こんにちは、トシゾーです。
今回の記事は「人的資源管理(HRM:Human Resource Management)」に関するものです。
人的資源管理は、以前は「労務管理」などと呼ばれていました。
「労務管理」と呼ばれていたころは、「いかに、効率的に人を管理するか」という点が重要視されていましたが、
現在では、「カネやモノと違い、ヒトは効率だけで管理できる/するものではない」という考え方が主流になっています。
さらに、「ヒトは、企業の経営資源のなかで、もっとも重要である」という考え方も浸透して来ています。
このように重要な人材の管理について、企業全体の総合的な取り組みで、人材を活かす取り組みが求められている、といえるでしょう。
「人的資源管理(HRM)」と呼ばれるようになった背景には、以上のような思想の変遷があるのです。
目次
人的資源管理(HRM)の概要
人的資源管理の構成
人的資源管理は、大別すると、以下の4分野から構成されます。
評価、雇用管理、能力開発、賃金管理
このうち、「評価」が人的資源管理の中心となります。
わが国の企業では、これまで「職能資格制度」が多く採用されていました。現在では、成果と結び付けた評価制度も広く利用されるようになっています。
※なお、HRMの概要は下記動画でも説明しています。動画のほうがお好みの方はチェックしてみてください。
人的資源管理(HRM)の機能 その1: 評価
職務分析
職務分析とは、職務の内容(職務の範囲、特徴、機能など)および、その職務の遂行に必要となる人間の能力(知識や技術、精神的能力、肉体的能力など)を明確にすることといえます。
なぜ職務分析を行うのかといえば、その職務に適切な社員を選抜・配置し、結果として、効果的・効率的な人材管理を実現するためです。
職務分析の内容は、次のような業務において活用されます。
・採用、配置 |
・研修、教育訓練 |
・組織や業務の再構築 |
・人事評価 |
・職務報酬の決定 |
職務分析においては、まず、その職務の内容を明らかにすることが重要です。これを「職務調査」といいます。
つづいて、職務の内容を詳述した「職務記述書」を作ります。この職務記述書の内容を元に、職務評価を行います。職務評価とは、各職務の難易度(順位)を決定し、格付けすることです。
この職務評価において、各職務の難易度や格付けが決定しますから、各職務の賃金(職務給の額)が決定されることになります。
職務分析においては、「面接法」「観察法」「質問法」などの手法があります。
人事考課
人事考課とは、従業員それぞれの、ある期間における業績や業務遂行能力、勤務態度などを、あらかじめ設定された基準に従い評価を実施することです。
人事考課の結果は、「昇進・昇格」「昇給・賞与の査定」「異動や配置」「教育訓練」のようなケースで利用されます。
人事考課の主な評価項目には、「業績/成果」、「能力」、「情意(意欲や勤務態度)」があります。
このうち、年齢の若い方・業務経験の浅い方は、「情意」を重視する傾向にあり、資格や役職等が上がるにつれて「業績/成果」の評価項目のウエイトが上がることになります。
また、人事考課の評価基準は、おおきく「絶対評価」と「相対評価」の2つがあります。相対評価は、評価する集団の中で相対的に比較を行いますが、絶対評価では絶対的な基準を以て評価を行います。
たとえば、絶対評価においては、全員が目標を達成すると全員が優秀な評価となりますが、相対評価では、前述の場合においても、集団の中で優劣をつける必要があります。
このことからも、本来的に望ましいのは絶対評価、ということが分かるでしょう。
評価における心理的誤差の発生
当然ながら、人事考課を行ううえで、公平公正で客観的に実施することは非常に重要です。
しかし、考課者が公平公正のつもりでも、心理的な誤差が発生することがあります。
主な心理的誤差傾向には、次のようなものがあります。
このような心理的誤差傾向は、考課者に対する訓練によって低減させなければなりません。
ハロー効果 | 被考課の第1印象や、特定の項目の評価などに引きずられて、すべての項目で優秀(問題あり)と評価してしまうことです。 |
寛大化傾向 | 全体的に評価が甘くなることです。 |
中心化傾向 | どの項目においても、平均に近い評価をしてしまうことです。 |
論理的誤差 | 論理的に関連する項目について、同様の評価をしてしまうことです。 |
その他の評価手法
その他、次のような評価方法もあります。
自己申告制度 | 社員自身に、保有能力や希望職種などを自己申告させる制度 |
360度評価 | 上司の他、同僚や部下など、複数の関係者に評価してもらう手法。より客観的な評価が期待できる。「多面評価」ともいう |
目標管理制度 | 社員それぞれが自己の目標を設定し、その目標を達成できたかどうかで評価を行う |
ヒューマン・アセスメント | 外部の専門家が、被考課者の面談や課題演習の様子を観察することにより、それぞれの個人の潜在能力を客観的に評価する |
人的資源管理(HRM)の機能 その2: 雇用管理
採用
要員計画
採用活動においては、まず、要員計画を策定することが必要です。
要員計画とは、経営計画に基づいて、その企業の現在から将来にわたって必要となる従業員構成を明確化し、その確保を目的として策定する計画のことです。
要員計画において、要員数を適切に求めるためには、次の2つの手法点があります。
まずは、「マクロ算定方式(総枠方式)」です。
マクロ算定方式では、利益計画などから人件費予算の総枠を求め、それを1人当たり人件費で除して必要要員数を求めます。
もう1つの手法は、「ミクロ的算定方式(積み上げ方式)」です。
ミクロ算定方式では、職務分析等に基づき、まず、各部門ごとに必要な従業員数を求ます。そして全部門の必要要員数を積み上げていくことになります。
採用管理
要員計画が決定すると、つづいて採用管理に入ります。採用管理とは、要員計画に基づき募集、選考、採用を適切に管理することです。
従来までの我が国企業における採用活動の特徴として、新規学卒者を、年度始まり(4月)に一括採用することが一般的だったことが挙げられます。
また、そうした新規学卒者に求められる素養は、仕事への適正よりも、その企業の社風に合う人柄や企業人としての基礎的な資質が重視されていました。
なぜかと言えば、「終身雇用」が採用の前提だったからです。
しかし、現在では、社会環境の変化により、採用方式は様々な形式に分化してきています。
具体的には、「中途採用」「通年採用」「職種別採用」なども一般的に行われるようになっています。
配置・異動
人事異動の目的
人事異動には、次のような目的があります。
従業員の労働意欲の向上
組織活性化
昇進・昇格に伴う異動
労働力の有効活用
垂直型異動と水平型移動
垂直型移動とは、役職や資格などの上下を伴う異動のことであり、水平型移動とは、役職の上下を伴わない異動のことです。
また、移動には、職種が変更になる「職種転換」、勤務地が変わる「勤務地転換」などがあり、これらをまとめて「配置転換」といいます。
退職
自己都合退職と会社都合退職
自己都合退職とは、従業員自身の希望により行われる退職のことです。
また、会社都合退職とは、人員整理や転籍などによる退職、そして、定年退職も含まれます。
定年退職
定年退職とは、従業員が一定の年齢に達すると自動的に退職となる制度のことです。
これまで高年齢者等雇用安定法において「60歳定年制」が義務化されていました。しかし、法改正がされ、雇用する高年齢者に対し、65歳まで、安定して雇用を確保しなければならない、という義務が各企業に生じています。
65歳まで、安定的に雇用を確保していくことを担保する制度として、定年延長に加え、勤務延長制度、および再雇用制度が実施されています。
多くの場合、勤務延長や再雇用により、賃金を低下させることが一般的に行われています。
早期退職者優遇制度/選択定年制度
定年前の一定期間に退職する従業員に対して、退職金の増額、独立資金援助などの優遇措置を講じる制度のことを、「早期退職者制度」や「選択定年制度」といいます。
企業側には継続勤務における人件費の増大を削減できる利点があり、従業員側には、定年後を見据え、新たな人生設計を実施できる、という利点があります。
資格制度
職能資格制度
そもそも資格制度とは、企業内において、それぞれの従業員の序列や処遇などを明確化するための制度制度です。
資格制度のなかで、特に我が国の大企業でりようされているものが、職能資格制度です。
「職能」とは、その名の通り「職務遂行能力」のことです。具体的には、スキル、経験、知識(ノウハウ)など、様々な職能を要素に分解し、それらを基準に職能資格等級を設定することになります。
それらの職能資格等級を、さらに職能資格基準書にまとめます。
その職能資格基準書を利用して、賃金や配置、異動、昇格などの人事処遇の基準を策定するのです。
職能資格制度を活用している企業においては、それぞれの従業員が各職能に定められている要件を満たした場合に、上位の資格に異動します(昇格)。
人的資源管理(HRM:ヒューマン・リソース・マネジメント)その1 評価・雇用管理 <まとめ>
人的資源管理(HRM:ヒューマン・リソース・マネジメント)は、経営資源の中でも、もっとも重要で、もっとも適切な管理が必要となる人材をマネジメントするものです。
この記事では、人的資源管理の4つの機能のうち、「評価・雇用管理」について説明しました。
次の記事では、「能力開発・賃金管理」について説明します。
引き続き、そちらも参考にしてください。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |