社会福祉法人本部のAI活用|最初の一手と人に残す判断

社会福祉法人本部のAI活用:拠点区分ごとの月次の報告を1つの台帳に結び、照合の欠けや食い違いはAIが候補として示し、月次の確定は法人本部の担当者、繰入れ・貸付の決定は理事長や理事会が行う流れ

最終更新日: 2026年10月11日/内容確認日: 2026年10月11日

本記事では、一の都道府県の区域内で社会福祉施設と在宅の事業所を複数(会計の拠点区分が二以上)経営する社会福祉法人の法人本部(事務局)を主なモデルとして想定します。所轄庁が都道府県知事・市長・指定都市の長のいずれかで、特定社会福祉法人(事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人)に当たらず、定款で会計監査人を置かず、収益事業を行わず、社会福祉連携推進法人の社員でない法人です。この対象は本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。法人の機関の運営と、会計・届出・職員の人事と労務などの法人の管理を扱い、施設・事業所のケア・保育・診療と施設の運営は扱いません。

目次

1. 結論:社会福祉法人本部なら何から始めるか

社会福祉法人の法人本部でAIを使うなら、最初の一手は「施設・事業所から届く拠点区分の月次の報告を照合し、拠点区分間の繰入れ・貸付と内部取引を台帳で持つこと」です。次に「社会福祉充実残額の算定の根拠を記録し、残額が生じる場合は社会福祉充実計画の案を作ること」、その次に「寄附者・取引の相手方・関連当事者を照合すること」が続きます。

この番号は効果の大きさの順位で、Topの記録を入力に使う業務の広がり(波及の範囲)を、本記事の業務の分解で数えた業務の区分の数(9・4・4。同数のTop2とTop3は作業の数6と5で並べました)で比べたものです。売上や削減時間、法令上の重要度、違反の損失の大きさの比較ではありません。実施は、導入前提をそろえた後にTop1とTop3を並行し、Top2は前年度の数値で試算して次の決算期に本番とします(節3)。

一方で、理事会・評議員会の決定、役員・評議員の選任、監事の監査、繰入れ・貸付の決定、算定の結果の確定、所轄庁への届出と申請の決定、職員の採用と配置の決定は、AIに渡しません(節6)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、法人本部の1年は会計年度(四月一日から翌年三月三十一日まで・社会福祉法第45条の23第2項)に沿って次の順に進みます。

  1. 予算・事業計画の作成と決定。
  2. 施設・事業所の月次の報告の照合と、拠点区分間の繰入れ・貸付。
  3. 事業収益の入金の照合と、寄附金・補助金の経理(収益の入口)。
  4. 決算と、計算書類・附属明細書・財産目録・事業報告の作成。
  5. 監事の監査、理事会の承認、定時評議員会の承認と報告。
  6. 社会福祉充実残額の算定と、残額が生じる場合の社会福祉充実計画。
  7. 所轄庁への届出、備置き、公表。

並行して、理事会・評議員会の運営と役員・評議員の選任、定款の変更と登記、所轄庁の指導監査への対応、個人情報の管理、法人全体の職員の採用・配置・育成・退職と、給与・社会保険・労働保険・健康診断の管理を行います。施設・事業所の勤務の割当て、勤怠の記録の作成、労働時間の管理は施設・事業所が行うもので、本記事では扱いません。本記事の設計では、法人本部は職員ごとの勤怠の記録を受け取って給与を計算します。

本シリーズでは、会計年度の暦と月次の締めで動く「周期型」を主、欠員・寄附の申出・所轄庁の報告の求めなどで処理が始まる「イベント駆動型」を従に整理しています。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(波及の範囲) 記録の単位 実施の順序
導入前提:区分の一覧と当年度の予算/算定の規則の確認/役員・評議員の名簿と申告の写し — — ①(2週目)
Top1:拠点区分の月次の報告の照合と、繰入れ・貸付・内部取引の台帳 最も大きい(9) 拠点区分1つの1か月分の報告1件と、繰入れ・貸付1件 ②(2週目に様式、3週目に試行)
Top2:社会福祉充実残額の算定の根拠の記録と、社会福祉充実計画の案 2番目(4) 会計年度1年の算定1件(財産は1件1行)と、計画1件 ②(3週目に試算)、③(次の決算期に本番)
Top3:寄附者・取引の相手方・関連当事者の照合 3番目(4) 相手方1者の寄附・取引1件ごとの照合1行 ②(Top1と並行)

括弧の数は本記事の業務の分解で数えた計算値で、記録の単位も本記事の設計です。どのTopも、他のTopの完了を前提にしません。

Top1:拠点区分の月次の報告を照合し、繰入れ・貸付を台帳で持つ

何をするか。 本記事の設計では、施設・事業所から月に一回、拠点区分の試算表・現預金の残高・未収金と未払金の集計値を受け取り、利用者ごとの情報は送らせません。拠点区分1つ1行の照合表で、前月との増減・予算との差・拠点区分間の勘定の貸借・残高と証憑の写しを照らし合わせ、繰入れ・貸付は相手の区分・金額・日・根拠(予算・理事会の決定)を1件1行の台帳に持ちます。AIは外部に送らない規則による照合と例外の抽出、会計帳簿への反映、台帳の更新、決算時の相殺消去の候補と区分間の明細書の下書きを作ります。

なぜ最も大きいか。 社会福祉法人は、厚生労働省令で定めるところにより適時に正確な会計帳簿を作成し、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存します(社会福祉法第45条の24)。社会福祉法人会計基準は、計算書類の作成に関して事業区分と拠点区分(法人が事業の会計管理の実態を勘案して設ける区分)を設け、拠点区分にサービス区分を設け、内部取引の相殺消去をすることを定めています(第7条第2項・第10条・第11条)。月次の照合と台帳は9つの業務の区分の入力になります(節1)。

どう始めるか。 直近1か月分の月次の報告を照合表に移し、規則による照合で例外を抽出します。並行して、前年度の繰入れ・貸付を台帳に移します。

何を測るか。 月次の報告の到着から月次の確定までの日数、照合で例外になった件数と原因が確認できた件数、前年度の決算期に遡って集めた繰入れ・貸付の件数(いずれも1週目に実測)。

注意。 照合の規則は、自法人の経理規程と社会福祉法人会計基準の両方に照らして人が決め、区分の設け方や共通の費用の配分の基準はAIに推定させません。本記事の設計では、例外と相殺消去の候補は経理担当が全件確かめ、原因が確認できるまでその拠点区分の月次を確定しません。繰入れ・貸付の決定は、本記事の整理では理事長が行い、多額の借財に当たるものは理事に委任できない理事会の決定です(社会福祉法第45条の13第4項)。

Top2:社会福祉充実残額の算定の根拠を記録し、計画の案を作る

何をするか。 社会福祉充実残額の算定を、財産1件ごとに控除する財産の区分と根拠を残す形で記録します。導入前提として厚生労働省の通知と算定シートから算定の規則を取得して担当者が確かめ、本記事の設計では、確かめるまで算定しません。AIは基礎データの抽出、区分と根拠の候補、算定の案、残額が生じる場合の計画の案を作ります。

なぜ2番目か。 社会福祉法人は、毎会計年度、前会計年度に係る貸借対照表の資産の部に計上した額から負債の部に計上した額を控除して得た額が、基準日(前会計年度の末日)において現に行っている事業を継続するために必要な財産の額として厚生労働省令で定めるところにより算定した額を超えるときは、厚生労働省令で定めるところにより社会福祉充実計画を作成して所轄庁に提出し、承認を受けなければなりません。ただし、当該会計年度前の会計年度に作成した承認社会福祉充実計画の実施期間中は、この限りではありません。承認の申請は、第59条の届出と同時に行います(社会福祉法第55条の2第1項・第2項)。算定の記録は、計画の作成や事業の概要等の下書きなど4つの業務の区分の入力になります。

どう始めるか。 規則を確かめた後、前年度の承認を受けた貸借対照表と固定資産・積立資産の明細から区分と根拠の候補を作り、前年度に提出した算定の結果と並べて差を経理担当が全件確かめます(試算)。本番は次の決算期に、定時評議員会の承認で決算が確定した後に算定します。

何を測るか。 算定の根拠の記録がある控除対象財産の件数の割合、決算の確定から算定の結果の確定までの日数、算定の結果の確定から届出の期限までの日数(1週目に前年度の算定シートと届出の控えで実測)。

注意。 算定の式と率はAIに推定させません。残額が生じるかの確定は法人が行い、本記事の設計では「生じる/生じないと確認済み/未確認」で持ちます。AIの判定が無いことを「計画は要らない」の確定とせず、計画の要否の判定も担当者が全件確かめます。計画の作成に当たっては、事業費と社会福祉充実残額について公認会計士、税理士その他財務に関する専門的な知識経験を有する者として厚生労働省令で定める者の意見を聴き、地域公益事業を行う計画では事業区域の住民その他の関係者の意見も聴き、計画は評議員会の承認を受けます(社会福祉法第55条の2第5項〜第7項)。

Top3:寄附者・取引の相手方・関連当事者を照合する

何をするか。 役員・評議員の名簿と、関係者・特殊の関係・兼職の申告の写しから照合の欄を作り、寄附の申出、支出・契約の起票、関連当事者との取引のたびに相手方1者ずつ照合します。AIは外部に送らない規則による名寄せで、下の関係者・関連当事者・競業や利益相反の取引に当たりうるかの候補を「該当/該当しないと確認済み/未確認」で作ります。

なぜ3番目か。 社会福祉法人は、事業を行うに当たり、評議員・理事・監事・職員その他の政令で定める関係者に特別の利益を与えてはなりません(社会福祉法第27条。関係者の範囲は社会福祉法施行令第13条の2)。理事は、自己又は第三者のために法人の事業の部類に属する取引や法人との取引をしようとするとき、法人が理事の債務を保証するなど理事以外の者との間で法人と理事の利益が相反する取引をしようとするときは、理事会で重要な事実を開示して承認を受け、取引をした理事は取引後遅滞なく重要な事実を理事会に報告します(社会福祉法第45条の16第4項で読み替えて準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条第1項・第92条第2項。同法は2026年10月10日に確認した版(2026年6月24日施行)によります)。計算書類には関連当事者(常勤の役員又は評議員として報酬を受けている者とその近親者ほか、社会福祉法人会計基準第29条第2項が列挙する者)との取引の内容を注記し、その範囲は社会福祉法の関係者とは違います。照合の記録は、受入れ・決裁・注記など4つの業務の区分の入力になります。

どう始めるか。 直近1か月分の支出・契約と寄附を、相手方1者ずつ名寄せで照合します。

何を測るか。 照合が「未確認」のまま決裁・受入れの段階に達した件数、照合から決裁までの日数、前年度の注記の作成で遡って確かめた関連当事者の取引の件数(1週目に直近1か月分の記録と前年度の注記で実測)。

注意。 相手方が関係者・関連当事者・競業や利益相反の取引に当たるかと、特別の利益に当たるかは、本記事では判断していません。AIの候補が「該当しない」でも確定とせず担当者が全件確かめ、本記事の設計では「未確認」の間は受入れ・決裁をせず、申告は要配慮個人情報に当たりうる情報として、取得の前に本人の同意か法令上の例外かを確かめます(節9)。

4. AIに任せやすい仕事

結果をそのまま次へ渡せる仕事です。照らし合わせる相手は、人が確定した記録と規則です。

  • 形を整える。 確定した月次の数値の会計帳簿への反映、繰入れ・貸付の実施の記録、寄附金の計上、役員等の台帳の更新。
  • 照らし合わせる。 月次の報告と前月・予算・区分間の勘定、事業収益と補助金の入金、支出の起票と予算・決裁の権限。
  • 違いを見つける。 予算の執行の状況と予算の差。
  • 足りないものを探す。 月次の報告の未着、未収金の滞留、起算日の記録が無い期限。
  • 下書きを作る。 確定した拠点区分の数値からの法人全体の月次の試算表と報告の資料。
  • 探し出す。 法令の改正と、通知・様式の更新。見張る先をe-Govや厚生労働省のページなどの公式の情報源に固定し、拾ったものは候補で、担当者が定期的に公式の情報と適用の時点を確かめます。

不一致・欠け・例外だけを人が見ます。見逃しが異常として現れない確認は節5です。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や下書きを作り、担当者が全件確認してから使う仕事です。確認を挟むことは手間ではなく、品質の設計です。

  • 区分の台帳の案、繰入れ・貸付の案、内部取引の相殺消去の候補と区分間の明細書
  • 控除する財産の区分の候補と算定の案、計画の要否の判定、検討の記録と計画の案
  • 寄附者・取引の相手方の照合と、関連当事者の取引の抽出と注記の候補
  • 役員・評議員の任期の満了の抽出と資格・構成の照合表、定款の変更と登記事項の変更の検出(検出が無いことを「手続が要らない」とは扱いません)
  • 計算書類・注記・附属明細書・財産目録・事業報告と事業の概要等の下書き、届出の一式の照合
  • 議事録の案、労働条件の明示の書面の案、給与の計算の案、社会保険・雇用保険の届出の書類

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方の原則は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。

法令が機関に置いている判断。 理事・監事は評議員会の決議によって選任し(社会福祉法第43条第1項)、評議員は、法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めるところにより選任します(第39条)。理事会は業務執行の決定と理事長の選定及び解職などを行い、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、重要な役割を担う職員の選任及び解任などの決定を理事に委任できません(第45条の13第2項・第4項)。監事は理事の職務の執行を監査し、厚生労働省令で定めるところにより監査報告を作成します(第45条の18第1項)。監事の監査を受けた計算書類・事業報告とこれらの附属明細書は理事会の承認を受け、計算書類は定時評議員会の承認を受けます(第45条の28第3項・第45条の30第2項)。法人本部は資料の提供までを担います(本記事の設計)。

法人と理事長が責任を持つ判断。 以下は本記事の整理です。

  • 繰入れ・貸付の決定、寄附の受入れと支出の決裁、特別の利益に当たるかの判断。
  • 算定の結果の確定、所轄庁への届出と申請の決定、所轄庁の報告の求めへの報告の内容。
  • 職員の採用・配置・異動の決定、就業規則の作成・変更、健康診断の実施後の措置。
  • AIに入力してよい情報と条件、要配慮個人情報に当たりうる書類の取得の前の確認、外部へ渡す情報の区分の判定、漏えい等の報告と通知。

AIの照合や下書きがどれほど正しく見えても、ここに挙げたものは人が決めます。

7. Best Practice

本記事の整理では、到達点は3つの記録が会計年度の暦の上でつながる構造です。月次の照合から決算まで、算定の根拠から届出と計画の案まで、照合の記録から決裁と注記まで、同じ記録が流れます。前提が「未確認」の間は次の工程に進みません。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界の実態の描写ではありません。 月次の報告・繰入れの記録・算定の根拠・関係者の申告が別々の記録で回り、関係者との取引に気づくのが決裁の後や注記の作成のときになりうる状態です。

After。到達点として置いた姿です。 例外の原因が確認できるまで月次は確定せず、算定は規則を確かめたうえで財産1件ずつの根拠とともに行われ、「未確認」の相手方の寄附・取引は受入れ・決裁に進みません。判断は変わらず機関と法人が行います。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文を確かめた規律だけを挙げており、すべての規律ではありません。法令は2026年10月10日に確認した、その日に施行されている版によります(社会福祉法は2026年6月25日施行の版、個人情報の保護に関する法律は2026年10月1日施行の版。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律は節3のとおり)。未施行の改正は扱っていません。

届出と公表。 社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、計算書類等と財産目録等を所轄庁に届け出ます(社会福祉法第59条)。届出をした書類のうち厚生労働省令で定める書類の内容は、遅滞なく、インターネットの利用により公表します(第59条の2第1項・社会福祉法施行規則第10条第1項)。

職員の人事と労務。 社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成ほか同法第2条第1項第1号から第2号までの事務を業として行うことを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合と、政令で定める業務に付随して行う場合を除く)。本記事の整理では、法人が自らの職員について自ら届出や帳簿の作成を行うことを、この事務としては扱いません。本記事の設計では、社会保険労務士・社会保険労務士法人でない外部の事業者に報酬を払って届出や帳簿の作成を依頼しません。事業場の単位や被保険者に当たるかなどの当てはめは、本記事では判断していません。

個人情報。 個人情報の保護に関する法律では、個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者(国の機関等を除く)が、それを構成する個人データの安全管理措置と、取扱いを委託する場合の委託先の監督を行います(第16条・第23条・第25条)。本記事の設計では、役員・評議員の台帳と申告、欠格事由に関する書類、寄附者の台帳、職員の名簿・賃金台帳・健康診断の結果を、個人データや要配慮個人情報に当たりうる情報として扱います(当たるかは本記事では判断していません)。要配慮個人情報(本人の病歴、犯罪の経歴など、法と政令で定める記述等が含まれる個人情報)は、法令に基づく場合など第20条第2項各号の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません(第2条第3項・第20条第2項)。

個人データの第三者への提供は、法令に基づく場合など第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ本人の同意が要り、利用目的の達成に必要な範囲内において取扱いの全部又は一部を委託することに伴う提供では、提供を受ける者は第三者に当たりません(同条第5項第1号。委託に当たるかは本記事では判断していません)。外国(規則で定める外国を除く)にある第三者(規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除く)への提供は、第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が要り、この場合は第27条を適用しません(第28条第1項)。

AIに入れない情報。 本記事の設計では、利用者ごとの情報は法人本部に送らせません。欠格事由に関する書類、職員の健康診断の結果・個人票・事後措置の記録、個人番号は生成AIに入れず、月次の照合・名寄せ・給与の計算・社会保険と雇用保険の届出の書類は外部に送らない規則による処理で作ります。それ以外で個人データを含むもの(議事録の案、資格・構成の照合表など)は、提供先の区分(委託・第三者提供・外国にある第三者)の判定が済むまで生成AIに入れません。入れる前には、①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④契約上の機密保持とデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など法人の規程上確認が必要な事項、の6点を確かめ、法人が利用を承認したサービスに限ります。これは法令の要件ではなく、法人として決める運用です。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 直近1か月分の月次の報告・支出・契約・寄附と、前年度の繰入れ・算定・注記の記録から、節3の9つの指標(順に①〜⑨)を数えます。

2週目:写しと条件を決める。 導入前提をそろえ、AIに入力してよい情報と条件、提供先の区分の判定を決めます。月次の報告は利用者ごとの情報を入れない様式にし、各Topの照合表・台帳・記録の様式を決めます。

3週目:人が確かめる小規模試行。 Top1は直近1か月分の照合と台帳への移し替え、Top2は算定の規則が確認済みの場合だけ前年度の数値での試算、Top3は直近1か月分の名寄せを、節3の「注意」のとおり試します。

4週目:比べる。 ①〜⑨を測り直して1週目と比べます。Top2の⑤⑥は試算の所要日数と比べ、本番の値は次の決算期に測ります。本番で使うかと、算定の日程を届出の期限から逆算して会議の暦に入れるかを、法人が決めます。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 月次の照合、繰入れや算定の根拠、関係者の申告が、担当者の手元の表と記憶で引き継がれる。
  • Lv2 台帳化。 区分と繰入れ・貸付の台帳、算定の規則と根拠の記録、申告の照合の欄がある。
  • Lv3 一元化。 月次の照合から決算まで同じ台帳から流れ、算定と照合の記録が届出・決裁・注記に使われる。
  • Lv4 AI支援。 規則による照合が例外を抽出し、AIが候補と下書きを作り、担当者が全件確かめる。
  • Lv5 仕組み化。 前提が「未確認」の工程に進まない止めが、台帳の状態から働く。

Lv5は、AIが繰入れ・算定・承認・決裁・申請を自動で決める状態ではありません。

12. FAQ

Q. AIの照合で例外が出なければ、月次を確定してよいですか。 A. 本記事の設計では、照合の規則は人が決め、例外が無い拠点区分も月次の数値を確定するのは経理担当です(節3)。

Q. 社会福祉充実残額の計算式をAIに任せられますか。 A. 本記事の設計では、式と率はAIに推定させず、担当者が算定の規則を確かめるまで算定しません。確定は法人が行います(節3)。

Q. AIの照合で関係者に当たらなければ、寄附を受け入れてよいですか。 A. 候補は確定ではなく、当たるかは本記事では判断していません。担当者が全件確かめ、受け入れるかは法人が決めます(節3)。

Q. 職員の社会保険の届出を法人本部が自分で行うのは、社会保険労務士法に触れますか。 A. 同法第27条は、社会保険労務士等でない者が他人の求めに応じ報酬を得て業として行うことを、ただし書の場合を除いて禁じています。本記事の整理では、法人が自らの職員について自ら行う届出をこの事務としては扱っていません(節9)。

13. 関連業態・シリーズ導線

特別養護老人ホームの記事は、本記事とは別の業態の記事で、社会福祉法人が設置する特別養護老人ホームの施設の業務を扱っています。本記事は施設から報告を受ける法人本部の側で、入所・ケア・請求は扱いません。

私立学校法人の記事は、本記事とは別の業態の記事で、学校法人の法人本部の役員・評議員の台帳と法定の期限の台帳をTopに置いています。本記事は社会福祉法人を扱い、Topを会計・算定・照合に置いています。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自法人に当てはめたい方へ

区分の台帳・算定の記録・申告の整い方で、最初の一手は変わります。区分の一覧や名簿の写しが無いなら導入前提から、あるなら月次の照合表から始めます。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自法人のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自法人の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標登録出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Claude AI活用 最強の教科書』(技術評論社・2026年10月刊)、『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)、『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

目次