今回のテーマは「行政書士としての副業」。
行政書士として働くには、
「副業」「雇用(勤務・転職)」「独立開業」
の3つがあります。そのなかで、「副業」がもっともスモールスタートと言えるでしょう。
スモールスタートと言えば「堅実」なイメージですからメリットが多そうな気もしますが、もちろん、デメリットも存在します。
この記事では、そんな「行政書士の副業の実情、メリット・デメリット」などについて、分かりやすく説明します。
ぜひ、あなたも「行政書士の副業事情」について、ポイントを抑えて頂ければ、と思います。
目次
行政書士として副業は可能なの?
近年では副業を営んでお金を稼ぐために、行政書士の資格勉強を始めるサラリーマンが増えました。
一昔前とは違って副業を容認する会社が多いので、行政書士の資格を活かすのは選択肢の一つです。
結論から言うと行政書士として副業は可能で、副業行政書士は少なからずいます。
副業行政書士がどのような人を指しているのか簡単に見ていきましょう。
- 他士業との兼業ではなく、一般的な企業に勤めている
- サラリーマン(会社員)等として働きながら行政書士登録をしている
行政書士の試験は決して簡単ではありませんが、最近増えてきているスマホ動画対応の通信講座などを上手く利用すれば働きながらでも資格を取得できますよ。
副業するには登録が必要!
「試験に合格すれば行政書士として副業できる」「今すぐにお金を稼ぐことができる」と考えている方もいるのではないでしょうか?
しかし、行政書士として仕事を進めるに当たり、行政書士登録が必要です。
これは専業でも副業でも全く一緒で、日本行政書士会連合会の名簿に登録の手続きを行う作業を指しています。
以下では、どうやって行政書士登録をすれば良いのか流れをまとめてみました。
- 居住地の都道府県行政書士会に申請する(書類の提出)
- 都道府県行政書士会から日本行政書士会連合会に書類が送られる
- 日本行政書士会連合会で登録の審査が行われる
- 受理されると行政書士としての登録が完了する
試験に合格しただけでは、行政書士を名乗った仕事はできないと心得ておきましょう。
また、行政書士登録には、決して安くはない費用が掛かります。
詳細は、行政書士登録に関する記事に書きましたので、そちらでチェックしてみてください。
「とりあえず登録」は認められない
「そのうち副業をする予定だから、とりあえず登録しておこう」
実は、このようなことは許されていません。
というのも、日本行政書士連合会が備えている行政書士名簿に登録をした場合、「行政書士としての業務を行う」ことが義務づけられるからです。
副業であれ独立開業であれ、登録後は行政書士として活動しなければならないのです。
※詳しくは後述しますが、行政書士法11条に「依頼に応ずる義務」というものがあり、登録した行政書士は顧客から依頼があった場合、その依頼に応ずる義務があります。
逆に言えば、登録した場合は必ず行政書士として働くことが前提になっているため、行政書士の登録審査は厳しいものになっているのです。
行政書士として副業するメリット
専業ではなく副業として行政書士を始めるメリットをいくつか挙げていきます。
- 本業の会社から毎月一定の収入があるため、稼げなくても生活の基盤は十分に維持できる
- 副業である程度稼ぐことができれば、年収が上がってゆとりある生活を送ることができる
- いきなり初期費用を費やして独立開業するリスクを回避できる(仕事の一連の流れを副業で確認できる)
- 定年は特に設定されていないため、本業を定年退職した後も収入が入って老後の生活が安定する
サラリーマンとしての安定した収入に加えて、副業で稼ぐことができれば今よりも更に生活は安定するでしょう。
副業の方法によって変わりますが、行政書士は行政書士法に基づく国家資格ですので、資格を持っているだけでも価値があります。
行政書士の資格を活かした副業が向いている人の特徴
下記に該当する方には、行政書士の資格を活かした副業が向いています。
- 副業から仕事をスタートして実績を積み重ねたい
- 本業の給料や年収が低くて不満を抱えている
- 行政書士として独立開業したいけど、初期費用が全然足りない
行政書士を正社員として採用している事務所はそこまで多くありませんので、独立開業が目的で資格を取得するケースがほとんどです。
しかし、いきなり会社を辞めて開業するにはリスクが伴うため、まずは副業として行政書士の仕事をやってみてはいかがでしょうか。
個人的には、この「副業⇒独立・開業」という流れがオススメだと思っておりまして、副業の間に仕事を覚え、仕事の取り方を学び、成功するための独立開業戦略を検討するのが一番です。
「仕事の取り方・覚え方」は、下記を参考にしてください。
行政書士の副業でおすすめの仕事
行政書士の仕事は、本業でも副業でも基本的には一緒です。
行政書士の業務は法律系の国家資格の中でも特に範囲が広く、実際に扱う書類の数は10,000種を超えています。
大別すると、以下のような業務になります。
- 官公署(役所)に申請する書類の作成や許認可申請の代行
- 契約書など権利関係の書類の作成代行
- 書類作成に関する相談対応(コンサルティング業務)
本業でも副業でも自身で営業活動を行い、行政書士としての仕事を確保しないといけません。
行政書士試験の受験講師などの副業も有望
行政書士の資格を活かした副業としては、行政書士試験講座の講師も良いでしょう。
行政書士は年間5万人が受験申込する資格。士業の中でも受験者数の多さは上位となります。
そのため、講座の講師に対する求人は多く、様々な資格スクールでは、常勤講師はもちろん、非常勤やパート・アルバイトの講師なども募集しています。
受験講師の報酬は、1時間当たり3,000円以上。一般的な業務と比べると、かなり高給なのが分かります。
行政書士として副業する上で押さえておきたい注意点
「行政書士の資格を持っていれば、副業を営んでたくさん稼げる」と考えているサラリーマンはいます。
しかし、行政書士として副業する上で事前に押さえておくべき注意点がありますので、一度チェックしておきましょう。
行政書士として副業するなら就業規則を確認しよう
まず最初に、行政書士として副業するなら今働いている会社の就業規則を確認しないといけません。
就業規則で副業がダメ(副業禁止)と記載されているのにも関わらず、行政書士としての仕事をすると当然のように罰せられますよ。
副業がOKなのかNGなのかは、会社の就業規則の「服務規律」の部分に記載されているケースがほとんどです。
服務規律は勤務する上での心構えや行動様式などに関する注意点のことで、下記のように記載されていると副業はできません。
- 副業はこれを禁止する
- 社員は職務に専念し、副業等の社外における営利活動を禁止する
就業規則を守らずに行政書士として副業すると、最悪の場合は解雇されますので気を付けてください。
副業するなら行政書士法を順守しよう
これから行政書士として副業する予定の方は、行政書士法を順守しましょう。
ただ都道府県行政書士会に登録すれば良いわけではなく、行政書士法に従って次の義務が発生します。
- 行政書士法10条の「行政書士の責務」
- 行政書士法11条の「依頼に応ずる義務」
- 行政書士法12条の「秘密を守る義務」
- 行政書士法13条の「会則の遵守義務」
副業とはいえ、行政書士登録はそれだけで立派な国家資格の専門家ですので、覚悟を持って業務を遂行すべきです。
「依頼に応ずる義務」が副業のネックになる??
行政書士法11条には、以下のように規定されています。
行政書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。
「平日は本業があるので、そのご依頼を受けられません」というのはNGです。
つまり副業であれ、登録して行政書士を名乗る以上、「依頼に応じる義務」が付いてまわります。
以上を考慮した対策としては
- 副業の間は派手な営業活動は控える
- あくまで副業は独立開業までのステップと考え、業務が増えてきたら専業を検討する
などが挙げられます。中途半端に「副業で適当に儲けよう!」という考え方は許されないのです。
行政書士としての副業を成功するためのポイント
行政書士としての副業を成功するために、押さえておきたいポイントをまとめてみました。
- 会社の就業規則を見て副業しても大丈夫なのか事前に確認しておく
- 行政書士法に目を通して本業と副業を混同しないようにする
- 副業でスキルアップを目指し、最終的には独立開業を目指す
- 成功している行政書士をモデルケースにして研究する
- 仕事を確保する方法や土日の副業で収まる仕事量にする工夫を把握する
サラリーマンの副業としての行政書士は、やり方によっては両立できます。
「開業するまでに経験を積みたい」という方は、前述の行政書士法11条の「依頼に応ずる義務」に注意しながら、副業行政書士として働き始めてみてください。
行政書士として副業するデメリット
副業で行政書士の仕事に携わる場合、何も良いことばかりではありません。
いくつかのデメリットや弊害もありますので、行政書士として副業を営む予定の方は要チェックです。
- 官公庁(役所)を相手にする仕事や業務が多く、平日の昼間に時間を確保できないと両立が厳しい
- 業務を受注できても、本業が忙しいと顧客に対する柔軟な準備や対応がしにくい
- 顧客からの急ぎの電話や問い合わせに対応できないと大きな機会損失になる
- 土日に行政書士として働くと、体力面でも精神面でもキツくなって本業に支障が出る
- 行政書士として安定した副収入を得たいのであれば、自身で営業活動を行う必要がある
専業でも副業でも、行政書士として働くのであれば顧客を第一に考えないといけません。
また、登録するだけで費用が発生しますので、「行政書士会に登録しているけど仕事はしない」というのは大変なムダになってしまいます。
本業があまりにも忙しくて行政書士の仕事の時間を確保できない人は、現実的に副業は難しいと心得ておきましょう。
行政書士の専業が向いている人の特徴
下記に該当する方は、副業ではなく専業として行政書士の仕事と携わるべきです。
- 平日も土日も本業で拘束されることが多く、顧客への対応が難しい
- 知人や同業者からの紹介で顧客をしっかりと獲得できる
- ある程度仕事を確保できるようになり、行政書士として独立開業したい
サラリーマンが副業する場合、本業と副業のどちらも疎かにしてはいけません。
行政書士への登録は責任感をもって行わないといけませんので、本業が忙しくて顧客からの電話や問い合わせに対応できないのであれば、専業の方が遥かに向いていますよ。
行政書士は物理的に無理だと判断できる時間以外は、いつでも顧客からの依頼に応じる義務があることを心得ておいてください。
まとめ
以上のように、行政書士として副業するメリットやデメリット、成功する上で押さえておきたいポイントをまとめてみました。
会社勤務のサラリーマンでも行政書士として副業できますが、行政書士法を順守しないといけません。
責任をもって業務を遂行するのが鉄則ですので、副業だからといって甘い考えは禁物です。
中途半端な気持ちでは行政書士の資格を活かした副業は難しいことを理解したうえで、それでも希望する方は覚悟を持って取り組んで欲しいと思います。