目次
モチベーション理論
モチベーションとは「動機づけ」のこと
モチベーションは動機づけと訳されます。組織全体目標と個人目標を一体化し、組織構成員が組織に対して積極的に貢献する行動を引き出すことが目的です。
モチベーション理論には、「個人を動機づけるのは何か」について対象とする内容理論と「個人はどのようなプロセスで動機づけられのか」を対象にする過程理論の2つがあります。
この記事では、それぞれの理論を詳しく説明していきます。
モチベーション理論 内容理論
主な内容理論として「マズローの提唱した欲求段階仮説」や「マグレガーのX理論、Y理論」、「ハーズバーグの2要因理論」などがあります。
モチベーション理論 過程理論
主な過程理論には、「ブルームの期待理論」があります。
モチベーション理論の成り立ち
テイラーの科学的管理法
テイラーの科学的管理法とは、伝統的管理論の1つです。そのなかでテイラーは、人間の存在を経済人モデルおよび機械人モデルとして表現しています。
「経済人モデル」とは、「労働者は報酬がよければ、それに比例していくらでも働く」という人間観です。
また、「機械人モデル」とは、「労働者に適切に指示をすれば、機械のように精密に働く」という人間観です。
人間関係論
メイヨーとレスリスバーガーが行ったホーソン実験の中で生み出されたものが、人間関係論になります。
ホーソン実験は当初、「物理的な作業条件を向上させると作業能率も向上する」という科学的管理法の仮説を証明するために開始された実験でした。
しかし、結果的には、科学的管理法の仮説を否定する結論ばかりになりました。
結論として、メイヨーとレスリスバーガーは「生産性向上にとって人間関係は重要な要因である。職場での人間関係、特にインフォーマル(非公式)組織において高い満足を得られていることや、インフォーマル組織を支配する感情が公式組織の目的に対し肯定的な場合においては、各構成員の士気・やる気が向上して、高い生産性を発揮することになる」という人間関係論をまとめました。
これまでの合理性を追求した経済人モデル・機械人モデルを否定し、人間は合理的なだけではなく感情に基づいて向上するという、感情人・社会人モデルが新しく提唱されるようになりました。
人間関係論の問題点
人間関係論の問題点は、構成メンバー相互の感情的部分や満足度を重視し過ぎることです。
各メンバーの満足度が高くて良好な関係が築けたとしても、「仲良し倶楽部」となると、生産性が上がりません。
例えば、組織内の仲良しグループが、「みんなで共謀して、サボタージュしよう」なんて考えることは、よくあるケースです。
つまり、組織の目的と個人の目的や満足をいかに結びつけるか、言いかえれば、合理性と人間性の統合をどのように図るべきか、という視点からモチベーション理論が展開されるようになったのです。
このように、モチベーション理論は、科学的管理法から人間関係論へと流れつつ、発達してきました。
マズローの欲求段階説
心理学者のマズロー(米国)は、人間の持つ様々な欲求を5段階に階層化・体系化した欲求段階仮説を提唱しました。
これは、最も低次の生理的欲求から最も高次の自己実現欲求まで、低次の欲求がある程度満たされると、次の(一段上の)次元の欲求が出現するという考えかたです。
5段階の欲求は、下記のとおりです。
生理的欲求とは、人間の生存に関わる欲求です。水や食べ物、眠りなど生物として生命を維持するのに必要な本能的な欲求となります。生存欲求とも呼ばれます。
安全の欲求とは、危険・恐怖といったものを回避して、安全や安心を求める欲求のことです。物理的な危険だけでなく、雇用の安定といったものも含みます。
愛情の欲求とは、社会や集団において他の方々と交流し、そして承認してほしいという欲求です。社会的欲求ともいいます。
尊厳の欲求とは、他人から承認されたい、認められたい、という願いを希求する欲求です
自己実現の欲求とは、自己の能力を活用して何かことを成し遂げたい、など、自身の表現や自己実現に関わるものです。自己実現欲求は、完全に充たされることはありません。無限に成長を求める欲求といえます。
マズローは組織メンバーが欲求を満たすために、人間関係だけではなく、より高いレベルの欲求になればなるほど、『より魅力的な仕事を提供しなければならない』と主張しました。
マグレガーのX理論、Y理論とは?
科学的管理法をベースとした人間観、そして、マズローの欲求段階説をベースとした人間観、その2つの人間観をもとに提唱されたものが、マグレガーのX理論・Y理論というモチベーション理論になります。
X理論は科学管理法をベースとした人間観を基礎にしています。また、Y理論はマズローの欲求段階説をベースとした人間観を基礎としています。
X理論
X理論とは、
「人間は本来怠けものなので、仕事はしたくないと思っている」
「人間は強制されなければ努力をしない」
「人間は高い報酬や良い作業環境があれば、それにつられて仕事をする」
などの考え方です。
Y理論
Y理論とは、
「人間は仕事をサボることばかり考えている、というわけではない」
「人間は、自分が主体的に関わって立案した目標に対しては、主体的に努力する」
「自分自身が成長できると思えば、人間は一生懸命に働く」
などの考えかたです。
MBO(目標による管理)
X理論に基づく人間観は、マズローの欲求5段階の低次の欲求を求めています。
しかし、現代の組織においては、各メンバーは低次の欲求を満たしているケースがほとんどです。そのため、現代の組織においては、Y理論に基づくモチベーション管理が必要と言えるでしょう。
その具体的方法として目標による管理(MBO)が挙げられます。
※MBO= Management by Objectives
ハーズバーグの2要因理論(動機づけ、衛生理論)
ハーズバーグは、職務に満足を感じる原因と不満足を感じる原因は違うもので、双方は影響を与えることなく、まったく別の存在である、という2要因理論(動機づけ、衛生理論)を打ち出しました。
動機づけ要因とは職務に対して、前向きな態度を取らせることができるもので、「達成感、上司や同僚からの承認、仕事自体の面白さ・魅力、責任や権限、自身の成長につながるか、昇進・昇級の見込み」などが挙げられます。
衛生要因とは改善すれば、組織のメンバーの不満は解消されるが、積極的な職務態度の引き出しには繋がらないものであり、「会社の経営方針、上司との関係性、職場における対人関係、仕事の初条件、報酬、雇用への保証があるか否か」などが該当します。
つまり、仕事に対するモチベーションをアップさせるには、動機付け要因を改善することが必要となります。
また、その具体的な方法としては、職務拡大や職務充実などがあります。
職務充実と職務拡大
職務拡大は、職務の水平的拡大のことであり、仕事の単調感(マンネリ感)などを解消させるため、仕事に変化の要素を取り入れたり、仕事の構成要素を増やしたりするなどして、仕事の範囲を拡大することをいいます。
職務充実とは、職務の垂直的拡大のことであり、これまで組織メンバーが実施していた業務に加え、その業務に関する戦略策定や管理といった要素を加えることで、権限と責任を拡大させ、業務の充実を図ることをいいます。
ブルームの期待理論とは?
ブルームの期待理論とは、心のなかにモチベーションが発生する過程(プロセス)を明確にしようと試みる理論のことです。期待理論で考えられたモチベーションの心理的プロセスは以下となります。
①努力をして手に入る成果が、自分の求める満足の水準(要求水準)に達しているか
②成果に到達した場合、報酬を手にすることができるのか
③その報酬は、自分にとって魅力的なものであるか
④さらに2次的な報酬はあるのか
以上のプロセスを通して、人間は自分にもっとも有利と考えられる行動を選ぶ、とブルームは主張しました。
また、人間のモチベーションの大きさは
「自分が努力した結果、目標に届く見込みがあるかどうか(期待値)」
「報酬が自分にとってどれぐらい魅力的か、その程度(誘意性)」
の掛け算によって決定する、とブルームは主張しました。
モチベーション理論(組織論) <まとめ>
この記事では、モチベーション理論について見ていきましたが、いかがでしたでしょうか?
モチベーションの目的は、組織全体目標と個人目標を一体化し、組織構成員が組織に対して積極的に貢献する行動を引き出すことでした。
また、モチベーション理論には、「個人を動機づけるのは何か」について対象とする内容理論と「個人はどのようなプロセスで動機づけられのか」を対象にする過程理論の2つがありました。
各理論を覚えるときは、細かい点ばかりにとらわれず、「内容理論なのか、プロセス理論なのか」など、大局的な見地から理解することも有効になるでしょう。
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