今回のテーマは「タックスプランニング」、つまり税金に関する科目です。
「税金」と聞くと、イヤなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか(笑)
たしかに、国や地方に対し、大切なお金を納めなければならない税金を、よろこんで支払っている人は少数派でしょう。
さらに、税金の制度は複雑で、分かりにくいことが多いのも、悪いイメージを助長している気がします。
しかし、わが国の治安が良く、安心して暮らせるのは税金のおかげです。
国や地方公共団体が様々な活動をして、社会を維持していくためになくてはならないお金です。
また、税金に関する知識を身に付けることは、賢い節税を実現することにも役立ちます。
このように、世の中のためにも、FPとしての顧客のためにも、そしてあなた自身のためにも役立つのが税金(税制)に関する知識なのです。
以下では、FP技能士2級・3級の試験で問われるタックスプランニングの内容とポイント、勉強法についてご説明します。
タックスプランニングの科目を上手に攻略するためにも、ぜひチェックしてみてくださいね。
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目次
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題されるタックスプランニングとは
まず、FP2級とFP3級の試験科目ですが、以下の一覧の情報のとおり、基本的に同じ科目となっています。
ただし、試験科目は同じでも、それぞれの科目における範囲・深さが2級と3級では異なります。
FP3級では、個人や個人事業主に対する内容が主ですが、2級では、中小事業者(中小企業、法人)に対するファイナンシャルプランニングの内容も扱います。
カンタンにいえば、
個人相手のFPが3級、個人に加えて会社の相手もできるFPが2級
という感じです。
試験科目が同じでも、内容の範囲や深さに大きな差がある、ということが実感できると思います。
3級のタックスプランニングは所得税が中心、2級は所得税に加え、法人税や消費税も出題される
それでは、タックスプランニングの出題は、2級と3級では、どう違うのでしょうか?
カンタンにいえば、3級は所得税が中心、2級は所得税に加え、法人税や消費税も出題されます。
2級・3級とも、学科試験においては「タックスプランニング」で10題出題されます。
3級は10題とも所得税の関連がほとんどです。たまに我が国の税制総論が1題出題されたりします。3級では、個人住民税や個人事業税も学びますが、これらはここ数年出題されていません。
一方の2級ですが、こちらも所得税関連が中心なのは3級と同じですが、出題数は10問中7問程度。残り3問は法人税や消費税などが出題されます。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題されるタックスプランニングの出題範囲(出題内容)は
それでは、タックスプランニングの具体的な出題範囲を見ていきましょう。
ファイナンシャルプランナーの試験で出題される「タックスプランニング」の出題範囲は、以下のとおりです。
- わが国の税制
- 所得税の仕組み
- 各種所得の内容
- 損益通算
- 所得控除
- 税額控除
- 所得税の申告と納付
- 個人住民税
- 個人事業税
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税
- 会社、役員間および会社間の税務
- 決算書と法人税申告書
- 諸外国の税制度
- タックスプランニングの最新の動向
上記のうち、黒文字の部分(1~9、17)は2級と3級で共通の出題範囲、赤字(10~16)は2級のみの出題範囲です。
また、2~7が2級・3級とも出題の中心となる所得税関連の項目です。
特に初心者の方に多いのが、
「所得税だけ覚えれば良いなんて、ラクかも?」
という考えです。
しかし、次のように、所得税の対象となる所得は10種類もあるのです。
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得、退職所得
タックスプランニングでは、様々な所得が、上記10種類のどれに分類されるのか判断できるようになる必要がありますし、さらに、それぞれの所得に対して所得税の計算方法なども覚える必要があります。
以上のような細やかな知識を積み上げることにより、所得の発生から所得税の申告・納税まで、一連の流れが理解できるようになります。
ここは頑張って覚えることが必要です。しかし、それを乗り越えれば、タックスプランニングの科目に関して、かなり理解が深まります。
まずは、10種の所得の知識から、自分のものにしていきましょう。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題されるタックスプランニングの正しい勉強方法や勉強のコツ
ファイナンシャルプランナー(FP)の試験に合格するために、ここではタックスプランニングの勉強方法やコツについて説明していきます。
所得の種類が多くあるなど、暗記中心の科目なのは間違いないですが、ただ単に暗記するだけでは、すぐに忘れやすいですし、そもそも勉強が無味乾燥でつまらなくなります。
そこで「理解をしながら覚える」ことを心掛けましょう。
「所得税の計算の仕組み」や「非課税となる所得」など、「なぜ、そうなのか?」を考えながら覚えると、理解が進みます。
たとえば、
- 退職所得(退職金)を計算する際、1/2を乗じて計算するが、これは「退職金は老後の蓄え、という性格があるため、あまり多く税金を取るのは適切ではない」という考えがあるため
- 通勤手当に課税するのは適切ではないため、一定額まで非課税とする
など、フムフムと、うなづきながら学習すると記憶に残りやすくなります。
出題されやすい「ひっかけ」ポイントをおさえる
3級の学科は2択または3択、2級は4択と、いずれもマークシート方式です。
そこでは、「あれ?」と思う、ひっかけ問題のような選択肢がよく出題されます。
たとえば、マンションなど不動産を賃貸した場合の所得は不動産所得に分類されます。
これは、賃貸の規模が大きくなる、いわゆる「事業的規模」になっても、所得の分類は変わりません。
こうした事実に対し、よく試験において
「不動産の賃貸は、事業的規模で実施すると、不動産所得ではなく、事業所得になる」
という選択肢が頻出しています。(ちなみに上記問題の解答は×です)
そのため、テキストを読んでいて「あれ?」と思うような点があれば、チェックしておくようにしましょう。
所得控除と税額控除を混同しない
特に初心者の方が混同しやすいのが
所得控除と税額控除
です。
そもそも、所得とは次の式で表されます。
所得 = 収入 ー 必要経費
会社のような表現をすれば、「収入とは売上に近い」ものであり、「所得とは利益に近い」もの、といえます。
所得控除とは、この所得からマイナスするものです。
具体的には、医療費控除・生命保険控除・配偶者控除などがありますが、いずれも個人が生活する上での必要経費だと考えてよいでしょう。
所得税の計算では、所得控除を引いた所得を元に、所得税率を乗じて所得税を計算します。
一方の税額控除は、計算された所得税の金額を、直接マイナスするものです。税額控除には住宅ローン控除や配当控除などがあります。
税額控除は、支払うべき所得税の金額からダイレクトにマイナスするものですから、税金の金額に対する影響が大きくなります。
ここでは、
税額控除の方が、税金の金額が大きくマイナスになるので嬉しい!
と覚えておいてもらえれば大丈夫でしょう。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題されるタックスプランニングの頻出論点は?
タックスプランニングにおいても、100点を目指すのではなく、確実に6割を確保する計画を立てるべきです。
まずは、2級・3級共通の頻出論点を見てみましょう。
- 各種所得の内容
- 所得控除(配偶者特別控除、扶養控除など)
- 所得税のしくみ
- 所得税の申告と納付
- 税額控除
- 損益通算
と、所得税については、ほぼすべてを押さえる必要があります。
以上に加え、2級では「法人税」と「消費税」も頻出となっています。
極論すれば、上記の対応を徹底すれば、それ以外の論点はカンタンに見ておくだけで、十分合格点は取れるでしょう。
なお、ファイナンシャルプランナーの3級の試験は基本的な出題ばかりですが、2級では応用的な問題も出題されます。
また、どんなに時間がなくても、テキストを読むインプット学習に加え、問題演習のアウトプット学習も行うべきです。なぜなら、問題演習無しでは「本番で、どのように出題されるのか」が掴めず、焦ったりペースを崩したりする原因になるからです。
何が問われているのかを、しっかり整理しつつ、問題集や過去問を解くことで、
「どんな論点が問われやすいのか」
「どのような表現で問われるのか」
が理解できるようになります。
まとめ
以上、タックスプランニングについてまとめました。
顧客に対するファイナンシャル・プランニングを成功に導くうえで、タックスプランニングの知識は欠かすことはできません。
ぜひ、「タックスプランニング」を攻略して、顧客から頼られるファイナンシャルプランナーを目指してください。