今回は、行政書士試験の民法対策のポイントや勉強方法についてお伝えします。
民法は行政書士試験において、行政法とともに、もっとも重要な科目の一つです。
行政法と民法は、試験全体のなかで配点も大きく、行政書士試験においては
行政法と民法を中心に勉強するべき
と、よく言われます。
しかし、この2つの科目の対策方法は、まったく異なります。
過去問から繰り返し出題される行政法は、「過去問第一主義」が合格に必要。
過去問を徹底すれば得点できますので、ある意味ラクな部分もあります。
一方、民法は過去問からの出題は少なく、1つ1つの条文の意味を考えながら、重要論点を確実に理解していく必要があります。
そのため、民法は行政書士試験の科目のなかで、もっとも難しいと言われています。
しかし、恐れることはありません。
以下では、難易度が高いといわれる行政書士試験の民法について、合格点を確実に取るための対策や勉強法を紹介しています。
ぜひチェックしてみてください。
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目次
民法とは
民法とは、私人間の関係や問題解決を取り決めている法律
まず民法の概要について確認しておきましょう。
民法は、私人と私人の関係や問題解決について取り決めた法律です。
この点が、国民と国家の関係について規定されている憲法と異なるところです。
憲法では「基本的人権の尊重」などの規定がありますが、これは
「国家権力を制限し、国民を守る」
という性格を有しているからです。
それに対し、「私人間の争い」などについては、憲法が直接規定するのではなく、「私法」といわれる民法や商法などで解決することになります。
民法は多くの法律の一般法であり、1,000以上の条文がある
民法は、私人同士の関係を規定した法律であり、地域・人・事項に関係なく広く適用されています。
このように基本的なルールを定めた法律を「一般法」といいます。
一般法に対し、特定の地域・人・事項だけを対象とした法律が「特別法」です。
民法は商法のほか、借地借家法や区分所有法、その他にも、消費者契約法、特定商取引法、労働基準法、金融商品取引法など、多くの法律の一般法になっています。
つまり、民法は「私人間の取引におけるもっとも基本的なルール」といえるでしょう。
その結果、条文が1,000以上と膨大なボリュームの法律になっているのです。
民法のパンデクテン方式とは?
我が国の民法は「パンデクテン方式」という構成(形式)を採用しています。
パンデクテン方式とは、一般的・抽象的規定を「総則」として法体系の冒頭にまとめ、その後、個別的規定を記述していく法律の構成のことです。
実際に、我が国の民法には冒頭に総則があります。そして、総則の中では「制限行為能力者」や「意思表示」など、すべての取引に共通して関連する内容を規定しています。
その総則の後に、「売買契約」「賃貸借契約」「相続」などの個別規定を記述してるのです。
民法の構成(出題範囲)
ここでは、民法の具体的な構成を見てみましょう。
前述のとおり、民法は1,000以上の条文がありますが、それらの条文は、次の5つに分類されます。
総則
物権
債権
親族
相続
以上のうち、総則・物権・債権をまとめて「財産法」、親族・相続をまとめて「家族法」といいます。
前項で、「民法は、私人と私人の関係や問題解決について取り決めた法律」、と説明しましたが、
具体的には、財産や家族など、日常生活に関する国民同士の関係や問題解決について取り決めているのです。
行政書士試験における民法の特徴
それでは、他の科目と比較した、民法の特徴を見ていきましょう。
行政書士試験の中で配点が2番目に大きい
民法は行政書士試験の中で、行政法につづいて配点の大きい科目です。
基礎法学:8点
憲法:20点
行政法:76点
民法:36点
商法・会社法:20点
憲法:8点
行政法:16点
行政法:20点
民法:40点
政治・経済・社会:28点
情報通信・個人情報保護:16点
文章理解:12点
上記のとおり、民法の配点を合計すると、76点となります。行政書士試験は300点満点ですので、民法だけで試験全体の4分の1を占めることになります。
出題傾向 ~民法は記述式がもっとも多い・広範囲で細かく出題される
出題傾向、配点などは次のとおりです。
記述式
まず、記述式が40点もあります。これは記述式の問題1問につき20点×2問ということです。
出題形式のなかで、もっとも難しい記述式は試験全体で3問ですが、そのうち2問を民法が占めるのです。このことも、民法の難易度が高い理由の1つとなっています。
5肢択一式
また、5肢択一式は9問出題され、各4点のため、9×4=36点の配点となっています。
分野別では、総則2問、物権2問、債権4問、親族・相続1問と、圧倒的に財産法からの出題が多くなっています。
さらに財産法の中では、意思表示・代理・物権変動に関する論点が問われやすいです。
行政書士試験の民法は、まんべんなく勉強することが必要ですが、まずは財産法を重視して欲しいと思います。
難易度 ~過去問以外からの出題も多く、難易度は高い
冒頭にも書いたとおり、民法は過去問からそのまま出題されることが少なく、1つ1つの条文の意味を考えながら、重要論点を確実にマスターしていく必要があります。
また、特に近年、行政書士試験が難易度が高くなっています。
今後も、過去問にはない、これまで出題されなかった論点が出題されると予想されます。
そのつもりで、対策をしていきましょう。
民法の試験対策 ~勉強のポイント
民法の条文をおさえる
行政書士試験の民法の問題の多くが、「民法の規定や判例(事例)に照らし、正しい(誤っている)ものを選べ」という形式になっています。
というと、
「条文や判例を丸暗記する必要があるの?」
と思うかも知れません。しかし、そんなことはありません。そもそも条文だけで1,000以上あるのが民法なので丸暗記は無理ですし、理解しなければ応用問題には対応できません。
民法の条文や判例の「背景(趣旨)」をおさえる
あなたがやることは、ずばり、
民法の条文が制定された目的、判例が下された理由などの「背景(趣旨)」をおさえる
ことです。
テキストの項目を読むたび、「なぜ?」「どうして?」と背景をおさえていくのです。
これがまさに「法(民法)の精神を知る」ということであり、このような勉強を繰り返すことにより、民法の考え方が身についていくことになります。
民法は図を書いてイメージする
民法は私人間の権利関係ということで、相手方や第三者といった登場人物との関係性が重要です。
これらの関係性は、文字だけで覚えようとしても、あいまいな理解になってしまいます。
そのため、どんなテキストも、民法の論点ごとに登場人物の関係性を図にしています。
あなたも図を書いてイメージするようにしてください。そのほうが理解も深まります。
最初は、テキストの図のマネで十分です。
続けているうちに、過去問などを解く際にも、図を書いて考えるほうが早く解答できるようになります。
必ず手を動かして、図に書いてイメージするようにしましょう。
どうしてもわからないときは、「誰が一番損しているか」を考える
民法のボリュームは膨大ですから、どんなに対策をしても、答えが分からない問題も出てくるでしょう。
その場合は、設問を読み、「登場人物の中で、誰を一番救済すべきか」を検討します。
民法とは、私人間の問題を解決するためのルールですから、
「論理的に考えて、もっとも救済すべき人を救済する」
となっていることが原則です。
もっとも、この方法ですべての問題が解けたら苦労はしませんが(笑)、分からない問題が出てきたら、試してみる価値は充分にあります。
記述式は、問われていることに端的に答える
記述式では、設問に対する答えを40文字で解答しなければなりません。
解答にあたり、何も書けないのは論外として、「文字数が足りない」と感じる方が多くいるようです。
そうした場合、「設問で問われていることに、端的に答えていない」ことが考えられます。
出題者が求めている答えを、設問で求められた形式に沿って、素直に解答することが必要です。
こうした解答の書き方の練習を、普段から行っておくことが大切です。
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ここまで、民法の勉強のポイントについて説明してきましたが、そもそも、行政書士試験は難関な試験です。
自分で目標を立ててコツコツやるのが不安な受験生の方は、わかりやすい動画で理解できるオンライン講座を受講するのも手です。動画講義でしっかりインプットできますし、演習もスマホでできる講座もあります。
私も複数の資格取得においてオンライン動画講座を利用しましたが、その経験から言っても、しっかりカリキュラムが揃っているところが多くあります。
また、フルカラーのテキストを用意しているところや、スクールによっては合格時に費用を全額返金するなど破格のサービスを行っているところもあり、モチベーション高く合格を目指せるのではないでしょうか。
社会人や主婦の方など、思うように時間が取れない方は、スキマ時間にスマホで勉強できる行政書士通信講座などの活用も視野に入れてみてください。
民法の勉強法
以下が、私の実践した勉強法です。
行政書士試験 民法 勉強法の流れ
- まずはテキストを通読する→細かい所は飛ばしてOK。全体のイメージをつかむ
- 2周目はテキストを1単元ずつ読み、その単元に関係する問題集を解く
- 間違えた問題などに印をつけ、テキストの関連部分を読み込む
- 問題集の2回目は、印を頼りに「不正解の問題」「自信が無かった問題」だけを解く
- 「不正解の問題」「自信が無かった問題」がなくなるまで、何度も繰り返す
- 問題集が終わったら、過去問をとく
ポイントは2つあります。
勉強法のポイント1
過去問だけでは、不足する論点があるので、最初は問題集を使います。
必ず、民法の重要論点をバランスよくカバーした、オリジナル問題集を使ってください。
利用しているテキストと同じシリーズの問題集などがよいでしょう。
勉強法のポイント2
過去問では不足、といいましたが、過去問が不要という意味ではありません。
過去問を解くことで、
- 実際の出題は、どのようにされているか?
- 実際の出題では、どの程度の深さまで問われるのか?
などを知ることができます。
また、論点によっては、過去問が繰り返し出題される部分もあります。ぜひ受験までに、過去問対策も実施してください。
※過去問の効果的な活用方法について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
民法の改正について
民法の勉強法の最後に、最近よく質問される「民法の改正」について、ご参考までに書いておきます。
ご存じの方も多いと思いますが、行政書士試験は、その年の「4月1日現在施行されている規定」が対象になります。
昨今話題になっている改正民法は、2020年(令和2年)4月1日からの施行です。
そのため、2020年の試験(本年度の試験)から、改正民法について出題されることになります。
行政書士試験においては、法改正された箇所は出題されやすい傾向にありますので、改正された箇所を押さえておくことは重要です。
ただし、「改正される前の内容」までおさえる必要はありません。必要なのは「現在の内容」だけです。
特に大手予備校など、商売なので「改正民法が今年の合否を決める!」などと煽りますが、ぶっちゃけ、そこまでの物ではありません(笑)
「改正された箇所はどこなのか」だけを頭に入れ、後は淡々と進めていくのがよいでしょう。
なお、今回は以下のような改正が行われます(詳細はテキストで確認してください)。
- 消滅時効に関する改正
- 法定利率の改正
- 保証人の保護に関する改正
- 約款取引に関する改正
おすすめテキスト・六法・判例集・アプリなど
次の記事では、民法のもの以外も紹介しています。
民法初学者は、最初にマンガで学習する手もある
ここでは、「どうしても民法が苦手」という方におすすめの、民法を学べるマンガをご紹介します。
マンガでは専門知識を噛み砕いて説明しているため、理解が深まり知識が記憶しやすくなります。
民法が苦手な方は、行政書士の試験学習の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。
マンガでわかる民法入門
『マンガでわかる民法入門』は、基本的な民法の概念や法律用語を解説してある教科書で、マンガの登場人物と共に、楽しみながら学習できる書籍です。
『マンガでわかる民法入門』の差別化ポイントは以下のとおり。
- 分かりやすく噛み砕いた解説で、民法が初めての方でも読み通せる内容
- 民法の流れに沿い、総則から物権法、債権法などが詳しく説明されている
- マンガで概要を説明した後、文章で解説するスタイルを採用
カリスマ講師である伊藤塾の伊藤真氏が監修している点も差別化ポイントの1つと言えるでしょう。
<試験によく出る>マンガでわかる民法の判例
『<試験によく出る>マンガでわかる民法の判例』は、その名のとおり、判例の解説が中心のマンガです。
『<試験によく出る>マンガでわかる民法の判例』は、マンガの見開きと、解説する本文の見開きの計4ページから1つの単元が成り立っています。
- まずはマンガを読んで、判例の内容をざっくりイメージする。
- 続いて、本文の解説で詳細なポイントや焦点を理解する
以上のような使い方で、民法の勉強において重要な判例を十分に理解できるようになるでしょう。
まとめ
ここまで、行政書士試験の民法について、いかがでしたか?
行政書士試験の出題分野のなかで、もっとも難易度が高いといわれる民法ですが、
正しい勉強法で対応すれば、恐れるに足りません。
ぜひあなたも、ここで説明した民法対策を参考にして、合格を目指してくださいね。