目次
「権利関係」14問のうち、1問が不動産登記法
宅建試験の出題科目は大きく次の4種類にわけることができます。
- 権利関係(14問前後)
- 宅建業法(20問前後)
- 法令上の制限(8問前後)
- 税金その他(8問前後)
4種類の試験科目の中でも、宅建の合格には権利関係と宅建業法が欠かせません。
権利関係では民法(総則、物権、債権、相続)や借地借家法、区分所有法、不動産登記法に関する問題が出題。
宅建業法では重要事項の説明や37条書面を始め、宅建業法全般に関する問題が出題されます。
法令上の制限や税金その他の科目と比べて問題数が多いため、この2つは宅建試験の合否を左右するわけです。
なお、権利関係14問の内訳(出題数)は、近年では以下のとおり。
- 民法:10問
- 借地借家法:2問
- 区分所有法:1問
- 不動産登記法:1問
宅建試験で出題される不動産登記法とは?
前述のとおり、宅建試験の権利関係では、不動産登記法に関する問題が出題されます。
不動産登記とは、土地や建物について誰が権利を持っているのか明確にして、物理的状況と権利関係を公示するために作られた登記簿への登記です。
具体的には、不動産登記では以下のような内容を登記所(法務局)に登録。
- 土地の広さは何平方メートルなのか?(物理的現況)
- 誰が不動産の所有者なのか?(権利関係)
- 誰が抵当権者なのか?(権利関係)
国民の権利の保全を図り、取引の安全と円滑に資することを目的に不動産登記法は定められました。
不動産登記簿は、土地と建物を分けて登記することになっています。
それぞれ次の表題部と権利部で成り立っています。
- 表題部には土地(所在や地番、地目、地積など)や建物(所在および地番、家屋番号、種類、その他)の物理的現況を記載している
- 権利部には甲区(所有権の保存や移転、所有権の仮登記、所有権の差押や仮処分)や乙区(抵当権や地上権)など、権利に関する情報が記載されている
※地目とは「土地の目的」、地積とは「土地の面積」のこと。
原則、一筆の土地または一個の建物に対し、登記記録が作成されます。
表題部「表示に関する登記」には申請義務がある
表題部は、原則として所有者に申請義務があります。たとえば、新築した建物の所有権を取得した場合などが該当します。1ヵ月以内に表題登記の申請が必要。申請をしなかった場合、所有者には過料が課されます。また、登記官が職権で登記することも可能。
表題部の登記は、固定資産税の基礎資料となりますので、国としても速やかに登記されないと困るのです。
権利部「権利に関する登記」には、登記義務はない
一方で、権利部については登記の申請義務はありません。ただし、所有権者は適切に登記を実施していない場合、第三者に対抗できないので、義務はなくても登記を行うことが通常です。
権利に関する登記は、原則として登記権利者、および登記義務者が共同で行うことが必要。登記権利者とは、たとえば「不動産の買主」。登記義務者とは「不動産の売主」などが該当します。
なぜ当事者が共同で申請しないとならないかといえば、両方の当事者が関与することにより、虚偽の申請を避けるため。
一方、共同申請主義にも外があり、権利に関する登記において、単独申請が認められるケースがあります。この点が試験に問われることもあります。
宅建試験の不動産登記法は難しいの?
宅建試験の不動産登記法は、司法書士試験ではメインの科目になるほどの専門性が高い分野です。
不動産登記法の業務を中心的に行っている司法書士の中で、宅建士の資格も同時に取得している方は少なくありません。
結論から言うと、宅建試験の不動産登記法は難しい科目です。
「不動産登記法は難しい」「不動産登記法は簡単には解けない」と感じている方はたくさんいます。
なぜ宅建試験の権利関係の中でも、不動産登記法の難易度が高いのかいくつかの理由を見ていきましょう。
- 登記の手続きを定めた法律のため、細かい規定が多く馴染みにくい
- 民法ほどにはないにしても条文の数がそこそこ多く、全体像が見えにくい
- 民法の知識を定着させていないと理解できない部分がある
不動産登記法の内容は難しいのにも関わらず、宅建試験では毎年1問しか出題されません。
つまり、不動産登記法の勉強に時間をかけすぎていると宅建業法など他の分野の学習が疎かになりますので、深追いしすぎるのは危険ですよ。
宅建の不動産登記法の試験対策で押さえておきたいポイント
不動産登記法に限った話ではありませんが、宅建の試験では分野別の対策が必要です。
試験で満点を目指すのではなく、合格基準点さえクリアすれば宅建の資格を取得できます。
そこで、このページでは宅建の不動産登記法の試験対策でどのようなポイントを押さえておけば良いのかまとめてみました。
不動産登記法の勉強法について知りたい方は、是非一度参考にしてみてください。
テキストや参考書で不動産登記法の基本事項を押さえる
宅建試験の不動産登記法は全部で1問しか出題されないため、テキストや参考書で基本事項を押さえるだけでも十分。
不動産登記法の対策に時間をかけるよりも、他の権利関係や宅建業法の科目の学習を重点的に行った方が効率が良いのは何となくおわかり頂けるのではないでしょうか。
宅建試験の不動産登記法の基本事項には、以下のような論点があります。
- 表題部(表示の登記)と権利部(権利の登記)の内容や意味合いの違い
- 登記記録の読み方
- 所有権保存の登記ができるケース
- 単独申請できるケースと共同申請が必要なケース
- 土地の分筆・合筆の登記ができるケースとできないケース
- 登記官の職権可能な登記と不可能な登記
- 仮登記の概要(登記申請に必要な書類が揃わない時や、売買の予約で所有権を得ていない状態で予約者としての権利を確保する必要がある時)
- 一般の登記と区分建物の登記の違い
最近の宅建の市販テキストでは、不動産登記法は基本的な内容に絞ったものが多くなっています。そのような範囲に絞り対策するのがポイントです。
不動産登記法の基本事項さえ頭に入っていれば、本番の宅建試験で見たことのない応用問題が出題されたとしても、得点できる確率はアップします。
過去問対策を行う
宅建の試験に合格するに当たり、過去問を使った対策は欠かせません。
この点に関しては、難しい科目の不動産登記法も一緒です。
ここでは、宅建の試験対策で過去問の使用が大事な理由を解説していきます。
- 過去の出題傾向を掴むことができる
- 繰り返し登場する表現を覚えられる
- 勉強の優先順位を把握できる
- 問題を解くテクニックを習得できる
過去問を丸暗記すれば良いわけではないものの、過去の出題傾向を掴んだり問題を解くコツを把握したりするのは大事ですよ。
平成28年度の宅建試験では、次の不動産登記法に関する問題が出題されました。
問:不動産の登記に関する次の記述で、不動産登記法の規定で誤っているものはどれか
- 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。(誤り)
- 登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。(正しい)
- 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。(正しい)
- 区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。(正しい)
必要以上に細かい点まで全て覚えても本番の宅建試験で出題されるとは限りませんので、不動産登記法は基本分野の習得+過去問対策だけで十分です。
不動産登記法を捨てるのは、もったいない!
「宅建試験の不動産登記法は範囲が広すぎて覚えられない…」という方はいませんか?
確かに基本事項だけでも覚えるべきポイントがたくさんありますが、不動産登記法の問題を完全に捨てるは、もったいないです。
もちろん、全ての範囲を満遍なく勉強する必要はありません。大事なことは
「大半の受験生に解けるような基本的な問題が出題された場合には、決して取りこぼしをしない」
ということです。
誰もが解けない難問が出題された場合、不動産登記法が取れなくても問題ありません。
宅建試験の合格率と合格点は次のように推移しています。
試験年度 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|
平成21年度 | 17.9% | 33点 |
平成22年度 | 15.2% | 36点 |
平成23年度 | 16.1% | 36点 |
平成24年度 | 16.7% | 33点 |
平成25年度 | 15.3% | 33点 |
平成26年度 | 17.5% | 32点 |
平成27年度 | 15.4% | 31点 |
平成28年度 | 15.4% | 35点 |
平成29年度 | 15.6% | 35点 |
平成30年度 | 15.6% | 37点 |
令和元年 | 17.0% | 35点 |
50点満点中35点~37点くらいを取れれば宅建試験に合格できますので、出題数が少ない分野に過度に力を入れる必要はありません。
テキストに掲載されている不動産登記法の基本事項や過去問レベルだけを押さえておけば充分です。
まとめ
宅建の試験科目の一つである不動産登記法についておわかり頂けましたか?
不動産登記法は条文が多くて難しいため、基本事項を押さえたり過去問を解いたりする試験対策だけで十分です。
深追いしすぎると他の試験科目で得点できなくなりますので、他の試験範囲との兼ね合いで不動産登記法の勉強法を決めてください。