こんにちは、トシゾーです。
今回は、中小企業診断士二次試験 事例Ⅲ(事例3)の出題傾向や対策、勉強方法などについて、お伝えします。
事例3では中小企業の製造業を中心に、生産・技術に関する事例問題が出題されます。
製造業以外の人には苦手意識があるかも知れませんが、一方で「バリバリの製造業の方が有利か?」といえば、決してそんなことはありません。
私の知り合いで、長年、工場で生産管理や改善に取り組んで来た方が二次試験を受け、自分の持つ生産管理ノウハウを事例3の解答に盛り込んだ、というケースがありました。
結果、その方の事例3の成績は、思いのほか低評価だったそうです。与件文や設問に無いことを書き連ねていたのが原因のようでした。
以上からも分かるとおり、あくまでも試験(ペーパーテスト)ですので、出題者や採点者が望む解答を書かねばなりません。
言い替えると、
- 与件や設問に素直に答える
- そのうえで、実施する戦略や施策などは、一次試験の勉強時に得た知識のなかから、一般的かつ妥当なものを回答する
ということが重要なのです。
決して難しいことはありません。以下の本文では、より具体的に事例3にフォーカスして、ご説明します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
中小企業診断士2次試験 事例3の概要
まず、事例3の試験概要をカンタンに確認しておきましょう。
- 試験時間:80分
- 試験形式:記述式(論述式)
- 出題範囲(出題内容):生産や技術を中心とする経営戦略、および管理に関わる事例
- テーマとなる業種(与件企業):生産・技術の事例のため、中小企業の製造業が中心
- 出題設問数:4~5問程度(4問の場合が多い)
事例3の出題傾向
出題のパターン
前述のとおり、例年、設問数は4問であることが多いです。
その中で、もっとも多い設問のパターンは以下の3点になります。
- 「強み・弱み」(現状把握)
- 「生産管理、生産性向上、IT利活用」に対するアドバイス
- 「経営戦略」に対するアドバイス
すべての設問は繋がっている
これは事例3に限った話ではありませんが、すべての設問は、有機的に繋がっています。
事例の解答全体の構造が、与件企業に対する「経営診断書」であり、「改善提案書」でもあります。
そのため、それぞれの設問は、以下のいずれかの要素と深く関係します。
- あるべき姿(to-be)
- 現状分析、課題分析(as-is)
- ギャップ分析
- ギャップを埋めるための戦略・施策
※上記は、必ずしも設問1~4(5)の順番とは一致しません。
後述する「攻略方法(解法のポイント)」や「勉強方法」でも、「改善提案書として、全体の世界観を統一すべきこと」は、繰り返し言及しています。
それぐらい重要なことなので、ぜひ意識しておいてください。
設問別の出題傾向
それでは、設問別の出題傾向を見てみましょう。
設問1
現状分析や課題分析など、主に現状把握系の設問が多く出題されています。与件企業の「強み、弱み」を分析させる設問が頻出です。
SWOT分析の結果をそのまま書くようなケースが多く出題されています。
設問2~3(場合によっては4も)
与件企業の弱みに注視し、その問題点または課題、さらに、それらへの対応策や解決策を書かせる問題が多く出題されます。
「生産管理」「生産性の向上」「ITの利活用」がテーマとなっている場合が多いです。
上記以外にも、(戦術レベルではなく)戦略レベルで問われるケースや、営業やマーケティングが絡むケースなども出題されます。
設問4(5)
「改善提案書」の締めくくりに近いイメージで、今後の事業戦略や将来像を問う設問が多く出題されています。
他には、戦術(施策)レベルの出題や、単なる知識問題が出題されるケースもあります。
事例3の攻略のコツ、解き方のポイント
設問→与件の順に目を通す
これは、全事例における共通事項なのですが、
- まずは設問に目を通す
- 続いて、与件文を読む
- 解答を作成する
本番試験はもちろん、過去問演習においても、以上の流れで解答を作っていきましょう。
最初に漫然と与件文を読んでも、設問を読んだ後に、もう一度与件文を読み直す必要が出て来ます。
それは時間の無駄なので、まず設問をチェックし、与件文を読みながら「それぞれの設問に関係ある部分をチェックしていく」のが、効率的な読み方です。
経営戦略の策定プロセスを確認する
事例3は「生産・技術」の事例ですが、
- 中小企業診断士(経営コンサルタント)にふさわしい能力を保持しているか?
を確認する試験のため、当然のことながら、経営戦略についても問われます。
むしろ、他の事例よりも、以下のような経営戦略の策定プロセスに沿ったアプローチが、解答作成に有効です。
- 経営理念→環境分析→経営戦略→機能戦略(営業、生産)
設問のレイヤー(レベル感)を意識することが重要
設問のレイヤーとは、
- 設問で問われているのは、「戦略レベル」なのか「戦術レベル」なのか?
ということです。
戦略レベルで問われているのであれば、「全社的」「顧客にとっての価値」「長期的な視点」を意識すべきです。
また、戦術レベルで問われる内容(施策レベルの知識)は、「生産管理」または「生産性向上」、「IT利活用」の3点が圧倒的に多いです。
※ただし、上記3点が戦略レベルで問われることもあります。「戦術レベルでしか問われない」という意味ではありませんので、注意してください。
根本的な解決策、企業価値の向上を意識する
事例3の与件文を読むと、文中のあらゆる箇所に与件企業の問題点が散見されます。
基本的には、それらに対して全て対応する必要があるのですが、一番やってはいけないことは、
- 細かな問題ばかりに目を向け、根本的な問題点・課題への言及がない(少ない)
ことです。
具体的には、根本的な課題とは「QCDのいずれかに関わるもの」です。また、前述のとおり、解答全体が「与件企業に対する改善提案書」である以上、
- QCDを高いレベルでバランスさせ、結果として、顧客価値(企業価値)の向上を実現する
というビジョンが見えなければなりません。
そして、QCDを高いレベルでバランスさせる(という目的を実現する)ためには、以下のような手段を適切に実施することが重要です。
- 4M(人、設備・機械、材料、方法)
- 設計、調達、作業
- 計画→統制→実行
- 生産情報システム
上記のなかで、与件企業のQCDに関わる大きな問題点を改善させる施策こそが優先順位が高くなります。
そのことを忘れないようにしましょう。
マニアックな解答を書かない
この記事の冒頭でも説明したとおり、
基本的には、設問文や与件文に書かれてあることを、抜き出す。
対応策は、1次の基本知識から
戦略ストーリーを意識する
くり返しになりますが、「事例3の解答全体が、与件企業に対する改善提案書」である以上、設問1から設問4(設問5)までの解答の方向性が一致している必要があります。
それぞれの解答の内容が、どんなに優れていても、全体としての方向性が合致していなければ、合格点をもらうのは厳しいはずです。
例)戦略の方向性としては、適切な投資をして、付加価値を上げるとしているのに、各施策レベルでは、いいずれもコストダウンを最重視し、付加価値アップに繋がる施策案が皆無など
事例3の勉強方法
事例3の学習方法としては、以下3点がポイントとなります。
一次の知識の確認
前述のとおり、二次試験で細かい点が問われる生産・技術のテーマは以下となります。
- 生産管理
- 生産性の向上
- ITの利活用
つまり、一次試験対策として学習する知識のうち、最低でも、上記に関連する部分を抑えておく必要があります。
生産管理
生産管理分野においては、「生産計画」と「生産統制」の論点の確認が必須です。
<生産計画に関わる論点>
- 需要予測
- 納期管理
- 全社レベルの生産計画の策定
- 生産計画の策定サイクルの短期化
- 関連部門との情報共有を密に
<生産統制に関わる論点>
- 進捗管理
- 余力管理
- 現品管理
生産性向上
生産性向上に関わる論点は以下のとおりです。
- 標準化、マニュアル化、熟練工によるOJT
- 多能工化
- 技能承継、小集団活動
- 外段取り化
- 製品不良改善
- 歩留まり向上
- 平準化
- ボトルネック解消
ITの利活用
ITの利活用に関しては、DRINKフレームワークを理解しておきましょう。
- DRINK(DB化、リアルタイム共有化、一元管理、ネットワーク、コミュニケーション)
その他のキーワード
その他、以下のようなキーワードについても問われることがあります。
- 海外進出
- 営業力強化
- 多品種少量生産
- 短納期化
- コスト削減
- 生産リードタイム削減
問題点・課題と解決策・施策の整理
前項で挙げた一次試験の知識を、「有機的に使える知識」として理解しておくことが必要です。
「有機的に使える知識」というのは、「どのような問題点・課題に対し、どのような対策・施策が使えるのか」というものを自分なりにパターン化し、理解しておくことです。
そのためにも、次項で説明する「過去問演習」が有効です。
過去問を繰り返し解く
過去問を繰り返し解くことで、
- 与件文中に散見される問題点・課題を整理する能力
- そのような問題点・課題に対し、どのような対策・施策が有効か提案する能力(実際には、一次の知識からパターン化しておきます)
- 事例3の解答全体を「与件の製造業中小企業に対する改善提案書」として、世界観の統一された文書として仕上げる能力
以上が身につきます。
最低でも過去5年分×3回解くことで、確実に合格できる実力を養成できるはずです。
ぜひ頑張ってくださいね。