最終更新日: 2026年9月23日/内容確認日: 2026年9月23日
本記事では、分譲マンションの管理組合から委託を受けて、管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納と、マンション(専有部分を除く)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整を含む管理事務を行い、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)の登録を受けた事業者を主なモデルとします。設計上の前提で、業界の典型像ではありません。賃貸住宅の賃貸人から委託を受ける管理、建物設備の維持保全、工事の請負、媒介は対象外です。
1. 結論:マンション管理会社なら何から始めるか
マンション管理会社でAIを使うなら、最初の一手は「管理組合ごとの事業年度から、法令が決めた期限を逆算して1つの台帳に並べ、管理組合・住戸・契約の番号で記録をつなぐこと」です。次に「その記録から、月次の収支の書面・管理事務報告書・総会の議案書・不動産会社への回答書を組み立てること」、その次に「管理者を引き受けている物件で、契約・担当・会計の分け方と取引の記録を整えること」が続きます。
本シリーズの見立てでは、効果が大きいのは二番目の書類づくりです。それでも順序をこうするのは、期限と記録が揃っていないと書類を組み立てる入力が作れないからです。効果の大きさの順位と実施の順序は分けて考えます。三番目は、管理者を引き受けている会社では一番目と並行して着手します。
一方で、重要事項の説明、財産の分け方と印鑑等の取扱い、議案と決議要件の確認、利益相反のおそれがある取引の事前説明、事故時の指示、個人データを外部へ出すかの判断は、AIに渡せない領域として残ります。本記事を貫く原則は「AIは候補まで、確定は人」です。
2. 業務全体の流れ
本記事のモデルでは、1つの管理組合との仕事は次のように進みます。
- 受託の提案と見積。重要事項の説明(対象契約の範囲は節9)を経て管理受託契約を締結。
- 管理委託料の請求と入金、契約期間の管理と更新。ここが自社の収入の入口です。
- 管理組合の会計。請求、出納、通帳と帳簿の照合、収納と滞納対応、財産の分別管理と口座の管理。
- 毎月の収支の書面、決算と予算の素案、事業年度終了後の管理事務報告。
- 総会と理事会の運営支援、規約・使用細則の整備、名簿と連絡先の管理。
- 管理員等の配置、点検の手配と記録、小修繕と大規模修繕の発注支援、長期修繕計画の見直し支援。
- 居住者対応、事故・災害への対応、売買や賃貸に伴う管理情報の回答。
この仕事を動かしているのは、管理組合の事業年度が作る暦です。毎月の収支の書面、年1回の総会、事業年度終了後の管理事務報告、契約の満了と更新、点検の周期が繰り返し、事業年度は組合ごとに違うため、受託した数だけ同じ周期が年間に分散して並行に走ります。本シリーズではこれを周期型とし、漏水・故障・滞納・苦情で処理が始まるイベント駆動型の性格も併せ持つとしています。
国土交通省は分譲マンションのストック総数を2025年末時点で約723.6万戸と推計しています。一般社団法人マンション管理業協会の調査では、2026年4月1日時点で会員332社が105,442組合・6,653,680戸を受託しています(自計申告・回答率97.3%による推計値。会員以外は含みません)。
3. AI導入優先Top3
試行の単位は、Top1・Top2 が担当者1人分の管理組合、Top3 が管理者を引き受けている物件の全件です。担当者1人分は本記事が置いた単位で、実際の担当組合数は確認していません。
Top1:期限の台帳と、記録の番号の統一
何をするか。 管理組合ごとの事業年度を1枚の表にし、そこから毎月の収支の書面、管理事務報告、総会、契約更新、点検、管理計画認定の更新の期限を機械的に起こします。自社側の期限(帳簿と書類の保存・備置き、登録の有効期間)も同じ表へ。あわせて管理組合・住戸・契約の番号を決め、会計・滞納・名簿・点検・修繕・苦情を紐づけます。
なぜ最初か。 効果ではTop2が上と見込みますが、期限と番号が揃わないとTop2の入力が作れません。足場としてここが先です。
どう始めるか。 担当者1人分だけ、既存の会計システムの出力と表計算で始めます。
何を測るか。 期限の超過件数、前倒しで着手できた件数、名簿の欠落件数、作成時間。
注意。 前提(事業年度と契約期間)が誤ると台帳ごと間違うので、最初の1巡は人が突き合わせます。
Top2:記録から組み立てる書類
何をするか。 Top1でつないだ記録から、毎月の収支の書面、管理事務報告書、総会の招集通知と議案書、不動産会社などへの回答書の4種類について、前年の版を「型」として抜き出し、差し替わる箇所だけを埋めます。
なぜ二番目か。 本シリーズの見立てでは、ここに作成の時間が最も乗ると見込みます(実測ではなく本記事の整理です)。中身は記録から決まります。なお、国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、管理・運営に疑問を持ったときの相談先として「マンション管理業者」を挙げた区分所有者が71.2%でした(区分所有者向け調査・有効回収3,102件)。相談先の構成を示す数値で、作成時間や効果の順位を裏づけるものではありません。
どう始めるか。 作成回数の多いものを1つ選び、担当者1人分で型を作ります。
何を測るか。 書類ごとの作成時間、差し戻しと訂正の件数、回答日数、議事録の確定日数。
注意。 招集の通知を発するのは管理者、議事録を作るのは議長です(節9)。AIは草案まで。
Top3:管理者を引き受けている物件の、体制と取引の記録
何をするか。 自社と資本関係・人的関係のある会社を一覧にし、管理組合の発注のうちその相手との取引を抜き出して、金額の内訳と算出の根拠、他社見積りの有無と取らなかった理由を、取引の前に記録する様式を作ります。管理者としての事務と管理事務の分離も点検します。
なぜ三番目か。 実施の順序としてはTop1と並行です。管理者を引き受けると、後から作れない記録が生じます。管理業協会の調査では、管理業者管理者方式で受託しているか検討していると答えた会員社が47%でした(回答290社)。
どう始めるか。 対象の全件で、関係会社の一覧と点検表の2枚から始めます。
何を測るか。 事前説明の対象として抜き出せた取引の件数、説明会の実施件数、不備の件数。
注意。 事前説明が求められるのは、管理事務の委託を受けた管理組合の管理者等である業者に限られ、管理受託契約・管理者受託契約そのものの締結は対象から除かれます(節9)。該当するかを先に確かめます。
4. AIに任せやすい仕事
結果をそのまま次の処理へ渡せ、不一致や例外だけを人が見る仕事です。議案書・回答書・督促の文案など、人が全件確認してから使うものは節5 に置いています。
- 形を整える:請求データ、証憑の読み取りと仕訳の候補、掲示物。
- 照らし合わせる:通帳と会計帳簿、口座振替の結果と請求、見積と過去の単価、点検の指摘と前回の指摘。
- 違いを見つける:会計の差異、名簿の不整合、規約とひな型の差分、計画と実績の工事費の差。
- 足りないものを探す:期限の超過、点検の未実施、名簿の欠落、議案書の記載漏れ、未是正の指摘。
- 下書きを作る:毎月の収支の書面と管理事務報告書を記録から組み立てる(交付と説明は人が行います・節6)。
- 探し出す:過去の修繕履歴、同種の苦情への対応、規約の該当条項。
5. AI支援に向く仕事
AIが案を出し、人が全件確認してから使う仕事です。節4との違いは、出力をそのまま次の処理へ渡さない点です。
- 総会の招集通知・議案書の草案と、議事録の文字起こし・草案(発するのは管理者、議事録を作るのは議長)
- 理事会の資料と懸案の進捗、規約・使用細則の改正案
- 滞納の督促の文案と送付の記録(宛先・金額・時期は全件確認)
- 点検報告書からの指摘の抽出と是正の要否の整理(是正を決めるのは管理組合)
- 見積の比較表、長期修繕計画の見直し案と修繕積立金の試算(額を決めるのは総会)
- 問い合わせの分類と回答案、理事会資料に載せるときの匿名化の候補
- 不動産会社などへの回答書の案、自社・関係会社との取引の関係の一覧
「確認を挟む」ことは手間ではなく、管理組合の財産と居住者の情報について、確定の主体を人に置く設計です。
6. 人に残す仕事・判断
線の引き方の原則は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。責任の出どころは3つあります(根拠は節9)。
法令が管理業務主任者に行わせることを求めているもの。 重要事項の説明、重要事項を記載した書面と契約の成立時の書面への記名、管理事務に関する報告の説明。ただし、独立部分が六未満のマンションの管理組合から委託を受けて行う管理事務は、その事務所を代表する者またはこれに準ずる者に行わせることができます。どちらの場合も説明の主体は人です。
登録を受けたマンション管理業者として負うもの。 事務所ごとの管理業務主任者の人数と受託増の判断。財産の分別管理の方法と保証契約。印鑑等を預かるかと要件の確認。帳簿と書類の保存・備置き。秘密保持。管理者を引き受けている場合の、利益相反のおそれがある取引の事前説明の要否と内容。
経営・顧客・居住者への責任として決めるもの。 受託の可否と条件。管理委託料の改定や撤退。滞納の法的措置をいつ提案し、どこまで情報を渡すか。議案の決議要件の当てはめと助言。規約改正の提案。緊急時にどこまで先に手配するか。修繕積立金の改定案の示し方。大規模修繕に自社や関係会社が応じる場合の関与範囲と開示。トラブルへの対応方針。事故時の指示。個人データの提供範囲。採用。
管理組合や管理者に課されている義務を、自社が果たしたことにしない。 集会の招集、事務の報告、規約の保管、防火管理者の選任、点検結果の報告、定期調査報告、受水槽の管理と検査は、管理者・所有者・関係者・設置者に名宛人があります。管理会社は支援・手配・記録を担い、管理者を引き受けたときだけ2つが重なります。
7. Best Practice
本シリーズでは、あるべき仕事を次の構造として整理します。
- 記録が管理組合・住戸・契約の番号でつながっている。 会計、滞納、名簿、点検、修繕、苦情が同じ番号で追え、書面も報告書も議案書もそこから作れる。
- 期限が担当者の記憶ではなく台帳にある。 管理組合ごとに違う事業年度から法令上の期限が逆算されて1本に並ぶ。担当者の時間・管理員の勤務・再委託の単価も物件に紐づき、管理委託料の改定の必要を説明できる。
- 「誰の義務か」が業務の設計に書き込まれている。 管理会社の義務と管理組合・管理者の義務が手順書と様式の上で分かれ、管理者を引き受けた物件だけは契約・担当・会計を分けて重なりを管理している。
この構造がAI化の土台になります。
8. Before / After
Before。 確認済みの実態ではなく、仮の例です。 会計は会計システム、名簿は表計算、点検報告書はPDFのフォルダ、苦情と修繕はメールと担当者のメモにあり、期限は個人の手帳で管理している会社を考えます。総会資料は前年の版を探すところから作り、点検の指摘の是正状況は担当者の記憶にあり、督促の段階は担当替えで分からなくなります。少人数で多くの管理組合を回してきた会社には自然な状態です。なお、管理員の採用に苦慮していると答えた会員社は56%でした(管理業協会の調査・回答290社の自計申告)。
After。 記録が番号でつながり、期限は台帳が知っています。書面と報告書は草案が立ち上がり、責任者は差分だけを見ます。点検の指摘は滞留日数つきで見え、滞納は段階と履歴が住戸に紐づきます。管理者を引き受けている物件では契約・担当・会計が分かれ、関係会社との取引が事前に拾えます。
9. 法令・規制・情報管理
以下は本記事における実務上の整理です。条文は2026年9月時点で施行されている版を確認しています。個別の判断は専門家や所管の窓口へ。
マンション管理業者に課されるもの(マンション管理適正化法)
マンション管理業を営もうとする者は登録を受け、有効期間5年ごとに更新の登録を受けます(第44条)。登録を受けない者は営めません(第53条)。事務所ごとに、管理事務の委託を受けた管理組合の数を三十で除したもの(一未満の端数は切り上げ)以上の、成年者である専任の管理業務主任者を置きます(第56条第1項・施行規則第61条)。ただし、独立部分が六以上である建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を、その業務としない事務所は除かれます(同項ただし書・施行規則第62条)。受託を増やすことが人数の要件に直結し、抵触したときは二週間以内に適合させます(同条第3項)。
主な期限と要件は次のとおりです。かっこ書きの条件を落とすと意味が変わります。
| 何を | 期限・要件 | 条文 |
|---|---|---|
| 重要事項の説明 | 対象となる契約から、省令で定める期間中に契約期間が満了するものは除かれる(新築分譲では独立部分の引渡しの日のうち最も早い日から一年、既存マンションの区分所有権の全部を買い取って分譲した場合は買取り後の引渡しの日のうち最も早い日から一年。施行規則第82条)。対象の契約を締結しようとするときは、説明会を開き、区分所有者等および管理者等に管理業務主任者をして説明させ、説明会の日の一週間前までに全員へ書面を交付。同一の条件で更新するときは全員へ書面を交付し、管理者等が置かれているときは管理者等に管理業務主任者をして交付して説明(認定管理者等から説明を要しない旨の意思の表明があれば交付で代えられる)。更新のたびに説明会が要るわけではない。 これらの書面と、締結時に遅滞なく交付する契約の成立時の書面には管理業務主任者が記名 | 第72条・第73条 |
| 管理業務主任者の特例 | 独立部分が六未満のマンションの管理組合から委託を受けて行う管理事務は、管理業務主任者に代えて、事務所を代表する者またはこれに準ずる者に行わせることができる | 第78条 |
| 財産の分別管理 | 委託を受けて管理する修繕積立金その他省令で定める財産を、自己の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理。方法は複数定められ、収納口座を使う方法では残額を翌月末日までに保管口座へ移し換え、一定の場合を除き1か月分の額以上の有効な保証契約。いずれも口座の名義人と徴収の仕方で変わる | 第76条・施行規則第87条 |
| 口座の印鑑等 | 原則として保管できない。 例外は、管理者等が置かれていない場合に選任までの短い期間に限るときと、自社が管理者等であるときに所定の要件(保管額以上の有効な保証契約と集会の決議を含む)をすべて満たすときの2つ | 施行規則第87条第4項 |
| 毎月の収支の書面 | 翌月末日までに管理者等へ交付。管理者等が置かれていないとき、または自社が管理者等であるときは、交付に代えて、対象月の属する事業年度の終了の日から二月を経過する日まで事務所に備え置いて閲覧 | 施行規則第87条第5項 |
| 管理事務の報告 | 事業年度終了後遅滞なく報告書を作り、管理業務主任者をして管理者等に交付して説明。管理者等が置かれていないとき、または自社が管理者等であるときは説明会を開き区分所有者等へ | 第77条・施行規則第88条・第89条 |
| 自社の記録と秘密保持 | 帳簿は契約を締結したつど記載し、各事業年度の末日で閉鎖して閉鎖後5年間保存。業務及び財産の状況を記載した書類は事業年度経過後3か月以内に作り、備え置いた日から3年を経過する日まで閲覧。知り得た秘密は正当な理由がなく漏らしてはならず、マンション管理業者でなくなった後も同様 | 第75条・第79条・第80条、施行規則第86条・第90条 |
| 利益相反のおそれがある取引の事前説明 | 管理事務の委託を受けた管理組合の管理者等であるものに限る。 自己または密接な関係を有する者として省令で定める者との取引(管理受託契約または管理者受託契約を締結しようとするときを除く)の前に説明会を開き、区分所有者等へ重要な事実を説明。説明事項には取引の金額(内訳および算出の根拠を含む)と相手方以外の者にさせた見積りの内容(させなかった場合はその理由)が含まれる。災害その他やむを得ない事由により速やかに行う必要があると認められ、その旨の決議が集会でなされているときは除く | 第77条の2・施行規則第89条の2・第89条の4・第89条の5 |
管理組合・管理者の側に課されるもの
名宛人が管理会社ではない義務です。
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)。 集会は管理者が招集し、少なくとも毎年一回招集します(第34条)。招集の通知は会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項および議案の要領を示して発します(この期間は規約で伸長できます・第35条第1項)。管理者は集会において毎年一回一定の時期に事務に関する報告をし(第43条)、規約を保管します(第33条)。議事録は議長が作り、書面のときは議長および出席した区分所有者の二人が署名します(第42条)。決議の要件は事項ごとに区分所有法と規約で定められ、共用部分の変更などには加重された要件があります(第17条・第18条・第39条)。当てはめの誤りは決議の効力に影響するため、本記事では一覧を示しません。
その他の法令の名宛人。 防火管理者を定めるのは、政令で定める防火対象物の管理について権原を有する者(消防法第8条第1項)。消防用設備等の点検の結果を報告するのは関係者(同法第17条の3の3)。定期に調査させて特定行政庁に報告するのは、政令で定めるものおよび特定行政庁が指定する特定建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)(建築基準法第12条第1項)。省令の基準で管理し定期に検査を受けるのは簡易専用水道の設置者(水道法第34条の2。施設の規模が政令の基準以下のものは同法第3条第7項で除かれます)。個別のマンションが対象に当たるかは政令や特定行政庁の指定で分かれるため、本記事では判断していません。
個人情報と生成AIの利用
組合員名簿、居住者名簿、緊急連絡先、滞納の情報、苦情の記録は個人情報を含みます。個人情報取扱事業者には、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置(個人情報の保護に関する法律第23条)と委託先の監督(第25条)が求められ、第三者への提供には第27条第1項各号の場合を除きあらかじめ本人の同意が要ります。外部へ渡すときは、それが第三者提供・委託その他のどの類型に当たるかを先に確かめ、必要な同意・通知・契約・監督を行います。委員会規則で定める事態が生じたときは報告と本人への通知が求められます(第26条。委託元へ通知した場合などの例外があります)。
生成AIやクラウドへ管理組合の情報を出すときは、入れる情報を必要最小限にし、入力データの学習利用の有無、保存期間と削除の方法、契約上の機密保持と取扱条件、アクセス権限と利用ログ、再委託や国外保存を確かめ、組織が承認したアカウント・サービスに限って使います。法令上は、正当な理由がなく業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない義務が重ねてかかります(第80条。マンション管理業者でなくなった後も同様)。管理受託契約に守秘の条項が置かれている場合は、その範囲も別に確かめます。
10. 最初の30日プラン
1週目:測る。 担当者1人分の管理組合について、4種類の書類の作成時間、期限の超過件数と超過日数、回答日数、未是正の指摘の件数と滞留日数、督促の履歴が引き継がれた住戸の割合を記録します。
2週目:正本とルールを整える。 番号の付け方を決めて既存の記録に付け、事業年度から期限を起こし、自社側の期限も同じ表へ。手順書と様式に「誰の義務か」を書き込み、管理者を引き受けている物件があれば関係会社の一覧と点検表を作ります。
3週目:人が全件確認する小規模試行。 点検報告書の読み取りと指摘の抽出を1か月分試し、読み取れなかった件数を数えます。書面と報告書の草案を型で1組合分作り、問い合わせの受付と分類も1週間分試します。重要事項の説明、書面への記名、管理事務報告の説明、資金の移動と印鑑等、決議要件の判断、利益相反の事前説明、緊急時の指示には手を付けません。
4週目:比べる。 1週目と同じ項目を測り直し、全社へ広げるか、型を増やすか、管理者を引き受けている物件の体制へ進むかを責任者が決めます。30日で変わるのは「測れること」と「期限が台帳に移ったこと」です。
11. AI活用成熟度
- Lv1 人依存。 記録が担当者ごとに散らばり、期限は手帳と記憶にある。
- Lv2 台帳化。 番号が決まり、名簿・滞納・点検・修繕・苦情が紐づく。期限が1つの台帳に並ぶ。
- Lv3 一元化。 記録が1か所から引け、書類の型が統一され、物件ごとの原価が見える。
- Lv4 AI支援。 記録から書類の草案が立ち上がり、点検の指摘が抜き出され、問い合わせが分類されて回答案が出る。期限も自動で起こされる。
- Lv5 仕組み化。 新しく受託した組合が、採番・期限の生成・型の適用まで同じ手順で立ち上がる。法令改正も台帳に入り、改訂が追跡される。
Lv5 は、AIが重要事項の説明や決議要件の判断を自動化した状態ではありません。「担当者が説明と合意形成に時間を使える状態」への転換です。
12. FAQ
Q. 重要事項の説明をAIに任せられますか。 A. できません。法令は管理業務主任者をして説明をさせることを求めます。独立部分が六未満のマンションの管理組合から委託を受けて行う管理事務は、その事務所を代表する者などに行わせることができますが、主体は人です(節9)。
Q. 管理組合の口座の印鑑を預かってよいですか。 A. 原則として保管できません。管理者等が置かれていない場合に選任までの短い期間に限るときと、自社が管理者等であるときに所定の要件(集会の決議を含む)をすべて満たすときが例外です(節9)。
Q. 消防用設備等の点検や定期調査の報告は、管理会社の義務ですか。 A. 名宛人は、防火対象物の関係者や建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)といった管理組合の側です(節9)。管理会社は手配と記録を担います。
Q. 不動産会社から滞納の有無を聞かれたら、そのまま答えてよいですか。 A. 個人データの提供に当たりうるため、第三者提供・委託その他のどの類型に当たるかを確かめ、必要な同意・通知・契約を先に整理します(節9)。なお、管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%でした(国土交通省の令和5年度マンション総合調査・管理組合向け調査・有効回収1,589件。配布の経路に管理業者が入っているため全国の姿とは読めません)。
13. 関連業態・シリーズ導線
不動産賃貸管理の記事は、同じく建物を預かる仕事ですが、委託してくるのが賃貸住宅の賃貸人である点が違います。受託の相手方が変われば適用される法律も変わるため、読み比べると境界が見えます。
建物設備管理・保守会社の記事は、マンション管理会社から設備の維持保全を受託する側の業務です。点検の手配を出す側と受ける側を並べると、記録の受け渡しを設計しやすくなります。
業種別AI活用の一覧はピラーページにあります。
14. この記事を自社に当てはめたい方へ
同じマンション管理会社でも、管理者を引き受けているかで最初の一手は変わります。期限が担当者の記憶にあるなら台帳から、整理されているなら書類の型から。いまの状況が出発点です。
15. 無料AI戦略診断/AI顧問
AI戦略診断は無料・登録不要です。回答すると、自社のAI活用がいまどの段階にあるかと、最初に取り組むべき領域が分かります。
自社の業務に沿って設計したい方にはAI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。
