こんにちは、トシゾーです。
今回は、株主資本等変動計算書について説明します。この株主資本等変動計算書も、財務諸表において重要な書類の1つですが、実は比較的新しい書類です。
というのも、私が中小企業診断士の勉強を始めた頃に当たる2005年以前には、まだ存在しない書類だったのです。そのころの財務諸表には株主資本等変動計算書ではなく、「利益処分案」という書類が含まれていました。
なぜ、「利益処分案」から「株主資本等変動計算書」に変わったのか・・・その理由を知れば、株主資本等変動計算書の理解がグッと進むことでしょう!
この記事の内容は、中小企業診断士試験の「財務・会計」の科目で学ぶものです。
「財務・会計」について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、貸借対照表や損益計算書と同様、財務諸表の一つです。この株主資本等変動計算書では、一つの会期中における純資産項目の変動を明らかにします。
旧商法時代の企業決算においては、配当(純資産項目を変動させる要素)は、定時株主総会で「利益処分案」として提示し、承認された内容どおりの実施しか認められませんでした。
それに対し、会社法の施行に伴い、株式会社の配当は、臨時株主総会の決議により、期中にいつでも、何度でも行えるようになりました。
以上のような経緯から、利益処分案に代わり、株主資本等変動計算書が財務諸表に加えられるようになったのです。
ざっくりと言えば、
「会社の決算を終わらせた後、自由に配当などをしてもいいよ。その代わり、結果として変わってしまった純資産の金額や経緯をハッキリ記載しておいてね」
ということになったのでした。
株主資本等変動計算書が無かったら、どうなる?
会社法の下では、定時株主総会に限らず、臨時株主総会においても(何度でも)剰余金の配当や剰余金の処分、損失処理等が可能となりました。
その結果、変更内容を記録しておかないと、前期末の貸借対照表と当期末の貸借対照表の純資産の部の中身が全く違うものになってしまいます。
以上が、株主資本等変動計算書が新設された要因となっています。
株主資本等変動計算書と配当(分配)可能額
上記では、株式会社の配当は、臨時株主総会の決議により、期中にいつでも、何度でも行えるようになった、と説明しました。
とはいえ、株主に対する配当を無制限に行えるわけではありません。
配当可能な金額のことを、分配可能額と言いますが、これは分配(配当)時における剰余金の額をもとに行われます。ここで対象となる剰余金は、「その他資本剰余金」「任意積立金」「繰越利益剰余金」の3点です。
資本準備金と利益準備金は、債権者保護のため積み立てるものであり、配当の原資とはなりません。
さらに、分配可能額までを無制限に配当できるわけでもありません。
会社が配当を行う場合、当該剰余金の配当金額の10分の1を資本準備金、又は利益準備金に積み立てることが必要です。
ただし、この積立の義務には上限があります。
具体的には、配当時における資本準備金と利益準備金の合計額が、資本金の4分の1に達していれば不要です。4分の1未満であれば、4分の1に達するまで積み立てを行う必要があります。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |