最終更新日: 2026年9月26日/内容確認日: 2026年9月26日
本記事では、犬・猫を中心とする愛玩動物を外来と入院で診療する動物病院で、獣医師1〜数名と愛玩動物看護師・受付の職員を置く、個人から数施設の法人を主なモデルとして想定します。本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。すべての動物病院が入院・手術・エックス線装置を備えるという前提も置いていません。産業動物の診療、往診のみの診療、大学附属の診療施設は対象にしていません。AIに診断名・治療方針・処方・麻酔の可否を決めさせる用途も対象外です。法令の記述は2026年9月25日と26日に確認した条文に基づきます。
1. 結論:動物病院なら何から始めるか
動物病院でAIを使うなら、最初の一手は「来院1件を、動物の記録(診療簿)と飼い主とのやり取り(稟告・見積・説明・意思の確認・指導)に分けて持ち、会計と照合すること」です。次に「医薬品の払出しを、診療簿の処方と同じ来院の単位で照合すること」、その次に「予防の周期を台帳で回し、注射済証やマイクロチップの装着証明書から飼い主の手続までを案内でつなぐこと」が続きます。
この番号は着手の順序で、効果の大きさの順位ではありません。本記事では、2番目と3番目が1番目で揃えた来院の単位と診療簿を入力にすると整理し、この順に置きました(節3)。
一方で、診察から治療方針・処置までの判断、処方、診療簿の確定と指導、説明と意思の確認、届出・通報の判断は、AIに渡せない領域として残ります(担い手と条件は節6・節9)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。
2. 業務全体の流れ
本記事のモデルでは、1件の来院は次の流れで進みます。
- 予約・受付。飼い主と動物を登録し、急患を受けます。
- 問診。飼い主から稟告(りん告。主訴・経過・飼育環境など)を聞き取ります。
- 診察・検査と、診断・治療方針の決定。
- 処置・手術・麻酔と、入院での看護。
- 処方と医薬品の交付。
- 診療簿の記載と確定。
- 飼い主への説明・見積・意思の確認と、保健衛生の指導。
- 会計。
裏側では、予防の周期、届出と通報、麻薬・向精神薬の管理(扱う場合)、開設と管理の手続が動きます。
1件の来院には二者が関わります。診療を受ける動物と、稟告を述べ、説明を受けて意思を決め、指導を受け、費用を払う飼い主です。診療簿の記載事項にも、動物の事項と所有者の事項が並んでいます(節3)。本シリーズでは、動物病院を、来院という出来事を起点に処理が進む型として整理し、狂犬病予防注射の毎年1回などの周期の性格も併せ持つものとしています。
農林水産省の飼育動物診療施設の開設届出状況(令和7年12月31日現在)は届出の内容の集計で、「小動物、その他」の施設13,046のうち、就業獣医師数の区分で獣医師を1人使用する施設は8,067、61.8%です(本記事の計算値)。本記事では、これを稼働している施設の数や、獣医師1人で診療している施設の割合としては扱いません。
3. AI導入優先Top3
番号は着手の順序で、効果の大小を比べたものではありません。各Topの試行の単位は本記事の提案です。
Top1:来院1件を、動物の記録と飼い主とのやり取りに分け、会計と照合する
何をするか。 来院ごとに1つの単位(来院ID)を決め、その下に、診療簿の記載事項の欄に沿った草案(動物の記録)と、稟告・見積・説明・手術や入院の前の意思の確認・指導の記録(飼い主とのやり取り)を分けて置き、後者を会計の明細と照合します。AIが担うのは、稟告の構造化、草案、差の抽出までです。
なぜ最初か。 診療簿の記載事項には、動物の事項と飼い主の事項が並んでいます。診療簿には少なくとも、診療の年月日、診療した動物の種類・性・年齢(不明のときは推定年齢)・名号・頭羽数・特徴、その動物の所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所、病名及び主要症状、りん告、治療方法(処方及び処置)を記載します(獣医師法施行規則第11条第1項)。記載の義務者は診療をした獣医師です(獣医師法第21条第1項)。獣医師は飼育動物の診療をしたときは、その飼育者に、飼育に係る衛生管理の方法その他の保健衛生の向上に必要な事項の指導をしなければなりません(第20条)。本記事では、この二者を同じ来院の単位の下で分けて持つことを、Top2・Top3の入力を揃える最初の手順と整理しています。
どう始めるか。 次の1週間の来院のうち、獣医師1名の再診20件で、Web問診票から稟告を構造化し、診療簿の記載事項の欄に沿って草案を作ります。病名と治療方法の欄は獣医師の口述・入力だけを構造化し、AIに補わせません。同じ20件で、見積・説明・意思の確認・指導の記録を1枚にし、会計の明細と照合します。
何を測るか。 来院1件の診療簿の記載にかかる獣医師の時間、記載事項の欠落の件数、見積と会計の差の件数、意思の確認の記録がある手術・入院の割合。
注意。 草案を確定するのは診療をした獣医師です。AIの草案をそのまま確定しません。
Top2:医薬品の払出しを、診療簿の処方と同じ来院の単位で照合する
何をするか。 払出しのたびに、交付の記録と在庫の出庫を診療簿の処方と来院の単位でつなぎ、差をAIに出させます。
なぜ二番目か。 医薬品には、担い手と記録の義務者が別々に定められています。獣医師は、自ら診察しないで劇毒薬・生物学的製剤・省令で定める医薬品の投与や処方をしてはなりません(獣医師法第18条。節6)。麻薬を扱う施設では、施用の記録は麻薬施用者が診療簿に、帳簿は麻薬管理者(いない施設では麻薬施用者)が付け、向精神薬の記録(第三種向精神薬などを除く)は病院等の開設者が付けます(節9)。本記事では、払出しを来院の単位と診療簿につなげば、これらの記録の照合の入力が揃うと整理しています。
どう始めるか。 直近1か月の交付の記録と在庫の出庫を、診療簿の処方の記載と1つの表に並べ、「来院ID/処方した獣医師/品名と数量/交付の記録/在庫の出庫」の欄で差を出します。麻薬・向精神薬を扱う施設では、出し入れの都度の読み取りを1品目から始めます。
何を測るか。 処方・交付・診療簿の不一致の件数、差の原因の特定にかかる日数、麻薬・向精神薬の帳簿の差の件数。
注意。 照合するのは記録で、処方の決定や調剤ではありません(調剤と手渡しの扱いは節9)。照合の結果は1つの帳簿として扱わず、法令ごとの義務者に渡します。
Top3:予防の周期を台帳で回し、書面から飼い主の手続までを案内でつなぐ
何をするか。 予防の台帳から案内を送り、接種と装着の記録から注射済証と装着証明書の案を作り、飼い主の手続の案内を添えます。
なぜ三番目か。 狂犬病の予防注射の周期、獣医師の注射済証と市町村長の注射済票という別の書面、2027年3月2日施行の施行規則の改正で接種の期間の定めが無くなること、マイクロチップの装着証明書と所有者の登録が、それぞれ法令で定められています(節9)。本記事では、接種と装着の記録を診療簿から拾えば、台帳・書面の案・案内を同じ記録から作れると整理しています。
どう始めるか。 犬の予防の台帳を1つにし、「最後の接種日/次回の案内の時期/注射済証の交付日/注射済票の手続の案内の送付日」の欄を作り、案内のルールに2027年3月2日の切替えを入れます。狂犬病以外の予防の間隔は、法令の要件としてではなく院長が決めて入れます。
何を測るか。 案内から来院までの割合、注射済証・装着証明書の記載の誤りの件数、注射済票の手続についての問い合わせの件数。
注意。 注射済票を交付するのは市町村長で、獣医師が交付するのは注射済証です。案内の文面でこの2つを取り違えないようにし、施行日の前に改正後の内容で案内しません。
4. AIに任せやすい仕事
人が確定した記録やルールに対して機械的に処理でき、差と例外を人が見る仕事です。
- 形を整える。 予約の一元化と初診の登録、外部検査の結果の取り込みと一覧化。
- 照らし合わせる。 獣医師が確定した処方と交付・在庫の記録、飼い主に示した見積と会計の明細。
- 違いを見つける。 日次の締めと入金の差、入院動物の観察値が設定した閾値を超えた変化。
- 足りないものを探す。 未着の外部検査の結果、設備の点検の記録の未実施、使用期限の近い在庫。
- 下書きを作る。 院長が承認した型に沿った予防の案内と、注射済票・犬の登録・マイクロチップの登録の手続の案内。
- 探し出す。 次の予防の時期が来た動物、法令の改正情報、免許や届出の時期が近い職員。
5. AI支援に向く仕事
AIが案を出し、人が全件確認してから使う仕事です。法令が関わる照合と書面はここに置きます。
- 稟告と前回からの変化。 稟告の構造化と、過去の診療簿からの変化の要約。飼い主に確かめてから使います。
- 診療簿の草案。 病名と治療方法の欄は獣医師の口述・入力の構造化だけで、確定は診療をした獣医師です。
- 飼い主向けの書面と記録。 見積、説明資料、退院時の説明文と、説明・意思の確認・指導の記録の草案。料金表に無い費用や獣医師が述べていないリスクを書き足させません。
- 処方の案と説明書。 体重からの用量の計算と投薬歴との重複の検出、交付時の説明書。処方を決めるのは獣医師です(節6)。
- 帳簿・記録の草案。 麻薬を扱う施設の帳簿と診療簿への施用の記録、向精神薬の記録の草案と差の一覧。確認は義務者ごとに行います。
- 書面と届出の候補。 注射済証・装着証明書・診断書の草案と、届出・通報の対象になりうる事例の候補。判断は義務者です(節6)。
6. 人に残す仕事・判断
線の引き方は、「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。AIが90%正しくても、診療簿の確定のように、人が全件確認して確定する仕事があります。
法令が担い手を限っているもの。 獣医師でなければ、牛・馬・めん羊・山羊・豚・犬・猫・鶏・うずらと、政令で定めるオウム科・カエデチョウ科・アトリ科の鳥の診療を業務としてはなりません(獣医師法第17条・同法施行令第2条)。本記事では、これらの動物の診察、診断と治療方針、処置・手術・麻酔、予防注射の前の診察と接種の判断を獣医師に残します。獣医師は、自ら診察しないで劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品の投与若しくは処方をし、又は診断書を交付してはなりません(第18条。検案書などにも同様の定めがあり、診療中死亡した場合に交付する死亡診断書は除かれます)。
愛玩動物看護師は、第17条の規定にかかわらず、診療の補助を業とすることができます(愛玩動物看護師法第40条。名称の使用の停止を命ぜられている者を除く)。診療の補助は、愛玩動物(犬・猫とオウム科・カエデチョウ科・アトリ科の鳥)に対する診療の一環として行われる衛生上の危害を生ずるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるものです(第2条・同法施行令第1条)。農林水産省の資料の業務範囲のイメージは、手術・エックス線検査・病気の診断などを獣医師のみが実施できる診療に、採血・投薬(経口)・マイクロチップ挿入などを獣医師・愛玩動物看護師のみが実施できる診療の補助に置いています。法令ではなく、例示は網羅の一覧でもありません。
麻薬を扱う施設では、麻薬の施用、施用のための交付、麻薬処方箋の交付は麻薬施用者に限られます(麻薬及び向精神薬取締法第27条第1項。研究のための施用などの例外があります)。販売又は授与の目的の調剤については、2026年9月26日に確認した版(2026年5月21日施行)の薬剤師法第19条に、薬剤師でない者に対する制限と、獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときなどのただし書があります(節9)。犬猫等販売業者の義務として装着するマイクロチップは、獣医師又は愛玩動物看護師が装着します(動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第21条の4第1項)。
法令が義務者を定めるもの。 診療簿の記載(節9)と飼育者への保健衛生の指導(第20条)は、診療をした獣医師が行います。狂犬病にかかった犬等、その疑いのある犬等、これらにかまれた犬等を診断し又はその死体を検案した獣医師は、直ちに、その犬等の所在地を管轄する保健所長に届け出ます(狂犬病予防法第8条第1項。獣医師の診断又は検案を受けない場合は所有者)。獣医師は、業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体や、みだりに傷つけられ又は虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく都道府県知事その他の関係機関に通報しなければなりません(動物の愛護及び管理に関する法律第41条の2)。開設の届出と管理者は節9です。
診療施設が責任を持つ判断。 手術・麻酔・入院・高額な検査の前の説明と意思の確認、料金表と未収、広告の掲載、事故と苦情への対応、外部サービスに入れる情報。
7. Best Practice
到達点は、1件の来院と1頭の動物の周期が、同じ記録の上でつながっている構造です(本記事の整理)。第一に、来院1件が動物の記録と飼い主とのやり取りに分かれ、会計とつながっています。第二に、払出しが交付の都度、診療簿の処方と在庫に照合され、帳簿・記録は義務者ごとに届きます。第三に、獣医師の書面と飼い主の手続が台帳の上で1本の流れになり、改正は施行日で案内のルールに反映されます。
8. Before / After
Before。本記事が置いた想定です。 診療簿の記載事項、見積・説明・意思の確認・指導の記録、会計の明細、医薬品の交付と在庫の記録、予防の台帳が、1件の来院や1頭の動物の単位でつながっていない状態です。
After。到達点として置いた姿です。 来院の単位の下に動物の記録と飼い主とのやり取りが並び、会計と照合されます。払出しは交付の都度照合され、予防の案内と書面の案が台帳から出ます。人が決めることは減りません。
9. 法令・規制・情報管理
以下は本記事の実務上の整理です。個別の判断は所管の窓口や専門家に確認してください。未施行の改正は、狂犬病予防法施行規則の改正だけを扱います。
診療簿。 獣医師は、診療をした場合には診療に関する事項を診療簿に遅滞なく記載し(獣医師法第21条第1項)、3年以上で農林水産省令で定める期間保存します(同条第2項)。その期間は、牛・水牛・しか・めん羊・山羊の診療簿は8年間、その他の動物の診療簿は3年間です(同法施行規則第11条の2)。記載事項は節3のとおりです。
薬剤師法。 2026年9月26日に確認した版(2026年5月21日施行)の薬剤師法第19条は、「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方箋により自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときは、この限りでない。」と定めています。号には、患者又は現にその看護に当たっている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合と、医師法第22条第1項各号又は歯科医師法第21条第1項各号の場合が掲げられています。同条の対象は、販売又は授与の目的の調剤です。本記事では、調剤と、調剤した医薬品を会計の場で飼い主に手渡す作業を別の工程として置いています。個々の調剤への当てはめは、所管の窓口に確かめてください。
麻薬と向精神薬(扱う施設に限る)。 2人以上の麻薬施用者が診療に従事する麻薬診療施設の開設者は、麻薬管理者1人を置きます(開設者が麻薬管理者である場合を除く。麻薬及び向精神薬取締法第33条第1項)。麻薬施用者は、麻薬を施用し又は施用のため交付したときは、診療簿に麻薬の品名・数量、施用又は交付の年月日などを記載します(第41条)。麻薬管理者(いない施設では麻薬施用者)は、麻薬診療施設に帳簿を備えて記載し、閉鎖した帳簿を開設者に引き渡し、開設者は最終の記載の日から2年間保存します(第39条)。病院等の開設者は、譲り渡し、譲り受け、又は廃棄した向精神薬(第三種向精神薬などを除く)の品名・数量・年月日などを記録し、記録の日から2年間保存します(第50条の23)。
開設と管理。 診療施設を開設した者は、開設の日から10日以内に、所在地を管轄する都道府県知事に届け出ます。休止・廃止と、届け出た事項の変更も同様です(獣医療法第3条)。開設者は、自ら獣医師として管理する場合のほか、獣医師に診療施設を管理させます(第5条第1項)。
狂犬病予防注射。 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合はその者。以下同じ)は、厚生労働省令の定めるところにより、犬に狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせます(狂犬病予防法第5条)。獣医師は予防注射を行ったときに所有者に注射済証を交付し、所有者は注射済証を市町村長に提示して注射済票の交付を受けます(同法施行規則第12条第1項・第2項)。現行の施行規則第11条は、生後91日以上の犬について、4月1日から6月30日までの間に1回と定めています(3月2日以降に既に受けた犬などの除外と、予防注射を受けていない犬などを所有するに至った者についての30日以内の定めがあります)。狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令(令和八年厚生労働省令第七十三号。2026年4月1日公布、2027年3月2日施行)により、第11条と第12条が改められ、4月1日から6月30日までの期間の定めは無くなります。2027年3月1日までは現行の規定によります。
マイクロチップ。 犬猫等販売業者は取得した犬又は猫にマイクロチップを装着する義務を負い(期限と除外の定めがあります)、それ以外の所有者は装着するよう努めます(動物の愛護及び管理に関する法律第39条の2)。獣医師は、同条により装着しようとする者の依頼を受けて装着した場合は、装着証明書を所有者に発行します(第39条の3第1項)。装着した所有者は、装着した日から30日を経過する日(それまでに譲渡しをする場合は譲渡しの日)までに環境大臣の登録を受け、申請書に装着証明書を添付します(第39条の5)。
個人情報と、生成AI・クラウドへ出す条件。 個人情報データベース等を事業の用に供している者(国の機関等を除く)は個人情報取扱事業者に当たり(個人情報の保護に関する法律第16条)、飼い主の氏名・住所・連絡先を個人情報データベース等を構成する個人データとして扱う場合は、安全管理措置(第23条)と、取扱いを委託する場合の委託先の監督(第25条)が求められます。個人情報取扱事業者は、個人データの漏えい等のうち規則で定める事態が生じたときは個人情報保護委員会に報告し、本人に通知します(第26条。委託を受けた者が委託元に通知したとき、本人への通知が困難で代わるべき措置をとるときの例外があります)。外部へ渡すときは、利用目的の達成に必要な範囲内の取扱いの委託に伴う提供(提供先は第三者に当たらず、委託先の監督の対象)、第三者提供(法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意)、その他のどれに当たるかを人が確かめます(第27条)。生成AIやクラウドへ出すときは、①情報を必要最小限にする、②入力データが学習に利用されるか、③保存期間と削除の方法、④契約上の機密保持、⑤アクセス権限と利用ログ、⑥再委託や国外保存の扱い、を確かめ、組織が承認したサービスに限ります。
10. 最初の30日プラン
1週目:測る。 院長と受付の担当が7日間、5項目を記録します。獣医師1名の来院20件の診療簿の記載時間、同じ20件で稟告を書き写し直した件数と記載事項の欠落、直近1か月の見積と会計の差と意思の確認の記録がある手術・入院の割合、直近1か月の処方・交付・診療簿の不一致、直近3か月の予防の案内の件数と案内から来院までの割合です。仕組みはまだ入れません。
2週目:正本とルールを決める。 来院IDの決め方、診療簿の草案の型と病名・治療方法の欄の扱い、予防の台帳の欄と案内の切替え、注射済証と注射済票の説明文、生成AIに入れてよい情報を決めます。
3週目:人が全件確認する小規模試行。 再診20件の稟告の構造化と診療簿の草案、手術・入院の見積と説明資料の草案、1か月分の交付の記録と診療簿の照合、予防の案内の電子での送付の4つを試します。
4週目:比べる。 1週目と同じ5項目を測り直し、草案の誤り(特に病名・治療方法をAIが補った事例が無いか)と照合で見つかった差を分類します。次に進める仕事は院長が決めます。
11. AI活用成熟度
- Lv1 人依存。 稟告・診療簿・説明・予防の案内が、獣医師と受付の記憶と紙で回っている。
- Lv2 台帳化。 電子カルテ・予約・会計・予防の台帳はあるが、来院の単位でつながっていない。
- Lv3 一元化。 来院の単位に、稟告・診療簿・説明と意思の確認・会計・処方と交付・予防の台帳が集まる。
- Lv4 AI支援。 構造化・草案・照合・案内と書面の案・届出の候補をAIが出し、人が確かめて確定する。
- Lv5 仕組み化。 来院の記録が次の来院と案内の材料に戻り、法令の改正が施行日でルールに反映される。
Lv5は、AIが獣医師の判断を自動化した状態ではありません。節6の判断は人が行います。
12. FAQ
Q. AIが作った診療簿の草案を、そのまま保存してよいですか。 A. 診療簿に遅滞なく記載する義務を負うのは、診療をした獣医師です(節9)。本記事では草案と確定を分け、診療をした獣医師が確かめて確定する運用を置いています。
Q. 狂犬病予防注射の案内は、これからも4月から6月の期間で組んでよいですか。 A. 現行の施行規則は4月1日から6月30日までの間に1回と定めていますが(除外などの定めがあります)、2027年3月2日に施行される施行規則の改正で、この期間の定めは無くなります(節9)。案内のルールは施行日で切り替えます。
Q. 注射済証と注射済票は、何が違いますか。 A. 注射済証は、予防注射を行った獣医師が犬の所有者に交付する書面です。注射済票は、所有者が注射済証を市町村長に提示して交付を受けるものです(節9)。
Q. 愛玩動物看護師に任せられるのは、どこまでですか。 A. 愛玩動物看護師が獣医師法第17条の規定にかかわらず業とすることができるのは、獣医師の指示の下に行われる愛玩動物への診療の補助です(名称の使用の停止を命ぜられている者を除く。節6)。行政の資料の例示は法令ではないため、個々の行為は所管の窓口に確かめてください。
13. 関連業態・シリーズ導線
歯科医院の記事は、本記事の整理では診療を受ける本人が説明と会計の相手でもある業態として、来院1件の記録の分け方を見比べるときに読めます。
業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。
14. この記事を自社に当てはめたい方へ
入院や手術を行うか、麻薬・向精神薬やエックス線装置を扱うかで、最初に並べる記録と義務者は変わります。
15. 無料AI戦略診断/AI顧問
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