今回は、製品アーキテクチャについて説明します。
アーキテクチャ(architecture)という用語は、機能や構造の基本構成を意味します。
いわゆる製品以外でも、建造物、情報システム(アプリケーションやソフトウェア)、そして組織などにも、アーキテクチャという用語は使われます。
製品アーキテクチャという場合は、製品の基本的な設計思想のことです。
「基本的な設計思想」なんて、少しカッコよいですね。ちょっと気になりますよね。
それでは、一緒に学習していきましょう。
目次
製品アーキテクチャ
前述のとおり、製品アーキテクチャとは、製品の基本的な設計思想のことです。
製品はいくつかの部品や技術から構成されています。
その製品の機能と構造の構成がどうなっているのか?、そして機能と構造の相互関係がどうなっているのか?、左記における基本設計のことであり、複数部品間のインターフェース(継ぎ手)をどのように設計・調整するか、ということに関わる基本的な設計思想のことです。
製品アーキテクチャは、モジュール型とインテグラル型の2つのタイプにわけることができ、この2つのタイプでよく対比して説明されます。
モジュール型アーキテクチャ
モジュールとは、製品の構成要素であり、1つまたは複数の組み合わさった部品と考えることができます。レゴのようなもの、とイメージしてもよいでしょう。
モジュール型アーキテクチャとは、モジュール間の相互依存性を小さくし、各モジュールの独立性を高めた製品アーキテクチャです。よくモジュール型製品の代表例として挙げられるものがパソコンです。
パソコンでは、インターフェースの集約や明確な定義が徹底され、ユーザーが部品を自分で購入して交換することもできます。
インテグラル型アーキテクチャ
インテグラル型アーキテクチャは、製品の構成要素である部品等の独立性が低く、相互に複雑な依存関係を持っています。さらに、インターフェースも標準化されていない、システム全体として「擦り合わせ」が必要な、調和的に構成された製品アーキテクチャとなっています。
インテグラル型アーキテクチャを採用する製品の代表例は、自動車です。
自動車は、3万点もの部品から作られ、製品の生産にあたり、微妙な調整が必要になってきます。
パソコンのように、素人が簡単に部品交換をしたりできるものではありません。
また、構成要素(部品)の変更にあたり、多くの他の部品に変更を加えることも必要です。まさに「擦り合わせ」技術の結晶といえるのです。
モジュール型アーキテクチャのメリットとデメリット
モジュール型アーキテクチャのメリット
モジュール型アーキテクチャのメリットとしては、まず、構成要素間の調整にかかるコストが削減できる点が挙げられます。また、各モジュール間の独立性が高いため、システムに対する変化を、モジュールレベルでの対応へ落とし込むことが可能です。
さらに、モジュールを簡易に取り換えることができるので、多様なシステム構成を取ることができます。
モジュール型アーキテクチャのデメリット
モジュール型アーキテクチャのデメリットとしては、まず、インターフェースの仕様明確化がモジュール型の特徴のため、インターフェース部分の進化が進みにくい状態となることが挙げられます。
また、様々なモジュールに対応するため、インターフェースは標準的かつ汎用的であることが求められ、結果としてシステム全体として無駄な部分が発生してしまいます。
インテグラル型アーキテクチャのメリットとデメリット
インテグラル型アーキテクチャのメリット
インテグラル型アーキテクチャのメリットは、まず、システム全体として無駄のない、全体最適なシステムとしての構成が可能なことが挙げられます。
また、構成要素の組み合わせにノウハウが必要であり、製法に関する競争優位が確保できる点もメリットです。
イングラル型アーキテクチャのデメリット
インテグラル型アーキテクチャのデメリットとしては、まず、各構成要素は相互に依存しているため、調整(擦り合わせ)のコストが発生する点が挙げられます。
また、同じく相互依存性のため、多様なシステム構成を実現しにくい状態であることも、デメリットです。
オープン・アーキテクチャ戦略
オープン・アーキテクチャ戦略とは、國領二郎によると、以下のとおり定義されます。
「本来複雑な機能を持つ製品やビジネスプロセスを、ある設計思想(アーキテクチャ)に基づいて独立性の高い単位(モジュール)に分解し、モジュール間を社会的に共有されたオープンなインターフェースでつなぐことによって汎用性を持たせ、多様な主体が発信する情報を結合させて価値の増大を図る戦略」
(出所:「オープン・アーキテクチャ戦略」ダイヤモンド社)
具体的には、ある製品の製造メーカーが、その商品のインターフェースを社会一般に、広く公開します。
そして、その商品が売れているのであれば、他の周辺機器メーカーがその商品の周辺機器を販売することによって、その製品自体の利便性が高まるようなことを言います。
かつて、IBMがIBM-PCを発売した際に、このオープンアーキテクチャ戦略を実施しました。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |