弁護士事務所のAI活用|最初の一手と人に残す判断

弁護士事務所のAI活用:相談の段階から依頼者・相手方・関係人を当事者台帳に記録し、照合の一覧を弁護士の判断につなぐ流れ

最終更新日: 2026年10月6日/内容確認日: 2026年10月6日

本記事では、弁護士1〜十数名と事務職員の個人事務所・共同事務所又は弁護士法人が、個人(離婚・相続・損害賠償・労働・賃貸借・金銭の請求など)と中小企業(債権の回収・契約や労務の紛争)から一般民事・家事の事件の法律相談、交渉、民事調停、民事訴訟、家事事件の手続の代理を受け、中小企業の顧問も受ける形を主なモデルとして想定します。刑事弁護・少年事件・国選弁護、裁判所に選任される職務、債務整理、民事執行・民事保全、大規模な企業法務、民事法律扶助の手続と、AIが法的見解を示すサービスの適法性は扱いません。この対象と線引きは本記事の設計上の前提で、業界の典型像ではありません。

目次

1. 結論:弁護士事務所なら何から始めるか

弁護士事務所でAIを使うなら、最初の一手は「相談の段階から依頼者・相手方・関係人を当事者台帳に記録し、照合の一覧と照合した範囲を残してから、職務を行い得ない事件に当たるかを弁護士が判断すること」です。次に「裁判所からの通知を事件ごとに記録し、送達の効力発生の日と満了日を数えて台帳に載せること」、その次に「預り金を事件ごと・依頼者ごとに記録し、預り証・収支報告・清算書をその記録から作ること」が続きます。

この番号は効果の大きさの順位で、Topの台帳を入力に使う業務を入力のつながりでたどって数えた数(本記事の業務の分解で96・33・11)の比較です。事故の頻度や損害の大きさの比較ではありません。実施は、事件番号と当事者台帳の列をそろえる導入前提の後、Top1、Top2、Top3の順です(節3の表)。

一方で、職務を行い得ない事件に当たるかの判断、受任の決定、法律相談での見解、方針、書面の確定、期日、和解・上訴などの依頼者の意思の確認、預り金の出金と返還は、AIに渡しません(節6)。原則は「AIは候補まで、確定は人」です。

2. 業務全体の流れ

本記事のモデルでは、1件の相談と事件は次の順に進みます。

  1. 相談の受付(相談者・相手方・関係人の氏名・名称の聞き取り)。
  2. 当事者台帳との照合と、職務を行い得ない事件に当たるかの弁護士の判断。済んでから予約を確定します。
  3. 法律相談(弁護士)と相談記録。
  4. 本人特定事項等の確認(日本弁護士連合会の会規第95号の確認の対象に当たるかの判定と、当たる場合の確認)。
  5. 受任の判断、受任の際の説明と委任契約。
  6. 事件の処理。事実と証拠の整理、方針、交渉、書面の作成と提出、送達・期日・期間の管理、期日と和解・上訴、報告と協議。
  7. 預り金の管理と、報酬・費用の請求と入金(収益の入口)。
  8. 終了時の説明、清算と返還。

本シリーズでは、何を求めどこで終えるかが依頼者との協議で定まる「知的案件プロジェクト型」を主、送達などの事象から処理が起きる「イベント駆動型」を従として整理しています。

3. AI導入優先Top3

効果の大きさ(業務マップ上の範囲) 記録の単位 実施の順序
導入前提:事件番号の付け方と当事者台帳の列、担当弁護士と事務職員の役割の線 — — ①(1〜2週目)
Top1:当事者台帳と照合 最も大きい(96) 相談1件・事件1件 ②(2〜3週目)
Top2:送達・期日・期間の台帳 2番目(33) 事件1件×通知1通、事件1件×期日・期限1件 ③(3週目)
Top3:預り金の事件ごとの記録 3番目(11) 事件1件×依頼者1人×入出金1回 ④(3〜4週目)

3つの台帳は事件番号でつながるため、導入前提を先に置きます。括弧の数は本記事の業務の分解で数えた計算値で、記録の単位も本記事の設計です。

Top1:相談の段階から当事者台帳に記録し、照合してから判断する

何をするか。 相談・事件ごとに、依頼者・相手方・関係人の氏名・名称、事件名、時期、担当弁護士、相談のみか受任かを当事者台帳に記録し、新しい相談のたびに旧姓・商号の変更・表記ゆれを越えて照合して、一致・類似・不一致と照合した範囲(台帳の期間・名寄せの条件)を一覧にします。AIは相談票の構造化と照合の候補を出します。

なぜ最も大きいか。 台帳・照合の一覧・判断の記録は、予約の確定、法律相談、受任の決定など6つの業務の直接の入力で、たどると96に及びます。関わる規定は弁護士法第25条などです(節9)。本記事の整理では、相談を受けたことが後の事件で「相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの」(第25条第2号)に当たりうるため、相談だけの件の相手方も記録します(当たるかは事件ごとの判断で、本記事では判断していません)。

どう始めるか。 2週目に直近1か月分の相談と受任中の事件を台帳に入れ、新しい相談から照合の一覧と範囲を記録し、3週目から照合の候補をAIに出させます。

何を測るか。 予約の確定の前に照合の一覧を作った相談の割合、照合した範囲を記録した割合、類似の候補を人が確認した件数(3週目から記録)。

注意。 照合の一覧は担当者が「不一致」を含めて全件確認します。照合した範囲の外の当事者は拾えません。第25条に当たるか、ただし書の同意を要するかは弁護士が判断します。本記事の設計では、照合と判断が済むまで予約の確定・相談・受任・相手方への連絡をせず、同意を要する事件は同意が得られない間は職務を行いません。

Top2:裁判所の通知を事件ごとに記録し、満了日を数えて台帳に載せる

何をするか。 電子情報処理組織による送達の通知・書面の送達・期日の呼出しを、事件番号・受信日時・閲覧又は記録の日時とともに受信の記録に残します。AIが効力発生の日と満了日の候補を出し、担当弁護士が全件確認してから台帳に登録します。期限の前に、書面の未確定・依頼者の意思確認の未了・特別の委任の未取得を抜き出します。

なぜ2番目か。 台帳・満了日・未了の一覧は、書面の案、期日、特別の委任、報告書の案の4つの業務の直接の入力で、たどると33に及びます。送達の効力発生と控訴期間の規定が関わります(節9)。

どう始めるか。 受任時に、電子情報処理組織による送達を受ける旨の届出を記録しておきます。3週目に、受任中の事件の直近1か月の通知だけを受信の記録に入れ、満了日の候補をAIに出させます。

何を測るか。 受信から台帳の登録までの日数、期限の3日前に未了だった件数、満了日の候補を担当弁護士が確認した割合(3週目から記録)。

注意。 受信の記録は通知の原本と全件照合します。台帳への登録と未了の抽出は、登録できない・重複する期限と抜き出された未了だけを人が見ます。本記事の設計では、閲覧・記録の日時を確かめられず効力発生の日を確定できない間は、通知が発せられた日を起算の基準に置いて前倒しで満了日を管理し、書面の作成を止めません。法定の候補ではなく、事務所の内部の安全側の計算です。

Top3:預り金を事件ごと・依頼者ごとに記録し、書類を記録から作る

何をするか。 入出金1回ごとに、事件・依頼者と年月日・金額・入金の目的・出金の使途を記録します。AIは入金明細を事件・依頼者・目的と照合し、預り金口座で保管すべき額かを判定し、預り証・通知・収支報告書・清算書の案を作ります。

なぜ3番目か。 受領・保管の判定・入出金の記録と収支報告書は、預り証、出金の決定、清算書など6つの業務の直接の入力で、たどると11に及びます。関わる規定は日本弁護士連合会の預り金等の取扱いに関する規程(会規)です(節9)。

どう始めるか。 預り金と報酬の入金を分ける口座の扱いを先に決め、3週目に、預り金のある受任中の事件だけ直近1か月の入出金を記録に入れて残高を口座と突き合わせ、4週目に比べます。

何を測るか。 事件に紐づかない入金の件数、収支報告書の作成にかかった時間、保管の判定から移動までの日数(3週目から記録)。

注意。 受領・保管の判定・入出金の記録は、例外(紐づかない入金・目的の分からない入金・残高の不一致)だけ人が確かめ、預り証・通知・収支報告書・清算書の案は全件確認します。出金と返還は人が決め、決定の無い出金はしません。本記事の設計では、会規第95号の確認の対象に当たる依頼は、確認の記録が無い間は預かりを始めません。

4. AIに任せやすい仕事

結果をそのまま次へ渡せる仕事です。照らし合わせる相手は、人が確定した記録です。

  • 形を整える。 依頼者とのやり取りの綴り、受領した資料の一覧。
  • 照らし合わせる。 請求と入金の消込、預り金の入金と事件・依頼者・目的の照合。
  • 違いを見つける。 事件ごとの預り金の残高と口座の残高の差、外注費の請求と支払の差。
  • 足りないものを探す。 確定した期限の前の未了、未収、研修の記録の抜け。
  • 下書きを作る。 委任契約と受任の登録からの請求書(合わないときは人)、確定した期日・期限の事前の通知。
  • 探し出す。 判決・和解に基づく支払・引渡しの未履行、実績の集計の異常値。拾ったものは候補で、人が確かめます。

不一致・欠け・例外だけを人が見ます。照合の一覧や満了日の候補のように見逃しが異常として現れない確認は節5です。

5. AI支援に向く仕事

AIが候補や下書きを作り、人が全件確認してから使う仕事です。確認を挟むことは手間ではなく、品質の設計です。

  • 相談票への構造化と申告された期限の抽出(担当者が復唱で確認)
  • 当事者台帳との照合の一覧(担当者が「不一致」を含めて確認し、照合した範囲を記録)
  • 相談記録、時系列表と対応表、通知書・書面・証拠説明書の案、報告書の案(担当弁護士が、引用した条文・裁判例・証拠の実在と記載の一致を確かめます)
  • 送達の受信の記録(通知の原本と照合)と満了日の候補(担当弁護士)
  • 預り証・通知・報告書・清算書の案、会規第95号の確認の対象に当たるかの判定の候補
  • 外部へ渡す前の区分の候補

6. 人に残す仕事・判断

線の引き方の原則は「AIが答えを出せるか」ではなく「誰がその答えに責任を持つのか」です。

本記事が条文を確かめた範囲で、本記事の業務のうち法令が行う者を限っているのは二つです(法令の版は節9)。一つは訴訟代理人・手続代理人で、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか弁護士でなければなれず、簡易裁判所・家庭裁判所ではそれぞれその許可を得て弁護士でない者を代理人とすることができます(民事訴訟法第54条第1項・家事事件手続法第22条第1項)。もう一つは弁護士法第72条で、弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができず、ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでありません。

本記事はこの条を弁護士の側から読み、事務所の設計として、事務職員は法律相談での見解の提示・見通しの説明・相手方との交渉・書面の内容の確定・期日への出頭を行わず、受付・記録・書類の準備・連絡の取次ぎに限る線を置きます。個々の行為やAIを使ったサービスが同条に当たるかは判断していません。

職務を行い得ない事件(弁護士法第25条。節9)に当たるか、ただし書の同意を要するかは弁護士が判断します。照合の一覧の確認(担当者)とも、受任するかの決定(事務所)とも分けます。

以下は、本記事の整理で事務所や依頼者が負う判断です。

  • 事務所の判断。 受任するか(業務量と専門性、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当でないか、依頼の目的が犯罪収益の移転に関わるものでないか)、会規第95号の厳格な確認、利害対立や信頼関係の喪失への対応、預り金の出金と返還、事務職員に任せる範囲、外注、生成AIなどの外部サービスを使うかと入力の範囲。
  • 依頼者の意思。 和解・上訴などをするか。訴訟代理人は、和解・訴えの取下げ・控訴などに特別の委任を受けなければなりません(民事訴訟法第55条第2項)。

AIの照合や候補が9割正しくても、ここに挙げたものは人が全件を決めます。

7. Best Practice

本記事の整理では、到達点は事務所の仕事が三つの台帳に乗る構造です。相談だけの件も含めて当事者が一つの台帳にあって照合と判断を経て予約が確定し、期限は担当弁護士の確認を経た日だけが台帳に載り、預かったお金は「どの事件の、誰の、何のためのお金か」で記録されます。

8. Before / After

Before。本記事が改善の出発点として置いた想定で、業界の実態の描写ではありません。 相談だけの件の相手方は台帳に残らず、満了日は担当弁護士が手帳に書き、預り金は会計の帳簿に入るため、収支を聞かれると帳簿を拾い直します。

After。到達点として置いた姿です。 相手方も台帳に入って照合と判断の後に予約が確定し、満了日は担当弁護士の確認を経て載り、報告書は事件ごとの記録から作られます。法律相談と方針は変わらず弁護士が行います。

9. 法令・規制・情報管理

以下は本記事の実務上の整理で、条文・規程を確かめた規律だけを挙げており、すべての規律ではありません。法令は2026年10月5日に確認した、その日に施行されている版によります。個人情報の保護に関する法律(2026年10月1日施行の版)と家事事件手続法(2026年6月24日施行の版)は、e-Govに現行の版の表示がないため、その版と確認日で書き、現行法とは断定しません。未施行の改正は扱っていません。

弁護士法。 弁護士は、相手方の協議を受けて賛助し又はその依頼を承諾した事件、相手方の協議を受けた事件でその協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件(第3号)などの職務を行ってはならず、第3号と第9号(弁護士法人等の社員又は使用人である場合の、法人が受任している事件(自ら関与しているものに限る)の相手方からの依頼による他の事件)は、受任している事件の依頼者が同意した場合はこの限りでありません(第25条。弁護士法人の業務の制限は第30条の18)。

日本弁護士連合会の会規。 本記事の整理では、会則・会規は法令ではなく、会規の違反が懲戒の事由に当たるかは弁護士会が判断します(本記事では判断していません)。預り金等の取扱いに関する規程は、一の事件又は一の依頼者について預り金の総額が五十万円以上となった場合に十四営業日以上にわたり保管するときは五十万円以上の額を預り金口座で保管すること(第4条第2項)、依頼者から受領したときの預り証の発行(口座振込みの場合は依頼者の請求があったときに限る・第6条)、入出金の年月日・金額・入金の目的・出金の使途の記録と職務の終了後三年間の保存(第7条。会規の期間で、法令の保存期間ではありません)、依頼者の請求があったとき及び職務が終了したときの書面による収支の報告(第8条)などを定めます(官公署の委嘱による場合の除外があります)。

犯罪による収益の移転防止に関する法律と会規第95号。 取引時確認を定める同法第4条第1項は、特定事業者から第2条第2項第45号の弁護士・弁護士法人など(弁護士等)を除き、弁護士等による取引時確認等に相当する措置は、司法書士等(同項第46号)の例に準じて日本弁護士連合会の会則で定めるところによります(第12条第1項)。本記事の整理では、会規第95号をこの措置として扱います。同会規は、法律事務に関連する依頼者の金融機関の口座の管理や規則で定める金額以上の資産の預かり・管理に際して規則で定める方法による本人特定事項等の確認を定め(第2条第1項)、不動産の売買などの取引等の準備又は実行に際しても確認を定めます(同条第3項。いずれも官公署の委嘱による場合などを除く)。弁護士等の報酬又は費用の前受けなどは第1項の対象から除かれます(同条第2項)。

送達と期間。 電子情報処理組織による送達は、最高裁判所規則で定めるところにより、送達を受けるべき者が届出をしている場合に限りすることができ(民事訴訟法第109条の2第1項)、閲覧をした時・記録をした時・通知が発せられた日から一週間を経過した時のいずれか早い時に効力を生じます(第109条の3第1項。責めに帰することができない事由で閲覧又は記録ができない期間は一週間に算入しません)。控訴は、電子判決書又は第254条第2項の電子調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければなりません(第285条。期間前に提起した控訴の効力を妨げません)。

個人情報。 個人情報の保護に関する法律では、個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者が、それを構成する個人データの安全管理措置と、取扱いを委託する場合の委託先の監督を行います(第16条・第23条・第25条)。要配慮個人情報は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他政令で定める記述等が含まれる個人情報です(第2条第3項)。相談・事件の記録にはこれらを含む情報が入りえますが、当たるかは判断しておらず、本記事の設計では当たりうる情報として扱います。

本記事の設計では、外部へ渡すとき、委託か第三者提供かと、外国にある第三者かを別々に確かめます。個人情報取扱事業者による個人データの第三者への提供は、法令に基づく場合など第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ本人の同意が要り、利用目的の達成に必要な範囲内において取扱いの全部又は一部を委託することに伴う提供では、提供を受ける者は第三者に当たりません(同条第5項第1号。委託に当たるかは本記事では判断していません)。外国(規則で定める外国を除く)にある第三者(規則で定める基準に適合する体制を整備している者を除く)への個人データの提供は、第27条第1項各号の場合を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が要り、この場合は第27条を適用しません(第28条第1項)。同意を得ようとするときは、規則で定めるところにより、あらかじめその外国の個人情報の保護に関する制度、その第三者が講ずる措置その他本人に参考となるべき情報を本人に提供し(第2項)、体制を整備している者に提供したときは、規則で定めるところにより相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置を講じ、本人の求めに応じてその措置に関する情報を提供します(第3項)。どの外国・事業者が当たるかは判断しておらず、本記事の設計では、体制を整備した提供先で継続的な実施を確保できないと判断したときは提供しません。

第三者から個人データの提供を受けるときは、第27条第1項各号又は第5項各号に当たる場合を除き、規則で定めるところにより、提供者の氏名又は名称及び住所(法人は代表者の氏名も)と提供者による取得の経緯を確認し、規則で定める事項の記録を作成して、規則で定める期間保存します(第30条)。依頼者などから受け取る情報がこれに当たるかは判断しておらず、本記事の設計では、確認を要する場合と未確認の場合は、確認が済むまで事件の資料に使いません。

記録を生成AIやクラウドへ入れる前には、①入れる情報を必要最小限にする②入力データを学習に利用するか③保存期間と削除の方法④契約上の機密保持とデータの取扱条件⑤アクセス権限と利用ログ⑥再委託や国外保存など事務所の規程上確認が必要な事項、の6点を確かめ、事務所が利用を承認したサービスに限ります。法令の要件ではなく、事務所として決める運用です。

10. 最初の30日プラン

1週目:測る。 事務職員1名が5営業日で、直近1か月分の相談票・通知・入金明細から①予約の確定の前に照合の一覧を作った相談の割合 ②照合した範囲を記録した割合 ③受信から台帳の登録までの日数 ④期限の3日前に未了だった件数(担当弁護士が確認)⑤事件に紐づかない入金の件数 ⑥収支報告書の作成にかかった時間を数えます。

2週目:様式を決める。 事件番号の付け方と当事者台帳の列をそろえ、事務職員が答えない範囲を決めます。直近1か月の相談票と受任中の事件の当事者を台帳に入れ、新しい相談から照合の一覧と範囲を記録します。

3週目:人が全件確認する小規模試行。 AIは事務所が利用を承認し入力の条件を決めたサービスに限ります。照合の候補は担当者が、満了日の候補は担当弁護士が全件確認し、預り金のある事件の入出金を事件ごとの記録に入れます。

4週目:比べる。 ①〜⑥を同じ方法で測り直し、1週目と比べます。節3で「3週目から記録」とした3つの指標は、次の30日の基準値にします。書面の下書きにAIを広げるかは、入れる範囲と条件を決めてから判断します。

11. AI活用成熟度

  • Lv1 人依存。 照合・期限・預り金の記録が担当弁護士の手帳・紙・会計の帳簿に分かれている。
  • Lv2 台帳化。 三つの台帳がそれぞれ表やソフトにある。
  • Lv3 一元化。 三つの台帳が事件番号でつながり、相談票・受任の登録・通知・入金明細から更新される。
  • Lv4 AI支援。 AIが候補と下書きを出し、全件確認するものと例外だけを見るものを分けて人が確かめる。
  • Lv5 仕組み化。 台帳と確認の記録が手順になり、照合と判断の前の予約、特別の委任の無い訴訟行為、決定の無い出金、区分が未確認の提供が止まっている。

Lv5は、AIが弁護士の判断を自動で行う状態ではありません。

12. FAQ

Q. 事務職員が、AIの出力を使って相談者の質問に答えてもよいですか。 A. 本記事の設計では、事務職員は見解・見通しを述べず、AIの出力も伝えません。個々の行為が弁護士法第72条に当たるかは判断していません(節6)。

Q. AIが出した控訴期間の満了日を、そのまま台帳に載せてよいですか。 A. 本記事の設計では候補として扱い、担当弁護士が全件確認してから登録します(節3・節9)。

Q. 弁護士も、犯罪による収益の移転防止に関する法律の取引時確認をするのですか。 A. 同法第4条第1項は特定事業者から弁護士等を除き、弁護士等の取引時確認等に相当する措置は日本弁護士連合会の会則で定めるところによります(第12条第1項)。本記事の整理では、会規第95号をその措置として扱います(節9)。

Q. 相談記録を生成AIに入れてもよいですか。 A. 職務上知り得た秘密と、要配慮個人情報に当たりうる情報が含まれえます。本記事の設計では、節9の6点と、委託・第三者提供・外国にある第三者への提供のどれに当たるか(委託に当たるかを含め、本記事では判断していません)を人が確かめて記録するまで入れません。

13. 関連業態・シリーズ導線

行政書士事務所の記事は、本記事とは別の業態の記事で、聞いた内容と証拠を項目ごとに突き合わせることをTopに置いています。本記事は、許認可等の申請書類の作成と提出の手続を扱いません。

業種別AI活用の一覧はピラーページにまとめています。

14. この記事を自社に当てはめたい方へ

扱う事件や台帳の整い方で最初の一手は変わります。事件番号と当事者台帳の列がそろっていないなら導入前提から、そろっているなら照合の一覧から始めます。

15. 無料AI戦略診断/AI顧問

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自事務所の業務に沿って一緒に設計したい方には、AI顧問サービスがあります。まず話を聞いてみたい方は、お問い合わせから30分の無料リモート面談をご利用ください。

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この記事を書いた人

西俊明(トシゾー)のアバター 西俊明(トシゾー) 中小企業診断士/AI実践戦略士/IT講師・著者

中小企業診断士/AI実践戦略士(商標登録出願中)/IT講師・著者。富士通で17年間、IT製品の営業・マーケティングに従事した後、独立。中小企業を中心に270社超を支援し、研修・セミナーへの登壇は250回を超える。現在は、生成AI・ITを経営や業務に生かす実践的な方法と、ITパスポート、情報セキュリティマネジメント、基本情報技術者試験などの学習法・過去問解説を発信している。著書に『Claude AI活用 最強の教科書』(技術評論社・2026年10月刊)、『Webマーケティング最強の1冊目』(千葉テレビ『モーニングこんぱす』で紹介)、『改訂7版 ITパスポート最速合格術』など。

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