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社労士の労災保険法の勉強方法は?対策のコツや出題傾向まとめ【2023年最新版】

社労士の労災保険法の勉強方法は?

今回は、労災保険法の対策や勉強方法について、お伝えします。

労働基準法や健康保険法などと違い、労災保険法は事務職で働いている方などは、あまり馴染みがなくイメージしにくいと思います。

もともと法改正の少ない分野だったのですが、2021年度試験に向けては、これまでの「業務災害」「通勤災害」に加え、「複数業務要因災害」と言われるものが保険給付の対象となります。

今回、新たな法改正が入り、かつイメージしにくい印象のある労災保険法に対し、どのような対策や勉強法をすればよいのか、詳しく説明したいと思います。

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社会保険労務士(社労士)試験の労災保険法(労働者災害補償保険法)について

事務職で働いている受験生の方などは、社会保険労務士(社労士)の試験科目の中でも、労災保険法についてはあまり馴染みがないのではないでしょうか。

労災保険法は、「怪我をした」「病気になった」「障害状態になった」「死亡した」など、労働者の業務災害等で企業が負うべき労働者への補償を確実に行う保険給付の制度です。

政府による「事業主の災害補償責任の代行」という意味合いを持つ保険ですので、企業や事業主は強制加入全ての保険料を負担しないといけません。

「正社員」「契約社員」「アルバイト」「パート」と、全ての労働者に労災保険法は適用されます。

「なんだか難しそうだな…」と初学者の方は思いがちですが、実は、以下の理由で比較的取り組みやすい科目です。

<労災保険法が取り組みやすい理由>

  • 「保険給付」「社会復帰促進事業」など、頻出の論点が明確
  • 例年、難易度が安定している
  • 法改正が少ない

取り組みやすい科目である一方、他の受験生と差がつきにくく、取りこぼしが許されない科目とも言えます。

この記事では、そんな労災保険法の対策や勉強法にについて詳しくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

社会保険労務士(社労士)の試験科目!労災保険法の内容は?

ここでは、労災保険法の全体像を確認していきましょう。

労災保険法の目的

労災法の目的は法一条に以下のように規定されています。

労働者災害補償保険は、業務上の事由事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進当該労働者及びその遺族の援護労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

以上のように、労災保険法の対象となる保険事故(負傷、疾病、障害、死亡等)の要因には、以下の3つがあります。

  • 業務災害
  • 複数業務要因災害
  • 通勤災害

このうち、「複数業務要因災害」とは、働き方改革や副業の広まりを背景に、2つ以上の事業の業務に携わる方を対象としたものであり、2021年度試験から新しく対象になった改正部分です。

労災保険の保険関係等

管掌

労災保険は政府が管掌します(政府が保険者ということ)

被保険者

労災保険は保険でありながら、被保険者がいません。

前述のとおり、労災保険は「労働者の業務災害等で企業が負うべき労働者への補償を確実に行う保険給付の制度」ですから、費用は全額企業が支払い、保険が適用されるのは労働者になります。

労災保険の適用事業等

労働者を一人でも使用する事業であれば、下記の2つの例外を除いて強制的に労災保険法が適用されます。

  • 国の直営事業及び官公署の事業(公務員の災害補償制度の適用がある)
  • 常時5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産事業(事業の実態の把握が難しいのが理由)

業務災害・複数業務要因災害・通勤災害(保険事故)

労災保険では、業務災害・複数業務要因災害・通勤災害のいずれかであると認定されなければ、保険給付は受けられません。

業務災害

業務災害と認定されるためには、「業務遂行性」「業務起因性」の両方を備えていることが必要です。

  • 業務遂行性:事業主の支配下にあること
  • 業務起因性:業務と傷病などに因果関係があること

複数業務要因災害

2つ以上の事業の業務を要因とする負傷・疾病・障害・死亡であることが必要です。

通勤災害

通勤災害と認められるには、法の規定による「通勤」と認められることが必要です。具体的には、法7条の2項および3項に以下の記述があります。

<第7条2項>
前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

<第7条3項>
労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

以上のように、通勤と認められるには、合理的な経路および方法であることが求められます。また、通勤途中の経路の逸脱や中断についても、制限が定められています。

保険給付

労災保険法は、労働者が業務災害に遭った際に、被災労働者またはその遺族に対し、保険給付を実施することを主な目的にしている法律です。

そのため、労災保険法の規定は保険給付に関する内容が中心で、社会保険労務士(社労士)の本試験でも保険給付は頻出です。

保険給付は大きくわけると次の4つで、それぞれのパターンについて見ていきましょう。

  • 業務災害に関する保険給付:業務上の事由で引き起こされた負傷や疫病、障害や死亡に対して事後に行う給付
  • 複数業務要因災害に関する保険給付:複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害や死亡に対して事後に行う給付
  • 通勤災害に関する保険給付:通勤中に引き起こされた負傷や疫病、障害や死亡に対して事後に行う給付
  • 二次健康診断等給付:労働衛生法に則った定期健康診断で、何かしらの異常があった際に精密検査を無料で受けられる制度としての給付

上記4つのうち、二次健康診断等給付は予防的給付、残り3つは事後の給付です。

ここでは、頻出の事後の給付について見ていきましょう。

労災保険の事後の給付(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害を要因とする保険給付)

業務災害・複数業務要因災害・通勤災害の3種類の要因がありますが、それぞれに7種類の保険給付があります。

まず、一覧表で確認してみましょう。

業務災害 複数業務要因災害 通勤災害
治癒前 療養補償給付 複数事業労働者療養給付 療養給付
休業補償給付 複数事業労働者休業給付 休業給付
傷病補償年金 複数事業労働者傷病年金 傷病年金
治癒後 障害補償給付 複数事業労働者障害給付 障害給付
死亡時 遺族補償給付 複数事業労働者遺族給付 遺族給付
葬祭料 複数事業労働者葬祭給付 葬祭給付
介護 介護補償給付 複数事業労働者介護給付 介護給付

以上のとおり保険給付は全部で21種類ありますが、まずは業務災害系の7種類をマスターするのがおすすめです。

というのも、複数業務要因災害や通勤災害の各保険給付の内容は、業務災害の保険給付の内容とほぼ同じだからです。

以下、7種類の業務災害の概要を説明します。

療養補償給付

被災労働者の治療費を補う保険給付です。現物給付と現金給付があります。

休業補償給付

休業中の所得補償にあたります。

傷病補償年金

負傷や疾病が療養開始後1年6か月を経過した後に支給されます(休業補償給付から切り替えて所得補償を行う)。

障害補償給付

治癒後に障害が残った場合の所得補償です。

遺族補償給付

遺族のための所得補償です。

葬祭料

被災労働者が死亡した場合の葬祭料です。

介護補償給付

被災労働者が介護が必要になった場合の費用を支給します。

社会復帰促進等事業

社会復帰促進等事業は、大きく次の3つに分けられます。

  • 社会復帰促進事業
  • 被災労働者・遺族援護事業
  • 安全衛生の確保や保険給付の適切な実施の確保等事業

社会復帰促進等事業の中では、特に特別支給金が重要です。特別支給金は保険給付に付加して支給するもので、単純な上乗せ分とボーナス相当の上乗せ分があります。

特別加入

労災保険の支給対象は労働者であり、原則として経営者などは対象になりません。ただし、中小企業や零細企業のなかには、経営者が自ら労働者と同じような業務を行う企業も多くあります。

そのような経営者などを特別に加入させる制度について規定されています。

その他

その他、労災保険法では以下のような内容が定められています。

  • 給付基礎日額
  • 届け出
  • 不服申し立て
  • 事項

社会保険労務士(社労士)の試験科目!労災保険法の出題傾向は?

選択式は1問、択一式は7問出題

社会保険労務士(社労士)の試験科目の労災保険法は、次のように選択式試験と択一式試験の両方が出題されます。

  • 選択式試験は例年1問(空欄5つ全て労災保険法からの出題)
  • 択一式試験は労働保険徴収法と合わせて10問(労災保険法が7問、徴収法が3問)

労災保険法が保険給付を行うことを目的にした法律なのに対して、労働保険徴収法は労働保険(労災保険と雇用保険)の保険料を徴収する手続きを定めた法律です。

2つの法律は密接な関係性がありますので、社会保険労務士(社労士)の択一式試験ではセットとされていますね。

労災保険法は通達・判例から多く出題される

労災保険法は選択式・択一式とも、通達や判例から多く出題されます。ただし、基本が理解できていれば当該通達や判例を読んでいなくとも解答できる問題も多いです。

そのため、まずはテキストをしっかり学習しましょう。

頻出は保険給付、社会復帰促進事業

社会保険労務士(社労士)の労災保険法の中でも特に重要なのが次の4つの保険給付です。また、社会復帰促進事業からも多く出題されます。

保険給付については、「各給付の支給要件」「支給額」「支給期間」のなどの論点は必ず押さえるようにしましょう。

時効に関する規定も数字が細かくて大変ですが、社会保険労務士(社労士)の試験で狙われやすいポイントです。

また、「特別加入」「特別支給金」「通則」に関する問題も出題されます。

特別加入については、どのような人だったら特別加入が認められるのかを中心に勉強して理解を深めていけば、本番の試験で出題されても解けるでしょう。

社会保険労務士(社労士)の労災保険法の勉強法はこれだ!

保険に関する知識のない初学者の中で、「社会保険労務士(社労士)の試験科目の労災保険法はどうやって勉強すれば良いの?」と悩んでいる方はいませんか?

似たような用語が多くて学習が進むにつれて混乱していきますが、基本をきっちりと学習していれば本番の試験でも確実に得点を取れます。

社会保険労務士(社労士)の試験は7割で合格で満点ではなくてもOKと考えれば、少しは気が楽になるのではないでしょうか。

ここでは社会保険労務士(社労士)の試験科目の労災保険法の勉強法を紹介していますので、これから資格取得を目指す方は参考にしてみてください。

業務災害に関する内容を中心に把握する

社会保険労務士(社労士)の労災保険法の学習においては、まずは業務災害に関する内容を中心に把握しましょう。

  • 総則(目的と管掌、適用事業など)
  • 業務災害及び通勤災害の認定要件
  • 業務災害に関する保険給付

上記は労災保険法の幹となる部分であり、これらを押さえると労災保険法の全体像がざっくりと把握できます。

業務災害に関する内容が得意になると、労災保険法の全体の勉強にゆとりが出てきますよ。

働きながら社会保険労務士(社労士)の資格取得を目指す社会人にとって、業務災害や通勤災害は身近な話題の筈です。

自身の業務や通勤の様子と照らし合わせながら労災保険法の学習を進めることで、少しでも具体的なイメージを持つようにしましょう。

勉強の順番を理解する

労災保険法に限った話ではありませんが、試験範囲の広い社会保険労務士(社労士)の試験は勉強の順番が大切です。

本番の社会保険労務士(社労士)の試験で得点を取るには、下記のような流れで労災保険法の勉強を進めてみましょう。

  1. 序盤は労災保険制度の仕組みや全体像を理解することから始める
  2. 中盤は労災保険法の基本となる保険給付や社会復帰促進事業の内容を押さえる
  3. 後半は細かい数字を含めて過去問頻出項目や重要項目を頭に入れる

参考書と過去問を併用して勉強に取り組めば、社会保険労務士(社労士)の本番の試験で大崩れする心配はありません。

過去問を解いて出題傾向を掴む

社会保険労務士(社労士)の労災保険法の勉強法で、過去問は必須のツールです。

労災保険法は比較的基礎論点を問う問題が多い傾向がありますので、過去問を解いていればどのような問題が出やすいのか把握できますよ。

例えば、2019年の社会保険労務士(社労士)の試験では次の問題が出題されました。

<労災保険に関する次の記述で誤っているのはどれか>

A:年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始めるものとされている。(正しい)
B:事業主は、その事業についての労災保険に係る保険関係が消滅したときは、その年月日を労働者に周知させなければならない。(正しい)
C:労災保険法、労働者災害補償保険法施行規則並びに労働者災害補償保険特別支給金支給規則の規定による申請書、請求書、証明書、報告書及び届書のうち厚生労働大臣が別に指定するもの並びに労働者災害補償保険法施行規則の規定による年金証書の様式は、厚生労働大臣が別に定めて告示するところによらなければならない。(正しい)
D:行政庁は保険給付に関して必要があると認める時は、保険給付を受け又は受けようとする者に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。(正しい)
E:労災保険に係る保険関係が成立し、若しくは成立していた事業の事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体は、労災保険に関する書類をその完結の日から5年間保存しなければならない。(誤り)

実際に過去問を解いてわからなかった部分は、参考書やテキストに戻って復習して記憶に定着させる努力をしてみてください。

まとめ

社会保険労務士(社労士)の試験科目の労災保険法は、保険給付に関する内容がメインです。

労災保険制度を定めることで、労基法の使用者の災害補償責任を実効化させようとしています。

過去の労災保険法の出題傾向を見てみると難問もありますが、どちらかと言うと基礎論点を問う問題が多い傾向があります。

参考書や過去問を使った勉強法で対策すれば得点は難しくありませんので、社会保険労務士(社労士)の資格取得を目指す方は効率的な学習を心がけましょう。