いきなりですが、あなたは「リーダーシップ」と聞いて、どのようなものを思い浮かべますか?
- 「人々を奮い立たせ、自ら高めるように育成できるスキルや才能」
- 「社員の気持ちを一体化させ、ビジネスの課題を解決する経営者や管理職が持つ能力」
- 「時代や環境の変化に対応し、熱い言葉でビジョンを語り、人々を成功に導くこと」
様々な考えがあると思います。
そもそも、リーダーシップとは特定の個人に内包される資質なのでしょうか??
・・・考えれば考えるほど、その正体が掴みづらいリーダーシップ。
この記事では、そんなリーダーシップについて解き明かしていきましょう。
目次
リーダーシップ論
リーダーシップ論 概要
組織の人間関係において、もっとも重要な概念の一つがリーダーシップです。リーダーシップには、これまでにも様々な考え方・定義がされてきました。そのうち1つの定義を見てみましょう。
ハーシーとブランチャードにおけるリーダーシップの定義では、リーダーシップとは、与えられた状況の中で目標を達成するため、個人あるいは集団に影響を及ぼす過程(プロセス)である、としています。
ここにあるとおり、現在では、リーダーシップとは個人の能力や資質に限らない、という考え方が主流です。人間同士の関係性の中で発揮されるもの、場合によっては集団の機能そのもの、という理論が一般的です。
リーダーシップは、どこから生まれるのか
組織のメンバーに対して影響力を与える力(パワー)のことを「社会的勢力」と言います。「社会的勢力」はリーダーシップの主要な発生元と言えるもので、以下のような類型があります。
組織や集団から、公式な力(パワー)として与えられる社会的勢力としては、まず、正当勢力があります。これは、組織から公式に与えられた権限をベースにした勢力です。
つづいて、報酬勢力は、報酬を与える能力からくる勢力です。
さらに、強制勢力は罰則を与える能力がベースになってます。
また、個人の力で獲得する社会的勢力としては、専門勢力があります。これは、技術や知識、能力が優れている場合に発揮されます。
もう一つ、同一勢力というものもあり、他のメンバーが尊敬や個人的魅力を感じていたり、一体感を抱いている場合に発揮されます。
その他、様々な情報を持っていることがベースの情報勢力、ネットワークを持つことによるネットワーク勢力などもあります。
リーダーシップ理論の変遷
リーダーシップ論の変遷は、以下のとおりです。
①特性理論
世の中に実在した優れたリーダーを分析し、「彼の人間的特性のどれが、リーダーとしての資質だったのか」との分析を行う理論です。
言い換えれば、「どのような人間的要素があれば、リーダーとして適格か」を追求した理論です。資質特性理論とも言われます。
しかし、組織内の人間同士の関係性などを考慮していない部分に問題があり、理論として成立しませんでした。
②行動理論
レビンやリカートに代表される理論であり、リーダーシップのスタイル(行動パターン)から類型化を図ってリーダーシップの本質を探求する手法です。
③2次元論
ブレーク&ムートンのマネジリアル・グリッドや、三隅二不二によるPM理論などが代表的であり、「仕事(業績)」と「人間性(集団維持)」など、2つの軸によってリーダーの志向を類型化するタイプの理論です。
④状況理論
常にベストなリーダーシップスタイルというものはなく、状況に応じて最適なリーダーシップは変わる、という理論です。代表的なものには、フィードラーのコンティンジェンシー理論、ハーシーとブランチャードのSL理論、ハウスの目標-経路理論(パス-ゴール理論)があります。別名、コンティンジェンシー理論とも言います。
レビンのリーダーシップ類型論
レビンとはアイオワ大学でリーダーシップに関する科学的な実験を行った人物です。レビンは、以下のとおり、リーダーシップにおけるスタイルを3つに類型化しました。
独裁型リーダーシップ
リーダーが、集団の作業に関する決定を全て独裁的に決定するリーダーシップです。
放任型リーダーシップ
メンバーが個々人で自由に決定するタイプであり、リーダーは決定に関与しません。実質的にはリーダーシップの不在と同義です。
民主型リーダーシップ
集団で決定すべき事項はできるだけメンバー間の討議によって決定するようにして、リーダーはその援助をするタイプのリーダーシップです。
以上のうち、民主型リーダーシップがメンバーの満足度・積極性・集団の凝集性・生産性とも、他のスタイルよりも優れている、という結果になりました。
グループ・ダイナミクス
グループ・ダイナミクスとは「集団における独自の行動様式」のことです。
集団の中においては、独自の集団基準や集団規範が作られ、それに従うように圧力が生じたり、従わないメンバーには相応の制裁があるなどの固有の行動様式がみられる、という理論であり、レビンによって提唱されました。
集団の凝集性
集団のメンバーが互いに好意を持ち、その引き合う状態を、集団の凝集性と言います。
凝集性が高いと、集団の基準やルールに従う人が多くなります。その結果、集団の目的が達成されやすくなると言えます。
斉一性の圧力
集団の凝集性が高くなると、メンバーに対する、集団基準や集団規範への順守の圧力が強くなります。これが斉一性の圧力です。
グループシンク(集団浅慮)
集団の凝集性が高く、かつ外部とのコミュニケーションが欠如している集団では、集団による意思決定が短絡的、つまり浅はかな結論になってしまうことがあります。これがグループシンクであり、その原因には、斉一性の圧力や画一性、視野狭窄の発想などがあります。
グループシフト(リスキーシフト)
集団の意思決定は極端なものになりがちである、という意味です。
リカートのシステムⅣ
ミシガン大学で研究した結果から、リカートは、リーダーと組織特性、生産性の間に相関関係をみつけました。そして、4つのリーダーシップのスタイルに分類しました。
その4つとは、①独善的専制型(システムⅠ)、②温情的専制型(システムⅡ)、③相談型(システムⅢ)、④参加型(システムⅣ)になります。
リカートは、理想的なリーダーシップは、④としました。この参加型のリーダーシップにより、集団のメンバーのモチベーションを高め、かつ高い業績を達成できると考えたのです。
なお、システムⅣの実現は、以下の3つの原則に基づきます。
①支持的関係の原則
上司は部下に、「自分(部下のこと)は集団の中で支持されている」と思わせるようにリーダーシップを発揮すべきである、という原則。支持的関係の原則が徹底されると集団の凝集性が高まります。
②集団的意思決定の原則
組織を小集団の集合体と捉え、課やグループ等の小集団は上位組織の構成員と位置付けます。この捉え方により、小集団内での意思決定への参画が組織全体の意思決定に繋がることになります。結果として、組織構成員の意思決定への参画のモチベーションが高まります。
③高い業績目標の原則
高い業績目標を達成することが昇給/昇進や雇用の安定などに結びつきます。そのため、組織のリーダーは従業員が、自ら高い目標を目指すように導くべきであるという原則です。
オハイオ研究
オハイヨ研究とは、オハイオ州立大学での実証実験のことです。この実験により、リーダーの行動パターンとして「配慮」と「構造設定」という2つのタイプが見出されました。
「配慮」は人間関係志向であり、「構造設定」は課題志向のことです。この実験結果により、後の2次元論が生まれることになりました。
マネジリアル・グリッド
マネジリアル・グリッドとは、ブレイクとムートンが提唱したリーダーシップの考え方です。マネジリアル・グリッドでは、リーダーの関心を、仕事への関心と人間への関心の2次元でマッピングします。そして、両者に関心の高い9・9型のチームマネジメント型が高い業績をもたらすとしました。
PM理論
実証研究から生まれたリーダーシップ理論でありP機能とM機能の2次元でリーダーシップのパターンを分類しています。三隅二不二が提唱しました。
P機能
目標達成機能のことであり、PはPerformanceの略となります。
M機能
集団の維持を優先する機能であり、MはMaintenanceの略です。
PM理論において、両方とも機能が高いPM型が理想的なリーダーシップである、とされています。
フィードラーのコンティンジェンシー理論
フィードラーは、リーダーの置かれている状況により、効果のあるリーダーシップのスタイルは変わる、という考えを提唱しました。
フィードラーは、リーダーのおかれた状況は、次の3要因と関連があると考えました。
①リーダーとメンバーの関係、②仕事内容の明確化の程度、③リーダーの権限の強さ
これらの要因のいずれもが、リーダーにとって好ましい状況、或いは好ましくない状況の場合は、仕事中心型のリーダーシップが有効です。
一方、状況が中間程度の場合には、人間関係中心型のリーダーシップが有効となります。
SL理論
ハーシーとブランチャードの考えた理論です。それが、部下の成熟度に応じて効果的なリーダーシップは異なる、というSL理論です。※
彼らは、部下の成熟度は「①意欲 ②意思と能力 ③教育と経験のレベル」の3要因を総合的に影響すると考えました。
また、部下の成熟度が、低い状態から段階的に高くなるにつれて、指示型→説得型→参加型→委任型の各リーダーシップが有効になると提唱しました。
※SL:Situational Leadershipの略
ハウスの目標-経路理論(パス・ゴール理論)
目標ー経路理論は、パスーゴール理論とも呼ばれ、モチベーションの期待理論をベースとしています。リーダーは部下が「どうすれば成果を達成できるか」「達成した場合の報酬がどれぐらい魅力的か」をきちんと認知させることが必要で、さらに、どうすれば報酬がもらえるのか、その経路を明確にして障害を少なくするよう支援すべき、という考え方です。
リーダーシップ理論(組織論) <まとめ>
この記事では、様々なリーダーシップ理論の類型を見ていきました。
様々なリーダーシップ論があるものの、いずれの理論も、すべての場合において有効というわけではありません。
冒頭に書いた通り、現在では、リーダーシップとは個人の能力や資質に限らない、という考え方が主流です。
リーダーシップとは、人間同士の関係性の中で発揮されるもの、場合によっては集団の機能そのもの、という理論が一般的になっています。
フォロワー(メンバー)の協力があるからこそリーダーのリーダーシップが成り立つ、というのは、当たり前のようで、非常に大切な考え方だといえるでしょう。
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著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |