今回はITパスポートのVer.6.3の新規追加用語の解説【ストラテジ編】を説明していきます。
このシラバスVer.6.3の改訂ですが、改訂内容は用語例の追加、用語の見直し、整理ということで試験範囲そのものが増えたわけではありません。その代わり用語は増えています。
改訂日は2023年12月25日ということで、この試験は実施機関のIPAから素晴らしい、クリスマスのプレゼントだなという感じです(笑)
肝心の追加用語数ですが、ストラテジー約50、マネジメント約10、テクノロジー約40ということで、さすがITパスポート、技術者だけの試験ではなくて、ビジネスでITを利活用するすべての方の試験なので、やはりストラテジが多くなっています。
そして、本試験への反映は2024年10月、来年の10月からということで少し先なんですけれども、非常に今のビジネスでも重要な用語がプラスされていますので、どういった用語がプラスされているのか、それだけでも確認していただきたいと思います。
なお、動画でチェックしたい方は、下記のYouTube動画をご覧ください。
目次
- 1 ITパスポート シラバスVer6.3 追加用語【ストラテジ編】
- 1.1 (中分類)1.経営・組織論
- 1.2 (中分類)3.会計・財務
- 1.3 (中分類)5.セキュリティ関連法規
- 1.4 (中分類)6.労働関連・取引関連法規
- 1.5 (中分類)7.その他の法律・ガイドライン・情報倫理
- 1.6 (中分類)8.標準化関連
- 1.7 (中分類)9.経営戦略手法
- 1.8 (中分類)10.マーケティング
- 1.9 (中分類)11.ビジネス戦略と目標評価
- 1.10 (中分類)12.経営管理システム
- 1.11 (中分類)13.技術開発戦略の立案・技術開発計画
- 1.12 (中分類)14.ビジネスシステム
- 1.13 (中分類)16.e-ビジネス
- 1.14 (中分類)17.IoTシステム・組込みシステム
- 1.15 (中分類)20.ソリューションビジネス
- 1.16 (中分類)21.システム活用促進・評価
- 2 まとめ
ITパスポート シラバスVer6.3 追加用語【ストラテジ編】
(中分類)1.経営・組織論
MVV、人的資本経営、パーパス経営、カーボンフットプリント、リスキリング、MBO(Management by Objectives and self-control:目標による管理)、DE & I(Diversity,Equity & Inclusion)、リーダーシップの在り方(コンティンジェンシー理論,シェアードリーダーシップ,サーバントリーダーシップなど)、ワーケーション、
CxO(Chief x Officer)、超スマート社会、グリーントランスフォーメーション(GX)、
カーボンニュートラル
まず中分類1経営組織論です。いくつか重要なものを説明します。
- MVV:ミッション・ビジョン・バリューの略。順に「使命」「あるべき姿」「やるべきこと」の意味。経営理念・経営ビジョン・行動指針と対応づけられることもある
- 人的資本経営:人材を特別な「資本」、最大の「資産」と捉え、十分な投資を行い、中長期的な企業価値向上に繋げる経営手法
- パーパス経営:パーパスを直訳すると「目的・意義」。自社の存在意義を基軸とし、いかに社会貢献ができるかを目的とした経営のこと
- カーボンフットプリント:商品・サービスのライフサイクルの 各過程で排出された「温室効果ガスの量」を追跡した結果、得られた全体の 量をCO2量に換算して表示すること(環境省)
- DE&I:多様性(ダイバーシティ)、公正性(エクイティ)、包含性(インクルージョン)の頭文字を合わせた概念。
- リーダーシップのコンテンジェンシー理論:リーダーの置かれている状況により、効果のあるリーダーシップのスタイルは変わるという理論
最後の「リーダーシップのコノティンジェンシー理論」については、フィードラーの理論を有名ですので、以下に少し解説します。
フィードラーはリーダーの置かれた状況は次の3要因と関連があると考えました。
- リーダーとメンバーの関係
- 仕事内容の明確化の程度
- リーダーの権限の強さ
これらの要因のいずれもがリーダーにとって好ましい状況、あるいは好ましくない状況の場合は仕事中心のリーダーシップが有効、つまり仕事に対して厳しい、目標達成に強い意志を持つリーダーシップが有効と言っています。
一方で、こういった要素の状況がいずれも中間程度の場合は人間関係中心型のリーダーシップが有効、つまり人と人の関係とか、それぞれの各人に配慮したヒューマン的なリーダーシップが有効と言っている訳です。
考えて見ると、確かにそんなイメージがある気がしますが、みなさんはどうでしょうか?
さて、その他の用語にも少し触れておきましょう。リスキリング、これは学び直しですね。、この最近よく聞く用語、こういうのも入っています。
ワーケーション、これはワークとVACATIONの造語でしたね。
そしてCxO、これまでCEOとかCIOは入っていましたけれども、それに限らず、例えばCDO チーフデジタルオフィサーとか CHRO チーフヒューマンリソースオフィサーとかですね、そういった例すべてを含む概念になります。
そして、グリーントランスフォーメーション(GX)やカーボンニュートラル、この辺は環境関連ですね。
(中分類)3.会計・財務
消費税、法人税、適格請求書等保存方式(インボイス制度)
話題のインボイスですね。
(中分類)5.セキュリティ関連法規
忘れられる権利
これはシラバスの1個前のVer6.2に、「デジタルタトゥー」という言葉がありましたが、それと対応するものです。デジタルタトゥーは、ネットにさまざまな情報が拡散して知られたくないもの、そういった情報も自分の過去の過ちみたいな情報も全部永久に残るという意味で、デジタルの入れ墨という意味で使われる言葉です。
そのデジタルタトゥーに対応するのが「忘れられる権利」ですね。人間には忘れられる権利があるのではないか?という意味です。
(中分類)6.労働関連・取引関連法規
労働安全衛生法,労働施策総合推進法(パワハラ防止法)など,労働者の安全,心身の健康,雇用の安定化,職業生活の向上を目的とした法律があること、36協定、景品表示法 (ステルスマーケティングを規制する法律として,景品表示法があること)
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律。安全衛生管理者や産業医などについても規定されています。
続いて36協定、これは労働基準法の36条労働であり、安全衛生法ではありません。労働基準法の36条に載ってるので、こういうふうに言われます。
労働者と使用者(会社側)で書面による協定をしたものを、行政官庁所轄労働基準監督
署長に届け出た場合、労働時間の延長または休日に労働させることができるというルールです。
労使による書面での協定、これを提出した後ではないと、実は会社側は残業または休日出勤させると、これは違法行為なんです。
こういう協定を出して初めて「免罰効果」、要は罰をまぬがれる効果が発生するので、実は残業、そして休日出勤 そうしたものは、実は本来、労働基準法違反法律違反なのです。
そして特別な場合のみ 罰を免れる効果があるということで、これが36協定と言われるものです。
つづいて、景品表示法。ステルスマーケティングを規制する法律として景品表示法がある、と書かれています。
ステルスマーケティングとは、例えば普通の主婦がブログで「私これを使ってみて非常に良かった」とか、普通の口コミのように書いていても、実は裏からメーカーからキックバックをもらっていたとか、そういうものがステルスマーケティングにあたります。
(中分類)7.その他の法律・ガイドライン・情報倫理
ビジネスと人権,ハラスメント、廃棄物処理法,GX推進法
後半は環境関連ですね。
(中分類)8.標準化関連
デジュレスタンダード,ISO 30414(内部及び外部人的資本報告の指針)、JIS Q 31000(リスクマネジメント)
デジュレスタンダードとは、標準化団体など、公的な機関によって規定された標準規約のこと。ISOもそうですね、たとえば、ISO9000は品質マネジメントシステムです。
このデジュレスタンダードとセットで覚えて欲しい言葉が、フォーラム標準とデファクトスタンダードです。
- フォーラム標準:業界団体が自主的に集まってつくられた標準がフォーラム標準、
- デファクトスタンダード:こちらはあるメーカーが作ったものがシェアを取ってしまって、事実上の標準となってしまったもの(例:パソコン用OSのWINDOWSなど)
ぜひ、この3つはセットで覚えてください
(中分類)9.経営戦略手法
エコシステム
(中分類)10.マーケティング
CX(Customer Experience:顧客体験)、カスタマージャーニーマップ、ロケーションベースマーケティング
CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)とは、商品サービスの機能や価格だけでなく、購入接客からサポートまで全てを含む体験から、お客様が感じる価値や便益のこと、んになります。
また、カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品サービスを知ってから購入の検討・実際の購入・そして利用まで、そこに至るまで商品サービスと接触するタッチポイントを中心としたプロセスを可視化したもの(図)のことです。
お客様がどういうところで商品サービスを知り、そして、どういうところでカタログをもらったり、実機に触ったり、そしてどういうところで比較検討したりというのを、このお客様の購入までの旅(JOURNEY)に例えて可視化、地図にしたものです。
商品サービスそのものやその情報に対してどこで接触し、お客様は購入したいという気持ちを高めて、実際の購入にいたったのか、これを表した地図がカスタマージャーニーマップになります。
(中分類)11.ビジネス戦略と目標評価
目標設定フレームワーク(GROWモデル,KPIツリー,SMARTなど)を使った目標設定
まずGROWモデルですが、これはゴール(目標)、REALITY(現実)、オプションズ(選択肢)、Will(意思)の頭文字をとったもので、主にコーチングのコーチが対話を通じて相談者が自分自身で実行できるように導くモデルのことです。
続きまして、SMART、こちらはSPECIFIC(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(経営目標と関連した)、タイムバウンド(明確な期限)の頭文字を取ったものです。そして、このSMARTは、成果の上がる目標設定が可能な5つの要素になります。
(中分類)12.経営管理システム
SECI(Socialization(共同化),Externalization(表出化),Combination(連結化),Internalization(内面化))モデル
SECIモデル、こちらは知識創造プロセスをモデル化したものであり、新たな知識は形式
知と暗黙知の相互作用によって創出されるとするものです。
組織の中で独自のノウハウを持つ、そういった属人的なスキルノウハウ、これがいかに組織全体の知識として広まるか、このプロセスを描いたものがこのSECIモデルになります。
SECIモデルは以下のようなイメージになります。
この暗黙知というものが、例えば職人さん一人ひとりが持っている言語化できないスキルだったりノウハウだったりする訳なんですけれども、例えば「共同化」というものはその一人
一人の職人さんとか、プロフェッショナルが持つ独自の言葉にできないノウハウ知識を、
例えば新人がやってきたら、職人さんは現場で仕事をしながら実際に体で覚えさせます。あるいは営業のプロフェッショナルであれば、新人と一緒に営業同行して自分の営業スキルを見せて、覚えさせるようなことをします。これが共同化です。
そしてその新人と色々やって話していくうちに、その独自の言語化できなかったスキルノウハウが徐々に言語化されていきます。これが「表出化」
その後、その言語化されたことを、既存のマニュアルなどに追加して、きちんと言語文字でノウハウが組織に広まる。これが「連結化」ですね。
そして、そのマニュアルを読んで、新人は反復学習で、自分の体にしっかり身に付いたものとする。これが「内面化」。
内面化したものを仕事でどんどん使っていると、新たな暗黙知・新たな新しい有効なノウハウ、その人にしかできない新しいノウハウが身に付く。それをまた次の新人と一緒に教えたりすることで、「共同化」を図るというプロセスをぐるぐるぐるぐる繰り返すことによって、組織のそれぞれの個人が持つ属人的なノウハウスキルを組織全体に広げることができます。
こういったプロセスが、SECIモデルの考え方です
(中分類)13.技術開発戦略の立案・技術開発計画
PoC(Proof of Concept:概念実証),PoV(Proof of Value:価値実証)
このPoCは以前から本番試験で頻出な用語です。
実はPoCはシラバスVer6.2では別の場所に記載されていたものが、この分類に移ったということで、PoCは相変わらず頻出と思いますので、きちっと押さえておいてください。
(中分類)14.ビジネスシステム
デジタルガバメント,ガバメントクラウド,ベースレジストリ、e-Gov,電子自治体,電子申請,電子調達
デジタルガバメント、ガバメントクラウド ベースレジストリなど、自治体関係のものが多く入っていますね。
(中分類)16.e-ビジネス
OMO(Online Merges with Offline)、NFT(Non-Fungible Token)
中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)
OMO(オンラインマージウィズオフライン)とは、オンラインとオフラインを融合させること。両者の垣根を越えた顧客体験を創造することが目的です。
例えば、お客さんが実店舗に行ったとします、これはオフラインですよね。そこで商品を見たんだけれども、ちょうどいいサイズがなかった。そうすると店員がすぐにネットショップからご自宅に配送させますみたいな、オフラインとオンライン、すなわちリアルとバーチャルの垣根をなくしたような、これってお客様に非常にメリットがありますよね。
こういうふうな仕組みをOMOといいます。
続きましてNFT、直訳すると代替不可能なトークンの意味で、世界に唯一であることを証明できるデジタルデータのこと。これは暗号資産に使われているブロックチェーンという技術
これを用いています。そのため、あるデジタルデータが、これは世界に1個しかないものだよというのを証明できる、こういったものになるわけです。
つづいて、中央銀行発行デジタル通貨とは、中央銀行が発行するデジタル通貨のこと。法定通貨として扱われます。日本銀行なんかでも検討中というふうに言われています
(中分類)17.IoTシステム・組込みシステム
VRゴーグル、自動運転レベル、スマートシティ
自動運転レベル、これは0から5まであります。自動運転は全くしないから、完全な自動
運転まで、0から5まで6段階です。
(中分類)20.ソリューションビジネス
クラウドサービスの提供形態(パブリッククラウド,プライベートクラウド,ハイブリッドクラウド,マルチクラウドなど)、マネージドサービス
さまざまなクラウドの提供形態ですね。
(中分類)21.システム活用促進・評価
デジタルリテラシー
デジタルリテラシーとは、これまであったITリテラシーがデジタルリテラシーという言葉に置き換わりました。 デジタルを活用する能力のことです。
まとめ
今回はシラバスバージョン6.3から追加されるストラテジ分野の新規用語を説明しました。 やはり、ボリュームがありますけれども、どれも実際のビジネスでよく使われるものなので、実際の本番試験の反映はもう少し先ですが、興味のあるものから覚えていってください。
次回はマネジメント分野とテクノロジー分野の新規追加用語を説明します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。