。
また、宅建業法と権利関係が重要だからといって、他の科目が手薄になるような失敗だけは避けてください。
※宅建試験の勉強時間について詳しくは、次の記事を参考にしてください。
法改正のポイントが出題されやすい
宅建試験は、試験年度の4月1日現在の法令から出題されます。
直近の改正点の出題を避ける国家試験もありますが、宅建試験の場合、むしろ「改正点は出題されやすいポイント」という特色があります。
考えてみれば当たり前のことで、「法律の改正点を知らないと、顧客に適切な説明ができない」からなんですね。
特に税法は、毎年何らかの改正がありますので、法改正部分は非情に重要なポイントとなります。
まとめ
ここまで、宅建試験の科目「税・その他」について詳しく見てきました。
様々な分野の寄せ集め的な科目のため、取り組み方が難しいとされる「税・その他」ですが、ぜひこの記事の内容を参考にして栄冠を勝ち取って頂きたいと思います。
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