組織学習(組織論)
Contents
組織学習とは
組織学習は、組織が持つルーティン(行動プログラム)が変化するプロセスとして定義されるものです。
組織ルーティン
それでは、組織ルーティンとは何でしょうか?
組織ルーティンとは、公式の文書として制度化されている諸規則、手続き、組織構造、さらに、組織文化、個人レベルにまで還元される知識などをすべて含有した概念です。
そのような総合体である組織ルーティンを変化させるプロセスそのものを組織学習といいます。
組織は、組織ルーティンを利用して様々な問題を解決します。その問題解決能力は組織の適応能力と言えるものであり、つまり、組織学習とは組織の適応能力の進化させることといえるでしょう。
センゲの「ラーニング・オーガニゼーション」
センゲは、ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)という考え方を提唱しました。
ラーニング・オーガニゼーションでは、継続的に自らの力で変革を行っていくことになります。
センゲによれば、ラーニング・オーガニゼーションには、
①ビジョンの共有、②チーム学習、③自己学習、④メンタル・モデルの克服(思い込みの排除)、⑤システム思考(全体構造や作用の把握)
以上の5つの要因(フィフス・ディシプリン)が必要と考えました。
組織学習のメカニズム
組織学習には2つの学習メカニズムがあります。それが、「積極的問題解決学習」と「不安除去学習」です。
積極的問題解決学習
組織に関する重要な問題を解決できた場合、その解決策は再利用され、組織に保存されますが、このような、プラスの効用をもたらす学習をのことを「積極的問題解決学習」といいます。
不安除去学習
「不安除去学習」とは、マイナスの効用を除去するための学習です。具体的には、組織にとっての恐怖、苦痛、不安を除去・軽減するためにある行動が有効だった場合、その行動は何度も繰り返し定着することになります。
組織の発展プロセス
組織の発展プロセスは、以下の通り、漸次的進化過程と革新的変革過程があります。
漸次的進化過程
組織の発展プロセスにおいて、比較的安定した段階における連続的な進化のプロセスであり、絶えず漸次的な修正や改善が行われています。
革新的変革過程
組織が危機に直面した際、不連続な変化にて別の段階に移る状態のことであり、外部環境の劇的な変化などがおこると、戦略や組織の再構築を行うようなケースなどがあります。
組織学習のレベル
組織学習には、「低次学習」と「高次学習」の2種類があります。
低次学習
低次学習には、「単なる行為の繰り返し」「部分修正」などの特徴があります。
シングルループ学習(所与の条件の中でエラーのみ修正する学習)も、低次学習の主要な特徴です。
高次学習
高次学習には、「組織全体に影響する学習」「規範や認知枠組みなどの変化をもたらすような学習」などの特徴があります。
ダブルループ学習(既存の価値や目標、政策などの文脈を超えて、それらのものの修正を伴う学習)も、高次学習の主要な特徴の1つです。
なお、組織の発展プロセスとの関係を考えた場合、低次学習は、組織の漸次的進化過程にて行われます。
一方、高次学習革新的変革過程にて行われます。
ただし、高次学習が実行されるのは難しいものです。そのため、組織においては低次学習が実施されやすいという実情があります。
組織の学習サイクル
組織学習は、各構成員を介在し、以下のプロセスにて実行されます。
①ある組織行動がもたらした環境の変化(結果や成果)を個人が知覚し、観察・分析する。その結果、個人の信念や知識に修正が加えられる。
↓
②個人が学習した成果により、個人の行動が変化する。
↓
③各個人の行動が変化し、組織の行動も変化する。
↓
④新たな組織の行動は、新しい成果や結果を生み出す。
安定的な段階に組織がある時、この組織の学習サイクルは不安定になりがちといわれています。
学習サイクルが不安定となる要因
組織の状態が安定的な場合、組織の学習サイクルの各移行時において、それぞれうまく移行できないケースが発生することがあります。これには、次の4つの理由があります。
①曖昧さのもとでの学習
なぜ環境が変化したのか、その理由を適切に解釈できないケースであり、そのため個人の信念が修正されず、あるいは、間違った修正がされてしまうケースです。
②役割制約的学習
組織の役割や規定、手続き等の決まりごとが障害となり、個人が自分の思いどおり行動ができないケースです。
③傍観者的学習
個人の学習成果が組織の新たな行動に活かせないケースです。
④迷信的学習
組織の行動、そして、結果としての環境変化の間における因果関係を適切に理解できないケースです。
組織論のタネ本は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」は、つかみどころがない
中小企業診断士試験の企業経営理論のうち、組織論の内容は、次の4つに大きく分かれます。
(1)経営組織の形態と構造 | 職能組織・事業部制など、いわゆる組織のハード構造のこと |
(2)組織構成員のレベルの組織内プロセス | 組織のソフト面のうち、個人に関係するプロセス。モチベーション理論やリーダーシップ理論など |
(3)組織のダイナミクス、組織と環境との関係 | 組織のソフト面のうち、組織全体に関わるもの |
(4)人的資源管理 | いわゆる労務管理。中小企業診断士試験では、労働基準法など法規に関する出題が多い |
これらのうち、管理人は、「(3)組織のダイナミクス、組織と環境との関係」が、もっとも苦手でした。
この(3)の具体的な内容は、下記のようなものです。
これらは、TACのスピードテキストなどの資格教本を読んでも今一つ理解できませんでしたし、過去問も、つかみどころがない印象でした。
この記事を読まれている受験生の中にも、管理人と同じような印象をお持ちの方も多いと思います。
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」の攻略は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)にあり
「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」に関連する出題は、桑田耕太郎・田尾雅夫著「組織論」(有斐閣アルマ)から多く出題されています。
著者の一人・桑田耕太郎氏は中小企業診断士試験の試験委員のため、この分野の出題は、彼が任されているのでしょう。
受験時代、この本を購入して熟読した私は、「組織のダイナミクス、組織と環境との関係」の分野の苦手意識をなくすことができました。
誤解のないように言えば、この本自体も、決して分かりやすい内容ではありませんが、TACのスピードテキストなどには、この本の内容の要約しか書かれていないため、比較論で言えば、圧倒的に、原著にあたった方が理解は進みます。
なかなか理解も難しいため、私の場合は、三度通読して、なんとか「分かった気がする」レベルになった、という状況でした。
時間的には、かなり費やしてしまいましたが、「どうしても組織論が苦手だ」という方は、こちらの原著にチャレンジしてみる価値はあると思います。
※本項目は、中小企業診断士試験の「企業経営理論」の科目で出題される内容です。
企業経営理論の勉強法は、以下の記事を参考にしてください。

また、独学で勉強する方は、下記の記事も参考にしてください。

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