こんにちは、トシゾーです。
今回は、「マーケティング環境分析」、「マーケティング目標の設定」および「標的市場の設定」に冠して、お伝えします。
マーケティングにおいては、第一に環境分析を実施し、自らがターゲットとする「機会(チャンス)」を見出すことが必要です。つづいて、その機会に対するマーケティング目標を設定することになります。
そして、マーケティング目標の設定の後は、具体的に狙いを定める標的市場の設定を行うことになります。
それでは、詳細を見ていきましょう。
目次
マーケティング環境分析
マーケティング環境分析
マーケティング目標を設定する前に、まずマーケティング環境の分析を行うことが必要です。
戦略的マーケティングとは経営戦略とほぼ同義であり、マーケティングそれ自体、企業が市場へアクセスする唯一の機能となります。
したがって、マーケティング環境分析とは、経営戦略策定の環境分析と同等の内容になります。
つまり、外部環境と内部環境を分析し、そこからSWOT分析を実施することになります。
外部環境分析
まずは外部環境分析です。
ここでは、企業を取り巻く様々な外部環境を分析し、自社にとって機会(チャンス、追い風)となる要因、および、自社にとり脅威(ピンチ、逆風)になる要因を洗い出します。
外部環境の要素の例として、以下のようなものが挙げられます。
<ミクロ外部環境> 顧客、競合企業、流通業者、供給業者 <マクロ外部環境> |
マクロ外部環境は、原則として、企業がコントロールすることは出来ません。
一方、ミクロ外部環境である「顧客、競合企業、流通業者、供給業者」などは、部分的に影響を与えることが可能な場合があります。
また、マーケティングの外部環境分析においては、特に顧客(消費者)に対する分析が重要です。
顧客に対する外部環境分析においては、マーケティングリサーチ(市場調査)の実施や、消費者行動プロセスの理解が重要です。
それらについては、下記の記事を参考にしてください。
内部環境分析
続いて、内部環境分析です。内部環境分析では、自社の強みと弱みを洗い出します。
内部環境の各要素は経営資源ともいい、次の4つから構成されます。
ヒト、モノ、カネ、情報(ノウハウ) |
これらの内部環境の各要素が、競合他社と比較すると、相対的に強いのか/弱いのか、という観点からの分析も必要となります。
内部環境は、外部環境と違い、自社にとってコントロール可能だといえます。
SWOT分析
外部環境分析と内部環境分析を利用して戦略を策定する代表的手法が、SWOT分析です。
SWOTとは・意味
漏れなく、ダブり無く考える為の、有名なフレームワークの1つ。
強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) から企業や組織、プロジェクトを分析・評価する。ただし、強みや弱みをどう捉えるかは作成者次第。全くもって結果が変わるので、客観的な視点で作成すべきである。引用:eセールスマネージャー
それぞれ英語の頭文字を取って、SWOT分析と呼びます。
特に中小企業にとっては、「その企業の強みを、世の中の機会(チャンス)にぶつける」ことが、戦略の中心となります。
※「外部環境分析」「内部環境分析」「SWOT分析」については、下記記事も参考にしてください。
また、マーケティング環境分析の一部である「マーケティングリサーチ(市場調査)」の詳細については、以下を見て頂けると幸いです。
マーケティング目標設定
マーケティング目標設定
一連の環境分析の実施により、「自社の強みを、どのような機会(チャンス)にぶつけるか」が明らかになります。
そこで、その機会に対する「マーケティング目標」の設定を行います。
マーケティング目標には、以下のようなものを設定します。
売上高、利益額/利益率、市場占有率、革新性、ブランド価値(企業や製品のイメージ)など、 |
以上のようなものの中から、複数のものを設定することが一般的です。
定性的な要素においても、できるかぎり数値化し、定量的な測定ができるようにします。
また、目標を現実的なものにすること、スケジュールを明らかにすることも重要です。
標的市場の設定
なぜ、標的市場の設定=「ターゲットを絞ること」が必要なのか?
「標的市場の設定」をカンタンに説明すると「ターゲットを絞る」ということになります。
マーケティング目標の設定後、そのマーケティング目標の達成のためにターゲットマーケット(標的市場)の設定が必要です。
なぜ、ターゲットを絞ることが必要なのか、お判りでしょうか。
たとえば、わが国では、第二次世界大戦後(敗戦後)においては、標的市場の設定は必要ありませんでした。なぜなら、まったくモノが足りない時代であり、大量生産でモノを作れば作るほど、飛ぶように売れて行ったからです。
しかし、現在では状況が違います。
市場は成熟し、消費者の価値観や嗜好も様々になりました。
それぞれの消費者に、「これは自分の求めていたモノだ!」と認識してもらえなければ、まったく相手にしてもらえない時代になったのです。
そこで、消費者ニーズごとに市場を細分化し、その細分化された市場の中で最適なものを標的市場に設定します。
そして、その標的市場に対して自社の経営資源を投入し、マーケティング活動を行うことが重要なのです。
この手法を「ターゲットマーケティング」といい、現代マーケティングの主流です。
なお、「ターゲットマーケティング」に対し、大量生産で同一のモノを市場全体に投入することを「マスマーケティング」と言います。
STPとは
ターゲットマーケティングでは、次項で説明するように、以下3点がポイントになります。
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
この3つの英頭文字をとって、ターゲットマーケティングのことを「STP」という言い方をする場合もあります。
ターゲットマーケティング(STP)のプロセス
ターゲットマーケティング(STP)のは実行プロセスは、以下のとおりとなります。
市場細分化(セグメンテーション、または、マーケットセグメンテーション)
まずは、市場を細分化します。その際、市場細分化の基準を明らかにして設定することが重要です。
標的市場の設定(ターゲティング)
細分化されたそれぞれのセグメント(細分化市場)に対して評価を行います。その結果、自社が標的とするセグメントを選択します(1つ、または複数の場合もあり)。
製品ポジショニング
選択した標的セグメントにおいて、自社製品をどのように位置づけるか、戦略の策定を行います。これをポジショニングといいます。
ポジショニングを明確にしたうえで、4Pのマーケティングミックス展開を考えて行きます。
ターゲットマーケティングのメリット
標的セグメントを絞り込んでいくことにより、そのセグメントにおける顧客ニーズに集中して分析することができます。
また、中小企業にとって経営資源は限られていますが、標的セグメントを絞り込むことにより、不要なコストを抑えることができます。
市場細分化の要件
標的市場は絞れば絞るほど、ターゲットとなる顧客に対して有効な訴求ができます(「自分ゴト」と感じてもらいやすい)
しかし、コトラーによれば、細分化された市場が有効であるためには、次の4つの要件を充たす必要があるとのことです。
測定可能性
標的セグメントの規模や購買力を、適切に測定できること。
測定ができない場合、マーケティングで必須なPDCAを繰り返すことができません。
到達可能性
標的セグメント内の顧客に対して、それぞれのマーケティング施策が適切に到達できること。
維持可能性
標的セグメントの規模が、必要な利益をあげられるぐらいのボリュームがあること。
実行可能性
実行したマーケティング活動の成果として、標的セグメントからの反応を測定できること。
市場細分化の基準
市場細分化の基準としては、以下のようなものが挙げられます。
地理的基準
ジオグラフィック基準とも言われます。地域や人口密度、気候などをベースに市場を細分化します。
人口統計的基準
デモグラフィック基準とも言われます。測定しやすい基準であり、「年齢、性別、家族構成、所得、職業、学歴、国籍、宗教」などをベースに市場細分化を図ります。
心理的基準
サイコグラフィック基準とも言われます。細分化のキーは、消費者の価値観や性格、ライフスタイルなどになります。
行動変数的基準
消費者の商品に対する行動や反応を元に市場を細分化します。たとえば、消費者がその商品にどのようなベネフィットを求めているか、使用率、商品に対するロイヤリティー、購買動機などが挙げられます。
以上、いずれかの基準で市場細分化した後、標的市場の設定に入ります。標的市場の設定の代表的な考え方として、コトラーの考え方、および、エイベルによる考え方を紹介します。
コトラーによる、標的市場の設定 考え方
コトラーによる標的市場の設定の考え方は、集中型、差別化型、無差別型の3つに分けるものです。
コトラーの標的市場設定の種類(1) 集中型
1つの標的セグメントだけに集中し、そこに対して最適な製品(マーケティングミックス)を投入する手法となります。
メリットとして、経営資源を集中的に投下できるため、有効な活用が可能なことが挙げられます。一方で、代替セグメントがないため、失敗したときのリスクが大きくなります。
コトラーの標的市場設定の種類(2) 差別化型
複数のセグメントを標的に設定し、それぞれのニーズに適合した製品(マーケティングミックス)を投入する手法となります。
それぞれの市場に最適な商品を投入できるため、売上がもっとも伸びやすい一方、投下コストも大きくなります。
コトラーの標的市場設定の種類(3) 無差別型
細分化されたセグメントの区別せずに、全てのセグメントを標的として、単一の製品(マーケティングミックス)を投入する手法です。
全市場を対象として、比較的低いコストでの対応ができますが、なんといっても、現状の成熟した市場では、ユーザーニーズを充たすのは難しく、失敗する可能性が高くなります。
エイベルによる、標的市場の設定 考え方
エイベルは、標的市場の設定方法について、次の5つのタイプに分類しています。
単一セグメント集中型
特定セグメントにおいて特定の製品を扱います。もっとも集中化の程度が大きい方式です。
市場専門型
特定の顧客層に絞り、そこに対して複数の製品を投入します。
製品専門型
特定の製品分野に絞り、その製品を複数の市場に投入します。
選択的専門型
自社にとって魅力的なセグメントを複数選択します。
全市場浸透型
全セグメントに対して企業の持つ全製品を投入します。
マーケティング環境分析、目標設定と標的市場の設定[STP] <まとめ>
今回説明した「環境分析・目標設定・標的市場の設定[STP]」は、マーケティング活動全体の計画フェーズといえるでしょう。
精緻な環境分析にもとづき、適切なターゲットを絞ることが、特に中小企業にとっては重要となります。
そして、計画策定の後、マーケティング活動全体の実行フェーズとして、マーケティングミックスを実行します。
なお、マーケティング活動全体を説明したものとして、著名なものに「コトラーのマーケティングマネジメントプロセス」があります。コトラーのマーケティングマネジメントプロセスやマーケティングミックスについては、以下の記事を確認してもらえると幸いです。