診断士コラム

中小企業診断士は役に立たない!って本当?

中小企業診断士は役に立たない

「中小企業診断士は役に立たない」と言われることがあります。

本当にそうなのでしょうか?

そもそも、中小企業診断士は日本版MBAとも言われる、国が認めた唯一のコンサルの資格であり、幅広い環境で活躍可能な、大きな魅力と価値を持つライセンスとされています。

それを漠然と「役に立たない」と言われても、話が大雑把すぎますし、どう判断してよいのか、よく分かりませんよね。

特に、これから中小企業診断士の資格取得を目指す受験生の方は、「中小企業診断士は役に立たない」なんて聞くと、このまま挑戦を続けることに対し、不安になるかも知れません。

そこでこの記事では、「中小企業診断士は役に立たない」と言われることについて、しっかり検討して事実を見極め、判断したいと思います

実際のところはどうなのか、詳細に見ていきましょう。

中小企業診断士について

「中小企業診断士が役に立つのか、立たないのか」

それを論ずる前に、まず中小企業診断士の概要をざっくり確認しておきましょう。

  • 資格概要:我が国で唯一の民間の経営コンサルタントの国家資格
  • 受験資格:特になし(1次試験)、2次試験は1次試験合格者
  • 試験概要:1次試験は選択式(マークシート)7科目、2次試験は筆記試験(論述式で4つの事例に解答)および口述試験
  • 合格率:例年6~8%(1次および2次のストレート合格率)
  • 合格に必要な勉強時間:約1000~1200時間
  • 合格までの平均の期間:3年
  • 資格の更新:5年ごとに更新。更新するには一定の実務に従事しポイントを貯めること、新たな理論を獲得する一定の講義を受けること等の条件があり

以上、中小企業診断士について簡単にまとめると、

  • 広い範囲から出題され、1000時間以上も学習時間が必要、かつ合格率も低い難関国家資格
  • 資格の更新は5年ごと、厳しい更新要件が課せられている

ということになります。このような難関な国家資格が本当に役に立たないのか、気になるところです。

「中小企業診断士は役に立たない」の2つの意味

そもそも、「中小企業診断士は役に立たない」と誰が言っているのか?それによって意味することが変わってきます。

そして、「誰が言っているのか?」については、大きく2つの方向性があります。それが、

  • 中小企業診断士本人(或いは、これから中小企業診断士になろうとする人)
  • 中小企業経営者(中小企業診断士に経営コンサルティングをお願いする人)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

資格を取得しても役に立たない

「資格を取得しても役に立たない」

これは、現在、実際に中小企業診断士の資格を保有している立場にある方や、これから中小企業診断士になろうとしている方(受験者)の視点ですね。

※すでに廃業して「過去に中小企業診断士だった方」の視点も含まれるでしょう。

この方々がいう「役に立たない」とは、以下のような内容が考えられます。

  • 中小企業診断士になって独立しても食えなかった
  • 勤務先の社内での昇進や出世に繋がらなかった
  • 転職や就職などのスキルアップで活かすことができなかった

仕事を依頼しても役に立たない

つづいて、「仕事を依頼しても役に立たない」というのは、中小企業診断士に仕事を依頼する(依頼した)側の意見ですね。

具体的には、中小企業の経営者を筆頭に事業を行う方全般、また、公的機関の担当者なども含まれるでしょう。

この場合の「役に立たない」は、以下のような内容が考えられるでしょう。

  • 中小企業診断士に経営コンサルティングを依頼したが、問題が解決しなかった
  • 業務の改善案の提案を求めたが、出来が今ひとつだった
  • 補助金や助成金の申請のサポートを依頼したが、採択されなかった
  • 商工会・商工会議所などでセミナー講師を依頼したが、参加者からの反応が今一つだった

以上のように、「中小企業診断士は役に立たない」と一言で言っても、「誰の視点か」を考えるだけで、様々なケースが考えられます。

以下、それぞれの視点を考慮しながら、「役に立たない」と言われる理由を、もう少し深堀してみましょう。

なぜ、中小企業診断士は役に立たない、と言われるのか?

独占業務がないから

「独占業務がない」というのは、中小企業診断士や受験生側の視点ですね。

独占業務というのは、

  • 「社会保険事務手続きの代行は、社労士しかできない」
  • 「裁判で被告の弁護は、弁護士にしかできない」

などのように、有資格者にしか許されない一定の業務のことです。

中小企業診断士は「経営コンサルタントの国家資格」ですが、経営コンサルタントの仕事は、何の資格を持っていない人も実施できます。

そのため、「競争が激しい」「仕事を取るのが大変」ということになり、結果として「資格を取っても役に立たない(=仕事に繋がらない)」ことに繋がるのです。

ちなみに、中小企業診断士は「業務独占資格」ではありませんが、「名称独占資格」です。
「名称独占資格」とは、その資格を保持していることを名乗れること、という意味。

言い換えると、中小企業診断士試験に合格していない人は、中小企業診断士と名乗ってはいけない、ということです。

独占業務があれば安定すると言うものでもない

ただし、断っておきますと、「独占業務がある資格は安泰」という訳ではありません。

独占業務があろうがなかろうが、営業・マーケティングマインドがない方は、独立・開業しても上手く行きません。

実際、仕事がない弁護士や税理士は多くいます。独占業務があり能力が高くとも、顧客を確保できなければ始まらないのです。

中小企業診断士の資格だけでは独立は難しいから

続いて「中小企業診断士の資格だけでは独立は難しい」、こちらも中小企業診断士本人や受験生側の視点ですね。

前述のとおり、中小企業診断士の資格を持つ方だけに許されることは「中小企業診断士と名乗ること」だけです。

他に、資格保持者に対してだけ許されることはありません。

そのため、他に武器がないと、独立しても上手くいかないだろう、ということですね。

専門性がない

「専門性がない」というのは、中小企業診断士に依頼する側(中小企業経営者等)の視点です。

依頼する側の経営者の業務(業種)は、人により様々でしょう。

一方、中小企業診断士は経営に関する様々な知識を学習して試験に合格していますが、依頼する経営者の業務や業種に精通しているとは限りません。

そうした専門性がないと、経営者の満足する結果には繋がりにくいでしょう。

知識だけで経験が足りない人が多い

「経験が足りない人が多い」というのは、前述の「専門性がない」と似ていますが、

仮に専門性があったとしても、経営コンサルタントとして数々の現場をこなしていなければ、経営者が満足する結果を引き出せない可能性があります。

たとえば、経営コンサルタントの仕事として、

  • 関係者から意見や本音を引き出す
  • 多くの関係者の合意を取り付ける

など、業務の専門性というよりは、ヒューマンスキルが必要なことも多くあります。

こうしたスキルは、様々な修羅場をくぐるなど、経験を積むことで磨かれることは間違いないでしょう。

本当は役に立つ中小企業診断士

ここまで、「役に立たない」と言われる理由について、くわしく説明しました。

ここからは、「本当は役に立つ!」ということで、反証してみたいと思います。

AIに置き換えられにくい専門家

「AIによる代替可能性の高い職業」という研究が、2015年12月に野村総合研究所およびオックスフォード大学から共同で公表されました。

それによると、それぞれの士業がAIに代替される可能性は以下のとおりです。

  • 行政書士: 93.10%
  • 税理士: 92.50%
  • 公認会計士: 85.90%
  • 社会保険労務士: 79.70%
  • 司法書士: 78.00%
  • 弁護士: 1.40%
  • 中小企業診断士: 0.20%

以上のとおり、弁護士と診断士は、極めてAIに取って代わられる可能性が低い士業とされています。

この理由は明白です。弁護士も診断士も、仕事の中心は「対人コミュニケーション」

AIに代替されやすいとされている士業は、いずれも事務処理が高いウエイトを占める士業ばかりです。

これに対して、診断士の行う経営コンサルティングは、クライアントと向き合い、交渉し、導くのが仕事ですから、非常にAIに代替されにくい、と言えます。

資格取得直後ならともかく、一定の活動実績のある診断士は皆、驚くほどのヒューマンスキルを身に付けています。

資格の枠を超えてクロスフィールドで働く人材が多い

前述のとおり、役に立たない理由として

  • 「診断士の資格だけでは独立は難しい」
  • 「専門性がない」

というものがありました。

それぞれ、頷ける部分もありますが、逆に言えば「専門性以外の部分は、高いレベルで揃っている」のです。

どういうことでしょうか?

診断士の資格取得のための勉強では、経営戦略、組織論、マーケティング、財務、会計、生産管理(運営管理)、経済学、経済政策(経済におけるマクロ政策)、情報システム、経営法務(会社法等、企業経営に関する法律)など、あらゆる業種で役立つ、ビジネスの基盤となる知識を高いレベルで習得できます。

これらに加えて、特定分野の専門性が加わったら、どうなるでしょうか?

診断士は、その資格に加え、何か特定分野に関する専門性を保持すると、驚くほど飛躍する方が多いです。

経営コンサルタントだけでなく、自ら事業を起こして成功される方も多くいます。

むしろ、資格の枠を超えて、様々な分野で働ける資格と言えるでしょう。

社会的に信用される存在

前述のとおり、診断士の資格は難易度が高く、合格まで1000~1200時間前後の勉強時間が必要です。

1年間、毎日3時間もの勉強をして、ようやく合格を手にできるかどうか。現実的には数年かけて取得する人のほうが、圧倒的に多いのです。

マークシートの1次試験、論述式(記述式)の2次試験に分かれているのも特徴で、それぞれの合格率は1次は30~40%、2次は20%程度。

1年でストレート合格できる確率は、わずか6~8%程度であり、「働きながら取得できる資格として最難関」とも言われます。

このように、合格まで長い年月が必要な難関資格であるため、資格保持者は社会的に高い評価や信用を得られやすいのです。

今後の資格の活用方法

「役に立たない」と言われる診断士ですが、詳しく見て行けば、そんなことはないことが実感できたかと思います。

今後、どのようにこの資格を活かしていくべきか、確認していきましょう。

出世・昇進

前述のとおり、診断士の資格保持者は、あらゆる業種で役立つ、ビジネスの基盤となる知識を高いレベルで習得しています。

これらの能力は、独立や開業だけでなく、現在勤務している企業内でも活かせるものばかりです。

会社によっては、資格手当を出すなど資格取得を奨励している場合もありますし、取引先から評価されるケースも多々あります。

会社員として、若手のプレーヤー時代から、管理職、マネジメントと昇進や出世するにあたり、資格の勉強で手に入れた知識は大きな武器になるでしょう。

独立・開業

「診断士の資格だけでは独立は難しい」という意見がありましたが、すでに言及したとおり、

プラスアルファとなる専門性(専門分野)が見つかれば、独立・開業で大きく飛躍できる可能性が高まります。

専門性(専門分野)を加える、と言っても、一から勉強しなければならない、という話ではありません。

通常、独立・開業を考える人は、会社員などの前職をお持ちのはずです。その前職の経験こそ、あなたの専門分野と言えるもののはずです。

前職の経験・実績に資格所有者としての知識・ノウハウを加えれば、相当な差別化、武器になるはずです。

診断士の独立について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。

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就職・転職

まず就職。大学生が在学中に診断士の資格を取得することは極めて難しいです。逆に言えば、もし取得出来たら、大きな差別化となるでしょう。

ただ、学生の場合は1次試験に合格するだけでも有利。その旨、履歴書に書いておけば人事担当者に評価されるのは間違いありません。

一方の転職。診断士資格所有者は評価されることもありますが、資格そのものを条件とする求人は少ないのが現状です。

また、転職(中途採用)の場合は、年齢が上がるにつれ、資格よりも経験・実績のほうが評価される傾向にありますので、その点は注意が必要です。

ただ、コンサルティング会社の場合は、一般企業よりも診断士資格が評価される傾向にあります。

その他、商工会・商工会議所など公的機関でも評価される傾向にありますので、そうした点を考慮しながら転職活動の戦略を練るのもよいでしょう。

診断士の転職について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。

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副業

資格取得後、未経験でいきなり独立・開業をするのは一定のリスクがありますから、副業で経験を積むのは良い選択です。

もちろん、独立するつもりがない企業内の方も、勤務先が許すのであれば、副業にはメリットしかありません。

副業の仕事探しですが、まずは中小企業診断協会などの人的ネットワークの活用がおすすめ。

診断士講座の講師など、受験指導関連であれば、各資格スクールや予備校で募集していますので、各学校のホームページを参照してみましょう。

また、専門知識を活かしたライターにもニーズがあります。クラウドワークスやランサーズなど、クラウドソーシングで募集を探したり登録したりするところからはじめましょう。

診断士の副業について詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。

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ダブルライセンスで「役に立たない」とは言わせない!

「診断士は、その資格に加え、何か特定分野に関する専門性を保持すると、驚くほど飛躍する方が多い」

と前述しました。

その特定分野の専門性を、他の資格で補うという方法が、ダブルライセンスです。

有望なダブルライセンスとしては、以下のような資格が考えられます。

  • 社労士:経営コンサルティングと並行して、社会保険事務手続きや人事コンサルティングも請け負う
  • 行政書士:起業支援(許認可等)や各種文書作成と、経営支援を同時に提供する
  • FP:経営コンサルティングだけでなく、経営者や従業員の資産関連の相談業務ができる

どの組み合わせにもシナジーがあるのがお分かりかと思います。いずれも極めれば、あなただけの強力な専門性になるはずです。

ただし、ダブルライセンスの際でも、営業・マーケティングマインドは必須。そこだけ忘れなければ、希望溢れる未来が広がっているでしょう。

ダブルライセンスについて詳しくは、下記の記事も参考にしてください。

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「人生を変える」ほどの成功には、人脈と営業、マーケティングが必須

診断士の資格を取得して、人生を変えるほど成功したい!と考えてる方も多いでしょう。簡単には人生は変わらないかも知れませんが、成功のためには、人脈と営業、マーケティングが必須です。

人脈を作ることで、成功への機会を得る

診断士の資格を取得することで、以下のように人脈を広げるチャンスに恵まれます。

  • 中小企業診断協会での人脈づくり
  • 受験生時代の勉強仲間の人脈
  • 実務補習時代の指導員やメンバーとのネットワーク

人脈が広がると、それに比例して、新たな業務や出会いのチャンスが増えることになります。

一つ一つの出会いを大切にし、真摯に対応することこそが、効率よく成功の機会を得るチャンスとなるでしょう。

営業、マーケティング、集客に魂を込める

どんなに役立つ資格、価値ある資格でも、それを提供する顧客がいなければ話になりません。副業にしても独立開業にしても、当初は営業、マーケティング、集客に魂を込めて、やり抜く覚悟が必要です。

今の時代のおすすめ営業・マーケティングツールといえば、Webサイトやブログ、SNS(twitterなど)などネット集客です。診断士の有資格者でしたら、原稿を執筆する能力は高いので、ぜひネットを使った集客に力を入れるべきです。

もちろん、ネット集客をしたからといって、すぐに反応があるわけではありません。見込み顧客に価値を提供するコンテンツの発信を続けることにより、少しずつ顧客からの反応が出てくることになるでしょう。

受験生時代からWebマーケティングの実践がおすすめ

Webマーケティングによる集客がおすすめ、と言っても、独立してから始めたのでは軌道に乗るまで時間が掛かり過ぎます。

そこでおすすめは、「受験生時代からブログを運営すること」。日々、診断士受験勉強で学習したことを、経営者に分かりやすく説明するようなブログを書きましょう。勉強の復習にもなりますし、将来の見込顧客に繋がる読者が付く可能性もあります。

また、HPやブログの運営をすることで、日々のアクセスのデータや数字を分析し、あなたのWebマーケティングの能力を効果的に高めることができます。

将来、顧客に助言などのサービスを提供する際、「Webにも強みを持つ診断士」というイメージが構築できていれば、あなたの差別化やブランディングにもなりますし、顧客の側から見れば非常に頼もしいものです。

多くの同業者の中から選ばれる診断士になるためには差別化が需要ですし、開業直後にスムーズに集客を行うためにも、Webマーケティングの技術の獲得を目指してブログ運営から始めてみませんか?

まとめ

以上、様々な面から確認した結果、診断士が決して役に立たない資格ではないことが理解できたかと思います。

この資格を取得すれば、あなた自身の人生に変化を与えることに、必ずや役立ちます。

苦労も多いと思いますが、ぜひ挑戦を続けて欲しいと考えています。

著者情報
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション