今回は、行政書士の年収に関する記事です。
行政書士試験の受験生にとって、とても気になる情報ですよね。
巷では、
「行政書士の平均年収は500~600万ぐらい!」
などと言われることがありますが、実は、行政書士の平均年収に関して公式に調査が行われたことはありません。
そこで、この記事では、日本行政書士会連合会(日行連)や厚生労働省・国税庁などのデータを元に、推計したデータをお伝えしたいと思います。
さらに、実際に行政書士になった後、
「どの分野の仕事をすれば、年収がアップするのか?」
という観点から、おすすめの業務分野についても説明したいと思います。
ぜひ参考にしてくださいね!
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目次
行政書士の年収の本音~平均年収のカラクリ!
前述のとおり、行政書士の平均年収は約500~600万円とされています。
しかし、この数字は2,000万円~3,000万円以上稼ぐ層から、ほとんど活動していない層(副業、登録だけ継続している高齢者など)までのすべてを含んでいます。
一般に「平均年収が500~600万円」というと、実際に年収として、500~600万円ぐらいもらっている方が一番多いのだろう、とイメージしますよね。
しかし、実際は違うのです。
日本行政書士会連合会が、平成30年に4,338人の会員に行った統計データによると、
売上500万円未満が、全体の78.7%
と驚くべき結果が出ています。
しかもこれ、売上のデータですよ・・・
売上が500万円とした場合、仮に自宅事務所であっても、交通費や消耗品などの経費は必要ですから、年収は450万円ぐらいではないでしょうか?
弁護士や公認会計士、税理士などの難関士業に比べると遠く届かないどころか、一般の会社に就職している社会人のほうが多くもらっている方も多いはずです。これでは、なんのために独立・開業したのかわからないですよね。
話は戻りますが、年収450万円程度と思えるのに何故、平均年収が約500~600万円と言われているのかというと、数は少ないながら、売上が3,000万円以上、人によっては1億円以上稼いでいる人がいるからなのです。
つまり、8割近くの行政書士が500万円未満の年収であるにも関わらず、一部の高所得者が平均年収を吊り上げているという構図なんですね。
統計データから見る売上と年収
それでは、その4,338人の会員データを見てみましょう。
日本行政書士会連合会の出版する「月刊日本行政」2018年10月号に、そのデータが掲載されています。
年間売上高 | 割合(平成30年) | 割合(平成25年) |
---|---|---|
500万円未満 | 78.7% | 78.0% |
1,000万円未満 | 11.3% | 11.4% |
2,000万円未満 | 5.3% | 5.0% |
3,000万円未満 | 1.8% | 1.9% |
4,000万円未満 | 0.8% | 0.9% |
5,000万円未満 | 0.5% | 0.6% |
1億円未満 | 0.8% | 0.7% |
1億円以上 | 0.3% | 0.3% |
※「月刊日本行政」2018年10月号は、日本行政書士会連合会WebサイトでPDF版を見ることができます。
前述のとおり、売上から経費を引いたものが年収となります。
自宅で一人営業であれば経費の額も小さいでしょうが、売上が2~3,000万を超えるようになると、使用人行政書士や補助者、事務員などがいるでしょうから、売上の30%以上が経費になってしまうことも珍しくありません。
複数人の行政書士で事務所を運営している場合は、売上から経費を引いた金額を人数割りするので、共同事務所の場合は代表の先生を除き、一人当たりの年収が1,000万円超えることは少ないのではないでしょうか?
「行政書士は、やめとけ!」って本当?
前項まで読んで、ガッカリされた行政書士受験生がいるかも知れません。
とはいえ、実際に行政書士として食べて行けるかどうかは、本人の努力や能力、そして運次第です。
- 「行政書士は、 やめたほうがいい」
第三者がそんなことを言うかも知れませんが、自分の人生を決めるのは自分自身のはず。確かに雇われのままだと大きな年収アップは難しいかも知れませんが、
- 独立する
- ダブルライセンスを狙う
- 稼げる分野に特化する
など、知恵を使えば、行政書士で稼ぐ手段は数多くあります。以下、様々なケースの平均年収を見ていきましょう。
年齢別の平均年収はどのくらい?
ここでは、行政書士の年齢別で平均月額給与と平均年収の推計を一覧にしましたので見ていきましょう。
20歳~24歳:21.4万円
25歳~29歳:26.6万円
30歳~34歳:29.3万円
35歳~39歳:33.4万円
40歳~44歳:37.5万円
45歳~49歳:42.0万円
50歳~54歳:45.0万円
55歳~59歳:44.6万円
60歳~65歳:30.4万円
20歳~24歳:342万円
25歳~29歳:426万円
30歳~34歳:468万円
35歳~39歳:534万円
40歳~44歳:600万円
45歳~49歳:672万円
50歳~54歳:720万円
55歳~59歳:714万円
60歳~65歳:486万円
年齢を重ねて経験を積むほど、平均年収が上がっていくのは行政書士だけではなく他の職種や業種も一緒です。
以下では行政書士の働き方や学歴、男女別で給料や年収の目安を紹介していますので、是非一度参考にしてみてください。
※なお、本項以降のデータは、日本行政書士会連合会(日行連)や厚生労働省・国税庁などのデータを元に独自集計したものですので、あくまでご参考程度と考えて頂ければと思います。
独立開業した行政書士の年収
独立開業している行政書士の年収はピンキリです。
行政書士法人など大きな事務所を運営している代表の先生であれば、年収2,000万円~3,000万円、人によっては5,000万円以上をもらっている方もいるでしょう(かなり幅があると思われます)。
しかし、独立開業すれば儲かるのではなく、案件を獲得できなければ意味がありません。
自分の好きなように業務をこなせるのが独立の大きなメリットですが、満足のいく給料を稼げるようになるまでは時間がかかります。
もちろん、行政書士は独立開業系の国家資格ですので、将来的に事務所を持てるように努力したいですね。
雇われの行政書士の年収
雇われている行政書士と独立開業した行政書士とでは、下記のように給料や年収に違いがあります。
- 雇われている行政書士は約200万円~600万円
- 独立開業した行政書士は約200万円~3,000万円
雇われている行政書士とは、行政書士事務所で働く使用人行政書士や企業の法務部などで活躍する行政書士試験合格者のことです。
行政書士の資格登録を活かして、企業に勤務することはできません。あくまで、行政書士の試験勉強で培った知識を使いながら、法規に関連する業務を行うことになります。
もっとも企業で働くサラリーマンでありながら行政書士登録をして、副業で行政書士を行う分には問題ありません(企業が副業を許可している場合に限りますが)。
雇われて働く行政書士の場合、行政書士の資格を持っていても最初から高年収は期待できません。
その代わりに、年齢を重ねてスキルや経験を積めば、年収600万円くらいはもらえます。
一方で独立開業した行政書士は成功すれば高年収を得られますが、高いビジネススキルが要求されると心得ておくべきです。
新人1年目の行政書士の年収
行政書士の新人1年目は、勤務行政書士でも独立開業でも年収は低くなっています。
「たったこれだけしかもらえないの?」と給料に不満を抱く行政書士は少なくありません。
上記の表では21歳~24歳の行政書士の平均年収が342万円と記載しましたが、あくまでも平均ですのでもっと低くなる可能性はありますね。
新人1年目から高年収を得られないのは仕方がありませんので、まずは行政書士としての知識やスキルをしっかりと得る努力をしてみてください。
高卒の行政書士の年収
「中卒や高卒では行政書士になることができない」とイメージしている方はいませんか?
しかし、行政書士試験に学歴の制限はありませんので、中卒でも高卒でも高学歴の人と同じように受験できます。
試験をパスできる程度の知識を持っていれば、学歴に関係なく行政書士として働けるわけです。
高卒の行政書士の給料や年収に関するデータは特に出ていませんが、新人1年目と同じように最初は低く設定されています。
スタートは200万円~300万円くらいの年収だと想定できますので、行政書士としての道はこれからだと考えて努力を積み重ねましょう。
未経験の行政書士の年収
行政書士資格取得直後は当然のように、誰でも未経験です。
行政書士法人や法務事務所で働くに当たって未経験で採用される形になりますので、給料や年収はそこまで高くありません。
とは言え、下記のように未経験者を募集している行政書士の求人はあります。
- 未経験から始められる
- 未経験でもサポートします
- 未経験者大歓迎
長期キャリアを形成すれば少しずつ給料や年収は上がっていきますので、まずは行政書士としての仕事に慣れることから始めましょう。
男性と女性で行政書士の給料や年収は変わる?
行政書士は男性と女性で給料や年収が変わるのかどうか、疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
そこで、性別でもらえる平均年収が変わるのか、年齢別のデータを一覧にまとめてみました。
20歳~24歳:381.8万円~
25歳~29歳:435.0万円~
30歳~34歳:467.6万円~567.6万円
35歳~39歳:483.4万円~587.4万円
40歳~44歳:539.0万円~660.0万円
20歳~24歳:312.0万円~342.0万円
25歳~29歳:376.0万円~373.5万円
30歳~34歳:368.0万円~428.3万円
35歳~39歳:430.0万円~443.2万円
40歳~44歳:479.0万円~498.0万円
男性と比較すると女性の行政書士は年収が下がりますが、女性でも十分に活躍できる分野ですので、アグレッシブにチャレンジしてみてください。
行政書士で1,000万円の年収を稼ぐのは難しい?
結論から言うと、行政書士として年収1,000万円をもらうのは不可能ではありません。
使用人行政書士や企業勤務では現実的に厳しいのですが、独立開業をして年収1,000万円や2,000万円をもらっている行政書士はたくさんいます。
年収1,000万円プレーヤーになるには、「独立開業していかに効率良く顧客を獲得できるか?」といった点を押さえておくべきです。
行政書士としてのスキルや能力がどれだけ高くても、それを発揮できなければ仕事をこなすことも年収を上げることもできませんので、インターネットによる宣伝やダブルライセンスで顧客を確保する努力をしましょう。
コツコツと信用を積み上げることが年収アップのコツ
行政書士は気軽に法律の相談できる「身近な法の専門家」と言われるだけあって、書類作成や許認可、会社(法人)設立などの実務の仕事は単価も安いです。
しかし、どんな仕事もキッチリ責任をもって仕上げることを続けていれば、顧客が顧客を呼び、それが年収アップにつながるはずです。
さらに信用さえできれば、次項で説明するような報酬額の改訂も現実味を帯びてきます。
行政書士の報酬額は自分で決めることが可能
年収をアップさせるためには、適正な報酬額を設定することは重要です。
行政書士の場合は、報酬額を各人が自由に設定できます。
とはいえ、世間相場というものがありますので、あまり相場から乖離した報酬を設定しても、よほど差別化出来ている行政書士以外には仕事は来ませんよね。
以下は、日本行政書士会連合会が実施した報酬額統計調査(H27年度)の結果ですので、報酬額を設定する際の参考にしてみてください。
建設業許可申請:平均118,204円
経営状況分析申請:平均32,485円
経営規模等評価申請及び総合評定値請求申請:平均56,983円
建設業変更届出:平均42,170円
建設工事紛争処理申請:平均59,960円
農地法第3条許可申請:平均50,236円
農地法第4条許可申請:平均80,114円
農地法第5条許可申請:平均103,623円
農用地除外申出:平均94,967円
開発行為許可申請:平均434,437円
河川関係許可申請:平均151,784円
宅地建物取引業者免許申請:平均107,195円
宅地建物取引士資格登録申請:平均22,709円
資力確保措置の状況についての届出:平均22,114円
建築士事務所登録申請:平均62,398円
測量業者登録申請:平均87,579円
道路位置指定申請:平均297,380円
マンション管理業者登録申請:平均73,185円
屋外広告物設置許可申請:平均56,050円
特殊車両通行許可申請:平均49,995円
特定旅客自動車運送事業認可申請:平均102,143円
自動車整備事業指定申請:平均14,500円
旅行業登録申請:平均150,435円
風俗営業許可申請:平均158,484円
古物商許可申請:平均49,713円参考:https://www.gyosei.or.jp/wp-content/uploads/2016/03/12ad4f65cba6f63c3518bf14b58fdd64.pdf
※行政書士の報酬額や報酬額設定のポイントについては、下記の記事を参考にしてください。
稼げる分野はここだ!
建設業
建設業は小規模事業者も多く、全国に多くの顧客がいます。
また、建設業ではスポット契約で許可取得を請け負うと、毎年許可の更新が必要なため、顧問契約に繋がりやすい、というメリットがあります。
このように、建設業の分野で顧客を多く持つと、経営が安定します。
一方で、従来から行政書士の主要分野であり、新規参入の難易度は高めです。
入管業務(外国人関連)
外国人労働者や留学生は増加傾向にあるため、入管(入国管理局)に関わる業務は将来性のあるといえます。具体的には、外国人が日本国内で就労・居住する資格の有無を審査してもらう在留資格認定証明書の交付申請や、在留資格を新しい物に変更するための在留資格変更許可申請など。永住許可申請なども、ますますニーズが高まってくるでしょう。
※行政書士の入管関連業務(外国人向けビザの申請等)について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
産廃
産業廃棄物の収集・運搬・処理に関わる許可取得の業務ですが、たとえば、A県で産廃物を積んでB県で下すなどの場合、A県とB県のいずれにおいても許可が必要であり、仕事の件数が増えやすいです。
また、有産業廃棄物の品目が変更になるなど、法改正も多い分野であり、顧問契約やコンサルティング業務へ繋げることもできる分野です。
風俗営業
風俗営業許可が必要になるのはキャバクラ、バー、ゲームセンター、パチンコなどの業種になります。
風俗営業許可の取得には、関連法令や規制内容に精通するだけでなく、図面作成や周辺調査なども必要なため、難易度が高く、高額な収入が期待できます。
また、建設業ほどレッドオーシャンではないため、業界内で信頼関係を作ることで、安定的に経営している行政書士も多くいます。
相続
相続の分野では、下記のとおり、行政書士に出来ることは様々な種類があります。
- 遺言書の作成
- 遺言の執行や執行者就任の手続き
- 遺産分割協議書の作成
- 相続人の調査や相続関係図の作成
- 戸籍の取得
- 名義変更に関する手続き
一方、登記に関わること、紛争時の代理人などの業務は司法書士・弁護士の独占業務であり、行政書士には行うことはできません。
そのため、他士業とチームで連携して動くことも多く、連携がうまく行けば、定期的に仕事が発生するようになります。
ドローン・民泊
その他、将来性のあるものとして、ドローン使用許可、民泊設置許可などがあります。
ただ民泊のほうは、インバウンドの拡大を踏まえて人気でしたが、新型感染症拡大により、しばらく様子見といった状況です。
ダブルライセンスの年収
行政書士だけではなく、他の資格も同時に取得するダブルライセンスを目指す方は増えています。
資格の種類によって変わりますので一概には説明できませんが、ダブルライセンスのメリットをいくつか挙げてみました。
- 社会保険労務士など同じ法律関係の資格を取得すれば士業としての活動に弾みが付く
- 足りない部分を補って幅広い分野の仕事や業務をこなせるようになる
- 独立開業した時に自分のスキルをよりアピールして営業しやすい
できる仕事の選択肢やスキルが上がるため、ダブルライセンスを持つ行政書士は必然的に給料や年収が高くなります。
1年目から高い年収をもらうのは至難の業でも、数年間の歳月をかけてダブルライセンスになって年収を数百万円以上アップさせた例は決して少なくありません。
※行政書士のダブルライセンスについて詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
https://gyousei-fight.com/gyousei-w-license/
行政書士の廃業率は?
ここまで、様々なケースの平均年収や年収目安を見てきました。この記事の最後に、「行政書士の廃業率」について確認しておきましょう。
平均年収も気になりますが、「実際に食べていけずに廃業する方がどれぐらいいるのか」ということも大いに気になりますよね。
現在、行政書士の登録者数は4万人台です。一方、行政書士の廃業率については、正式な統計データはありません。
ただ、2017年の5月から2018年の4月までに行政書士登録を抹消した人数は1,461名となっています。このうち「本当は行政書士を続けたいが、食べていけないから」という理由で廃業された方の割合は分かりませんが、年間1,500人程度が登録を抹消する、という事実は知っておいてもよいでしょう。
※行政書士の廃業率や、行政書士開業後に廃業しない方法などについては、下記の記事をチェックしてみてください。
まとめ
以上のように、行政書士がもらえる給料や年収に関するデータをまとめてみました。
平均年収は思いのほか低く感じるかも知れませんが、キャリアを積んだり独立開業すれば増えていきます。
やればやるだけ結果が出る仕事であることには間違いないので、関心のある方は行政書士おとしてのキャリアも検討してみてください。
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