今回のテーマは「相続・事業承継」です。
現在、相続税の増税の話題が、世間で大きな関心を呼んでいます。
そのため、「相続税」という言葉を身近に感じる方も多いのではないでしょうか。
一方で、相続そのものは、一生のうちに何度も行うものではないので、その手続きや税制をきちんと理解している人は多くありません。
なかには、
「うちの親は、たいした財産など持っていないから、相続のことを詳しく知らなくても問題ない」
と思っている方もいるでしょう。
しかし、相続とは、財産の多い少ないは関係ありません。
誰かが死亡した場合、その人の名義で所有している財産があり、それを引き継ぐ人(相続人)がいれば、必ず相続が発生します。
そして、一定額以上の財産が残されている場合、相続税を納税することが必要になります。
以上のように、何らかの手続きが必ず発生するのです。
また、テレビドラマなどを見ていると、遺産相続の件で親族が揉めているシーンなどがよくあります。
実際の相続の手続きでは、できるだけ争いが起きないよう、遺言の作成手続きは厳格に決められていますし、遺言の内容に関わらず、
「配偶者や子供などには、最低、この分だけは遺産を残さなければならない」
などの決まりもあります(愛人が100%遺産を相続する、というのはテレビドラマの中だけの絵空事です・笑)。
以上、この科目においては、上記のような、相続の手続き・配分(相続分)・遺言書作成の手続きなどに加え、相続税の計算の手順も学習します。
その他、生前に財産を譲る「贈与」や、相続時の節税を中心とする「相続対策」「事業継承対策」など、多くの論点があります。
このように、「相続・事業承継」は複雑かつ普段あまり考えることのないような論点が多くあるのです。
それゆえに、ファイナンシャルプランナーの科目のなかで、もっとも難しい科目と言えるでしょう。
とはいえ、必要以上に恐れる必要はありません。
FP技能士2級・3級の試験で問われる相続・事業承継の内容は、出題されるポイントがある程度決まっています。
そのポイントについて、基本に忠実に、ひとつずつ押さえていけば、充分合格点が取れる科目です。
この記事では、そんな相続・事業承継の内容や出題ポイント、勉強法についてご説明します。
相続・事業承継の科目を上手に攻略するためにも、ぜひチェックしてみてくださいね。
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目次
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題される相続・事業承継とは
まず、FP2級とFP3級の試験科目については、以下の一覧の情報のように基本的に同一です。
ただし、試験科目は同一とはいえ、それぞれの科目から出題される内容の深さが、2級と3級では大きく異なりますので注意してください。
FP3級では、個人や個人事業主に対する内容が主ですが、2級においては、中小事業者(中小企業、法人等)に対するFP(ファイナンシャルプランニング)の内容も扱います。
カンタンにいえば、
個人相手のFPが3級、個人に加えて会社の相手もできるFPが2級
という感じです。
試験科目が全く同じでも、出題される内容の深さに大きな差があることが、実感できるのではないでしょうか。
3級の相続・事業承継は贈与と相続が中心、2級は贈与と相続に加え、相続対策や事業承継対策も出題される
それでは、相続・事業承継の出題は、2級と3級では、どう違うのでしょうか?
カンタンにいえば、3級は贈与・相続が中心、2級は贈与・相続に加え、相続対策・事業承継対策も出題されます。
とはいえ、どちらも贈与・相続が最重要なのは間違いありません。
出題数を見てみましょう。
2級・3級とも、学科試験においては「相続・事業承継」で10題出題されます。
過去の出題傾向を見ると、3級は10題とも贈与・相続の関連がほとんどです。
一方の2級ですが、こちらも贈与・相続の関連が中心で、出題数は10問中9問程度。残り1問は相続対策・事業承継対策の関連が出題されます。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題される相続・事業承継の出題範囲(出題内容)は
それでは、相続・事業承継の具体的な出題範囲を見ていきましょう。
ファイナンシャルプランナーの試験で出題される「相続・事業承継」の出題範囲は、以下のとおりです。
- 贈与と法律
- 贈与と税金
- 相続と法律
- 相続と税金
- 相続財産の評価(不動産以外)
- 相続財産の評価(不動産)
- 不動産の相続対策
- 相続と保険の活用
- 事業承継対策
- 事業と経営
- 相続・事業承継の最新の動向
上記のうち、黒文字の部分(1~8、11)は2級と3級で共通の出題範囲、赤字(9,10)は2級のみの出題範囲です。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題される相続・事業承継の頻出論点は?
相続・事業承継の分野においても、100点満点ではなく、合格点を確実に抑える戦略を根あらうべきです。
まずは、2級・3級共通の頻出論点を見てみましょう。
- 相続と法律
- 相続と税金
- 贈与と税金
- 相続財産の評価(不動産)
と、贈与・相続関連が頻出になっています。
以上に加え、2級では「相続対策・事業承継対策」も、最近では毎回出題されます。
続いて、上記の頻出論点について、それぞれの勉強のポイントを説明します。
相続と法律
ここでは、法定相続人の定義と相続順位、相続分に関する事項が最重要です。
分かりやすく言うと、人が死んだ場合に
「誰が相続人になるのか」「相続できる順番は?」「どれぐらい遺産をもらえるのか?」
ということです。
これらは民法の規定であり、法定相続人とは、配偶者や子、直系尊属などが該当します。
それぞれの立場により、相続順位や相続分が異なりますから、しっかり押さえておきましょう。
相続と税金
ここでは、何と言っても相続税の計算が最重要です。
相続税の税額を計算するためには、まずは課税価格を算出します。
そのためには、課税財産と非課税財産を明確にし、さらには葬式費用や基礎控除額を求めることになります。
手続きは複雑ですが、相続・事業継承の科目のヤマとも言える部分ですので、繰り返し覚えましょう。
贈与と税金
ここでは、贈与税の非課税財産、および相続時精算課税制度が最重要です。
相続時精算課税制度は、親から子へ生前贈与する財産と、その後の相続する遺産に関する贈与税・相続税を通算するための仕組み(制度)です。
相続財産の評価(不動産)
ここでは、借地権・貸宅地・貸家建付地など、宅地の上に存する権利などの評価が頻出です。
これらについては、整理して対比しながら覚えると理解が進むでしょう。
過去問の重要性
なお、ファイナンシャルプランナー(FP)の3級の試験は基本的な事柄だけ押さえておけばOKですが、2級に合格するにはもう一歩踏み込んだ勉強が必要です。
また、「時間がないから」と言って、テキストを読むだけでは、「どのように出題されるか(出題形式)」が分からず、本番で失敗することになります。
一捻りも二捻りも加えた形で出題されるため、何が問われているのか整理しながら問題集や過去問を解いていきましょう。
過去問や問題集を解くことで、
「どんな論点が問われやすいのか」
「どのような表現で問われるのか」
が理解できるようになります。
FP・ファイナンシャルプランナー試験で出題される相続・事業承継の正しい勉強方法や勉強のコツ
ファイナンシャルプランナーの試験に合格するために、ここでは相続・事業承継の勉強方法やコツについて説明していきます。
覚えるべき事項の多い科目ではありますが、単純に暗記だけに頼っても、忘れやすくなりますし、勉強が無味乾燥に感じられ、苦痛になるかも知れません。
ポイントは、「少しずつでも、理解を増やしながら覚えること」になります。
「なぜ、そうなのか?」を、問いかけながら覚える
「相続時精算課税制度の仕組み」や「非課税となる贈与」など、「なぜ、そうなのか?」を、自分自身で考えながら覚えると、理解が進みます。
たとえば、
・相続時精算課税制度は、相続時に納税の精算を行うことにより、生前贈与を行いやすくする仕組みを提供して、若者層(相続人)がお金を使いやすくする(経済活性化)
・お見舞い金に贈与税を課税するのは適切ではないため、常識的な範囲であれば非課税とする
など、豆知識(トリビア)を増やすようなイメージで、納得しながら学習すると、勉強そのものが楽しくなりますし、記憶に残りやすいですよ。
出題されやすい「ひっかけ」ポイントをおさえる
3級の学科は2択または3択、2級は4択と、いずれもマークシート方式です。
こうした択一式問題においては、「あれ?」と感じる、ひっかけ問題のような選択肢がよく問われます。
たとえば、「配偶者の税制軽減の特例」を利用することにより、相続税を納付しなくてもよくなるケースがあります。
しかし、このような場合でも、相続税の申告書を提出しなければなりません。
こうした事実に対し、
「配偶者の税制軽減の特例を利用して相続税の額がゼロになった場合、相続税の申告は不要である。」
という選択肢が本試験でも出題されています。(上記問題は、当然×です)
そのため、テキストを読んでいて「あれ?」と思うような点があれば、チェックしておくようにしましょう。
FP・ファイナンシャルプランナーの試験で出題される相続・事業承継 まとめ
以上、FP試験の相続・事業承継についてまとめました。
適切なファイナンシャルプランニングを顧客に提供するにあたり、相続・事業承継の知識は欠かすことはできません。
ぜひ、「相続・事業承継」を攻略して、顧客から信頼されるファイナンシャルプランナー(FP)を目指してください。