司法書士事務所のAI活用|最初の一手と人に残す判断

司法書士事務所のAI活用:決済の案件ごとに当事者×必要書類×状態の確認表を作り、未了を抜き出して司法書士が申請に進むかを判断する流れ

最終更新日: 2026年10月6日/内容確認日: 2026年10月6日

本記事では、司法書士1〜数名と補助者数名の個人事務所又は司法書士法人が、個人・不動産事業者・金融機関・中小企業から依頼を受け、権利に関する登記(売買・贈与・相続・担保権の設定と抹消)と会社・法人の登記の申請手続の代理と書類の作成、裁判所・検察庁に提出する書類の作成を行う形を想定します。簡裁訴訟代理等関係業務は、法務大臣の認定を受けた司法書士がいる場合に限って扱います。本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。供託・筆界特定の手続、成年後見人等への就任、遺産の承継の手続の代行、調査又は測量を必要とする表示に関する登記の申請手続、簡裁訴訟代理等関係業務の範囲を超える訴訟と交渉の代理、税務と労働・社会保険の手続は扱いません。法令は2026年10月5日に確認した、その日に施行されている版によります(個人情報の保護に関する法律は節9の版)。未施行の改正は扱っていません。

目次

1. 結論:司法書士事務所なら何から始めるか

司法書士事務所でAIを使うなら、最初の一手は「決済の案件ごとに当事者×必要書類×状態の確認表を作り、前日までに未了を抜き出すこと」です。次に「受け取った戸籍を読み取り、相続関係の候補と欠けている戸籍を出すこと」、その次に「顧問先の会社ごとに役員の任期の台帳を作ること」が続きます。

番号は効果の大きさの順位で、そのTopの出力が材料として直接入る別の作業の数(本記事の業務の分解で数えた計算値で8・5・4)で比べました。時間や金額の比較ではありません。実施の順序は別で、本記事の整理では、要配慮個人情報に当たりうる情報を含みにくい登記事項と定款を入力にする台帳から始め、確認表は予定された決済に合わせ、戸籍と相続の書類を入力にする相続は、相続の書類(病歴・障害の記述)が要配慮個人情報に当たりうる情報を含みうるため、外部入力の条件を決めてから始めます(節3)。

一方で、受任の可否、特定取引に当たるかの確定、本人確認情報、申請に進むかの判断と申請の代理・補正、相続関係の確定、裁判所に提出する書類の最終確認、簡裁訴訟代理等関係業務の最終の判定は、AIに渡しません(法令上の制限の範囲は節6・節9)。原則は「AIは候補・草案・照合・未了の抽出まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルの流れです。

  1. 引き合いの受付。依頼者と申請人(登記権利者・登記義務者・相続人・会社)を分けて記録します。
  2. 受任の判断、報酬の基準の明示と見積、委任状と契約書。
  3. 特定取引に当たるかの判定と、当たる場合の取引時確認。
  4. 申請情報・遺産分割協議書・議事録などの書類の準備。
  5. 面談による本人確認と意思確認。決済では原本の確認と、申請に進むかの判断。
  6. 申請、補正、完了、引渡し。
  7. 請求・入金・領収証。ここがお金の流れの入口です。

本シリーズでは、決済・相続の開始・役員の変更などの出来事を起点に1件ごとの手続が始まり登記の完了で閉じるイベント駆動型を主、任期の満了で変更の登記が周期で生じる場面がある周期型を従として整理しています(本シリーズの分類)。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(計算値) 記録の単位 実施の順序
導入前提:外部入力の条件と記録の様式 — 事務所 ① 2週目
Top1:決済の確認表 最も大きい(8) 決済の案件1件(当事者×必要書類の行) ③ 3週目(次に予定されている決済1件)
Top2:相続関係の候補 2番目(5) 被相続人1人(戸籍の連続と相続人の行) ④ 3週目の後半〜4週目(進行中の相続1件)
Top3:会社の任期の台帳 3番目(4) 会社1社(役員ごとの行) ② 2週目の後半〜3週目(顧問先3社)

導入前提。 外部のサービスや生成AIに何を入れてよいか、匿名化、保存先、外国にある第三者への提供に当たるかの確かめ方と、表と台帳の列を事務所が決めます(節9)。

Top1:決済の案件ごとに当事者×必要書類×状態の確認表を作り、前日までに未了を抜き出す

何をするか。 決済の案件1件ごとに、当事者(売主・買主・担保権者・代表者等)を行、必要書類(登記識別情報、印鑑に関する証明書、住所を証する情報、委任状、抹消書類)を列にして「未受領・受領・確認済み」で埋め、本人確認・意思確認・取引時確認の状態も並べます(本記事の設計です)。AIは登記記録の読み取りから表を起こし、届いた書類を反映し、未了を抜き出して連絡の文面を作ります。

なぜ最初か。 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同してし(不動産登記法第60条)、その場合などには、申請人は、登記識別情報が通知されなかった場合その他の提供できないことにつき正当な理由がある場合を除き、登記義務者の登記識別情報を提供します(第22条)。本記事の業務の分解では、この表の出力が原本の確認、申請情報の点検、取引記録等の作成など8つの作業の材料になります。

どう始めるか。 次に予定されている決済の案件1件で表を作り、決済の3日前と前日に未了を抜き出します。登記記録の読み取り結果と差分は担当者が原本と照らして全件確認し、表と未了の抽出は未了と差異だけを担当者が見ます。原本の確認と受領は人が行い、申請に進むかは司法書士が判断します。本記事の設計では、揃っていない項目が一つでもあれば申請に進みません。

何を測るか。 決済の前日から当日に判明した書類の不足の件数、関係者への連絡の往復の回数(決済1件あたり)。

注意。 本記事の設計では、特定取引に当たるかの判定が「未確認」の間と、当たる場合に取引時確認が終わっていない間は、委任状と契約書の署名と申請の代理に進みません(節9)。

Top2:受け取った戸籍を読み取り、相続関係の候補と欠けている戸籍を出す

何をするか。 受け取った戸籍と相続の書類をAIに読み取らせ、被相続人の出生から死亡までの戸籍の連続、相続人、代襲・数次相続の候補を構造化し、欠けている戸籍を抜き出します。相続関係は司法書士が確定し、そこから法定相続情報一覧図・説明資料・遺産分割協議書の案を作ります。

なぜ二番目か。 相続による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できます(不動産登記法第63条第2項)。本記事の業務の分解では、相続関係の候補が、相続関係の確定、相続人への説明、申請情報の点検など5つの作業の材料になります。

どう始めるか。 外部入力の条件を決めた後(節1)、進行中の相続の案件1件で始めます。戸籍の記録と不足の抽出は読み取れないものだけを担当者が見て、候補・一覧図の案・説明資料・協議書の案は担当者が全件確認します。説明資料には、申請の義務者が相続により所有権を取得した者で司法書士ではないことと、相続人申告・過料を条文どおりに書きます(節9)。本記事の設計では、相続の開始の日が第二号施行日(節9)の前か後かを確かめるまで、申請の期間と起算点を書きません。

何を測るか。 戸籍の受取りから相続関係の候補(又は相続関係説明図)ができるまでの日数、戸籍の追加の請求の回数(相続1件あたり)。

注意。 本記事の整理では、読み取りの誤りは相続人の範囲と申請に及ぶため、原本との対応を記録に残します。

Top3:顧問先の会社ごとに、役員の任期の台帳を作る

何をするか。 顧問先の会社ごとに、登記事項、役員ごとの選任の日、定款の任期の定め、満了の見込みの定時株主総会を台帳にし、満了が近い会社への連絡の文面と、変更時の議事録と申請書の案を作ります。

なぜ三番目か。 会社は、会社法第911条第3項各号などに掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(第915条第1項。新株予約権の行使などには特則があります)。本記事の整理では、期間を守る義務は会社にあり、台帳はそれを支える事務所の道具です。本記事の業務の分解では、台帳が代表者への説明や申請情報の点検など4つの作業の材料になります。

どう始めるか。 顧問先の会社3社で、登記事項と定款から台帳を作ります。台帳と満了の見込みは定款の定めが読めないものだけを担当者が見て、連絡の文面、期間の候補、議事録と申請書の案は担当者が全件確認します。決議の事実は代表者が確かめて署名押印します。

何を測るか。 任期の満了を把握した時点(満了の何日前か)、変更の発生から申請までの日数。

注意。 株式会社の定款の変更や取締役の選任などの手続の代理を内容とする契約の締結は特定取引に当たりうるため、依頼ごとに判定を記録します(節9)。

4. AIに任せやすい仕事

人が確定した記録や基準と機械的に照らし、例外(未了・不一致・記録事項の欠け)だけを人が見る仕事です。

  • 形を整える。 受け取った資料の一覧、届いた書類の記録、受任の登録、事件簿の記載。
  • 照らし合わせる。 新しい依頼の関係者と事件簿の関係者、申請情報と担当者が確認した登記記録・添付情報、請求と入金。
  • 違いを見つける。 登記の完了後の登記事項と申請の内容の差。
  • 足りないものを探す。 確認表の未了の欄、受け取った戸籍の欠け、確認記録と取引記録等の記録事項の欠け。
  • 下書きを作る。 司法書士が確定した請求事項からの戸籍謄本等の請求書、確定した報酬と立替金からの請求書。
  • 探し出す。 人が登録した保存期限が近い事件簿・確認記録・取引記録等。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や下書きを作り、担当者が全件確認してから使う仕事です。確認を挟むことは手間ではなく、誰が何を確かめたかを残す品質の設計です。

  • 読み取り。 登記記録の読み取りと依頼内容との差分、戸籍の読み取りと相続関係の候補。
  • 書類の草案。 登記原因証明情報と申請情報、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書、議事録、相続人への説明資料、裁判所に提出する書類。
  • 記録と判定の候補。 面談の記録(本人が述べたことと司法書士の判断は別の欄)、補正の理由の分類、特定取引に当たるかの候補。

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。AIの候補が9割正しくても、ここに挙げるものは人が全件を決めます。

法令が行える者を限っている行為。 他人の依頼を受けて業として行う場合の、申請書の最終確認と記名・電子署名と申請の代理、申請に進むかの判断と補正、裁判所・検察庁に提出する書類の最終確認、司法書士法第3条第1項第1号〜第4号の事務についての相談(第73条第1項・節9)。登記の申請の代理を業とすることができる代理人として提供する本人確認情報(不動産登記法第23条第4項第1号)。簡裁訴訟代理等関係業務(司法書士法第3条第1項第6号〜第8号。価額の限定と代理できない事項があります)は、法務省令で定める法人が実施し法務大臣が指定する研修の課程の修了・法務大臣の認定・司法書士会の会員のいずれにも該当する司法書士に限り行うことができ(同条第2項)、本記事の設計では、その司法書士が依頼ごとに認定と会員であること、価額の範囲、代理できない事項でないことを確かめて「該当/範囲外と確認済み/未確認」の最終の判定をし、「該当」以外は受任しません(個々の価額の算定は本記事では判断していません)。申請に進むかの判断と補正は申請の代理の、最終の判定は受任する業務の一部と、本記事では整理しています。

法令が司法書士に役割を課しているもの。 受任の可否(正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除きます)を拒むことができません。司法書士法第21条)と業務を行い得ない事件(第22条)、補助者に任せる範囲と外部委託(他人に業務を取り扱わせることの禁止は司法書士法施行規則第24条、補助者を置くことができる旨と、置いたとき・置かなくなったときの遅滞なき司法書士会への届出は同規則第25条)、秘密を他に提供する正当な事由があるか(司法書士法第24条)。

事務所として決めること。 特定取引に当たるかの確定と取引時確認が終わったか、本人確認・意思確認ができないときの扱い、相続関係の確定、紛争性がある場合の扱い、簡裁訴訟代理等関係業務の範囲外・未確認の依頼を受けない判断、見積、外部入力の条件。相続関係の確定は、本記事では事務所の責任として司法書士が行う設計です。

7. Best Practice

到達点は、本記事の整理では「出来事ごとに、揃えるべき当事者・書類・本人と意思の確認の状態が1か所にあり、揃ったことを司法書士が確かめてから申請の代理に進む」構造です。決済は1枚の表、相続は構造化した戸籍と相続人、会社は任期の台帳がその1か所になります。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界や特定の事務所の実態を述べたものではありません。 節3の決済の確認表・相続の戸籍の記録・会社の任期の台帳が、まだ無い状態です。

After。到達点として置いた姿です。 3つの表と台帳があり、司法書士は揃った状態と原本を見て申請に進むかを判断します。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文を確かめた規律の一部です。

業務の範囲と、司法書士でない者の制限。 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(公共嘱託登記司法書士協会を除きます)は、司法書士法第3条第1項第1号〜第5号の業務(他人の依頼を受けて、登記又は供託に関する手続の代理、法務局や裁判所などに提出する書類の作成、これらの事務についての相談などを行うことを業とするもの)を行ってはなりませんが、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではありません(同法第73条第1項)。本記事の整理では、登記の申請人本人が自ら申請することは同項の対象外と読んでいますが、同項の解釈を確定するものではありません。

登記識別情報を提供できない場合。 申請人が第22条ただし書により登記識別情報を提供できないときは、登記官は登記義務者に通知し、法務省令で定める期間内は申出がない限り登記をすることができません(不動産登記法第23条第1項)。この規定は、申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされ、登記官がその代理人から法務省令で定めるところにより申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報(本人確認情報)の提供を受けた場合と、申請情報等を記載した書面等に公証人から必要な認証がされた場合で、いずれも登記官がその内容を相当と認めるときは適用しません(同条第4項)。

相続の登記の申請の義務。 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者(相続人に対する遺贈により取得した者を含みます)は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から三年以内に所有権の移転の登記を申請しなければなりません(不動産登記法第76条の2第1項。遺産の分割の後の申請の義務などの定めもあり、代位者その他の者の申請又は嘱託により登記がされた場合は適用しません)。期間内に相続が開始した旨と自らが相続人である旨の申出(相続人申告)をした者は、申出の前にされた遺産の分割によるものを除き、申請の義務を履行したものとみなされます(第76条の3第2項)。正当な理由がないのに申請を怠ったときは十万円以下の過料です(第164条第1項)。第76条の2は、民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(第二号施行日)より前に相続の開始があった場合にも適用され、その場合の起算点は「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」です(同法附則第5条第6項)。本記事の整理では、義務者は相続人等で、司法書士ではありません。個々の相続人の期間がいつ満了するかは本記事では判断していません。

犯罪による収益の移転防止に関する法律。 司法書士又は司法書士法人は同法第2条第2項第46号の特定事業者に当たりますが、個々の依頼が特定取引に当たるかは本記事では判断していません。特定事業者(弁護士等を除きます)は、特定取引を行うに際しては、主務省令で定める方法により本人特定事項などを確認しなければなりません(取引時確認・第4条第1項)。本記事の設計の3状態(該当/対象外と確認済み/未確認)は、法令上の区分ではありません。

事務所の規律とAI。 司法書士は他人をしてその業務を取り扱わせてはなりません(司法書士法施行規則第24条)。本記事では、AIの出力を確認の記録なしに提出することはこの規定との関係で問題になるおそれがあるとみて、最終確認と申請を司法書士が行い、確認の記録を残します(同条の解釈を確定するものではありません)。

個人情報と、生成AI・クラウドに出す条件。 個人情報の保護に関する法律は、2026年10月5日に確認した版(2026年10月1日施行)で書き、e-Govの応答に現行の版の表示がないため現行法とは断定しません。この版では、個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者は、それを構成する個人情報(個人データ)の安全管理措置と、取扱いを委託する場合の委託先の監督を行います(第16条・第23条・第25条)。本人の病歴や犯罪の経歴などが含まれる個人情報は要配慮個人情報で(第2条第3項)、本記事の設計では、相続の書類の病歴・障害の記述や後見開始の審判の申立ての診断書などを要配慮個人情報に当たりうる情報として扱います。個人データの第三者への提供は、第27条第1項各号の場合と同条第2項の場合(要配慮個人情報などを除きます)を除き、あらかじめ本人の同意が要り、利用目的の達成に必要な範囲内において取扱いの全部又は一部を委託することに伴う提供などでは、提供を受ける者は第三者に当たりません(同条第5項。委託に当たるかは本記事では判断していません)。外国(規則で定める外国を除きます)にある第三者(規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除きます)への提供には、第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が要り(この場合、第27条は適用しません)、同意を得ようとするときは、その外国の制度などの参考となるべき情報をあらかじめ本人に提供します(第28条第1項・第2項。外国にある第三者に当たるかは本記事では判断しておらず、同条のその他の項は扱っていません)。本記事の設計では、外部のAIサービスやクラウドに渡す前に、委託・第三者提供・外国にある第三者への提供のどれに当たるかを人が確かめて記録し、それまで渡しません(法令の要件ではなく業務上の止めです)。

入れる前には、①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④契約上の機密保持とデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など組織の規程上確認が必要な事項、の6点を確かめ、組織が利用を承認したサービスに限ります(組織の運用です)。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 司法書士が指名した補助者1名が、5営業日で既存の記録から数えます。直近1か月分の決済の案件で①決済の前日から当日に判明した書類の不足の件数②1件あたりの関係者への連絡の往復の回数、直近の相続の案件で③戸籍の受取りから相続関係の候補(又は相続関係説明図)ができるまでの日数④1件あたりの戸籍の追加の請求の回数、直近1年の会社の変更の登記で⑤任期の満了を把握した時点(満了の何日前か)⑥変更の発生から申請までの日数。

2週目:ルールを決める。 外部入力の条件と各表の列を決め、止める条件(特定取引の判定が未確認、取引時確認・本人確認・意思確認の未了、書類の不足、相続関係の未確定では申請に進まない)を手順書に書きます。後半に顧問先の会社3社で台帳を作り始めます(Top3)。

3週目:1件ずつ試す。 満了が近い会社への連絡の文面(Top3)、次の決済1件の3日前と前日の未了の抽出(Top1)、進行中の相続1件の相続関係の候補(Top2)を試します。試行期間は、Top1とTop3が3週目から4週目の終わりまで、Top2が3週目の後半から4週目の終わりまでです。

4週目:比べる。 試行した案件で①〜⑥を測り直して1週目と比べます(⑥は試行期間に変更が生じた会社だけ)。対象の案件を増やすか、Topの順序を変えるかを事務所の責任者が決めます。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 確認表・戸籍の記録・任期の台帳がなく、状態が記録に残っていない。
  • Lv2 台帳化。 確認表、戸籍の記録、任期の台帳、保存期限の一覧がある。
  • Lv3 一元化。 案件台帳と各表・確認記録が案件番号で結ばれる。
  • Lv4 AI支援。 読み取り・未了の抽出・候補・草案・点検をAIが作り、全件確認と例外だけを見る工程が分かれている。
  • Lv5 仕組み化。 補正の理由と案件別の原価が確認表と見積に戻り、制度の変更が手順書に反映される。

Lv5は、AIが申請の可否、本人確認、相続関係の確定を自動で行う状態ではありません。

12. FAQ

Q. 何年も前に始まった相続でも、相続の登記の申請の義務はかかりますか。 A. 所有権の登記名義人について第二号施行日より前に相続の開始があった場合も不動産登記法第76条の2は適用され(代位者その他の者の申請又は嘱託により登記がされた場合などを除きます)、起算点は「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」です(節9)。義務者は相続により所有権を取得した者で、司法書士ではありません。個々の期間がいつ満了するかは本記事では判断していません。

Q. 本人確認情報を出せば、登記義務者への通知は必ず省かれますか。 A. 必ずではありません。通知の規定を適用しないのは、登記の申請の代理を業とすることができる代理人による申請で、法務省令で定めるところにより本人確認情報の提供を受け、かつ、登記官がその内容を相当と認めるときなどです(不動産登記法第23条第4項・節9)。

Q. 相続人の確定をAIに任せてもよいですか。 A. 任せません。AIは候補と欠けの抽出までで、司法書士が確定する設計です(節3)。

Q. 依頼者の戸籍や本人確認書類の写しを生成AIに入れてもよいですか。 A. 委託・第三者提供・外国にある第三者への提供のどれに当たるかは本記事では判断していません。本記事の設計では、人が確かめて記録し、節9の6点を確かめるまで入れません。

13. 関連業態・シリーズ導線

不動産売買仲介の記事は、本記事の整理では、売買の媒介と重要事項の説明を扱う側の記事です。本記事は、決済の場面の登記の申請の代理を扱います。

土地家屋調査士事務所の記事は、本記事の整理では、調査又は測量を必要とする表示に関する登記の申請手続を扱う側の記事です。本記事は権利に関する登記を扱います。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

同じ司法書士事務所でも、扱う案件の比重や書類の状態の置き場所によって最初の一手は変わります。整理状況が出発点です。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標登録出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Claude AI活用 最強の教科書』(技術評論社・2026年10月刊)、『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)、『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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