今回の記事のテーマは「消費者による購買意思決定のプロセス」です。
「消費者は、どのようなことに影響され、どのように考えて購買を行うか」
ということは、マーケティングにとって非常に大きなテーマです。
まずは、著名な「コトラーによる、消費者の購買意思決定プロセス」から見ていきましょう。
目次
消費者の購買意思決定プロセス
P・コトラーは、消費者が購買の意思決定に至るまでのプロセスを、以下の5段階に整理しました。
- 問題認知
- 情報探索
- 代替品評価
- 購買決定
- 購買後行動
それぞれ、詳細に見ていきましょう。
①問題認知
消費者が日常生活の中で必要性を感じるなど、自身のニーズを認識した段階です。
②情報探索
自身のニーズを充たすため、自身の記憶などの内部情報、検索や店頭チェックなどの外部情報を利用して、情報探索をする段階です。
③代替品評価
手に入れた情報をもとにして、ニーズを満たすための購買品候補や代替品の比較評価を行う段階です。
④購買決定
購買するかどうか、どの商品またはサービスを購買するか、などを決定する段階です。
⑤購買後行動
購買後の満足度などにより、消費者はその商品またはサービスに対して評価を行う段階です。
消費者の満足度が高い場合、商品やサービスへのロイヤリティが高まりまり、それが良い口コミなどに繋がります。
消費者の購買後評価の結果、不満足を感じた点があると、ロイヤリティが低下することになります。
また、その不満足を解消させるような行動をとることがあります。このことを認知的不協和と言います。
消費者の購買行動の決定要因
ここまで見てきた、P・コトラーの「消費者購買意思決定プロセス」は、よく分析されたものですが、すべての人が同じ購買行動を取るわけではありません。
消費者は、様々な要因の影響を受け、その購買行動は変わっていきます。
①文化的要因
文化的要因とは、消費者を取り巻く文化、下位文化、社会階層のことをいいます。ここでいう下位文化とは、国籍、宗教、民族、人種などが該当します。
②社会的要因
社会的要因とは、消費者の所属している準拠集団や家族などのことです。準拠集団とは、消費者の価値観や行動、態度などに影響を与える集団のことです。具体的には、友人や隣人、職場の同僚などが準拠集団として挙げられます。
③個人的要因
個人的要因とは、その消費者の年齢やライフステージ、さらには職業や経済的状況、ライフスタイル、性格などのことです。
④心理的要因
心理的要因とは、購買の動機や消費者自身の知覚、過去の人生における学習や経験による行動の変化、自分自身の信念など、消費者の内面から生じる影響のことをさします。
消費者行動モデル
先に見た、P・コトラーの「消費者購買意思決定プロセス」以外にも、購買行動は様々なモデル化がされています。
特に覚えておきたいのは、「AIDMA(アイドマ)」、「AISAS(アイサス)」、そして「DECAX(デキャックス)」でしょう。
これらの購買行動モデルの詳細については、以下の記事を参考にしてください。
購買決定行動のタイプ
購入する製品の種類によって、消費者の購買決定行動は、以下3つのタイプに分かれます。
日常的反応行動(定型的問題解決行動)
日常的反応行動とは、消費者が、その商品とブランドのいずれに対しても、よく理解している場合の行動です。
たとえば、日常品である洗剤やトイレットペーパーなど、価格が安く購買頻度も高い商品の購入時にみられます。
これらの商品について、消費者は「どのような商品であり、どのようなブランドが売られているか」をよく知っているため、短時間で労力をかけずに購買決定を行います。
②限定的問題解決行動
限定的問題解決行動とは、消費者が商品については知識は豊富ですが、ブランドについては知らないものが存在する場合の行動です。
たとえば、アパレル商品の場合、商品そのもののことはよく知っていても、よく知らないブランドも多くあるでしょう。そのような場合に、一定の時間をかけて(限定的に時間を使って)意思決定を行います。
③拡大的問題解決行動(包括的問題解決行動)
拡大的問題解決行動とは、消費者が商品とブランド、どちらの知識も不確かな場合に行われる行動です。
たとえば、車や高級宝飾品など、普段購入するものではない商品を購入する場合、商品についても、ブランドについても徹底的に時間をかけて調査するようなケースが該当します。
イノベーションの普及過程
イノベーションの普及過程
ロジャースの「イノベーションの普及過程」とは、新製品などのイノベーションは5種類の消費者に、順次受け入れられていく、とするモデルです。
まずは革新的な消費者に受け入れられ、最終的には保守的な層まで受け入れられるようになる、という考え方です。
①革新者(イノベーター)
リスク受容性が高く、好奇心の塊のようなユーザーです。裕福かつ冒険心の高い方が多く、全体の2.5%を占めると言われています。
②初期採用者
いわゆるオピニオンリーダーが含まれる層であり、一般の方々より、多少はやくイノベーショナルな新製品を採用します。全体の13.5%を占めています。
③前期大衆層
新製品の採用が、平均よりわずかに早いユーザー層です。全体の34.0%を占めています。
④後期大衆層
新製品の採用を、平均より遅れて実施する人々です。全体の34.0%を占めています。
⑤採用遅滞者
新製品の採用にあたっては、保守的な対応、または拒絶的な態度を取るユーザー層になります。全体の16.0%を占めます。
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組織購買行動
組織における購買行動の概要
一般消費者の購買行動と異なり、組織における購買行動は、集団での意思決定が行われます。また組織間の取引では、長期的な取引が前提となることが多く、規模が大きくなるなどの特徴があります。
また、組織間取引においては、製品に対する専門知識が必要なことが多いため、それぞれの企業は専門の購買担当者を設置することになります。
組織の購買意思決定プロセス
組織の購買意思決定においては、次のようなプロセスを経ることになります。
- 顧客企業(購入企業)側が、ニーズなどの問題を認知します。
- ニーズを満たすための製品またはサービス仕様書を、顧客企業が作成します。
- 仕様書を満たす製品・サービスを供給できる業者を探索します。
- 業者を確認した後、見積書や提案書を取り寄せ、提案の評価を行います。
- 発注する供給業者を選択し、実際に発注を行います。
- 製品やサービスを使用します。
- その製品・サービスについて評価を行います。
消費者行動を理解したうえで、マーケティングミックスの構築/実行へ
ここまで学んだ消費者行動を理解したうえで、最終的なマーケティング戦略の策定・実行に活かすことが重要です。
マーケティング戦略の中心となるものが、マーケティングミックスであり、
マーケティングミックスとは、マーケティングの要素である4Pを、あなたの商品・サービス向けに最適化し、マーケット(顧客)に対して訴求することです。
4Pとは、➀「Product(製品)」、つづいて②「Price(価格)」、「Place(流通)」、そして④「Promotion(販売促進)」の頭文字をとったものです。
これら4つの要素について、自社の商品・サービスにとって最適なバランスとなるよう検討し、マーケティング戦略を計画・実践します。
また、いわゆるPDCAを回して、マーケティング活動を精緻化していくことが重要です。
なお、マーケティングの4Pの各戦略については、下記の記事を参考にしてください。
伝統的なマーケティングの4Pには含まれないものの、近年のマーケティングにおける重要な要素として「関係性マーケティング」「サービスマーケティング」があります。
それらについては、下記記事を参考にしてください。
以上、今回の記事では、消費者行動について説明しました。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。