目次
実用新案権の概要
実用新案権とは「考案」を保護する権利であり、実用新案法に基づく権利です。
実用新案権の目的
実用新案権の目的は、実用新案法第1条に以下のように記されています。
この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
考案とは?
実用新案法における「考案」とは「小発明」に当たるもので、「自然法則を利用した技術的思想の創作」を考案することです。
「小発明」という言葉から分かるように、特許のように「高度であること」は求められていません。
また、上記目的にもあるとおり、考案は「物品の形状」「物品の構造」「物品の組み合わせ」のいずれかが対象となります。
特許のように「方法」は対象になりませんので、注意が必要です。
実用新案権の取得と存続期間
実用新案権は登録を受けることにより、独占的に考案を利用できる権利(=実用新案権)を取得できます。
実用新案権は出願の日から10年間存続し、10年経過すると完了となります。
実用新案権の登録要件
以下5つを満たす必要があります。
- 産業上の利用可能性
- 新規性
- 進歩性
- 先願であること
- 不登録事由に該当しないこと
実用新案権の出願手続きの流れ
出願
物の形状、構造、または組み合わせに関する内容であるため、必ず図面を添付します。
3年分の登録料を納付して出願します。
方式審査
実用新案権の審査は方式審査のみ。実態審査はありません。つまり、無審査主義ということです。
そのため、特許と比較してスピーディに登録することが可能です。
設定登録
公報掲載
実用新案登録について公報に掲載されます。
実用新案登録無効審判
公報掲載から期間満了までの間、誰でも当該実用新案登録の無効審判を請求できます。
期間満了
出願から10年で権利はなくなります。
実用新案登録後の特許出願
実用新案権の出願から3年以内であれば、実用新案権として設定登録された後でも特許出願ができます。
実用新案登録後に、その考案が「より価値ある発明」と判明した場合などに利用されます。
実用新案技術評価書
実用新案の有効性を特許庁が評価した書類であり、実用新案権者が、権利侵害者などに対して権利行使をする場合、この評価書を提示して警告をした後でなければ、損害賠償などの請求を行うことはできない、とされています。
実用新案権と特許の違い
ここまで説明したことも含め、実用新案権と特許の違いをまとめてみました。
- 考案の対象は「物品ん」のみであり、方法等は対象になりません。
- 無審査主義の手続きのため、審査請求制度がありません。
- 権利存続期間は10年(特許は20年)
- 登録までの短期間で可能であり、費用も特許の半額程度と安い
- 実用新案技術評価制度など、権利行使に制約がある