医療法人本部のAI活用|最初の一手と人に残す判断

医療法人本部のAI活用:定款に定める病院・診療所と附帯業務を1つの台帳で照合し、実態との食い違いはAIが候補として示し、定款の変更の要否の判断と決議は人が行う流れ

最終更新日: 2026年10月11日/内容確認日: 2026年10月11日

本記事では、一の都道府県の区域内で病院1か所と診療所1〜3か所を開設する、社団たる医療法人で持分の定めのないものの法人本部を主なモデルとして想定します。社会医療法人、定款に基金の定めがある医療法人、公認会計士又は監査法人の監査を要する医療法第51条第2項の医療法人には当たらず、介護老人保健施設・介護医療院を開設せず、開設する全ての病院・診療所の管理者を理事に加えている(管理者の一部を理事に加えない認可(同法第46条の5第6項ただし書)を受けていない)前提です。この対象は本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。病院・診療所の中の診療と施設の運営、施設ごとの勤務の割り当て、税務は扱いません。

目次

1. 結論:医療法人本部なら何から始めるか

医療法人本部でAIを使うなら、最初の一手は「定款に定める病院・診療所と附帯業務を1つの台帳で照合し、定款の変更の区分につなげること」です。次に「病院・診療所ごとの収益と費用を集計し、経営情報の報告の下書きと損益計算書を照合すること」、その次に「関係事業者を台帳で持ち、取引のたびに相手方を照合すること」が続きます。

3つとも、医療法人に固有の制度(定款に記載する病院・診療所と附帯業務、病院又は診療所ごとの経営情報の報告、関係事業者との取引の状況に関する報告書)を起点にしています。番号は効果の大きさの順位で、Topの記録を入力に使う業務の区分の数(本記事の業務の分解で数えた計算値で10・7・5)の比較です。法令上の重要度の比較ではありません。

一方で、役員の選任、定款の変更の決議、利益相反取引と事業報告書等の承認、監事の監査、附帯業務に当たるかの判定、届出・報告の決定は、AIに渡しません(節6)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、法人本部の1年は会計年度(定款に別段の定めが無ければ四月一日から翌年三月三十一日まで・医療法第53条)に沿って進みます。

  1. 予算・事業計画の案と、理事会の決定。
  2. 施設の月次の収益の報告の取込みと入金の照合(収益の入口)、会計処理と施設別の集計。
  3. 支出・契約の執行と、取引の相手方の照合。
  4. 事業報告書等の作成(毎会計年度終了後二月以内・第51条第1項)。
  5. 監事の監査、理事会の承認、定時社員総会での貸借対照表・損益計算書の承認。
  6. 事業報告書等と監事の監査報告書の届出(厚生労働省令で定めるところにより毎会計年度終了後三月以内・第52条第1項)、経営情報の報告(報告を要する場合。節3)。

これに機関の運営、登記、職員の人事・労務が加わります。本シリーズでは、会計年度の暦で反復する「周期型」を主、管理者の交代などの状態の変化で始まる「イベント駆動型」を従に整理しています。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(業務マップ上の範囲) 記録の単位 実施の順序
導入前提:定款・規程、社員名簿・役員の名簿、病院・診療所の一覧(名称・所在地・管理者)の写し — — ①(2週目)
Top1:定款に定める施設・附帯業務の台帳と、定款の変更の区分の候補 最も大きい(10) 施設1行・附帯業務1行と、定款の変更1件ごとの区分 ②(2週目に様式、3週目に試行)
Top2:施設別の収益・費用の集計と、経営情報の報告の下書き・損益計算書との照合 2番目(7) 施設1つ・会計年度1年の収益と費用 ②(Top1と並行)
Top3:関係事業者の台帳と取引の照合、報告書の下書き 3番目(5) 関係事業者1者1行と、取引の申請1件ごとの照合 ②(Top1・Top2と並行)

3つとも定款・施設の一覧・役員の名簿を入力にするため導入前提を先に置き、Top2・Top3はTop1の完了を前提にしません。括弧の数は本記事の業務の分解で数えた計算値で、記録の単位も本記事の設計です。

Top1:定款に定める病院・診療所と附帯業務を1つの台帳で照合し、定款の変更の区分につなげる

何をするか。 病院・診療所ごとの名称・所在地・管理者と、附帯業務ごとの医療法第42条の号を、定款の記載と照らし合わせる台帳にします。AIは台帳の照合、新しい事業の号の候補、定款の変更の要否と区分の候補、変更の案と新旧対照表の下書きを作ります。

なぜ最も大きいか。 定款には、その開設しようとする病院・診療所等の名称及び開設場所を定めなければなりません(医療法第44条第2項。ほかの記載事項は同項)。医療法人は、開設する病院・診療所等の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、同法第42条第1号〜第8号の業務(保健衛生に関する業務など)の全部又は一部を行うことができます(附帯業務)。社団たる医療法人の定款の変更は社員総会の決議によらなければならず、事務所の所在地と公告の方法に係る変更を除き、都道府県知事の認可を受けなければ効力を生じません(第54条の9第1項・第3項・医療法施行規則第33条の26。除かれる二つの変更をしたときは、遅滞なく変更した定款を都道府県知事に届け出なければなりません・第54条の9第5項)。台帳は議案や施設別の集計などの入力になり、10の業務の区分に及びます。

どう始めるか。 定款の現行の版と施設の一覧から台帳を作り、定款の記載と一致しない行を数えます。次の新しい事業の申出から、AIの号の候補を通します。

何を測るか。 定款の記載と施設・附帯業務の実態が一致しない行の数、新しい事業の申出から附帯業務の判定までの日数、定款の変更の認可の申請書類の補正の件数(いずれも1週目に実測)。

注意。 台帳の照合は一致しない行だけを人が見て、号・要否・区分の候補と案は担当者が全件確かめます。附帯業務に当たるかは本記事では判断しておらず、判定は法人が行います。本記事の設計では、判定が「未確認」の事業は附帯業務として始めず、区分が「未確認」の変更は認可を要するものとして扱います。

Top2:病院・診療所ごとの収益と費用を集計し、経営情報の報告の下書きと損益計算書を照合する

何をするか。 仕訳に施設の区分を付け、施設ごとの収益と費用を集計します。AIは配分の規則による集計、報告の項目の一覧の候補と値の下書き、施設ごとの合計と損益計算書の差の一覧を作ります。

なぜ2番目か。 医療法人(厚生労働省令で定める者を除く)は、厚生労働省令で定めるところにより、開設する病院又は診療所ごとに、その収益及び費用その他の厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければなりません(医療法第69条の2第2項)。報告は毎会計年度終了後三月以内(第51条第2項の医療法人は四月以内)に行います(医療法施行規則第38条の5)。一方、損益計算書は事業報告書等の一部として毎会計年度終了後二月以内に作成し(医療法第51条第1項)、社員総会の承認を受けます(第51条の2第3項)。記録は予算などの入力になり、7の業務の区分に及びます。

どう始めるか。 前年度の会計帳簿から施設ごとの収益と費用の表を作り、施設ごとの合計と前年度の損益計算書の差を一覧にします(試行)。

何を測るか。 会計年度の終了から経営情報の報告までの日数、施設ごとの合計と損益計算書の差の件数、配分の規則に当てはまらない費用の件数(1週目に前年度の記録で実測)。

注意。 集計は配分の規則に当てはまらない費用と施設の付かない取引だけを、損益計算書との照合は説明できない差だけを人が見て、項目の一覧と報告の値の下書きは担当者が全件確かめます。本記事の設計では、様式と記載要領の原本が手元に無い間は報告の値を作らず、自法人が報告を要しない者に当たるか(本記事では判断していません)を確かめるまでは報告するものとして準備し、共通費の配分の規則は、様式・記載要領が定めていない部分を法人が決めます。会計は医療法と同法に基づく厚生労働省令の規定によるほか一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従い(第50条)、医療法人会計基準は第51条第2項の医療法人が対象です。

Top3:関係事業者を台帳で持ち、取引の申請のたびに相手方を照合して、報告書の下書きを作る

何をするか。 役員とその近親者などの申告から、関係事業者の候補を1者1行の台帳にします。AIは台帳と相手方の照合の候補、年度の取引の当てはめの候補、報告書の下書き、配当に当たるおそれのある支出の候補を作ります。

なぜ3番目か。 事業報告書等には、関係事業者(理事長の配偶者がその代表者であることその他の、医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者)との取引の状況に関する報告書が含まれます(医療法第51条第1項)。医療法施行規則第32条の6は、役員又はその近親者(配偶者又は二親等内の親族)、役員又はその近親者が代表者である法人などが、事業収益又は事業費用の額が一千万円以上であり、かつ当該会計年度の本来業務・附帯業務・収益業務の事業収益の総額又は事業費用の総額の十パーセント以上を占める取引などを医療法人と行う場合を、この関係と定めています(範囲と基準の全部は同条)。理事が自己又は第三者のために医療法人と取引をしようとするときなど一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(2026年10月10日に確認した版(2026年6月24日施行))第84条第1項各号の場合、その理事は理事会で重要な事実を開示してその承認を受けなければならず、取引をした理事は、取引後遅滞なく重要な事実を理事会に報告しなければなりません(同法第84条第1項・第92条第2項。医療法第46条の6の4・第46条の7の2第1項による読替え準用)。医療法人は剰余金の配当をしてはなりません(医療法第54条)。台帳の記録は理事会の付議などの入力になり、5の業務の区分に及びます。

どう始めるか。 役員の名簿から申告の様式を作り、本記事の設計では利用目的を明示してから申告を受け取ります。前年度の取引を台帳と突き合わせ、当てはめの候補を前年度の報告書と比べます(試行)。

何を測るか。 前年度の関係事業者との取引の状況に関する報告書の作成にかかった日数、承認の記録が見つからない競業・利益相反取引の件数、申告の無い役員の数(1週目に前年度の記録で実測)。

注意。 台帳の候補・相手方の照合・報告書の下書きは担当者が全件確かめます。取引の抽出と当てはめは区分の付かないものと基準の境目のものだけを、配当に当たるおそれは抽出された候補だけを人が見ます。当てはめは本記事では判断しておらず、承認は理事会、配当に当たるおそれの判断は法人が行います。本記事の設計では、承認の記録が無い利益相反取引は決裁しません。

4. AIに任せやすい仕事

結果をそのまま次へ渡せる仕事で、照らし合わせる相手は人が確定した記録です。本記事の設計では、照合・集計・抽出・算出は法人の環境で動く規則による処理で行い、外部に送りません。

  • 形を整える。 社員名簿の変更、役員の名簿への選任の結果の反映、労働者名簿の訂正、賃金台帳の記入。
  • 照らし合わせる。 定款の記載と施設・附帯業務の台帳、施設の請求額と入金、財産の台帳と会計帳簿。
  • 違いを見つける。 施設ごとの報告の値の合計と損益計算書の差、予算の執行の状況。
  • 足りないものを探す。 期限を過ぎて完了の記録が無いもの、役員の任期の満了と欠員、管理者の交代による理事の職の喪失(医療法第46条の5第6項本文で理事に加えた管理者が職を退いたとき・同条第7項)。
  • 下書きを作る。 収益の計上の候補、施設別の仕訳の候補、人が確定した給与の規程と計算の条件による給与の計算(規程の値が法令に適合するかの確認は別の工程です)。
  • 探し出す。 関係事業者との取引、剰余金の配当に当たるおそれのある支出。拾ったものは候補で、人が確かめます。

不一致・欠け・例外だけを人が見ます。見逃しが異常として現れない確認(照合の候補や下書き)は節5です。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補・下書きを作り、担当者が全件確認してから使う仕事です。確認を挟むことは手間ではなく、品質の設計です。

  • 定款の定めの台帳への登録、附帯業務の号の候補、定款の変更の要否と区分の候補、変更の案と新旧対照表
  • 経営情報の報告の項目の一覧と、施設ごとの報告の値の下書き
  • 関係事業者の台帳、取引の相手方の照合、関係事業者との取引の状況に関する報告書の下書き
  • 招集の通知、議事録の案、役員候補者の資格の照合表、事業報告書等の案
  • 職員の労働条件の明示の書面、社会保険・雇用保険の届出の書類
  • 外部へ渡す情報の委託・第三者提供・外国にある第三者の区分の候補

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方の原則は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。

法令が機関に置いている判断。 社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によって選任します(医療法第46条の5第2項)。理事会は、業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、理事長の選出及び解職を行い、重要な資産の処分及び譲受け、多額の借財、重要な役割を担う職員の選任及び解任などの決定を理事に委任できません(第46条の7第2項・第3項。どれが当たるかは本記事では判断していません)。事業報告書等は、厚生労働省令で定めるところにより監事の監査を受け、その後に理事会の承認を受けます(第51条第4項・第6項)。本記事の設計では、法人本部は資料の作成と提供までを担います。

法人と理事会が責任を持つ判断。 以下は本記事の整理です。

  • 附帯業務の判定、認可の申請・届出・経営情報の報告の決定、共通費の配分の規則、剰余金の配当に当たるおそれの判断(法人)。
  • 職員の採用と配置・異動の決定(重要な役割を担う職員の選任及び解任は理事会。それ以外は定款・規程で定める決裁者)。
  • AIに入力してよい情報と条件、外部へ渡す情報の区分、漏えい等の報告と本人への通知の判断(法人)。

AIの照合や下書きがどれほど正しく見えても、これらは人が決めます。

7. Best Practice

本記事の整理では、到達点は、施設と附帯業務・施設ごとの数字・関係事業者との取引が同じ台帳で照らし合わされ、前提が「未確認」の間は次の工程に進まない構造です。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界の実態の描写ではありません。 定款の写し、施設の一覧、会計の区分、役員の申告が別々の記録で、それらを結ぶ台帳がない状態です。この状態では、新しい事業の申出のたびに、定款と医療法第42条の号を一から照らし合わせることになります。

After。到達点として置いた姿です。 「未確認」の事業は附帯業務として始まらず、施設ごとの合計と損益計算書の差は報告の前に一覧になり、承認の記録が無い利益相反取引は決裁されません。判断は変わらず機関と法人が行います。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文を確かめた規律だけを挙げており、すべての規律ではありません。法令は2026年10月10日(個人情報の保護に関する法律第150条と労働基準法は10月11日)に確認した、その日に施行されている版によります(医療法・医療法施行規則・社会保険労務士法・個人情報の保護に関する法律は2026年10月1日施行の版)。未施行の改正は扱っていません。

職員の人事・労務。 社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、その提出に関する手続の代行、事務代理、帳簿書類の作成の事務を業として行うことを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合と、政令で定める業務に付随して行う場合を除きます)。

本記事の整理では、医療法人が自らの職員の書類を自ら作成し、届出の書類を自ら提出することは、同条の「他人の求めに応じ報酬を得て」の外にあります。本記事の設計では、社会保険・雇用保険の届出の書類は法人本部が自ら作成して届け出ます(届出の期限と様式は本記事では扱いません)。労働者名簿(日日雇い入れられる者を除く各労働者について)と賃金台帳は、使用者が各事業場ごとに調製し、賃金台帳には賃金支払の都度遅滞なく記入し、これらを保存しなければならず(労働基準法第107条〜第109条)、本記事の設計では法人本部が行います。外部に報酬を払って書類の作成や提出の代行を依頼するときは、社会保険労務士又は社会保険労務士法人に依頼します。

個人情報。 個人情報の保護に関する法律では、個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者(国の機関等を除く)が、それを構成する個人データの安全管理措置と、取扱いを委託する場合の委託先の監督を行います(第16条・第23条・第25条)。本記事の設計では、役員・社員・職員の名簿、役員候補者の書類、近親者の申告、賃金台帳、健康診断の結果を、個人データ・要配慮個人情報に当たりうる情報として扱います(当たるかは本記事では判断していません)。要配慮個人情報(本人の病歴、犯罪の経歴など、法と政令で定める記述等が含まれる個人情報)は、法令に基づく場合など第20条第2項各号の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません(第2条第3項・第20条第2項)。本記事の設計では、欠格事由に関する書類は候補者本人の同意を得て受け取り、同意又は各号の例外の確認が済むまで受け取りません。法人本部は施設から金額と人数の集計を受け取り、患者ごとの記録・診療の内容は業務の入力にしない設計です。

個人情報取扱事業者は、個人情報保護委員会規則で定める事態(要配慮個人情報が含まれる個人データ(高度な暗号化その他の必要な措置を講じたものを除く)の漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態など)が生じたときは、規則で定めるところにより、その旨を個人情報保護委員会(第150条第1項により権限が事業所管大臣に委任されている場合はその大臣。委任の有無は本記事では判断していません)に報告しなければなりません(第26条第1項。委託を受けた者が委託元に通知したときを除きます。事態の全部は個人情報の保護に関する法律施行規則第7条)。報告は事態を知った後速やかに行い、事態を知った日から三十日以内(不正の目的をもって行われたおそれがある行為による事態は六十日以内)に所定の事項を報告します(同規則第8条)。

本人への通知は報告とは別の規定で、事態を知った後、当該事態の状況に応じて速やかに行います(第26条第2項・同規則第10条。委託元に通知した受託者と、通知が困難で代わるべき措置をとる場合を除きます)。

個人データの第三者への提供は、法令に基づく場合など第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ本人の同意が要り、利用目的の達成に必要な範囲内において取扱いの全部又は一部を委託することに伴う提供では、提供を受ける者は第三者に当たりません(同条第5項第1号。委託に当たるかは本記事では判断していません)。外国(規則で定める外国を除く)にある第三者(規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除く)への個人データの提供は、第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が要り、この場合は第27条を適用しません(第28条第1項)。

AIに入れる情報の線。 本記事の設計では、欠格事由に関する書類の記述と職員の健康診断の結果は生成AIに入れません。そのほかの個人データを含む情報は、委託に当たり外国にある第三者に当たらないと確かめたサービスに限って生成AIに渡し、それまでは個人データを除いた文面(様式・条文・数値の集計)だけを渡します。入れる前には、①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④契約上の機密保持とデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など法人の規程上確認が必要な事項、の6点を確かめ、法人が利用を承認したサービスに限ります。法令の要件ではなく、法人として決める運用です。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 現行の定款と施設の一覧、前年度の記録から、節3の9つの指標(Top1から順に①〜⑨とします)を数えます。記録が無い項目は0でなく「記録なし」とします。

2週目:写しと条件を決める。 導入前提の写しを集め、AIに入力してよい情報と条件、外部へ渡す情報の区分の判定、要配慮個人情報に当たりうる記述の取得の前の確認の手順を決めます。Top1〜3の台帳の欄・配分の規則の案・様式を用意します。

3週目:人が確かめる小規模試行。 Top1〜3を、節3の「どう始めるか」と「注意」のとおり試します。

4週目:比べる。 3週目に試した範囲で①〜⑨を測り直し、1週目と比べます。次の定款の変更・決算期・取引の申請から本番で使うかと、配分の規則を理事会に諮るかを、法人が決めます。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 定款と施設の対応、配分、関係事業者を、担当者がその都度確かめる。
  • Lv2 台帳化。 Top1〜3の台帳と集計の表がある。
  • Lv3 一元化。 台帳から区分・集計・照合が作られ、判定・承認・報告の記録が台帳に戻る。
  • Lv4 AI支援。 AIが候補と下書きを作り、担当者が確かめる。
  • Lv5 仕組み化。 前提が「未確認」の工程に進まない止めが、台帳の状態から働く。

Lv5は、AIが判定・承認・監査・届出を自動で決める状態ではありません。

12. FAQ

Q. 新しい事業が附帯業務に当たるかを、AIに判定させてよいですか。 A. 当てはめは本記事では判断していません。AIは号の候補まで、判定は法人です。判定が「未確認」の事業は附帯業務として始めない設計です(節3)。

Q. 経営情報の報告は、すべての医療法人がするのですか。 A. 厚生労働省令で定める者は除かれます。自法人が当たるかは本記事では判断していません(節3)。

Q. 関係事業者との取引は、報告書に載せれば足りますか。 A. 報告書の対象、理事会の事前の承認を要する理事の取引、剰余金の配当の禁止は別々の規律で、どれに当たるかは本記事では判断していません(節3)。

Q. 役員候補者の書類や職員の健康診断の結果を、生成AIに入れてもよいですか。 A. 本記事の設計では、欠格事由に関する書類の記述と職員の健康診断の結果は入れません。そのほかの個人データを含む情報は節9の線のとおりです。

13. 関連業態・シリーズ導線

私立学校法人の記事は、本記事とは別の業態の記事で、私立学校法の学校法人の法人本部を扱い、役員・評議員を1人1行の台帳で持つことをTop1に置いています。

内科クリニックの記事は、本記事とは別の業態の記事で、外部に出した検査を1件ごとの状態で持つことをTop1に置いています。本記事は病院・診療所の中の診療と施設の運営を扱いません。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自法人に当てはめたい方へ

定款や台帳の整い方で、最初の一手は変わります。定款と施設の一覧の写しが無いなら導入前提から、あるなら施設と附帯業務の台帳から始めます。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自法人のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。

自法人の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標登録出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Claude AI活用 最強の教科書』(技術評論社・2026年10月刊)、『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)、『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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